goo blog サービス終了のお知らせ 

これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

JAFの電話がつながらない

2025年05月11日 17時20分58秒 | エッセイ
 今日は母の日。
 夫がカーネーションの花を買ってきてくれた。ありがたや。



 夫の母、つまり義母は5年前に亡くなってしまったが、私の母は健在だ。父の葬儀を機に、一人でもボケずに生活できるよう、私たち三姉妹が順繰りに訪問するようになったため、一年中母の日と思うことにした。
 GWには母の家に一泊した。出かけるときは、食材持参で三食作ることにしている。母もこのペースに慣れ、特段気をつかわず「美味しい」と喜んで食べてくれるから頑張れる。
 車に電気、電話、ガス、預金の名義を父から母に変更する手続きは、母だけでなく姉や私が手伝った。だいぶ片づいたと思ったのだが、全部ではなかった。
「JAFがまだなのよ」
 母が困った顔で頼ってきた。
「電話を掛けてみたんだけど、マイページがどうとかこうとか言っててわからなかった」
母の家は電波状況が極端に悪く、LINEすらつながらないときがある。ひとまず父の会員証を預かり、自宅に帰ってからパソコンで調べてみた。
 結果、JAFでは名義変更の制度がないと知った。会員は父だけなので、死亡したら退会するしかない。母がサービスを受けるには、新たに会員として手続きすればよいらしい。
「なるほど」
 問題は会費の納入方法である。クレジットカードは持っていないので、郵便局の払込用紙を請求することにしたが、これだとネットで手続きできない。電話でと書いてあるのだが、何度掛けても「ただいま電話が大変混みあっております。のちほどお掛け直しください」のメッセージばかりで、一向に申し込めない。私ですらゲンナリするのだから、高齢の母にはなおさら厳しいと感じた。
「うーん、どうしよう」
 職場から電話を掛けられる時間帯は、昼休みか17時以降だ。しかし、いつかけても門前払いをされてしまい、永遠につながらないのではと焦った。
 結局、職場から掛けるのは諦め、土曜日の午後の落ち着いた時間帯に再挑戦することにした。15時ちょっと過ぎは平日よりも混んでいるイメージだったけれど、実際には逆だったようだ。今まで聞いたことのない「ロードサービスをご希望の方は1を、契約内容に関するお問い合わせは2を……」といった音声が流れてきた。2のボタンを押すとさらに「オペレーターにおつなぎします。待ち時間は5分以上かかります」のメッセージに切り換わり、「もしや繋がるのでは」と期待が高まってきた。
 少し待つと「5分以上」と伝えられたメッセージが「4分程度」に変わり、やがて呼び出し音となった。この時点で私は拳を握って右手を振り上げ、「いいぞ、いいぞ!」と騒ぎ出したいくらい盛り上がっていた。まさか、一度でつながるとは。
「大変お待たせしました。JAF総合サービスです」
 しっかりした印象の女性の声が聞こえてきた。事情を話すと、父の退会も母の入会も、同時に受け付けてくれるという。払込用紙は翌営業日に送ってもらえることになり、会員証が届くまでは領収証で各種サービスを受けられると聞いた。ああよかった。
 すぐ母に「連絡ついたよ」とメールしたら、「うれしい、よかった!」と大喜びであった。
 カーネーションやお菓子もいいけれど、気になっていた問題が解決することが、今の母には一番らしい。
 さて、次はどんな問題が待っていることやら。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セーヴル フランス宮廷の磁器に触れるGW

2025年05月04日 10時00分34秒 | エッセイ
 4月はよく働いた。
 職場を異動すると、一気に仕事量が増える。3月中に「これだけはやっておかないと」と帳簿を整え、PCの中も過不足ないよう整理して職場を出た。しかし、新しい職場では前任者がそう思ってくれなかったようで、「あれもこれもできていない!」とガッカリしながら作業に追われている。毎日20時頃に帰宅し、自宅と職場の往復ばかりで単調な毎日だった。
 新年度の疲れを感じる頃にGWがやってくる。今年はカレンダーの並びが不満だが、ひとまず昭和の日には「美しい磁器を見て美味しいご飯を食べる」目的で渋谷区立松濤美術館に行った。



 現在、開催中の展示は「焼き物大好き」な私が「絶対見逃せないッ!」と狙いをつけていた「セーヴル フランス宮廷の磁器」である。



 セーヴルとは、ブルボン王朝が設立した王立セーヴル磁器製作所のことで、西洋諸窯のなかで最高峰と称されているそうだ。王侯貴族向けの注文生産であったため、現存数が限られており、日本で紹介される機会が少なかったというから、貴重なコレクションが見られてうれしい。



 リーフレットでは、「華麗な色彩を使って、当時流行のファッションなどを取り入れた小花文や花綱文をはじめ、鳥や人物、風景などを極めて絵画的な筆致で描いた作品群は、日本人がイメージする西洋磁器そのもの」と説明されている。



 まさにその通りであり、華やかに光り輝く美しさに魅了されるばかりであった。
 特に面白いと思ったのが、「色絵花」である。



 焼き物なのに、花びらのやわらかなフワフワ感や、リアルな色味が存分に発揮されている。これは一見の価値があるに違いない。
 小一時間ですべての展示を見終えたら、次は美味しい食事タイムである。
 美術館の周辺にはバルなどが多く、ランチ営業をする店が限られている。その日は松濤MAR(マル)というお店を予約した。
 サラダには野菜がたっぷり。



 細めのパスタは私の好み。



 ポークのカリッと感がお見事。



 プリンは人気だそうで、早めに頼まないと!



