これは したり ~笹木 砂希~

面白いこと、妙なこと、不思議なことは、み~んな私に近寄ってきます。

女子学生の特権

2012年05月31日 21時14分27秒 | エッセイ
 おととい、出身大学の入試説明会に行ってきた。私の母校は名門ではないが、中堅レベルということもあり、進学校の落ちこぼれから底辺校のトップクラスまで、幅ひろい生徒が入学する。
 この大学には大変お世話になった。大幅に変わった入試制度の話を聞きながら、私の心は学生時代にタイムスリップした。

 私が入学したのは商学部である。経済系の学部は、たいがい女子が少ない。教室のドアを開けると、ほとんどが男子だったので、最初は中に入るのがイヤだった。あとから知ったことだが、男女比は8対2だったらしい。
 しかし、すぐに、少数派の女子には、いいことがたくさんあるとわかった。
 なんといっても、教授陣がやさしい。女子学生は真面目だし、あれこれ話しかけてくるから、オジさんばかりの教授にウケがいいのだろう。特に、仲良しの英子は、疑問があると即質問に行った。隣でやりとりを聞いていたら、私まで名前をおぼえてもらえたことがある。学部長が教える統計学では、友人数人と、休み時間が終わるまで話し込んだものだ。
 3月に郵送された成績表を見て、こちらのほうが驚いた。母校では100点満点で評価をすることになっており、80点以上がいわゆる「優」となる。1科目だけ「79」点というふざけた評価があったものの、残りの科目はすべて80点以上であった。女友達に電話をしてみると、みんな同じような成績だという。でも、男子学生は50点や60点ばかりだったらしい。
 成績表と一緒に、「第二種奨学生募集のご案内」という手紙が入っていた。この奨学金は、「学業・人物ともにすぐれた学生を対象に、授業料および施設料の免除と、年額15万円を給付します」というものである。私学ならではの気前のよさで、返還の義務はない。
 1年次の成績がよかった者にだけ、受験の機会が与えられる。仲間の女子も、軒並みこの手紙をもらっており、みんなで奨学金試験を受験することにした。定員は6名だが、受験生は20名ほどいたと記憶している。ダメもとで小論文を書き、面接に臨んだ。
 集団面接だから、受験生は5人である。対する面接官は3人で、中央には統計学を教わった学部長がいた。
「やあ、君たち、また会ったね」
 学部長は、私たちの顔を見るなり、弾けたように笑った。両脇の面接官には、「教え子なんですよ、ははは」などと照れながら説明する。その成果があったのか、私と英子、それから加奈子という仲間が合格し、奨学金をもらうことになった。
「6人中、3人がこのメンバーって変だよ。商学部には1000人以上の学生がいるのに、できすぎだ」
 はき捨てるように言う男子学生もいたが、運も実力のうちである。授業料と施設料が免除されると、2年次からの納入額は、年額1万3千円程度となる。1年次では100万円以上払っているから、天と地ほどの違いがある。親孝行ができて何よりだ。
 そんなことの繰り返しで4年に進み、卒業を控える時期となる。ある日、私はゼミの教授に呼ばれ、研究室に向かった。
「実は、笹木さんが、学術賞の候補に上がっているんですよ」
 4年間の成績がよかった学生は、卒業式で学術賞なるものをもらえる。だいたい、学部で4人くらいだ。毎年、大学新聞に受賞者のプロフィールが紹介されているから、賞の存在は私も知っていた。
「だから、私も今回は基準を甘くして、いい点をつけようと思います。あなただけでは不公平だから、全員に甘くするつもりです」
 やたらと恩着せがましかったが、自分のゼミから受賞者を出したいという気持ちが見え見えだった。教授と学生の利害関係が一致した結果、私はゼミナールで「100」点という最高の評価をもらい、学術賞の残り1枠にすべり込みセーフとなったようだ。
 ゼミの卒業コンパでは、男子学生が評価を話題にしていた。
「オレ、ゼミで100点もらったよ」
「オレもだよ。去年は80点だったのに、どうしたんだろう」
「なんか、みんな100点だったらしいよ」
 もはや、苦笑するしかない……。
 
