これは したり ~笹木 砂希~

面白いこと、妙なこと、不思議なことは、み~んな私に近寄ってきます。

教員になろう

2014年03月30日 12時12分14秒 | エッセイ
 たまたま、卒業生のアヤカに連絡する用件があった。アヤカは2年前に教育実習しに来たが、本気で教員を目指している風でもなかったので、どうしているかと心配していた。
「今、バイトです。ちょうど繁忙期で休めません」
「…………」
 わざわざ奨学金を受けて大学に行ったのに、アルバイトとは。
 クラスの成績は、不動の1番だったので、かなりもったいない。

 初対面の人に、自分が教員であることを教えると、「俺もなりたかったな」と羨ましがる人がいる一方で、「大変ね」と同情する人もいる。教員とは、毎日のようにモンスターペアレントに悩まされ、反抗する子供たちに手を焼く仕事というイメージらしい。
 しかし、それは間違いだ。
 いわゆる、モンペと呼ばれる親たちはほんのひとにぎりで、ほとんどの家庭は学校に協力的だし、むしろ「厳しくしてほしい」と頼んでくる。家では、厳しくできないことの裏返しかもしれない。学校にもよるけれど、子供たちも、「勉強ができるようになりたい」「部活を頑張りたい」から、「人の役に立ちたい」「成長したい」などの目標を持っているので、普通にコミュニケーションをとっていれば、ちゃんと言うことを聞いてくれるものだ。
 もっとも、「子供と遊んでお金がもらえるなんていいね」と言われると、カチンとくるが……。
 私が、教員になってよかったと感じる最大の理由は、「子供の元気をもらえる」というところである。
 先日、球技大会があった。男子はバスケットボールにドッジボール、女子はバスケットボール、バレーボール、ドッジボールをやった。10代のパワーはすさまじく、大声をあげて5分や10分走り回っても、疲れるどころか楽しそうだ。敵とはぶつかり合い、味方とは力を合わせてボールをキープし、若さならではの躍動感が伝わってくる。これが40代、50代だったら、2分で息切れを起こし、捻挫や肉離れなどのケガ人続出となるに違いない。
 ボールが床に叩きつけられる音、飛び散る汗、応援のざわめき、ホイッスル、一斉に起きる拍手……。
 普通の会社勤めでは、まず見られない光景だ。教員には、見た目の若い人が多い。生徒が発散するエネルギーを吸収し、日々、若さをチャージできるのかもしれない。
 ちなみに、私のクラスでは、男子チームがドッジボールで上級生を破り、優勝した。



「イエーイ!!」
 パチリ。
 カップと賞状の前に並び、全員で記念撮影をした。 
 こんなことができるのも、教員ならではの特権である。

 そんなことを思い出しながら、アヤカとの話を続けた。
「バイトってことは、就職活動が上手くいかなかったの?」
「いえ、就活はしませんでした。教育実習のあと、本当に教員になりたいと思ったので、採用試験一本に絞って勉強したんです。不合格でしたが、また今年も受けます。バイトしながら勉強しています」
 胸が高鳴った。アヤカは、教育実習で教員の醍醐味を多少なりとも感じ取り、実現しようとしている。私が応援しなくてどうする。
「いいねえ! じゃあ、産休代替や講師の口があったら、紹介してもらえるように頼んでおくよ」
「はい! お願いします」
 
 この頃は、将来、何がしたいのかわからない若者が増えているとか。
 教員を、おすすめしますよ。


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ここ掘れワンワン

2014年03月27日 20時47分07秒 | エッセイ
 タイトルを見たとき、後頭部にバスケットボールが命中したような衝撃を受け、この本が読みたくなった。
『長生きしたけりゃ ふくらはぎをもみなさい』(株式会社アスコム)



