これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

映画は口コミに限る ~フジコ・ヘミングの時間

2019年02月24日 21時41分24秒 | エッセイ
 JR田端駅の近くに、座席数20ほどの小さな映画館がある。



 シネマ・チュプキ・タバタ。
 ブロ友さんのおススメは、ここで上映されている「フジコ・ヘミングの時間」だという。
 昨年6月に公開された作品だからDVD化されているが、やはり劇場にはかなわない。ぜひ観たいと思った。



 映画は口コミに限る。今月初めにも、知人たちが絶賛していた「ボヘミアン・ラプソディ」を楽しんできたところだ。(ボヘミアン・ラプソディの記事はこちらから)
 ミニシアターだから、鑑賞前に予約を入れる。ネットでも電話でもオーケーだ。
 この日の上映時間は17時から18時55分まで。仕事を早めに切り上げて、10分前には着くように職場を出発した。
「いらっしゃいませ。先ほどはお電話ありがとうございました」
 スタッフの対応もよい。お手洗いを使おうとしたら、「こちらの方が広いですよ」と教えてくれるし、コーヒーをお願いしたら「席までお持ちします」である。何だか、友達の家で映画上映会をするような錯覚をしてしまった。



 落ち着く席に座り、開演を待った。



 フジコ・ヘミングについて、何の予習もしてこなかった。ピアニストということは知っているが、容姿も性格も生い立ちも何もわからない。でも、この映画は、予備知識ゼロでも問題ない。
 初対面のフジコさん。思ったよりも年配で、波乱に満ちた人生を送ってきたらしい。でも、ネコや素敵なインテリアに囲まれ、幸せそうだ。ピアノの音色も輝いていて、拍手喝采を浴びる姿がまぶしかった。
 実は、私も小学生までピアノを習っていた。毎週木曜日がピアノの日だったような気がする。練習熱心な子どもではなかったので、水曜日にちょこっと鍵盤を叩き、お稽古に臨む程度だった。当然、上達するはずもなく、バイエルの下巻レベルで終了。月謝を払ってくれた母には、とても言えない。
 しかし、フジコさんは毎日4時間練習しているのだとか。超うまいのに、それでも連日4時間? 練習に対する心構えが根本から違うことに驚かされる。漫画を読みたくても、宿題を終わらせたくても、せめて1時間は練習すべきだったと反省した。
 スクリーンから、フジコさんのピアノが鳴り響く。トルコ行進曲、ラ・カンパネラ、月の光、ノクターンなどなど、コンサートを見ているようだ。ドレスもきれい。何よりも、フジコさんの堂々とした立ち居振る舞いに魅了された。
 ピアノの音色は、すり減った心を元通りにしてくれる。ストレスを和らげ、心のメンテナンスにもってこいだ。本当にありがたくて、もっと聴きたくなった。スクリーンが暗くなるたびに、「まさか、もう終わり?」とヒヤリとしたが、満足するまで待ってくれた。とても美しい映画だった。
 ところで、練馬区立美術館では、ときどき、ユニークなピアノを使ったコンサートを開いている。1877年製スタインウェイ社のスクエアピアノだ。



 初めて、このピアノの音色を聞いたとき、現代のものよりも、やわらかくて優しい音という印象を受けた。
 フジコさんが弾いてくれたら、どんな音がするのだろう。
 勝手に、共演してくれることを夢見ている。


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美容院とパン屋はつながっている(2)