 入試説明会が終わると、回想をやめて個別面談に移る。私は、指定校推薦枠の拡大をお願いし、自分の教え子が1人でも多く入学できればと主張した。可愛い生徒にしてやれることであり、愛する母校への恩返しでもある。
 とりわけ、女子に入学してもらいたい。



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愛夫弁当

2012年05月27日 15時32分33秒 | エッセイ
 子供が高校生になると、毎朝のお弁当作りに悩まされる。料理は得意ではない。本を何冊も買い、簡単そうなメニューを選んでは、毎日をだましだまし乗り切っている。
「大変だねぇ」と夫が言う。丸きり他人事だ。だが、私は彼の実力を知っているので、「たまには作ってよ」などと、決して頼まない。
 あれは平成三年だった。私は女友達と4人で、二泊三日の軽井沢旅行に出かけようとしていた。新幹線の時間を教えたら、当時はまだ婚約者だった夫が見送りに来ると言う。
「おはようございます」
 大宮駅に着くと、私より先に友達が夫を見つけ、声をかけた。軽く会話をかわしたあと、「じゃあ、そろそろ」とホームに向かうところだった。夫がバッグから小さな包みを手渡し、「朝、作ってきたんだ」とささやいた。
 新幹線で包みを開けて仰天した。中身が、ホイルに包まれたおにぎり2個と、タッパーに入ったプチトマトだったからだ。

 4人で出かけるのに、一人分のお弁当を作ってきて、どうしろというのか!!

 本人の自己満足としか思えない判断の悪さである。友達も、皆あぜんとして言葉を失い、信じがたいものを見たという顔だった。
「なによ、これ。悪いけど手伝って。手分けして食べちゃおう」
 私はおにぎりを半分に割り、それぞれを友達に押しつけた。一人が半分ずつ食べれば、お昼には差し支えないだろう。しかし、にぎるときに水をつけすぎたのか、やたらとベタベタしていて、塩気が足りなかった。
 次はプチトマトだ。タッパーのフタを開けると、上の2個がつぶれ、汁がはみ出している。どうやら、強引にフタを閉めたらしい。友達には無傷のトマトを配り、手分けして片付けてもらった。ホッとした反面、余計な気苦労に疲れ、夫を恨めしく思った。

 先日、娘とケンカをした。毎朝の苦労を知らないことに腹を立て、つい感情的になる。
「明日はお弁当なしだからね。コンビニで買いなさいよ」
 だが、娘に甘い夫が、コンビニ弁当では可哀相だと思ったらしい。いつになく早起きして、私の代わりに作ってやっていた。弁当箱をのぞくと、玉子焼きにできあいの佃煮、キウイに加えて、山盛りのプチトマトが入っていた。またフタをすればつぶれそうだ。
 そして、テーブルの片隅には、ソフトボールのような、巨大なおにぎりが転がっていた。

 女の子なのに、なぜこんな大きさに!?

 まるで、罰ゲームのようなお弁当だ。あまりにもセンスがなさすぎる。
「お母さん、昨日はごめんなさい。明日からまたお弁当作って」
 その日の夜、娘が詫びを入れてきた。これは夫のおかげか? もし、コンビニ弁当だったら、なかなか謝らなかったかもしれない。



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シエスタしたいな

2012年05月24日 20時50分34秒 | エッセイ
 大阪のネットコンサルティング企業、株式会社ヒューゴには、ユニークなシエスタ制度があるそうだ。
 シエスタとは「午睡」と訳されるように、スペイン流の長い昼休みのことである。この会社では、午後1時から4時までがシエスタ時間となっており、本当に昼寝をしてもいいらしい。実に羨ましい。
 しかも、この制度を導入して以来、業績アップで、営業利益が4倍になったというからスゴイ。(以上、日経ビジネスより)
 地方公務員には、もちろんそんな制度はなく、眠気マックスの午後でも元気に仕事をせねばならない。特に今月は、勤務先を離れて、外に出る仕事が多いから大変だ。強風にあおられ、にわか雨から身を守り、真夏のような日差しにさらされながら、与えられた任務を遂行する。終わったときはヘトヘトだ。
 そんなとき、温かいコーヒーとスイーツがあると生き返る。しばらく間食を絶ち、おやつと無縁の生活をしていた反動もあった。それなのに、最近では、ファミレスやミスドのドアを開け、自分へのご褒美をあげてしまう習慣がついた。火曜日は焼き菓子、水曜日はプリン、木曜日はケーキという具合である。ささやかな幸せだ。
 だが、この頃、朝がツラい。頭がボーッとするし、肌の張りがなく、顔もむくんでいる。典型的な疲れの症状だ。最初は、外回りの仕事がいけないのかと思っていたが、ふと、そうではないことに気づいた。