 目下の私の悩みは、むくみと冷えである。特に最近は、指輪が入らないくらい水がたまっているし、足元がスースーするからレッグウォーマーが欠かせない。スカートもはけず、本当に不自由だ。
 しかし、ふくらはぎを揉みほぐすことによって心臓に戻る血流が刺激され、むくみや冷え症の改善、老廃物の排出などに効果があるのだという。私のふくらはぎには、ほとんど筋肉がない。細くていいねと言われることがあっても、ポンプとしては失格だろう。「身心健康堂」の院長である槙孝子氏の著書なので、だまされたと思い買ってみた。
 マッサージのやり方は難しくない。くるぶしから膝に向かって、両手の親指を重ね、腹式呼吸をしながら揉んでいく。しかし、最初はコツがつかめず、手ごたえのないまま時間ばかりが過ぎていった。
 2回目、3回目になると慣れてくる。お腹をへこませて息を吐きながら、指に力を入れる。お腹をふくらませて息を吸うときに、指を放す。繰り返しているうちに、刺激するポイントが見えてきた。

 ここ、ここ。

 花咲じいさんの飼い犬・シロのように、大判小判の眠る場所に指が移動する。グリグリッと押して力を入れると、コリがほぐれる手ごたえを感じ、大変心地よい。

 ここ掘れワンワン、ここ掘れワンワン。

 次の場所もわかっている。2センチほど上のところだ。ほどよい力を加えて、上下左右に円を描くようにして、広範囲に揉みほぐせと指示が飛び、指が勝手に動いていく。
 指圧は、私に向いているようだ。
 考えるまでもなく、手が別の生き物のように自分の意思で動き、大判小判を掘り当てる。子どものときは、よく母の肩を揉んであげたものだが、そのときから、どこを押せばよいかわかっていた。誰かに教わったわけでもなく、完全な自己流なのに、母は肩が軽くなって気持ちがよいと喜んでくれた。ひょっとすると、前世は指圧師だったのかもしれない。
 まだ、ふくらはぎマッサージを始めて一週間も経っていないけれども、尿量が増え、指輪が入るようになった。こむらがえりも起きなくなり、スカートが履ける日も近そうだ。美容、アンチエイジング、ダイエットにも効果を発揮するらしい。
 指先にいるシロが、また「ここ、ここ」と教えてくれるだろう。
 調子にのって、退職後は指圧で生活しようかと企んでいる。


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いいことあったよ(2)

2014年03月23日 17時40分20秒 | エッセイ
 今日から、さかのぼってみること9日、3月14日はホワイトデーだった。
 朝、出勤すると、机にプレゼントの山ができている。何人かの職場の男性陣から、バレンタインデーのお返しが届いていたのだ。
「いつもお世話になっています」
 中でもうれしかったのが、事務室の男性がつけてくれたメッセージカード。女性は、こういうひと言に弱いので、意中の相手がいたらぜひ試してもらいたい。
「さきほどは、ありがとうございました」
 なるべく早く、プレゼントをくれた男性、一人ひとりにお礼を言って回る。今年は、バレンタインのチョコを渡した相手が多かったので、お返しもたくさんあった。いくつかは、おやつ用にとデスクに入れ、残りは家に持ち帰った。
「ただいまぁ」
「おかえり」
「おみやげ持ってきたよ」



「おお~」
 中には、フォークが突き刺さったマフィンもある。



 きっと、ユニークな商品が好きな人なのだろう。「こんなもの、あるんだね」と笑った。
 ところで、夫からのお返しが出てくる気配はない。定年退職を機に、引きこもりに近い状態となっているから、買いに行くのが面倒なのかもしれない。
 おそらく、そんなことだろうと予想していたが……
「ここに置いておくから、食べていいよ」
「うん」
 夫は何も用意していないのに、声をかけると他の男性がくれた、クッキーやらチョコレートやらに手を伸ばす。
 バリバリと食べる様子を見て、ガッカリした。若いときは、私を喜ばせようとして、あれこれ企画してくれる人だったのに。歳を取り、彼はすっかり変わってしまった。
 そんなこんなで、夫に何かを期待するのは間違いだと思い込んでいた。
 昨日は、夫が珍しく出かけ、大きな紙袋を持って帰ってきた。
「ママ、これ、おみやげ」
「え?」
 袋には、ゴディバと書いてある。まさかまさか。
 中には、カラフルな箱が2つ入っていた。