 目の保養、胃に栄養、との言葉が浮かんでくる。心休まるひとときに感謝した。
 展示は6月8日までなのでお気をつけて。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本からパンダが消えたなら

2025年04月27日 21時29分08秒 | エッセイ
 先日、びっくりニュースが飛び込んできた。
 和歌山県白浜町の「アドベンチャーワールド」が、飼育する全4頭の雌のジャイアントパンダを、6月末ごろに中国に返還すると発表した、というやつだ。返還後、国内で飼育されるパンダは上野動物園(東京都台東区)の2頭のみとなるらしい。
「ええっ、パンダがいなくなるの?」
 上野のパンダだって、2026年が返還予定だというから、いつまで見られるかわからない。あの可愛らしい仕草の、ラブリーな子たちが消えてしまうなんてショックだ。
 しかし、私以上にパンダが好きな人はたくさんいる。その方々にとっては、生きがいを奪われてしまうほどの重大な悲報なのではないだろうか。
 一番に浮かんだのが、かつて交流のあったブロ友さんだ。数年前からブログよりもX(旧Twitter)に注力されており、すっかり疎遠になってしまった。彼女は何度もアドベンチャーワールドに足を運び、長い時間にわたってパンダたちの日常を見ていたようだから、大打撃を受けているのではと心配になった。
 私がアドベンチャーワールドに行くきっかけを作ってくれたのが彼女であった。ブログの桃浜や結浜を目にして、「こんなに間近で、ゆっくり見られるなんていいところだなぁ」と感じたからこそ、家族で和歌山まで出かけていった。自然体で食べたり遊んだりするパンダたちは、上野で見る子たちよりも活発でリラックスしているように見えた。もっとも、帰ってからブログをアップしたら、「どうして、そんな短時間でパンダを見終えたのですか」と、驚かれてしまったけれど。私は経験ゼロが「1」になることで満足するタイプだから、時間の長さはあまり関係ないのだ。その点をわかってもらえたか、あまり自信はない。翌年にはコロナ禍に見舞われ、旅行も外出もなくなって、世の中全体が変わってしまった。
 コロナ前に会えた彩浜。



 ちょこちょことよく動いて、お座りをしたときに見せた幼い足の裏が、とてつもなくキュートであった。
 上野動物園のパンダ舎。



 ここに誰もいなくなったら、動物園に来る楽しみが半減する。何とかして、最後のパンダをキープしてほしい。
 ブロ友さんは、きっと残された2カ月で、アドベンチャーワールドに行かれるだろう。
 パンダたちと最後のお別れをするために、感謝の気持ちを伝えるために、仕事の合間を縫って何が何でも。その熱意には頭が下がる。
 さて、私も時間を作って上野に行かなくては。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ソフトクリームで頭を冷やし考えよう

2025年04月20日 21時59分41秒 | エッセイ
 父の納骨のため、親族が集まることになった。
 場所は墓地のある都内なので、母が一人で大きな遺骨を持って那須から出てくることは難しい。
「じゃあ、うちが迎えに行こうか」
 妹が、いや正確には妹の旦那が車を出すのだが、進んで運転手を引き受けてくれるところがありがたい。
「でも、次の日は仕事だから、送るのは無理だよ」
 納骨は日曜だった。幸い、月曜であれば、11時の会議に間に合えば他に大きな仕事はない。
「じゃあ、アタシが送っていくよ」
 新幹線の切符を2枚確保し、私が母を那須まで送っていくことにした。そのまま一泊し、翌朝、職場に向かえば11時までには到着できる。
 姉は相続等の手続きをしてくれる。そして、最近は母の家の草むしりまで始めたというから驚きだ。三姉妹がそれぞれ得意分野を生かし、うまい具合に役割分担ができている。ナイスなチームワークであった。
「じゃあね、バイバーイ」
「またね。お母さんをよろしく」
 納骨を終え、新宿駅で姉夫婦と別れた。私と母は中央線で東京駅まで行き、そこから新幹線に乗ることになっていた。夕方の東京駅は人出がすさまじく、途中でコーヒーを買って車内で飲もうなどという希望は叶わなかった。どうにか弁当を買い、発車間際の新幹線に乗り込みホッとした。
「疲れたでしょ」
 隣の母に話しかけると、素直に「うん」と答える。以前であれば「大丈夫だよ」といった返事をしていた。でも、無理せず甘えてもらった方が安心する。列車が動き始めると、母も私もウトウトと居眠りを始めた。きっと父も遠くから見守っているだろう。
「ただいま~」
 誰もいなくても、母はドアを開けて挨拶する。時計を見ると19時になるところだ。お弁当を並べて夕飯にしなくては。私は食事係なのだ。
「ご飯だよ」
 駅弁といえども、みそ汁とおひたしを添えれば、それなりの食事になる。



 食後はコンビニで買ったシュークリームをデザートにした。姉と妹は食べることにさほど興味がないけれど、私と母は食い意地が張っているとの共通点がある。温かいコーヒーをいれて、甘いものをいただきながら、あれこれとおしゃべりをした。そういえば、母はお台場に行きたいと話していたことを思い出す。
「お台場はいつがいいの?」
「そうだね、夏はイヤだから涼しくなってからでいいかな」
「どこかに泊まる?」
「日帰りでいいよ。見たいところがあるだけだから」
「せっかくだから、ゆっくりすればいいのに」
「そうだねぇ」
 すっかり足腰も弱くなった。長い距離を歩くのは無理そうだ。コースを考えなくては。
 食事係は、翌朝の準備もしなくてはいけない。
「明日の朝食はフレンチトーストにするから、卵を2個もらうよ」
「いいよ、どんどん使って」
「今日のうちに卵液に漬け込んで、明日は焼くだけにするから」
「へえ、楽しみ」
 支度を終えても、まだ21時。化粧を落としたりシャワーを浴びたりして、ゆったりと過ごしていたときだった。母がボソッとつぶやいた。
「骨がなくなると淋しいよ」
「え」
「昨日まで骨があったから、そこにいると思ってたんだけど、もうなくなっちゃったから」
「…………」
 言われるまで、母の孤独に気づかなかったとはうかつだ。この広い家で、母は一人残された悲しみと向き合わなければならない。何とか時間のやりくりをして、月に一度は来なければと思った。
 翌朝、朝食を終えて、予定通り出勤する。ぐっすり眠って体力は回復したが、長距離の移動で、職場に着いたときには疲労感があった。その日は早めに仕事を切り上げ、自宅に戻ることにした。
 家に着いたときの安心感といったらない。荷物を片づけ、軽装になってパソコンの電源を入れた。母の家は電波が悪いので、ブログやSNSは一切やらなかったのだ。gooブログにアクセスしたら、仰天するお知らせが視界に飛び込んできた。



「うわ、なにこれ」
 あれからもう一週間たつが、落ち着いて考える暇もなく、引っ越し先も決まっていない。



 焦らず、ミニストップのソフトクリームを食べて頭を冷やそう。
 コメダのシロノワールも冷静になれていい。



 まだ時間はたっぷりあるけど、あーあ、どうしようかな。
 母の世話をしながら決めなくては。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヘルメットが売れると美容院が儲かる?