2019年02月17日 21時20分49秒 | エッセイ
 久しぶりの美容院で、料理やファッションの記事の載った雑誌を開くと、「美味しいパン屋」特集だった。
 麻布や代官山、横浜といったオシャレの代名詞となる場所にまぎれて、見覚えのある地名が目に入る。
「へ? 西尾久? 何で」
 東京都荒川区西尾久は下町になるのだろうか。目立った店もなく、奇抜な格好をしている若者もおらず、路線バスや都電荒川線が活躍する街だ。仕事で何度も訪問したから親しみもあるけれど、ちょっと浮いているのでは……。
「なになに。食パン専門店とな」
 ピンとこなかった。失礼ながら、あの地味な街に女性誌をにぎわすようなパン屋があるとは。イケメンでも何でもない普通のサラリーマンが、テレビで引っ張りだこのタレント美女と「交際発覚!」なーんて報道されるようなものか。とりあえず、時間のある日に寄ってみた。
 店の名前は「点心」。中華料理でもないのに「点心」。近くには「びっくり餃子」なる店もあり、本当に食パンが買えるのかを疑った。
 店の入口には「営業中」の札がかかっている。少々安心して中に入ったが、それもつかの間、またまた「本当に買えるのか」と心配になってきた。なにしろ、引っ越しを控えた事務所があらかた荷造りを終えたほどに殺風景で、肝心のパンが見当たらなかったからだ。
「あのう、ここ、パン屋さんなんですか?」
 キョロキョロしながら店員に尋ねると、歯切れのよい答えが返ってきた。
「はい、食パンを売っています。1つ650円で、配送もしています」
「ああよかった。じゃあ、1つください」
 よく見ると、レジ脇の棚には袋詰めされた食パンが並んでいた。タマゴサンドやラスクも売っている。ただ、ショーケースがないだけだ。



 袋を開けると、こーんなパンが、ドーンと飛び出してくる。



「切らずにちぎって食べるのがおススメ」とあったので、素直に継ぎ目から裂いてみた。



 触っただけでも軟らかさがわかる。白いところがふわふわなのは当然として、耳までしっとりしているのがうれしかった。何もつけずに食べてみると、口の中でうっすらと甘味が広がってくる。
 じわじわ、じわじわ。
 耳の方が香ばしくていい味なのが面白い。バターをつけてもよし、オリーブオイルでもよし、スープにひたしてもよし。ふわふわな食感に加えて、控えめな弾力性もあり、もちもちした舌触りが楽しめる。トーストにしてはもったいないだろう。なんだかんだで、あっという間に1/3食べてしまった。
「うまそうだ。俺ももらうよ」
 あとから夫がやってきて、さらに1/3をペロッと平らげる。
「あっ、こんなに小さくなってる」
 最後は娘が、残りの1/3をパクリ。結構大きかったのに、たった1時間でなくなってしまった。



 点心、おそるべし。
 実は、昨日も点心に行ってしまった。今度はちぎらず、薄切りにしてタマゴサンドを作ってみたら、これがベラボーに美味い。どう食べても、何をつけてもつけなくても、イケるのだ。
 ほんの60分、美容院で情報収集しただけなのに、いいパン屋を2軒も見つけてしまうとは。
 私の嗅覚、今日も冴えてま~す!


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美容院とパン屋はつながっている(1)

2019年02月10日 19時56分45秒 | エッセイ
 毎日のように働かされた1月も終わり、ようやく美容院に行くことができた。
「今日は小説じゃなくていいんですか」
「はい。今日は雑誌にするわ」
 読みかけの本もなく、料理やファッションの記事の載った雑誌を開くと、「美味しいパン屋」のページであった。菓子パン、総菜パン、食パンなどなど、食欲を刺激される写真に吸い寄せられる。
 私だけでなく、美容師さんも写真が目に入ったようだ。
「そういえば、この辺で一番美味しいパン屋さんってどこなんですか」
 美容師さんはさいたま市に住んでいて、毎日練馬まで通っているそうだ。たまには、家族が喜んでくれるパンを買って帰りたいらしい。
「そうですね、アンジェターブルかな? いやいや、神戸屋も捨てがたいし、ポンパドウルも好きだわ」
 答えになっていない。実のところ、どこが一番かなんて考えたことはなかった。
「そうだ、検索してみよう」
 インターネットは便利だ。駅名とパン屋のワードを入れると、勝手に「美味しいパン屋ランキング」なるサイトを表示してくれる。
「えーと、一番は……」
 聞いたこともない店だった。駅から5分。帰り道と同じ北口にあるとはいえ、わが家とは逆の東側に歩いていく。ちょっと遠回りだけど、まだ3時だし、帰りに寄ってみよう。
 そんなわけで、まず自分が行ってみることにした。「お前が行くな」と言われそうだが、下見、下見。
 時計は3時半を指している。すでにケースの中はスカスカで、売れ残ったパンがいくつか残っているだけだ。「これだけ?」と少々焦った。本当に人気があるのだろう。
「えーと、クロワッサン2個と、クリームパン、マロンパイをください」
「はい」
 値段はリーズナブル。午前中だったら、もっとたくさんの種類があったに違いない。
 クロワッサンとマロンパイは紙袋に入れてくれた。サクサク感を長持ちさせる工夫なのではと察する。