 おやつを食べた次の日が、ツラいんだ!!

 間食なしの生活が続き、いつの間にやら、私の胃腸にはシエスタ制度が導入されていたらしい。腹6分目の昼食を消化すると、あとはお昼寝タイムになっていたと思われる。たっぷり休んだあとは、夕食の消化能力も高く、元気ハツラツだった。
 しかし、今週は途中で叩き起こされ、仕事を押しつけられたため、疲れてしまったようだ。
 今日も外に出かけたが、胃腸の健康のため、寄り道をせずに真っ直ぐ帰ることにした。
 家で私を待っていたものがある。花の絵がプリントされた、大きな箱だ。



 包みを開けると、可愛らしい缶が入っていた。



「六花セレクト」



 フタを開けると、六花亭のマルセイバターサンド、霜だたみ、雪やこんこの3種類が詰め合わせになっていた。



 私の決心が、瞬時に崩れ去ったことは言うまでもない……。
 ついでに、明治神宮で売られている最中のフォトもご覧あれ。



 神々しくて、体内から浄化されそうな気がする。



 今日もダメだったけれど、明日こそ、明日こそは、胃腸のシエスタ制度を守ることを誓います!!



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金環日食を見よう(2)

2012年05月21日 20時10分54秒 | エッセイ
 目覚まし時計が鳴ったのは、午前4時半だった。
 今日は金環日食だ。娘と私のお弁当を作り、観測をしてから出勤する。もたもたしてはいられない。気合いを入れて、布団から出た。
 5時半に娘のミキが起きる。中間テストの最中なので、昨夜は遅くまで勉強していたようだが、日食は待っていてくれない。フラフラしながらも必死で起きる。
「お母さん、何時に出発だっけ」
「6時40分だよ」
「わかった」
 仕度をしていたら、友人である鹿島田の純さんからメールが来た。
「川崎は霧雨が降ってきました。最悪!」
 思わずヒエッと青ざめる。その後、本降りになったというから恐ろしい。
 朝食を終えたら、日食グラスを持って出発だ。電車に乗って、娘の学校の最寄駅に行く。到着したのは、7時20分だった。
「公園はどこだろう」
 私は地図を見ながら公園を探す。川崎と違って、池袋付近は晴れているが、綿のような雲が邪魔だ。見られるのかと心配になった。
「お母さん、公園よりもあっちのほうがいいんじゃないの?」
 娘が指差すほうを見ると、立体交差の道路がある。山手通りだ。線路をまたぐ陸橋には広い歩道があり、観測中の歩行者が30人ほど群がっていた。
「あっ、いいじゃん! 行こう行こう」
 観測は、一人でしてもつまらない。たとえ知らない人であっても、大勢集まれば連帯感も生まれ、気分が高揚する。
「このへんでいいか」
 適当な場所に荷物を置き、日食グラスを取り出す。時計を見ると7時26分、まだ大丈夫だ。
 まぶしくて、とても正視できない太陽だが、グラスを通すと輪郭がはっきりわかる。このときは、まだ金環になっていない。


(画像は日食グラスからのイメージです)

 新聞やテレビでは、大きく映る太陽も、グラスを通してでは、碁石程度の大きさとなる。しかし、生で見ていることが大事なのだ。太陽は、白ではなく黄色かった。
「結構、雲があるのに、ちゃんと見えるんだね! すごい!!」
 娘も興奮気味である。
 そして、まさに7時31分、月が中央に移動する。


(画像は日食グラスからのイメージです)