 小さな箱はチョコレート。



 大きい箱には「ビスケット」と書いてあるが、フィルムがなかなかはがれない。



「くううう~!」
 娘と2人がかりで、どうにか開けられた。粘着力が強すぎるようだ。



 ビスケットとチョコレートの相性が実に素晴らしい。ビターで香ばしいチョコレートと、サクサクして歯ごたえのあるビスケットが組み合わされると、ついつい止まらなくなる。
「おいしいよ♪」
「うん」
 ほめられ、夫もまんざらではないようだ。
 プレゼントそのものよりも、自分を気にかけてくれたことがうれしい。スルーされるのは淋しいのだ。

 ここで一句。
 お返しは 忘れたころに やってくる


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いいことあったよ(1)

2014年03月20日 20時50分22秒 | エッセイ
 今週はツイている。
 特に仕事運がいい。不安だったことが一つずつ解消され、少しずつゴールに近づく実感がある。
 とりわけ、うれしかったのは、担任しているクラスの生徒が、全員2年生に進級できるとわかったことだ。
 高校ともなると義務教育ではない。全員が何の苦労もなく2年生に進む進学校はともかく、勉強の嫌いな生徒が多い本校では、クラスで1人2人、成績不良などで進級できないことがある。また、進級できても、何単位か落とす者がいるのだが、今回は全員がすべての単位を修得して2年生に上がれるとわかった。
 一年間、生徒に「休むな、遅刻するな、勉強せよ」と言い続けた成果だろうか。素直に聞き入れ、期待に応えてくれた生徒が可愛くて、全員とハイタッチしたいくらいである。
 今日もいいことがあったのだが、それはまたの機会に。

「ただいまぁ」
 ふわふわした足取りで家に着くと、娘もまたニコニコだった。
「お母さん、見て! 当たったの!」」
 娘の手には、ピンクの目覚まし時計が載っている。
「ほら、ファミリーマートでスイーツを買って、バーコードを応募したでしょ」
「ああ、あれか」
「時計が当たって、今日届いたんだよ」
「マジ!?」



 うん、たしかに、SKE48の時計だ。
 ファミマのロゴ入りとは恐れ入る。



「もう、うれしくって、うれしくって。これで、もう寝坊しないよ」
「え? 朝、使うの?」
「うん」
「あんた、時計が鳴ると、殴ったりして攻撃するじゃない」
「…………」
「すぐ壊れるよ」
「…………じゃあ、やめとく……」
 寝起きの悪い娘は、自分を制御する自信がないようで、あっさり引き下がった。
 私も娘も、クジ運がないから、こんなことは初めてかもしれない。
 この時計は、家宝になったりして。
 いいことあると、うれしいな♪