2025年04月13日 09時47分09秒 | エッセイ
 自転車通勤をするにあたり、ヘルメットを購入する。
「うーん、種類がいっぱいあって迷う……」
 一見帽子に見えるもの、スタンダートなもの、シンプルなものと、さまざまなデザインがあって、何を重視するかを決める必要がある。
「やっぱ、通気性と安全性と、つばかな」
 炎天下の夏は、風通しのよさが重要であろう。アミアミでいい感じのデザインを見つけ、レジに持っていったら店員さんに「かぶってみてください」と言われた。結構、面倒見のよい店であった。どうも、大き目にできている商品らしく、私の頭には合わないらしい。
「子ども用でどうですか? 機能はほぼ同じです」
 そんなもんかぁと思いつつ、かぶってみたらちょうどいい。アミアミ度がもの足りないけれど買うことにした。



 しかし、中は見せられない……。



 雨の日は、つばがあると便利なのだが、これがなかなか見つからない。
「あっ、生協のカタログに出てる! これも買おう」



 雨だけでなく、日よけにも効果的だ。蒸れるという欠点はあるが、こちらのほうが活躍している気がする。ちゃんと子ども用も使ってあげなくては。
「おはようございます」
 自転車置き場で職員に会うと、全員ヘルメットを着用していた。大人の意識は高い。
 でも、でも。
 生徒はそう思っていないようで、ほとんどがヘルメットなしで自転車に乗っていた。保護者が「かぶりなさい」と言わないとダメなのだろうな。少しずつ増やしていかないと。
 ヘルメットをかぶらない理由のひとつに「髪型が乱れる」というものがある。
 私だって乱れている。肩までの長さなので、内巻きに整えてきても、ヘルメットに押され肩にぶつかり、職場に着くころには漢字の「風」のように毛先が外を向いてしまう。しかも左右非対称。見た目は決してよくないけれど、安全第一で通勤することが優先だ。
「髪を切ろうかな」
 これから暑くなっていく。
 月末までにショートカットにして、「風」ヘアから卒業したいものだ。
 美容院の客が増えたりして~。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

桜にもらった元気

2025年04月06日 16時28分39秒 | エッセイ
 桜が満開だ。
 先週はやたらと忙しくて、花見できる時間に帰れなかった。週末になり、やっと景色を確認する余裕ができたところで、窓の外を眺めてみた。すると、淡い色のソメイヨシノが綿花のようにふわふわと枝を彩っているではないか。
「わあ、キレイ!」



 あいにく、土曜は皮膚科の予約を入れてしまった。桜はそのぐらいにして、身支度を整え出かける準備をする。唇が乾燥し、カサカサしていることが気になり、リップクリームをつけながら階段を下りていたら油断したのだろう。あと数段のところで運悪く段を踏み外し「ドドドドドッ」という騒音とともに1階まで滑り落ちた。
「うう、いててて」
 尻もちをついたので、腰を打ったことはわかるとして、なぜか右足の親指が痛む。あとから見たら、肌が紫に変色し、腫れ上がっていた。おそらく突き指のようになったのだろう。触らなければ傷まないから、一週間ほどは力が加わらないよう気をつけたい。
 皮膚科の治療はすぐに終わった。帰りは散歩がてら、線路沿いを歩くことにする。思えば、この3年間、急行電車を逃すまいと、駅まで走ることもあったっけ。朝は6時15分に家を出るため5時前に起き、せわしなく準備をして家を飛び出す毎日を送っていた。
 4月からは自転車になったため、自分の都合で家を出ればよい。足を動かさないと目的地に着かないから、本を読んだり居眠りしたりはできないが、狭い空間に閉じ込められることもなく快適だ。傷めた足に負担がかからぬよう、しばらく緩めの靴を履くことにする。
 職場が変わったことで、旧TwitterのXやインスタからも手を引いたのは淋しい。新しい職場の近くにスタバやカフェがないのも残念だ。パソコンの文書をOneDriveに入れ忘れ、根こそぎ消えてしまったり、仲良くなった職員と疎遠になったりしたのも悲しいけれど、そういうものだから仕方ない。
 石神井川に差し掛かったあたりで、薄桃色の花びらが視界に飛び込んできた。

 桜だ!





 この花には神秘的な力が備わっている。弱った心にエネルギーを注入し、前向きにさせてくれるし、気持ちの切り替えスイッチがONになり、新しい環境を積極的に受け入れる気分になれる。打撲には効かないが、今の職場に早く馴染めるよう頑張ろうとの思いがむくむくと湧いてきた。
 業務用のメールには「署名」をつけている。
 これまでは「■□」にしていたが、これからは桜を連想させる「✿❀」を使うことにしよう。



 東京の桜は、もうちょっと楽しめます!

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

4月から職場が変わります

2025年03月30日 13時44分10秒 | エッセイ
 いよいよ4月から新しい職場に異動する。
 先週は全校生徒の前での離任式にも臨んだ。8人が順に挨拶するから私は短めにしたのだが、後半の3人が「どうしてもたくさん話したい」と思っていたらしく、彼らは一人5分以上、これからの人生について語っていた。生徒は嫌な顔もせず、最後の長い挨拶に耳を傾けていて偉かった。教員の想いが届いただろうか。生徒会の役員から贈られた花束もうれしい。



 実は、離任式の3日前にアスファルトで転び、左頬を擦りむいた。傷跡を隠すため、マスクをして壇上に上がらざるを得なかったことが悔やまれる。ちょっとしたことでバランスを崩し、踏ん張れなくなったと気がついた。
 荷物も持ち帰らなくてはいけない。段ボールに入れて次の職場に送る人もいるが、私の私物は少ない方なので、ちょっとずつ手提げに入れて自宅へ戻す。
 お世話になりましたと、と個別にご挨拶をしてくださる方がいる。「こんなことがありましたね」「○○と言っていただいて気が楽になりました」などのエピソードを振り返り、「またどこかでご一緒しましょう」と頭を下げて行かれる。実にありがたい。しかも、プレゼントつきだったりすると恐縮するばかりだ。