「来た来た来たーッ!」
 すごい、とてつもなく神秘的だ……!!
 この瞬間のために、4時半起きしたのである。おそらくは、生涯に一度となる光景を目にし、信じがたい想いでいっぱいになった。愛娘と一緒に観測できた幸運は、神様からのプレゼントかもしれない。
 だが、恐れていたことが起きる。2分もしないうちに、雲が金環を隠してしまったのだ。
 視界が真っ暗になり、グラスを外す。
「おねえちゃん、何も見えないでしょ」
 ミキの隣にいた、年配の女性が話しかけてきた。
「はい、見えません」
「雲がなけりゃねぇ」
 彼女のグラスは、私たちのものと同じだった。さらに話題が広がる。
「日食グラスが同じですね」
「これ、東武デパートで買ったのよ~♪」
 女性の反対隣に立っていたサラリーマンも、仲間に入ってきた。
「僕は、曇ると聞いていたので、グラスを買わなかったんですよ。でも、晴れましたね」
「あ、さっきよりも明るくなってきたわ。見えるかな」
 いっせいにグラスをかける。しかし、すでに7時39分。金環のピークは過ぎていたので、左側が欠けていた。


(画像は日食グラスからのイメージです)

「お兄さん、ちょっと見てみる?」
 年配女性が、サラリーマンにグラスを貸していた。
「いいんですか? ありがとうございます」
 観測を通して、知らない人とのやり取りもまた楽しい。しかし、出勤時刻が迫っていたので、日食見物は終わりにした。
 携帯を開くと、また鹿島田の純さんからのメールが来ている。
「金環日食きた~! 雲の間から今ちょうど見えています!」
 ほほう。雨に降られた川崎市も、7時頃には日が照り、無事観測できたようだ。よかった、よかった。
 心残りだったのは、夫のことだ。一人淋しく、テレビで見ていたらしい。まったく興味がないようなので、日食グラスすら買ってあげなかったのだが、こんなに白熱するものなら、無理やりにでも誘えばよかった。大勢で見てこそ、楽しいイベントなのだから。
 早起きして疲れた……。今日は早く寝よう。



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金環日食を見よう(1)

2012年05月20日 20時07分42秒 | エッセイ
 明日、5月21日は金環日食を観ることができる。
 東京では、午前7時31分から37分頃らしい。天体観測は好きなので、何カ月も前から楽しみにしていた。ちょうど、生協のカタログに「日食グラス」が載っていたので、迷わず2つ購入する。



 グラスだけでなく、天体観測ガイドブックもついた優れものだ。
 届いてからわかったことだが、グラスの端に穴が開いている。



 ここにゴムを通せということらしい。

 ウケる~!!

 これをかけると、真っ暗で何も見えない。蛍光灯の明かりが、ぼんやりと浮かんで映るだけだ。厚さも3mmほどあり、「高品位遮光プレート”ソーラープロテック"使用」などと書かれている。いかに太陽光が強烈かわかり、身震いする。
 日食観測のために、登校時間をずらしたり、休校にしたりする学校もあるようだ。でも、私の勤務校は通常通りである。7時半頃は、いつもなら電車の中だが、明日だけはそういうわけにいかない。
 最初は、早めに家を出て、職場の最寄り駅で観ようと思っていた。だが、このグラスをかけて、一人で観測するには勇気がいる。道連れがほしいところだ。
 私はチラリと隣を見た。
「ミキ、日食はどこで観るの?」
 犠牲になるのは、いつも娘と決まっている。
「どうしようかな。なにも決めてない」
「じゃあさ、お母さんと一緒に、どっかの公園で観ない?」
 娘の学校は、私の勤務先と同じ方角にある。途中下車して観測しても、十分間に合う時間だ。
「どうしようかな。まあいいや、別に」
「決~まり!」
 明日は、6時40分に家を出て、娘とどっかの公園で金環日食を観測する。二人とも晴れ女ではないが、一瞬でも観たいものだ。
 観測結果はいかに!?
 続きは明日、このブログにてご報告いたします。(珍しく連続更新♪)
 しかし、娘は焦っていた。
「あれ、ミキの日食グラス、どこいった?」