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高速ディナー

2014年03月16日 17時23分57秒 | エッセイ
 その日は雨だった。風も強く、嵐のような荒天の中、私は友人たちとのディナーに出かけた。
 店先で傘をたたみ、ドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
「7時に予約した〇〇です」
「少々お待ちください」
 幹事の友人の名前を告げたが、予約リストに入っていなかったようで、ウエイターの反応がよくない。私は店を間違えたのかと不安になった。
 しかし、もらったメールを確認してみると、やはり間違えではないようだ。
「お待たせいたしました。〇〇様は、たしかに本日7時にご予約されていましたが、日程を来週の水曜日に変更されています。ご本人に確認をとりますので、おかけになってお待ちください」
 私は耳を疑った。なぜ、その連絡が私に回ってこないのだろう。ウエイターとは別に、私も彼女に「何か変更されましたか?」とメールを送ってみた。
「今、〇〇様とご連絡がとれました。日程変更のご連絡をし忘れたとのお話でした」
「そうですか」
 その日は3人で会うことになっていたが、誰かの都合が悪くなったのだろう。日取りを変えたあと、私のところに連絡をくれなかったから、こうなったというわけだ。
「本日はいかがなさいますか。お席はご用意できますので、お食事することは可能ですが」
 混乱した頭で考えた。外は雨だし、私はお腹がすいている。家に帰っても、夕食は用意されていない。だったら、とるべき道はひとつである。
「じゃあ、食事していきます」
「かしこまりました」
 突然のトラブルに見舞われ、落胆した私を励ますように、彼はとびきりの笑顔を浮かべてテーブルに案内した。南青山の洒落たレストランともなると、ひとりで来ている客はいない。カップルか夫婦の組み合わせばかりだ。窓際の、目立たない席を選んだのも、配慮のひとつという気がした。
 コースを選び、ワインを注文したあと、〇〇さんから返信がきた。
「ごめんなさい。予定が混乱しました。全員に連絡がまわっているつもりでした。ではまた」
 これには呆れた。全然、謝っているように見えない。「ではまた」と言われても、次はないだろう。
 非常識な人とは、関わりを持たないのが一番である。

「新タマネギのスープです」



 中央にはジェラートが載せられ、口当たりのよい一品だった。
 お皿を下げに来たとき、ウエイターに話しかける。
「お料理のインターバルを短くできますか? 話し相手がいないもので」
「かしこまりました。できるだけ頑張ります」
 彼は、力こぶを作るジェスチャーで、努力する姿勢を見せてくれた。
 実際、このあとのスピードは速かった。チャッチャとお皿が運ばれてくる。
「サヨリとタケノコのカルパッチョです」



「ホタテのソテーです」



「フルーツトマトの冷製カッペリーニです」



「イカスミのパスタです」



 どのお料理も、それぞれの素材の味が生かされており、申し分のない仕上がりだ。あのまま帰っていたら、この美味しさは味わえなかった。残って正解である。
「宮崎・尾崎牛のステーキです。ランプ肉を使っています」



 これは残念ながら、ステーキソースがしょっぱかった。肉が淡白な分、ソースには甘味が欲しいところだ。いや、肉に脂分があればよかったのかも? 
「スパークリングワインのジュレです」



 やっとデザートにたどり着いた。



 このあと、焼き菓子とカフェラテも出てきたが、所要時間は1時間半ほど。かなりの高速ディナーである。最後はシェフもやってきて、わざわざお見送りしてくれた。温かくていいお店だった。
「雨も上がりましたよ」
 ウエイターがドアを開けると、さきほどの嵐が嘘のように外は静まっていた。コートに袖を通し、濡れた傘を受け取って、私は駅に向かって歩き出した。
 3月は別れの季節。
 4月は出会いの季節。
 また、素敵なお店で、美味しいお料理を楽しみたい。