 袋を開けてみると……。
 ジャーン。



 たしかに、ここのパンは美味しい。クリームパンなんぞ、深い色した、ほんまもんのカスタードクリームが詰まっていて、シュークリームのようだ。



 クロワッサンもほどよくハードな歯ごたえがあり、しつこくなくていい。チーズとゆで卵を挟んで食べた。
「いやあ、こんな店があったとは」
 何が幸いするかわからない。ひとまず、検索するきっかけを与えてくれた美容師さんに感謝かな。
 そもそも、「美味しいパン屋」特集にも目当ての店が載っていたのだが、それは次の機会に。


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セキュリティシステムが破損しています?

2019年02月03日 22時15分42秒 | エッセイ
 パソコンで、ブロ友さんの記事を見ていたときだった。
「あれれ?」
 急に画面が切り替わり、イヤ~なメッセージが表示された。
「Windowsセキュリティシステムが破損しています」



「えっ、破損?」
 どうしたものかと躊躇していると、Webからのメッセージボックスが次々と増えていく。
「何かおかしいぞ……」
 これはネット詐欺ではないのか? ひたすら「×」を押してメッセージを消し、IEを閉じた。
「ふ~」
 調べてみると、やはりそのようだ。決して「OK」を押してはいけないと書いてある。まったく、油断も隙もない。もっとも、私のパソコンだってボロボロだ。バッテリーはすっかり消耗してしまい、ACアダプタをつけないと使えないし、思うように動かないこともしばしばある。「破損しています」と指摘されたら、素直に受け入れてしまうところだった。あぶないあぶない。
 その後も、忘れた頃に「破損しています」が割り込んでくる。急いでいるときなど、「それどころじゃないんだ!」と腹立たしいが、何度も見るうちに法則性がわかってきた。
 どうやら、特定のサイトで出やすいようだ。私の場合、9割方がAmebaブログを見ているときに登場した。ネットサーフィンをしていて、Amebaに切り替わるときは思わずヘソに力が入る。マウスが広告バナーに近づくと、さらに遭遇しやすい気がする。なるべく画面の端っこにマウスポインタを置き、不愉快な時間にならないように気を使う。
 そんな経緯もあって、1月はAmebaブログを更新しなかった。大したネタもなかったし、仕事も立て込んでいたから、サボりの口実を与えられたようなものだ。特に書きたいことがなければ、余計な作業を抱え込むこともないだろう。
 月が変わると、ウイルスバスターが「月次レポート」を表示してくる。「21件のWeb脅威をブロックしました」との偉そうな文字は、「破損しています」のメッセージを撃退したと言いたいようだ。
 ウソだろ。
 私が必死で「×」を押したから消えただけであって、ウイルスバスターは何もしてくれなかった気がするのだが。そもそも、表示されないようにするのがブロックなんじゃないの?
 不満は残るがまあよい。
 今日は、3週間ぶりの、何の予定もない日曜日である。パソコンを起動させ、ウイルスバスターでスキャンした。特に問題はないようだ。
 みなさんもお気をつけて。


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