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高校4年生

2012年05月17日 20時39分13秒 | エッセイ
 ちょっと遅めの電車に乗ったら、見おぼえのある制服を着た男子3人組がいた。チェックのネクタイと校章から、娘と同じ高校とわかる。
「今日、ライティングあったっけ」
「あるある、3時間目」
「テストやる日?」
「今日は違う。テストは明後日」
 ブレザーの新しさから、1年生ではないかと思っていたら、やはりそうだった。まさか、娘と同じクラスだったりして。そう気づくと、読みかけの本は頭に入らず、会話ばかりが気になった。
「ライティングの先生、ダルいよね」
「うん、ダルい。宿題出しすぎ」
「なんて名前だって」
「ヤマモト」
 それは、娘の担任である、英語のヤマモト先生に間違いない。まだ20代の女性だが、毅然とした物言いで、結構厳しいところがある。いつも遅くまで残り、授業はわかりやすいというから頼りになる。名前を知らないところを見ると、担任ではないのだろう。残念ながら、同級生ではないようだ。
 まもなく、彼らの話題は、リーディングの先生に移っていった。続きを聞きたかったが、私は次の駅で急行に乗換えねばならず、泣く泣く電車を降りた。
 電車やバスという狭い空間では、人の話がいやでも耳に入ってくる。私は、教員になって一年目の年を思い出した。当時の勤務先は、有楽町線沿線の高校で、明るいブルーの制服が特徴だった。
「おはよー!」
「おはよう!」
 振り返ると、同じ車両に女子のブルー集団が乗ってきた。週に2時間教えている生徒たちである。だが、彼女たちはおしゃべりに夢中で、私がいることに気づかない。
「日本史のプリントやってきた?」
「まだ」
「アタシ、やってきたから、写していいよ」
「ありがと~!」
 だいたい朝は、その日の授業のことが話題に上る。それから、先生の話に移っていくパターンが多い。懐かしいシチュエーションだ。私も高校4年生の気分で、話を聞いていた。
「あの人の授業って眠くなるよね」
「うん、あと数学の○○とか」
「でも、理科の××は、声が大きすぎて寝られない」
 ドッと笑いが起きた。耳をダンボにしていた私も、ちょっと肩が震えてしまった。不覚……。
「そういえば、教員になったばかりの女の先生、名前何だっけ」
 その瞬間、震えが止まった。それはもしや、私のことではないか。
「ああ、あの、おとなしそうな人?」
「名前知らない」
「おぼえてない」
「何か、影が薄いよね」
 ガーン!!
 がっかりしていたら、あっという間に話題が変わった。
「あ、体育着忘れちゃった。誰かに借りなきゃ」
「また外でソフトボールかな」
 悪口が飛び出すどころか、話のネタにもならなかったらしい。
 くすん。
 彼女たちの話は尽きない。私は、決して後ろを振り返ってはいけないと思った。何も悪いことをしていないのに、コソコソしてしまう自分が不思議である。
 高校生のみなさん、電車の中で、噂話をするのは危険です!
 きっと、保護者か教員がいますよ。



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2012 母の日

2012年05月13日 14時46分41秒 | エッセイ
 小学生のとき、なぞなぞが流行っていた。
「私のお母さんは、どんな性格でしょう?」
「えー、わかんないよ」
「答えは、『わがまま』です」
「なるほど!」
 今日は母の日。私もわがままを言わせてもらおう。
「砂希さん、お花ありがとう」
 義母が声をかけてきた。毎年、生協で注文しているギフトフラワーが着いたらしい。
 今年はピンク主体の、乙女チックな仕上がりとなっている。