 テディベアのポーチは可愛くて、見るたびに笑顔になる。



 お別れの場面に相応しい贈り物は、ハンカチなどの軽くて小さなものや、食べてしまえば残らないお菓子であろう。ここでいきなり、クッションといったかさばるものや、陶器などの重いものが登場すると、せっかく片づけた荷物が増え「えっ!」となる。その点は皆さん、しっかり心得ていらっしゃるようで、持ち帰りに困ることはなかった。私も見習おう。
 古い職場でハートウォーミングなお別れをしたあとは、新しい職場が待っている。家から10kmと距離的にはだいぶ近くなるので、電車やバスではなく自転車通勤を選んだ。30分以上かかるけれど、「間に合うか?」といったストレスがないため気が楽だ。
 新しい自転車とヘルメットを買い、自転車保険にも加入した。すでに2回、通勤の練習と称して勤務校まで行っている。1カ所、急な坂があったが、あとはほぼ平坦で危ない道もない。少々距離はあるけれど、トレーニングと割り切ってペダルをこげば、長い距離も苦にならない。LDLコレステロール値とHbA1Cが下がったりして~!
 雨が降ったらバスとなる。2系統を乗り継ぐので、1時間以上かかってしまうのが難だ。前日に天気予報を確認し、雨予報だったら早起きしよう決めた。
「さて、4月早々の天気はどうかな」
 スマホで予報を確認すると、悲しい結果が表示された。



「うっそ~、いきなり雨?」
 ……なんか、波乱含みの年度当初になりそうな予感。
 でも頑張ります!

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

便利な熊鈴

2025年03月23日 14時04分40秒 | エッセイ
 武蔵野三十三観音霊場で結願を迎えたのは昨年12月。
(関連ブログ「登ってスッキリ 子の権現から竹寺へ」はこちらから)
 このあたりは山道で熊出没注意のエリアなのだが、私は熊鈴を持っていない上、連れもなく単独行動をしていた。今まで山に入るときは、同行者が誰かしら鈴をつけていたから、それに便乗していたわけだ。一人で登ることになり、熊鈴の恩恵にあずかれない状況に気づいたのは前日の夜だったので「ないよりはマシ」と考えて、本来の使い道と異なる「富士山お守鈴」をつけて歩いた。



 お守りが効力を発揮してか、熊に食われることもなく生還することができてよかった。
 しかし、見かねた読者の方から、「危ないですよ」とのご助言とともに、最新の熊鈴をいただくことになり驚いている。



 これには小さな説明書がついていた。





 鈴を下に引くと音が出るようになり、もう一度引くと音が消えるというのだが、書いてある通りにならない。
「あれ、こうかな? 違うかな?」
 電車の中で触っていたら、何人もの乗客がいるのに「チリチリーン」という涼しい音が響き渡り、思わず体を小さくした。片手でできるって書いてあるのだが、うまくいかない。
 やっと、鈴のつけ根にスイッチがあることに気づいた。
 ここが出っ張っていると音が出る。



 鈴を引くとここが引っ込み、音が消える。



 強く振っても、中の振り子が固定されているから安心だ。熊の出ない場所では「リンリーン」と鳴らさない方がよかろう。
「すごいっ!」
 工夫のある構造に感心した。いいものをいただき感謝感激である。
 ……いや、別に、哀れさを演出してもらおうと企んだわけではない。こんなに便利な鈴があるとは知らなかった。人の善意がありがたいなぁ~。
 今は職場異動のドタバタで忙しい毎日を過ごしている。
 来月、父の納骨が済んだら、デビューさせたい。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

川越大師 喜多院のパワー

2025年03月16日 17時40分45秒 | エッセイ
 先月のこと。カルディでコーヒー豆を買った。



 酸味が少なく、苦味を前面に押し出しつつも、甘味があってまろやかなマンデリンフレンチが好きだ。ちょいと値は張るが、美味しいものへの支出をケチってはいけない。家用に豆を1袋、職場用に挽きを2袋購入した。
 袋詰めを待つ間、レジ脇のお知らせが目に入る。オリジナルコーヒー豆税込¥2,000以上お買い上げで「コーヒーグッズ ミニチュアフィギュア」プレゼント! と書いてあった。おやおや、何かもらえるのかしら……。



 フィギュアは5種類あるらしいが、私の好みはコーヒーポットかミル。見ているだけで「可愛いなぁ」と心がほぐれていった。袋詰めが終わり、店員さんがレジ前に戻って来て会計となる。
「お買い上げ2000円以上となりますので、こちらのミニチュアフィギュアをどうぞ」
 おおっ、やはりおまけがあるではないか。景品の小箱を受け取り、思わずニンマリした。
 家でゆっくり中身を確認すると、期待通りに、セラミックコーヒーミルが入っていた。



「わーい、やったぁ~!」



 短いリップクリームのようなサイズで、小さいのにフタやハンドルを分解することができる。なかなか精巧な作りとなっており面白い。



 いいものが当たってうれしいぞ~。
 先週は、グッドニュースがあった。4月から職場が異動となるのだが、希望通りの学校に配属されたと知らされた。前回の異動では期待を裏切られ、かなりガッカリしたので、2倍の笑みが漏れる。
「うわあ、ツイてる! ラッキー!!」
 何だか、運がいいと感じる出来事が続いている。なかなか見つからなかった臨時職員に、適材と思われる人材を発掘したり、揉めていた懸案事項が上手い具合に片づいたりして、気になっていた宿題を終えることができた。父死去という悲しいこともあったが、家族旅行が終わり、年度末の繁忙期を迎える谷間の時期だったため、業務上の支障もなく、ゆっくり葬儀に臨めた点はありがたかった。
「これはもしや……」
 お財布から、川越・喜多院のおみくじを引っ張り出してみる。



 今年はこちらに初詣で伺い、「大吉」のおみくじを引くことができた。願いが叶う、立身出世のときが来る、行く先々で善いことに巡り会える等が書かれており、あまりに素晴らしかったのでお守り代わりにしているのだ。



「当たってる……」
 今のところはいい感じかも。
 今後はさらに期待してしまいそうだ。
「ほお、天の恵みにより、さまざまな財宝が手に入るでしょう、とも書いてあるよ」
 もしやもしや。
 来年も再来年も、初詣は喜多院にしちゃおうかな。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三姉妹 父を見送る