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合格祝い

2014年03月13日 06時44分59秒 | エッセイ
 先日、第136回簿記検定の合格者が発表された。
「簿記検定受かったよ」
 娘から、自分の受験番号の載った画像メールが送られてきてホッとした。
 家より学校で勉強するほうがはかどるからと、朝5時半に起きて7時すぎには登校し、図書館で朝学習をしたり、試験休みには友達からの誘いを断り、一日中問題集とにらめっこしたりで、彼女なりに必死に取り組んできた。合格できて何よりだ。
「よかったね、おめでとう」
 返信をしたあとで、いいアイデアがひらめいた。
「お祝いにケーキを買って帰ろうか?」
 体重を気にして、普段は甘いものを控える娘だが、今回は特別だったようだ。
「わーい! お願い」
 絵文字と顔文字が多用されたメールが帰ってきた。
 夕方のデパ地下は人が多い。お目当てのケーキ屋に行くと、休日並みの行列ができていたが、迷わず最後尾につく。
 ショーケースを眺めていると、またまたアイデアがひらめいた。
「DECOあまおうをください。プレートをつけてもらえますか」
 最初はカットケーキにしようと思ったのだが、せっかくだから、小さなデコレーションにする。ちょっとしたサプライズを企画するのも悪くない。
「お待たせいたしました。崩れやすいので、お持ち帰りのさいにはお気をつけください」
「は、はい!」
 お店のお姉さんから袋を受け取り、少々ビビる。ケーキに衝撃を与えて、デコレーションが崩れたら、サプライズも台無しだ。慎重に持っていかなければ。
 こういう日に限って、駅構内を走っている人が多い。ぶつかられたら大変と、脇を締めて袋を持つ。自動改札を抜けると、電車は満員だった。人があふれている出入口は危険だ。1本見送り、次の電車を選んで車両の奥に乗った。
 奥だと、降りるときが大変だ。ケーキを胸の前に抱えるように持ち、人波に逆らわないように動く。どうにか、無事にドアから出られた。
「ただいまぁ」
「おかえり」
 すでに、湯気の立った夕食が並んでいる。着替えて食事を終えたあと、冷蔵庫のケーキを取り出した。
「わあ、すごい!」
 箱を開けた娘が喜んでいる。よかった、崩れていない。



 プレートには、「合格おめでとう」と書いてもらったのだ。
 次は2級を受けるという。
 もし、合格できなかったら、「残念、不合格」なんてケーキにしようかしら。


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送別会~ロシアより愛をこめて

2014年03月09日 17時45分13秒 | エッセイ
 今月末で、隣の席の職員が退職する。彼は定年まであと3年あるが、両親の健康状態が思わしくないため、仕事をやめて面倒をみるのだという。戦力ダウンは必至だが、家庭の事情だからいたしかたない。
 先日、彼の送別会をした。
「どのお店にしましょうか」
「寒いから、温かいものがいいですね」
「そうだ、ロシア料理は?」
 同僚の素子さんと相談してお店を決める。以前にブロ友さんがアップした、上野のマトリョーシカだ。



「じゃあ、私はお花を買って行きますから、先に出ます」
 時間差で早く出たのだが、おりしも送別会ブームと見えて、花屋は客でいっぱいだった。

 ひええ~!

「あのう、年配の男性の送別会なんですが、落ち着いた感じの花束をお願いできますか」
 順番が来たところで申し出ると、15分待ちだという。3月4月は、前もって予約をしておかないと時間が読めないと学習した。
 しかも、15分後に受け取った花は、落ち着きというより、ひたすら地味なだけ……。



 まあ、いっか……。

「すみません、遅くなりました」
 案の定、10分遅刻した。ちょうど、飲み放題がスタートしたというので、ワインを頼む。
「ボルシチです」



 初心者には、定番料理が一番だ。アツアツで給仕するのがロシア流なのか、かなりの熱さだった。
「ハフハフ、おいしーい」
 料理が出てくるスピードは、結構早い。せっかちな東京人に、向いているかもしれない。
「ピロシキです。ナプキンに包んでお召し上がりください」



 これまた定番。
 熱そうだと様子を見ていたら、隣の素子さんがためらいもなく、かぶりついている。
「熱くないですか?」
「ちょっとだけ」
 その一言でみんな安心し、彼女のあとに続いた。
「そろそろ、ウォッカを頼もうかな」
 一人の男性が店員を呼んだ。飲み放題のウォッカは2種類あったが、名前は忘れてしまった。水のように見えても、だまされてはいけない。
「アルコール度数40度ですよ」
「へー、どんな味? 飲ませて」
「アタシもアタシも」
 結局、みんなひと口ずつ味見をした。日本酒が濃縮されたような、キツい味だった。私は飲まなくていいと敬遠する。
「つぼ焼きです」