 同じ花を、那須の母にも贈った。贈る対象がいることは、子供にとってもありがたいことなのだ。
 去年は私も、ピンクとブルーのプリザーブドフラワーをもらった。



 しかし、1年経ったら、すっかり色が褪せてしまった……。



 決して直射日光に当てたわけではないが、蛍光灯や自然光で、色がなくなっていくらしい。
「うえーん!!」
 嘘泣きをしていたら、夫が新しい花を買ってくれた。



 今度は赤だ。なるべく光に当てないようにして、美しさをキープしたい。
 花より団子とはよく言ったもので、実は食べたいものがあった。
「ねえ、パパ。お○ふじのケーキが食べたいんだけど」
 お○ふじというのは、地元の人気店だ。美味しいのだが、交通の便が悪くて、もう何年も食べていない。しかし、夫の顔色は冴えない。
「お○ふじの前を何度も通ったことあるけど、駐車場はいつもいっぱいだし、オバちゃんたちが行列を作っているんだよね……」
「えー、そんなに混んでいるの? でも、あそこのケーキがいいんだよ」
「……俺に並べと!?」
 顔をひきつらせながら、夫は気合いを入れて出かけていった。
 この間に掃除を終わらせなければ。
「お母さん、ちょっと……」
 掃除が終わると、娘のミキがもじもじしながら話しかけてきた。先週、些細なことで口論になり、冷戦状態が続いていたのだが、ようやく降伏する気になったらしい。
「この前は、くだらないことで怒っちゃってゴメンね。反省してるから許して。今日は母の日だから、プレゼントだよ」
 学校が終わってから、わざわざ池袋まで出て買ってきてくれたらしい。
 ハンカチと



 ブラウニーだった。



「ありがとう!」
 娘とブラウニーを食べると、元気が出てくる。母の日は和解のきっかけにもなるのだ。
 夫と娘に、これだけしてもらったからには、私も何かお返しをせねばならない。
「今日の夕飯は、パエリアにするからね~!」
「マジ? 作れるの?」
 作りましたとも!



「うわ、すっごく美味しい♪」
 初めてにしては、とても上手にできた。食後は、お○ふじのケーキだ。
 私はキャラメルマキアートと、パリブレストにした。



 キャラメルマキアートには、小さなマカロンが載っていて、実にキュートだった。
 もちろん、味も一級品!
 お腹も満たされて、いい母の日になった。
 さて、明日からは、わがままを言わないようにしよう。



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困った新入社員

2012年05月10日 19時40分40秒 | エッセイ
 とんでもない新入社員の話を聞いた。
「指示を出してもメモを取らないから、メモに書くよう言っても『おぼえているから大丈夫です』と言い返す。でもやっぱり、間違えるんだよ」
 知り合いの社長がうんざり顔で、4月に入社したばかりの男子社員の愚痴をこぼす。
「しかも、同じ間違いを繰り返す。だから、社長室に呼んで、学生気分でいたらダメだと説教したら……」
 新入社員の小僧は話の途中で足を組み、靴ひもを直し始めたという。
「全然聞いていないんだから、イヤになっちゃう。今までそんな社員はいなかったんだけどな」
 仕事が途切れるとゲームを取り出し、注意するまで続けている。あるいは、職場からいなくなり、近くの公園で30分も1時間もボンヤリしている。そんなこんなで、ろくに働いてもいないのに、退勤時間が近づくとタイムカードの前に立ち、定時ジャストで打刻するのだという。あとは、挨拶もそこそこに、逃げるように家に帰る。
「馴染めないのかと気にして、先輩社員がランチに誘ったときもあるんだけど、まったく話が弾まなくてね」
 叱ったら、会社を辞めてしまうのではと心配になり、社長は厳しく注意しない。毎日、小僧が処理した伝票を見直し、やんわりと指導するだけだ。
 まったく、聞いているだけでも腹が立つ。逆に、優しくするから、つけ上がるのではないかと感じた。きつく言われないのをいいことに、小僧は「まだ大丈夫」と高を括っている気がする。ミスが重なり取引先を失うと、会社が傾き、減給や解雇につながることを理解していない。もっと厳しくすべきだと思う。
 そういえば、3年前の教え子にもそんな小僧がいた。
 見た目は地味で、教員の言うこともよく聞く。だが、入社早々に会社からクレームの電話が来た。
「残業で6時になったことがあるんですよ。そうしたら、お母さんが心配して電話を掛けてきましてね……」
「ええっ、6時でですか?」
「はい、そうなんです。そして、嘘をつくこともあります。『あの仕事はどうなってる?』と聞くと、『終わりました』と答えます。でも、確認すると、いつも終わっていないんです」
「……いやあ、まったく申し訳ありません」
「大声で叱ると、体を小さくして従います。でも、女性の言うことは聞きません。困ったものですよ」
 私のほうこそ、身を縮めてしまった……。いや、寿命も縮まったかもしれない。
 選考の段階で見抜けなかったとはいえ、企業にしてみればひどい「ババ」を引いてしまったわけだ。とんだジャイアント・ババである。新入社員というより、侵入社員で給料泥棒だが、簡単に解雇するわけにもいかず、今でも苦労して育てているらしい。
 いっそのこと、猪木の張り手で、小僧たちに気合いを入れてもらいたい。