2025年03月09日 22時14分15秒 | エッセイ
 父が死んだ。
 介護認定を受ける手続きをせねばと思っていた矢先の出来事で、しばし呆然とした。2月に遊びに行ったときは用意したおでんを完食し、一緒に坊主めくりをして遊んだくらい元気だった。しかし、弱っていた心臓が持たなかったと聞いている。もうじき桜を見られるものと決めつけていたので、見通しの甘さを痛感した。
 妹夫婦が母に付き添い、葬儀等を仕切ってくれて助かった。私も仕事の区切りをつけ、那須の母の下へと駆け付ける。当然ながら家に父の姿はないが、あとから姉も合流し、三姉妹が顔を合わせた。
「葬儀屋に行くと、お父さんが見られるよ。これからどう?」
 勝手知ったる妹が気を利かせ、義弟が隣駅の遺体安置所まで車に載せてくれた。火葬までの間に、ゆっくりと最期の別れができる点はありがたい。父は安らかに眠っていたが、頬から鼻の下にかけて緩いカーブの窪みができていた。これは酸素のチューブを鼻に固定していたからだ。何年も我慢していたことを考えると、「スッキリしてよかったね」と声を掛けたくなる。
 髪や顔に触れて、在りし日の父を想う。死に目には会えなかったけれど、生きているうちに話をしたり、一緒に過ごしたりできたから悔いはない。迷わず成仏してほしい。
 葬儀を終え、父は骨になった。火葬場で係の方から「これは○○の骨です」といった説明を受ける。プラス、腕を骨折した後に入れた金具や、インプラントなども出てきて、「持ち帰りますか」と尋ねられた。父の一部なので受け取ることにした。
「飛行機雲だ」
 火葬場から葬儀会場に戻る途中で、娘が空の写真を撮った。



 雲一つない青い空。
 父を送る日が晴天でありがたい。
 このあと、姉夫婦と妹一家が母の家に集まり、休憩してから帰宅することにした。私は帰らず数日泊まり込み、食事の支度をしながら母と一緒に過ごす。気を張っていたせいか、みんな疲れていた。喪服を脱いでお茶を飲むと、誰も彼もがソファーでウトウトし始めた。休憩時間が長引くと、帰宅時間が遅れるが、急かすわけにもいかない。どうしようかな、と考えて冷蔵庫を見ると、それなりに食材があるではないか。ならば8人分の夕食を作ればいいんだ、と閃いた。
「軽い食事だったら用意できるから、夕飯を食べて行ったら?」
「そう? じゃあごちそうになろうかな」
 姉も妹も同意したので、手伝いを頼む。
「姉さんは小松菜の胡麻和えを作って」
「はいよ」
「奈津は、茶碗とお椀、箸のセッティング」
「オーケー」
「他のおかずは、エノキあんかけの豆腐と、キャベツとベーコンの炒め物ぐらいだけど、ご飯と味噌汁がつけばお腹が落ち着くと思う」
 三姉妹で役割分担し、まるで合宿だ。
「セッティングできたよぉ」
「胡麻和え完成! 味見して」
「いいんじゃない」
「味噌汁が濃いよ」
「お湯、お湯」
 母は笑って私たちを見ている。きっと、父もどこかから見守っているに違いない。
 準備が整ったところで、声を合わせて食事を始めた。
「いただきまーす」

 葬儀はポカポカ陽気だったが、翌日からは冷え込み、ご丁寧にも雪が降ってきた。



 那須の冬は寒い。母を一人残すことに不安はあるが、本人が「ここで暮らす」と決めたので、応援しなくては。三姉妹で代わるがわるメールをしたり、電話を掛けたりして、孤独にさせないつもりだ。
 私はときどき食材持参で泊まりに来て、母の好きな料理を振る舞いたい。
 三姉妹、それぞれの特技を生かして、母を支えます。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天橋立冬景色

2025年03月02日 09時00分40秒 | エッセイ
 以前から、天橋立に行ってみたくてチャンスをうかがっていたのだが、天皇誕生日のおかげで3連休になる2月を狙ってみた。『日本の絶景、癒しの旅100』という本に、2月の天橋立が載っていたので、影響されたことは間違いない。
 東京からだと、新幹線で京都まで出て、そこから特急はしだて号に乗り換える。しかし、この日は雪のため、新幹線が5分ばかり遅れて、乗り換えに肝を冷やした。あとからわかったことだが、「新幹線からのお客様がいらっしゃいますので、出発時刻を3分遅らせます」というアナウンスが入り、あわてなくてもいいらしい。
 だが、特急が大雪によるポイント故障とやらで、福地山止まりになってしまった。ここでも車内放送による迂回ルートの案内があり、普通列車を乗り継いで、どうにか天橋立駅まで到着することができた。ふぅ。
 1泊2日の短い旅行である。初日は到着が18時近くになり、夕食と温泉ぐらいしか楽しめなかった。
カニとご当地ビールがうれしい。



 夜間も雪が降り続き、翌朝、カーテンを開けたらこんな感じになっていた。



 ひいぃぃ~!

 せっかくテラス付きの部屋にしたというのに、ほとんど意味がなかった。残念無念。
 すっかりだらけて「チェックアウトまで部屋にいよう」となったのだが、朝食を終えた頃には雪がやみ、日が差してきた。こうなるとテンションが上がる。歩いてすぐの、天橋立ビューランドを目指し、リフト乗り場に向かった。
 展望台に上がり、景色を眺めるや否や、「ああっ」という感嘆の声が自然に出てくる。



 なんと素晴らしい!
 伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が寝ている間に倒れてしまったという、天への梯(はし)が海の間に横たわり、粉砂糖をかけたようにところどころが白くなっていた。梯のカーブが何とも芸術的で「うーん」と唸らされる。
 水面への映り込みもクリアで、キラキラと輝きを放つところなどは神話の世界さながらであった。人が住んでいない景色を見せてもらっているかのようで、その場からはなれられない。



 しかし、夫が私を現実に引き戻した。
「大変だ、チケットをなくしちゃった」
「…………」
 リフトに乗るまではあったそうだが、下りて景色を見ていたら、入れたはずのバッグのポケットから消えていたのだとか。神話の一部になりかけていたのにガッカリした。
 梯を渡った先にある傘松公園展望台のチケットも含まれていたのだが、係員の配慮で、3人揃って行動するのであれば、帰りのリフトと傘松公園の入場もオーケーにしてもらえた。親切でありがたい。
 カフェに向かい、ちょっと休憩。