「来た~! これが美味しいみたいですね」
「そうそう」
 これは、ボルシチよりも熱い。上のフタはパン生地のようで、サクサクしていた。
「シチューとはまた違うわね」
「うん、いける」
 食べながら、主賓を囲んでの思い出話が始まった。1つめの職場でも、2つ目の職場でも一緒だったという腐れ縁の男性が、「あのときはこうだった」と懐かしい表情を浮かべる。4月からは、この彼は誰よりも淋しい思いをすることだろう。
「鶏胸肉のコラーゲン煮です」



 これはあっさりしていて、美容によさそうだった。
 実は、次の日もその次の日も、肌の調子がよかった。ひょっとして、この料理のおかげ?
「チョコレートフォンデュです」



 マシュマロやフルーツが運ばれてきた。これを、溶かしたチョコレートにつけていただくのだ。



「いやあ、チョコレートはいらないかな……」
 男性陣は弱気だ。フルーツだけをつつき、スルーされたチョコレートが余っている。
 さんざん飲んでしゃべったあとは、イチゴジャムの入ったロシア紅茶も、結構お腹にどっしりきた。



「ああ、もう食べられない」
 ということは、そろそろセレモニータイムだ。主賓に記念品と地味~な花束を渡し、お開きとなった。
「ロシア料理、珍しくてよかったね」
「話も弾んで、楽しかったです」
 同僚からの評判も上々だ。きっと、退職される方も、最後の思い出としておぼえていてくれると思う。
 今まで、ありがとうございました。


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2000年間最大の発明

2014年03月06日 21時15分44秒 | エッセイ
 先月のエッセイ教室では、『2000年間で最大の発明は何か』という本が話題にのぼった。
 たとえば、鉄、紙、印刷機、電気、飛行機……。
 模範的な回答のほかに、消しゴム、インド-アラビア計数法、読書用眼鏡、椅子と階段、履物といった珍答もある。筆者は、その根拠や素晴らしさを文章に表し、説得力のあるものに変えていく。なかなか興味深い試みで、私もやってみたくなった。

 「ホイップクリーム」
 人間関係に疲れ、ひび割れた心に潤いを、一日の労働を終え、疲れた体に安らぎを与える白き物質。加える砂糖の量により、甘さを調整することができる。食後の甘味や、間食に最適の食材。
 主として食用に用いられるが、装飾次第では鑑賞用にもなる。



 短時間に大量のクリームを食した場合、悪心や下痢につながる恐れがある。しかし、危機を脱した後は、懲りずに再び摂取したくなる中毒性をも有している。



 通常は白色で用いられるが、果実と混ぜ、着色して使用される場合もある。



 医薬品ではないが、人によっては、ストレスの解消、精神の安定、疲労回復、意欲の向上といった効用が見られ、贈答品や自分へのご褒美として幅ひろく利用されている。

 以上、おしまい。
 ホイップクリームを憎んでいる方には、「オエ~」となる話であろう。
 しかし、某ホテルに飾られていたこの壺らしきものは、ホイップクリームを愛してやまない陶芸家の作品ではないだろうか。



 私はそのように解釈した。
 さて、あなたの「2000年間最大の発明」は何ですか?


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ひな祭りの3K

2014年03月02日 20時59分27秒 | エッセイ
 ひな祭りは明日だが、この週末にお祝いした家庭も多いようだ。
 わが家も1日に宴会をした。しかし、今年はとてつもない体力を使った。
 ぜいぜい。
 まず、ひな人形を出すときからケチがつく。
「あれ、お母さん。ミキのベッド、火曜日に来るんでしょ。お雛様があると通れないよ」
「ああっ、そうだった……」
 階段を上がったところの廊下が、ひな人形の定位置なのだが、ここに七段飾りを広げると、かなり狭くなる。ちょうど、娘の新しいベッドが来る予定になっていたが、これでは入らない。
「しょうがないね、片づけないと……」
 雛壇を組み立て小道具を並べ、あとは人形だけの段階だったけれども、泣く泣く箱に収納する。
「徒労」という語の説明に使えそうなくらい、無駄な作業であった。
 3月1日は、両親や妹一家、姉夫婦もやってきて、ひな祭りパーティーである。
 いつもは寿司をとって、肉料理やオードブルをいくつか並べて誤魔化すのだが、頼みの寿司屋が閉店してしまった。ならば、たまには自分で作ろうと決めたのだが、無計画もいいところだった。
「カニクリームコロッケとパエリアに、チキンの網焼きを作って、あとはデパ地下で買えばいいや」
「わーい、パエリア!」
 パーティーは全部で11人である。買い物だけで相当な量に上り、先週痛めた腰がグズグズ言い始めた。これから立ち仕事をするのだからと、コルセットをして残りの買い出しに出かける。
 帰ったら、まずはひな人形を飾る仕事から始めた。