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寿司屋の出前

2012年05月06日 17時54分02秒 | エッセイ
 娘の誕生日会に、親族が来ることになった。夕食は寿司がいい。最近は、宅配寿司ばかりになり、昔ながらの寿司屋が消えていく。実に嘆かわしいことだ。
「笹木と申しますが、6時に特上を10人前お願いします」
「かしこまりました。本日、大変混み合っておりますので、前後1時間ほどいただきます」
 6時ジャストは難しいようで、5時から7時までの到着となることを了解する。その日は朝から激しい雨が降っており、どの家庭も、家から出ずに美味しいものを食べたいと思っていたのだろう。
 客が来る前に、ポテトのマスタード和え、チーズ、うずら卵のベーコン巻き、豚汁、フルーツ盛り合わせなどを用意する。あとは、親族と寿司の到着を待つばかりだ。
 インターフォンが鳴り、妹一家がやってきた。すぐに、両親も駆けつける。その日は、姉夫婦が来られなかったので、これで全員揃ったことになる。あとは寿司が来ればよい。
「ミキは何歳になったの?」
「16歳だよ」
「そう、高校はどう?」
「面白いよ。こないだ、こんなことがあってね……」
 前回会ったのはひな祭りだから、久しぶりで会話も弾む。時計を見たら、まもなく7時になるところだった。
「寿司はまだ?」
 料理の載った皿を見ながら、夫が催促する。前後1時間といっても、もうリミットを迎えているのだから、電話したほうがよさそうだ。
「蕎麦屋の出前だと、もう出ましたって言うんだよね」
「寿司屋でもそうかな」
 妹や義弟と冗談を言い合いながら、番号をプッシュする。
「はい、笹木様ですか? えーと、明日の6時にご予約となっておりますが……」
 予想外の言葉に、私は目をむいた。
「えっ、明日じゃなくて今日なんですけど。急いで持ってきてください」
 どうも、注文を受けた者がミスをしたらしい。味は悪くないのだが、前にも、さび抜きで頼んだにぎりにワサビがついていたり、頼んだ品と違うものが来たりしたことがある。これだから、バイトばかりの宅配寿司はイヤなのだ。親族には事情を説明して謝り、ひたすら到着を待つしかない。
「腹減った。まだ来ないの?」
 約1名、待てない男がいた。食欲旺盛な夫である。小学生の姪と甥は、遊びながら空腹を我慢しているのに、夫は寿司が気になって、何も手につかないらしい。
「まだ。もうちょっとだよ」
 なだめて座らせたが、10分もすれば立ち上がり、「まだかな」と聞きに来る。まったく、ウンザリする。進捗状況を確認しようと電話すれば、ツーツーという話し中の音が虚しく流れるばかり。日にちを間違えられた不満と、辛抱できない夫への苛立ちで、頭の中が破裂しそうだった。

 もう絶対、頼まないからっ!!

 8時10分ほどだったろうか。ようやく、インターホンが鳴った。
「大変お待たせいたしました。○○寿司でございます」
 財布を持って玄関までダッシュすると、運の悪いバイトのお兄ちゃんが、顔を引きつらせて立っていた。前もって、怒られるとわかる家には、じゃんけんで負けた者が届けるのかもしれない。
 しかし、このお兄ちゃん、それなりに場数を踏んでいるようである。
「遅くなりまして、大変申し訳ございません。お品物のご確認をお願いいたします。こちら、サービス品の真鯛のにぎりでございます。それから、こちらが特上10人前です」
 注文以外に、遅れたお詫びの品がついてきた。主婦はプレゼントに弱い。
「それと、お代金のほう、値引きさせていただきます。今回はご迷惑をおかけしましたが、また今後ともよろしくお願いいたします」
 主婦は値引きにも弱い。加えて、真面目な顔で、深々と頭を下げられると、「悪いのは注文を聞いたヤツだから、この人はまあいいか」などと考えてしまう。気勢をそがれ、私は文句を言うこともなく、お兄ちゃんの後姿を見送った。
「やっと来た~!」
 食事が始まると、急に室内が和やかになる。
 もちろん、サービス品は夫に与えた。