 このプリンは味が濃い目でイケる。コーヒーもしっかりした味で美味しかった。
 リフトを下りたら、梯の松並木を歩いて対岸に向かう。



 上から見たら、歩行者が確認できなかったけれど、実際には松で隠れていたのだろう。
 神社もあって見どころは多い。



 対岸に着くと、まずはランチをいただいた。



 日本海側の海の幸は立派で味もいい。
 これは京都のクラフトビールだろうか。飲みやすくて丼にマッチしていた。



 食後はケーブルカーで笠松公園展望台に行く。
 ここからは逆から見た天橋立を堪能することができる。天橋立から見た景色を「飛龍観」、笠松公園から見た景色を「昇龍観」と区別しているらしい。



 景色を堪能したあとは船で天橋立駅に向かった。
 雪化粧をした天橋立がLINEニュースにも掲載されており、「やっぱ、冬がオススメなのかしら」とも思ったが、かなり冷え込むことと、列車のトラブルを考えると、もっと暖かい時期がよさそうだ。
 次があるなら、GWを狙いたい。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『アプレンティス』がオススメ!

2025年02月23日 23時26分04秒 | エッセイ
 ブロ友さんの記事に刺激され、映画『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』を見てきた。



 一番便利な劇場は新宿三丁目にあるキノシネマ。総合生活企業である木下グループの映画館と知ったのは入ってからだ。ドリンクバーやビールもあると聞き、生唾ゴックンになったけれど、歯の治療をした直後で麻酔が効いていたため断念した。今度は万全の体調で臨みたい。
 18時からの回であっても観客数はまずまず。就任直後から大統領令を頻発している、かの人物に興味関心を抱く者が多いのだろう。私もだけど。



 若かりし頃のドナルドは、決して「関税、関税」と強硬突破を図るタイプではなかった。しかし、悪どくてやり手の弁護士、ロイ・コーンと出会い、「勝つための3つのルール」を真似するようになってからは、大きく変貌を遂げていく。
 それは、誠実の真逆を突っ走るルールだった。
 1には、「攻撃、攻撃、攻撃」
 2には、「非を絶対に認めるな」
 3には、「勝利を主張し続けろ」となっている。
 自信たっぷりに見えても、その実、劣勢であることを悟られまいとして、「しまった」「まずい」を表情や態度に出さないようにしつつ、相手の弱点を攻めていく。やがて味方が現れ窮地を脱していくのだから、勝利の方程式は「限りない強気」ともいえる。結果がすべてであれば、倫理観など無用の長物に違いない。
 なるほど。
 ロイだけでなく、ドナルドの父にも問題があると感じた。傾いた家業に苛立ち、一家が揃った食卓で不平不満をわめいて家族団らんの場の空気を悪くする。兄のフレッドがパイロットになったことに失望し、「一家の恥」「バスの運転手と同じ」などと口汚く罵る場面には、「なぜそこまで言うのか」と胸がムカムカしてきた。兄・フレッドが別の家庭に生まれていれば、もっと幸福な人生が待っていたかもしれない。
 ドナルドは、兄を邪険に扱ったことに後悔の念があった描かれ方をしていた。ベッドに横たわっても寝付けず、苦悩の表情を浮かべるシーンでは、必ずしも「完全にアンチ」な姿勢で作られた映画ではないとの印象を受けた。その後、どんどん変わっていくのだけれど。
 唯一「エライ」と感じた場面は、ドナルドが酒を勧められたときに「感覚を鈍らせるものは飲まない」と拒否するところだ。故安倍氏も「トランプ氏は酒を飲まない」と回顧録に書いていた。私は仕事を持ち帰っていても、スパークリングを飲んで昼寝し、「いかん」と焦ることを繰り返しているので、この点は見習わなければならないかも……。
 『アプレンティス』の上映時間は123分だが、トランプタワーの華やかさや、ドナルドのタフな行動、ロイの病気などが目まぐるしく移り変わり、気づいたらエンドロールが流れていた。「え、もう?」という感覚で、1時間ほどしか経っていない印象を受けた。観客を退屈させず、スクリーンに引き込む力は相当なものだったと感心する。
 キノシネマでは、今週も上映が続くようだ。
 ご興味があればぜひ。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2025 手負いのバレンタイン

2025年02月16日 15時30分18秒 | エッセイ
 2月になるのを待っていたかのように、月が替わるや否や、歯茎が腫れて炎症を起こした。
「いててて、またか」
 痛むのは左の下、一番奥の歯を支えている歯茎であった。日記を見ると、2023年の10月にも同じところが化膿してしまい、歯医者に駆け込んだと書いてある。
 普段は何ともないのだが、疲れがたまっていたり、睡眠不足が重なっていたりするとプクッと膨れ始め、ズキズキ、ズキズキと鼓動を打ち始める。加えて、この日は節分の恵方巻をほおばったことにより、腫れがひどくなったようだった。
 迷わず休みを取り、歯医者で治療を受けた。すぐに治ると思って「前祝いだ!」と甘いものをいただいたのだが、なかなかよくならない。



 抗生剤が切れる前に、もう一度医師に診てもらったら、嚙み合わせの悪さを指摘された。
「この歯は、ちょっと高いですね。かぶせた銀を削りましょう」
 たしか、数年前に銀を詰めなおしたとき、「もう少し低い方がいいかも」と迷いつつ、さらに削られるのがイヤで申し出なかったことを思い出した。安易な妥協がのちの腫れにつながったのであろう。この日に削ってもらったら、ビックリするくらい痛みが引いたので、嚙み合わせは大事だということが、よお~く理解できた。
 おかげでズキズキ痛はなくなったけれど、硬いものを噛むと、未だに歯茎に響く。完治するにはもうちょっと時間がかかりそうだ。
 しかし、私の歯の状態に関わらず、バレンタインデーはやってくる。
「はいどうぞ」
「ありがとう」
 今年も友チョコをあげたりもらったりで楽しんだ。さすがに、こげ茶色に固まったチョコレートを噛むと、奥歯のズキーンがぶり返すので、気をつけなければならない。
 家に帰ると、夫にもチョコレートを渡さないといけない。こちらは私の口の状態を反映し、やわらかいチョコバウムにした。