 無事終了。
 次にカニクリームコロッケに取り掛かるが、ここでも早速トラブルに見舞われる。
「あれっ、牛乳が足りない……」
 11人分だから1.5倍の量にしたら、牛乳があと150ccほど足りない。大急ぎでスーパーに戻り、牛乳をゲット。残りが1リットルを切っていたので、買い物リストに加えておけばよかったと後悔した。
 追加の牛乳をタネを作り、冷蔵庫で固める間にチキンの下ごしらえだ。チキンが終わったら、パエリアに入れるエビとイカを切り、アサリの砂出しを始める。
 それが終わったら、またコロッケに戻って衣をつけるのだが、今度はパン粉が足りなくなった。もうスーパーに走るのはイヤだ。
「ひ~、ミキ、おばあちゃんちでパン粉を借りてきてくれる?」
「わかった」
 娘が1階の義母を訪ね、食パンをもらってきた。
「パン粉はないけど、これをすり下ろして使えばいいってさ」
「ありがと~!」
 何とか、コロッケが完成した。
「こんばんは」
「こんばんは」
 続々と親族が集合する。乾杯が終わりひと段落してからパエリアを作り始め、オードブルがひと通りなくなった頃に出せればよい。



「あら、今日は洋食? 和食に合うワインを持ってきちゃったわ」
 姉が眉毛を下げる。寿司ではないことを言っておけばよかった。
「かんぱーい」
「ひな祭りおめでとう!」
「わーい!」
 グラスのぶつかる音が響き、宴会が始まった。
 妹が、義弟のノンアルコールビールを忘れるというハプニングはあったが、コーラやウーロン茶で我慢したようだ。オードブルもコロッケも好評で、会話も弾んでいた。
 私は台所に戻り、パエリアを作り始める。まずはオリーブ油でにんにく、玉ねぎを炒め、水とコンソメを入れてスープを沸かす。そこに、トマトを6つ切りにして入れようとしたが、それらしいものがない。
 また、買っていなかったのだ……。
 しかし、缶詰のカットトマトはある。強引に、カットトマトをフライパンに入れると、そのまま米を加えて炊いてみた。味の保証はないが、食べられないほど不味いということはないだろう。
 4時間ほどずっと立ちっぱなしで、前屈ができないくらいに腰が張っている。
 かつて、3K職場といわれたのは、「きつい」「汚い」「危険」な仕事である。今は新3Kといって、コンピュータ業界などが「きつい」「帰れない」「給料が安い」といわれているそうだ。
 この日の私も、「きつい」「買い忘れ」「腰が痛い」の3拍子が揃っていると気がついた。まったく、どうしようもない。
「できたよ」
「うわあ、美味しそう♪」
 


 味に自信はなかったが、こちらもかなり好評だった。
「イカが新鮮」
「アサリも美味しい」
「これ、バナメイエビなの? 偽装事件から値段が上がったんだってよ」
 あちこちから手が伸びてきて、あっという間にフライパンが空になる。どうやら、満足してもらえたようだ。
 ようやく私も、「今日は楽しいひな祭り~♪」と歌う気分になれた。


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