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GWは今日も雨だった

2012年05月03日 16時01分39秒 | エッセイ
 今年のゴールデンウィークは、天気に恵まれていない。場所にもよるのだろうが、東京では雨模様が続いている。これでは、遠出する気にもなれない。
 それならばと、近場の観光スポットを訪れた。
 東京都北区にある「旧古河庭園」だ。



 この庭園は、大正初期の庭園の原型を留める貴重な存在であり、「西洋と日本が調和する、歴史的な名園」として、平成18年に国の名勝に指定されている。園内は3万平方メートル以上もの広さで、石造りの洋館、洋風庭園、日本庭園、大滝、心地池、枯滝などが楽しめる。
 洋館と洋風庭園の設計者は、鹿鳴館やニコライ堂、旧岩崎邸庭園洋館などを手がけたイギリス人建築家、ジョサイア・コンドルだ。コンドル氏は1920年に亡くなっているので、1917年に竣工されたこの庭園が、最後の作品となったという。
 一方、日本庭園の作庭者は、京都の庭師・小川治兵衛で、落ち着いた雰囲気をかもし出している。熟年夫婦のデートコースに最適かもしれない。
 洋館は、事前に予約しておけば、内部の見学ができる。



 人数にゆとりがあれば、予約なしでも見学ツアーに入れてもらえるようだ。写真撮影はできないが、一見の価値はあるので、見学受付の放送が流れたら駆けつけてみてはどうだろうか。
 1階は洋風に徹したつくりで、どの部屋にも暖炉がついており、ビリヤード場や食堂がある。果物やバラの彫刻が、たいそう美しかった。また、窓には精製技術の未熟だった当時の、歪んだガラスが残されている。気泡も多く含まれており、レトロな趣が新鮮だ。
 2階は一見洋風に見えるが、飾り扉を開けると、部屋の中は純和風となっている。イギリス人の設計とはいえ、日本女性と結婚し、日本で生涯を終えたコンドル氏が、いかにこの国を愛していたかが伝わってくる。
 大正時代なのに、ボイラー室があり、お風呂では蛇口から湯が出たそうだ。大理石の浴槽が、財閥の財力を感じさせる。ただし、旧岩崎邸に比べれば規模が小さく、使用人は1/3程度というから、古河家は庶民的だったらしい。
 館内見学のあとは、洋風庭園を散策する。



 ここはバラ園になっており、何十種類ものバラが、小さなつぼみを抱えていた。あと半月もすれば、バラの競演となりそうだ。
 バラ園の隅の松が、何の違和感もなくたたずんでいるのが面白い。



 階段を下りると、そこから先は日本庭園だ。



 池の水が、どんよりしているのは気になるが、鯉も元気に泳いでいた。





 大滝の前で足が止まる。



 石の上に、鴨のようなものが載っているではないか。まったく動かないので、最初は置物かと思ったが、どうやら生きているようだ。



 人馴れしているのか、ふてぶてしいのか、カメラを向けても動じる気配がない。
 財閥の庭園にふさわしく、気位が高いのかもしれない。
 園内でもらったリーフレットを見ると、洋館の説明には意外な言葉が並んでいる。
「英国貴族の邸宅にならった古典様式で、天然スレートぶきレンガ造り。外壁は伊豆真鶴産の赤みをおびた新小松石(安山岩)で覆われており、雨にぬれると落ち着いた色調をかもしだします」
 つまり、この洋館は、晴れの日と雨の日とでは、印象が変わるのだろう。しかも、雨の日がおススメらしい。ということは、ここに来て正解だったということか。
 雨が降ったら、ぜひ、旧古河庭園へ。






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