 ロイズでバウムクーヘンを買ったのは初めてのことで、「果たして美味しいのか?」と思わなくもない。義理チョコとしてフルーツバーを10個買ったついでに、バウムクーヘンも頼んだだけだった。ひいきにしているホレンディッシェ・カカオシュトゥーベか、治一郎の方がよかったかもしれないとの後悔が脳裏をチラッとよぎった。
 夫にあげておきながら、自分で切り分けるのもなんだな……。
 冷静に考えればおかしな話だが、毎年のことなので「まあいいか」と苦笑してナイフを取り出した。



 3等分に切り、チョコで囲まれた円の一部を取り皿に載せる。
「いただきまーす」
 カステラはちょっと硬め。糖分は控えめだが、周囲のチョコレートが加わり適度な甘さとなっている。日持ちする割にはパサパサしておらず、しっとり感がうれしかった。
「美味しいじゃん」
 思った通り歯茎は痛くない。正直言って、味は期待していなかった。満点を100としたとき、予想は50だったのに、食べたら85ぐらいまで急上昇している。ロイズはバウムクーヘンもイケるとわかり、収穫だった。
 職場でチョコを配り終え、残りのフルーツバーに手を伸ばす。



 中に入っているクランベリー、ストロベリー、マンゴーといったドライフルーツに、サクサクのパフを組み合わせ、桃色に染まったホワイトチョコで包み込んだミルキーな一本。これがたまらない。勢いよくカリッとかじりたかったのに、傷めた歯茎が許してくれなかった。
「うう、いたた……」
 まだ早かったか。
 いくらなんでも、ホワイトデーまでには治るだろう。
 別のバウムクーヘンにしてもらおうかな。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お世話になります、任天堂さん

2025年02月09日 17時57分14秒 | エッセイ
 先月、那須に住む両親の顔を見てきたが、父の老化が急激に進み心配している。その後、様子はどうかと母にメールしたら、芳しくない返事が返ってきた。
「お昼はたまに食べるぐらいで、ほとんど食べなくなってきたよ」
 えっ!
「尿漏れしても大丈夫なパンツを買ったけど、トイレで排便に失敗することもあるの」
 ひっ。
 いよいよ本格的な介護に突入するのだろうか。母一人では困るだろうと思い、昨日も那須を目指して家を出た。
 大雪の影響で、北に向かう新幹線はことごとく遅れていたが、動いているだけでもマシだ。30分遅れで那須塩原駅に到着した。



 ここからタクシーで20分ほど走れば両親の家に着く。車を下りたところで母が玄関から出迎えてくれた。中に入ると、父も近寄って来て声を掛けてくる。
「こんにちは」
 一応、身内であることは理解しているようで、表情がやわらかい。でも、離れたところからこちらをジッと凝視している様子を見ると、「誰だっけ?」と頭のアルバムをめくっている気がする。警戒されない点では安心なのだが。
 手土産はバウムクーヘン。桃のゼリーも調達したので、母に手渡した。時計はもうすぐ午前11時を差す。そろそろお昼の支度をしなくては。母にはあらかじめ、おでんとおにぎりを持っていくと伝えてあった。
「お母さん、おでんを温める鍋を借りたいんだけど、どこにあったっけ?」
「ここの下に入っているよ」
「あ、これか」
「アタシはシチューを作ったからね」
「え」
 聞いた瞬間、力が抜けた。
 母はいつもピントがずれている。おでんにおにぎり、味噌汁、焼きナス、デザートにラ・フランスという具合いに、こちらはトータルでメニューを考え持参するのに、シチューなんぞを作っていたとは。自分も何かしないといけないと思ったようだが、組み合わせとしておかしいという視点がないのだ。そういえば、数年前のクリスマス会のときにも、チキンやローストビーフが並ぶ食卓に、野菜の煮しめを持ち寄っていたっけ……。
「お母さん、今日はゆっくりしてもらいたくて来たんだから、何も準備しないでって言ったじゃない」
「うん」
「お父さんの世話で毎日忙しいでしょ。私が来たことでやることが増えるのなら、もう来られなくなるよ」
「わかった」
 本当に理解したかどうかはともかくとして、このシチューを無視するわけにいかない。味噌汁を引っ込めて食卓に並べた。



「ごはんだよ」
 果たして父が食べるかな? と半信半疑だったが、意外と素直にやってきた。料理に目を走らせ、ボソッとつぶやく。
「おにぎりだ」
 しかし、最初に箸をつけたのは焼きナスであった。母が父に料理の説明をして、あれこれと話しかける。
「このはんぺん、丸いよ。食べてごらん」
「本当だ。丸いな」
 父ははんぺんを4つに割り、パクリと口に入れた。ゴボウ巻きの話になると「ゴボウは美味いじゃないか」とも言い、以前のように会話ができている。さつまあげ、ちくわも平らげて、「ほとんど食べない人」ではなかった。総入れ歯の父にとって、やわらかくて飲み込みやすい練り物は最適なのかもしれない。おでんを6割ほど食べたところで、アルミホイルに包まれたおにぎりに手を伸ばした。この日は食欲があるようだった。
 父ばかりを観察していないで、私も食べなくては。母の作ったシチューをすくって口にすると、ブロッコリーが固かった。水の分量を間違えたのか、クリーム煮のようになっている。母もまた、年をとって調理の勘が鈍ってきたのだろう。お世辞にも美味しいとはいえない料理が食卓に並び、父が拒否して食べない図式が浮かんできた。作りもしないのに、イヤイヤするとは困ったものだ。
 私がラ・フランスを食べ始めたら、父もつられたように自分のフルーツを口に入れた。
「ダメダメ、果物は全部食べ終わってからだよ」
 母に叱られ、父は「しまった」という表情になった。二人の会話はさらに続く。
「このフルーツ、なんだかわかる?」
「リンゴだろうよ」
「違うよ、洋梨だよ」
「洋梨か」
 両親のやり取りを見ていると、先月よりも元気になったようだ。
「誰かが来ると、お父さんの機嫌がいいの。やっぱり刺激だねぇ」
 その日は、これが最後になるかもしれないと覚悟して来たのだが、笑う父を見て緊張が解けた。
 食後は恒例の坊主めくりである。またかという気もするが、他にネタがないのだ。先月、父は仲間に入らなかったが、この日は一緒に札をめくった。
「坊主だぁ」



「あっはっは」
「姫、来いっ」



「来たぁ~」
「取られたぁ」
 和やかに遊んだあとは片づけをする。箱に入っていた解説書に目をやると、「任天堂」の3文字が見えた。



 札の箱にもあった。



「えっ、任天堂が百人一首を?」
 このかるたは、母が購入したという。昭和40年代のことだから、だいぶ年季が入っているが、その頃から任天堂は活動していたわけだ。居間の端には父が何十年も前に夢中になってプレイしたスーパーファミコンもあった。



「任天堂ってゲームだけじゃないんだね」
 あらためて、母も驚いていた。
 調べてみたら、任天堂はトランプや花札、将棋に囲碁なども製造しているらしい。
 そこで閃いた。この次は、父や母と「回り将棋」をしようかと。
 すっかり老いてしまったけれど、刺激を与えて、少しでも若さを取り戻してほしい。
 任天堂さん、お世話になります。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

八王子城跡・居館地区で北条氏をしのぶ

2025年02月02日 16時04分56秒 | エッセイ
 高尾で墓参りをするたびに「八王子城跡」の文字が気になっていた。
 私は城や遺跡が好きだ。ホームページをチラ見すると、興味をそそられる写真がいくつも載っている。暑くならないうちにと、思い切って行ってみた。
 午前7時20分、JR高尾駅着。いつも11時台だったので、こんなに早く来たことはない。思いの外、リュックを背負ったハイカーたちでにぎわっており、見慣れた光景と違っていた。もっと遅くてもよかったのだが、早朝の目当ては別のところにあった。駅北口に隣接するカフェ・一言堂のモーニングを食べたかったのだ。
「うう、和食かぁ……」
 決して白飯が嫌いなわけではないけれど、この日のモーニングは和定食のようで哀しかった。ご飯は昼か夜がいい。なぜか朝はパン食に憧れる。
 和食をスルーしても、腹ペコで困る心配はない。便利なことに、このお店ではパンも売っているので、コロッケパンとおはぎを持ってレジに向かう。温かい深煎りコーヒーと一緒にいただき、まあまあの朝食になった。コロッケパンは日が変わってから焼いたものらしく、ほのかに温かかった。



 土日は城跡まで直行のバスで10分。歩いても40分ほどで着くというアクセスのよさが嬉しい。



 管理棟で地図をもらい開いてみたら、予想以上の広さにビビった。しかも、曲輪(くるわ)や土塁(どるい)などの専門用語が並んでおり、無知ゆえに心細い。看板を見ると、9時からボランティアの方によるガイドもしてもらえるらしい。だったら、用語の解説や見どころを教えていただき、効率よく回るのがよさそうだ。
「こんにちは。私がご案内いたします」
 元気な女性の方のご挨拶を受け、城跡ツアーの始まり、始まり~!
 八王子城跡は、城下町にあたる根小屋地区、戦闘時に要塞となる要害地区、城主・北条氏照の館があり生活の中心になっていた居住地区の3つに分かれている。ガイドの対象となるエリアは、「御主殿跡」を中心とした居館地区となるらしい。
 本丸跡を含む要害地区に後ろ髪を引かれたが、予想以上に厳しい地のようだ。
「標高460mですから、それなりの装備で登らないと危ないですよ」
「じゃあ、次は登山スタイルにします」
 ただのウォーキングシューズを履き、通勤時と同じ服装で来てしまった私は、ガイドさんの言葉にすごすごと引き下がった。くすん。
 あとからわかったことだが、普段着でも行かれる居住地区の方が見どころは多いようだ。専門用語の説明もしていただき、次々と謎が解けた。
「土塁(どるい)」
 敵の侵入を防ぐために、土を盛り固めて曲輪(くるわ)の周囲を囲んだもの



 写真右側の盛り土がそれである。

「曲輪」
 土塁などで囲んだ平らな場所



 敵が土塁を乗り越えて侵入した際、槍などを構えて迎え撃つ場になるのであろう。
 古道を歩いていると、ガイドさんが「あの上に本丸がありますよ」と指を差す。



 山のてっぺんが要害地区になるようだ。たしかに、舐めた服装で向かったら、しっぺ返しを食らいそうに見えた。管理棟から40分ほどとはいえ、急こう配でハードなのだとか。自分の体力と運動神経をわきまえ、「やめておいてよかった」と心の中でつぶやいた。
 別の用語も覚えた。
「曳橋(ひきはし)」
 非常時には壊すなどして敵が渡れないようにする橋



 当時は取り外しのできる構造になっていたらしい。この橋を渡れば、御主殿跡まであとちょっとだ。



 御主殿の手前に立派な石垣があった。



 石垣や石畳は、なるべく当時のものをそのまま利用したという。
 大小の石を組み合わせ、横長になるよう重ねた石垣は、かなりの迫力であった。



 水はけもよく、ち密に計算されているようだ。
 入口には、最後の砦となる仕掛けが残されていた。
「虎口(こぐち)」
 曲輪の出入り口。直進できないようにするなどして、侵入しづらい工夫がされている



 カクカクと曲がりくねり、段差をつけるだけでなく、敵を迎え撃つのに有利なように、奥の方が太くなっているのだとか。説明をしながら、ガイドさんがリュックから小道具を取り出し、手のひらに載せて見せてくれた。



「これは、まきびしと土玉です。ここからいくつも見つかっています。軟らかい土の上だと沈んで効果が発揮されませんが、石の上ならわらじを通過して敵にダメージを与えたり、滑って思うように進ませなかったりすることができました」
「へええ~」
 矢が飛び交い、鉄砲を撃ち、刀を振り回して敵を斬る。一つしかない命を賭けて、攻める方も守る方も必死の形相で戦った様子がしのばれた。
 虎口を抜け、冠木門(かぶらぎもん)をくぐると、御主殿跡に到着する。



 八王子城は1582年に築城を開始し、1587年頃までに拠点として活用されるようになったそうだが、1590年6月23日に前田利家・上杉景勝軍に責められ、わずか一日で落城したという。幾重にも防御線を築いたというのに、相手が強過ぎたのだろうか。一族郎党を根絶やしにされ、本当に気の毒なことだ。
 御主殿は城主である氏照の館であった。短い期間とはいえ、広々として居心地のよいこの場所で、何を思い過ごしたのだろうか。



 八王子城跡は日本100名城にも選ばれている。小田原北条氏の拠点と戦のセオリーがわかる、素晴らしい史跡であった。
 今回は一部分しか見られなかったので、残りは宿題として、年内には再訪したい。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする