これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

人生スイッチとマロンシャンテリー

2015年07月30日 20時29分11秒 | エッセイ
「13:45からの『人生スイッチ』は満席となりました。ご了承ください」
 有楽町の映画館に行ったら、チケット売り場でこのセリフが何度も繰り返されていた。これから私が観ようと思っていた映画ではないか。チケットがすでに完売ということは、あきらめて帰るか、次の回まで待つしかない。

 2時間以上あるけど、次の回にするか……。

 都心には、時間をつぶす場所がいくらでもある。急いで職場を出たから、喉が渇いていた。まずはカフェでお茶を飲むことにした。
 
 そうだ、東京會舘のマロンシャンテリーを食べよう!



 5分も歩けば、映画館から東京會舘に着く。はずだったが、運悪く丸の内本館は工事中で営業していなかった。引き返す手前で、ふと思いつく。

 このまま真っ直ぐ行けば、三の丸尚蔵館に行かれるな……。

 宮内庁三の丸尚蔵館は、皇居東御苑内の美術館である。無料で国宝級の展示品が拝めるし、広々とした皇居は居心地がよく、時間つぶしにはもってこいだ。少々距離があるけれど、私は北に向かって歩き続けた。
 現在は、「絵巻を愉しむ~《をくり》絵巻を中心に」という展覧会が実施されている。



 館内には、鎌倉時代の「絵師草子」、室町時代の「住吉物語絵巻」、江戸時代の「小栗判官絵巻」など、古さを感じさせない絵巻が展示されていた。特に気に入ったのが江戸時代の「彦火々出見尊絵巻」で、緻密で写実的なタッチに絵師の力量を感じた。色彩のグラデーションも見事で、アニメや漫画文化のDNAはこの時代からすでに受け継がれていたようだ。
 江戸時代の「酒呑童子絵巻」も、金箔が随所に使われていて実に豪華。いつもはひと回りしたら帰るのだが、その日は引き返して二度三度見た。映画が満席で、かえってよかったかもしれない。
 目の保養のあとは水分補給のため、パレスホテルのラウンジに向かう。メニューを見て「あれっ」と驚いた。食べ損ねた「マロンシャンテリー」ならぬ「マロンシャンティイ」なるケーキがあるではないか。ウエイトレスに聞いてみると、これはパレスホテルの伝統メニューだという。食べ比べるのも一興だろう。
「お待たせいたしました」
 まずはアールグレイが運ばれてくる。



 何で泡が立っているんだろう……。

 次に、マロンシャンティイがやってきた。



 見た目は、マロンシャンテリーにそっくりである。



 しかし、味はかなり甘め。生クリームにも栗にも、砂糖を入れすぎた感がある。これはこれで美味しいとはいえ、少々しつこい。私はマロンシャンテリーに軍配を上げたい。
 ひと休みしたら有楽町に戻る。ホテル前のこの景色が印象的だった。



 映画館に到着した。待ち時間はあっという間に過ぎ、映画「人生スイッチ」がスタートする。



 最初の話は、調布の飛行機墜落事故を連想させ、タイミングが悪い。2つ目、3つ目もブラック過ぎて笑えなかった。決してつまらないわけではないが、関東風の厚焼き玉子を頼んだら、関西風のだし巻き玉子が出てきたような違和感である。期待しすぎたのかもしれない。
 最後の話はハチャメチャ結婚式で、これだけは楽しかった。堅苦しい日本にいると、周囲とのあつれきを避けるため、自分の気持ちを抑えてストレスをためがちだ。でも、好き放題暴れるヒロインを見たら、ストレスが吹き飛んでいくような爽快感があった。イライラも解消し、待っていてよかった。
 来月は、日本橋に行く用事がある。三越の本館7階特別食堂では、東京會舘のマロンシャンテリーが食べられるはずだ。
 楽しい映画を見て、ストレス解消。
 美味しいものを食べても、ストレス解消。


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ターミネーター:新起動/ジェニシス

2015年07月26日 19時58分12秒 | エッセイ
 念願かなって、やっとやっと「ターミネーター 新起動」を見に行くことになった。
 どうせなら、迫力満点の3Dがいいのだが、徒歩圏の映画館では吹替版になっている。なぜ、字幕ではないのか。観客をナメていると反感を持ち、わざわざ電車に乗って3D字幕版を上映している映画館まで出かけた。
「ターミネーター」は今回で5作目になるが、私は3作目、4作目を見ていない。2作目は傑作だった。ラストでは泣いてしまい、パンフレットは今でも大事に取ってある。



「ターミネーターってどんな話? 初めてでもわかるかなぁ」
 どこにでもついてくる娘が不安そうに聞いてきたが、心配は無用である。前回までの復習が冒頭に登場したため、うろおぼえだった私にもありがたかった。劇場内は中高年で埋めつくされており、同じ思いを抱いた観客も多いに違いない。
 ストーリーはさておき、これを3Dで見ると相当な迫力がある。たとえば、T1000が執拗に追いかけてくる場面では、凶器が鼻先に突きつけられる恐怖感や、爆破、炎上の臨場感が桁違いに大きい。いい年をして、「ひいい~」と悲鳴を上げそうなくらい怖かった。シュワちゃんと敵が殴り合う場面では、重量感とスピード感が半端なく、まさに目が釘付け。上映時間は126分とあるが、60分くらいしか経っていない気がした。
 実家にいた頃、地上波で放映された1作目を、家族みんなで見たことがある。母は「ターミネーターがどこまでも追いかけてきて、おっかないよ!」と怯えたものだ。もし3Dで見せたら、恐ろしさのあまりチビるかもしれない。
 キャストに関しては、終わってから娘と言いたい放題である。
「サラは可愛かったね」



 回想する娘に、すかさず、2作目のサラを見せてやる。



「えっ、これがサラ? 男が女装してるみたい」
「ジョンも美形だったんだよ」



 2作目では、エドワード・ファーロングだったのだ。しかし、5作目ではなぜこの人なのか……。



「全然別人じゃん。キモ~」
 娘は容赦なく続ける。
「しかも、パンフレットだとセンター。どういうこと?」
 たしかに、表紙の中央には、ジェイソン・クラークが居座っていた……。



「イ・ビョンホンが出ていたね」



 冷徹なT1000になり切り、背筋の凍る暗殺者が板についていた。彼のことはよく知らないが、人気だけでなく実力もあるとわかった。
 ちなみに、2作目では、鋭利な刃物のようなロバート・パトリックが演じている。どちらも適役といえる。



「ミキは、初めてシュワちゃんのカッコよさがわかった」
 そうだろう、そうだろう。
 2作目ではもっとカッコよかったのだ。
 こんな場面や



 こんな表情もあり、無敵のヒーローそのままであった。



 5作目も負けていない。



 また、1作目から見たくなった。レンタルしようかなぁ。


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どちらもパナソニック製

2015年07月23日 21時10分05秒 | エッセイ
 風呂上がりに髪を乾かしていたら、パナソニック製のドライヤーが急に動かなくなった。コンセントは入っているのに、うんともすんとも言わない。すぐに諦めてスイッチを切った。



 これは、変圧器内臓タイプで、海外でも使用できるものだったのだが……。2年ほどしか使っていないのに、もう壊れたかと悔しくなった。

 まだ実家にいた頃は、古い家電で怖い思いをしたことがある。
 大学から帰ってきたら、掃除機の一部分が黒くなっていた。ちょうど、コンセントのつけ根あたりだ。どこのメーカーか忘れたが、この掃除機も、ときどき止まることがあり、母はイライラしながら使い続けていた。しかし、この日はついに、止まるどころか火を噴いたそうだ。
 くるくるドライヤーでも似たようなことがある。実家には、母、姉、私、妹と4人も女がいた。当然、ドライヤーの稼働率は高い。ホコリやフケ、抜けた髪などが内部にたまっていたのかもしれない。ある日、やたらと持ち手が熱くなり、部屋中に何かが焦げるような臭いが充満した。
「ドライヤーじゃない?」
「危ないよ、それ。すぐ切って」
 掃除機で家電製品の危険を学習した私たちは、すぐに電源を切りコンセントを抜いた。プラグまで熱くなっていた。

 30年ほど前の記憶がよみがえり、新しいドライヤーを買わねばと、私は電器屋に急いだ。
 池袋の駅前には、家電量販店が2つある。このところ、暑くてたまらないので、駅構内に直結しているほうの店を選んだ。
 店員に聞くと、ドライヤーは地下1階で扱っているらしい。なるべく早く帰って、夕飯の支度をしたかったから、売り場の係員に声を掛けた。
「すみません、一番パワーの強いドライヤーはどれですか」
「強いドライヤー欲しいですか? これ、売れてます」
 まだ20代前半に見える女性係員だが、日本人ではないようだ。話し方からすると、中国人だろう。
「1200ワットです。1個しか残ってません」
 彼女は、最後の1箱を指してこちらを見た。結構な値段がついている。定価で20000円弱、値下げしても15676円。ドライヤーは10000円未満で買えるものだと思っていたから、予算オーバーだ。日本語に詰まりながらも、彼女は熱心に説明を続けた。
「ナノイーついてます。髪傷まないから人気です」
 ナノイー? なんじゃそれ。詳しく聞きたかったが、言葉のハンディを考えると、ちょっと無理かもしれない。何で日本人スタッフではないのか疑問に感じたが、中国人の爆買い対応では日本人スタッフよりも頼りになるのかもしれない。結局、「時間ないし、まあいいか」と妥協することにした。
「じゃあ、これにします」
 目を大きく見開いてにっこり笑い、彼女は商品を手渡した。なかなか可愛らしい。
「こっちのレジ混んでます。空いてるほうにご案内します」
 行列の短いレジに連れて行ってもらい、彼女とお別れした。なんだかんだで、中国人にも日本人にも、商売上手な係員だったに違いない。
「あのう、ポイント使えますか」
 レジで申し出ると、いくらたまっているかを確認してくれた。
「今、18000円分あります。全額ポイントでお支払いされますか」
「はい」
 そんなにポイントがあるとは知らなかった。かくして、私は1円も払わず、新しい、これまたパナソニック製のドライヤーをゲットしたのである。



 スイッチを入れると、ピンクの女性的なボディから思いがけない突風が吹き荒れ、髪の毛がもぎ取られそうになる。濡れた髪がすぐに乾き、「強いドライヤー」の威力を思い知る。さて、壊れたドライヤーを不燃ごみに出さねば。一応、もう一度コンセントに差し込んでみると……。
「ブオー」
 あれれ。
 動かなかったはずのドライヤーが、身の危険を察知したのか、急に作動し始めた。
 今さら遅いっちゅうに。


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クレオパトラとエジプトの王妃展

2015年07月19日 22時07分48秒 | エッセイ
 大学1年の娘はエジプトに関わるものが好きだ。高校時代に世界史を選択していた影響であろう。
 彼女を喜ばせてやろうと、こっそり「クレオパトラとエジプトの王妃展」のチケットを買っておいた。



「わあ、何これすごい! 19日なら予定がないから、早く行こうよ~♪」
 案の定、彼女は食いついてきた。
「ネットで調べたら、小さな展示物が多いみたい。オペラグラスを持っていこうか」
「うん。ちょっと待って。……はいこれ」



 予想通りのはしゃぎようだ。梅雨明けの猛暑の中、上野・東京国立博物館まで足を運んできた。



 さほど混雑してはいない。まずはロッカーに荷物を入れ、身軽になる。筆記用具は鉛筆のみで、シャープペンは認められないから借りればよい。
 チケットを提示し、中に入ったところで気がついた。
「あ、オペラグラス、ロッカーだ……」
「ちょっと、お母さ~ん!」
 せっかくバッグに入れたのに、間抜けなことをしてしまった。私らしいといえばそれまでだが。
 この展示は、5つの章に分かれている。
 第1章 王(ファラオ)をとりまく女性たち
 第2章 華やかな王宮の日々
 第3章 美しき王妃と女神
 第4章 権力をもった王妃たち
 第5章 最後の女王クレオパトラ
 展示品は181あるが、印象に残ったものはさほど多くない。
 たとえば、第2章に「王宮の窓」という作品があったが、柵が牢獄を連想させ、実は似たようなものなのかもしれないと考えさせられた。
 レリーフは素晴らしい。第2章の「王の養育係の長メリラーと王子のレリーフ」、第3章の「プトレマイオス8世とクレオパトラ2世のレリーフ」、「王妃のレリーフ」の前では足を止め、隅から隅までじっくりと観察してみた。
 圧巻だったのは、第5章の「アクティウムの海戦のレリーフ」である。大きさや重量感もさることながら、戦の緊迫感が伝わってくる。ケンタウロスのいる舟にはアントニウスが乗っているが、対峙するオクタウィアヌスに敗れるところなのだ。
「何でこっちがアントニウスってわかるんだろう」
「名前が書いてあるとか」
「体育着に?」
「ははは」
 周りの客は「くだらない会話をしている親子だな」と呆れたかもしれない……。
 ひときわ大きな人だかりで賑わっていたのは、第4章の「アメンヘテブ3世の王妃ティイのレリーフ」である。


(写真右 朝日新聞 記念号外より)
 王妃の肌のなめらかさ、美しさ、清らかさが見事に表現され、「アメンヘテブ3世は何と幸せな男であったことか」と遠い過去に思いを馳せる瞬間だ。説明文には「傑作」と評されており、何も異論はない。
 残念だったのは、彫刻では鼻や腕、足、頭などが欠損している展示品が目立ったことだ。特に、第3章の「ハトホル女神をかたどった柱頭」は、顔が左半分のみで、所有者が誰かと半分こしたのかと想像した。また、王妃に焦点を当てた割には装飾品も少なく、キラキラしていて豪華なものが好きな私には、納得いかなかった。
 満足度としては、「ツタンカーメン展」や「大英博物館展」に比べると、少々物足りない。過度の期待をせず、気楽に出かけることをお勧めしたい。
 出口で時計を見ると、11時15分。ランチの予約が12時だから、まだ時間がある。
「特別展のチケットで、総合文化展も見られるよ。東洋館の2階にエジプト美術があるから、行ってみる?」
「え、ホント? 行きたい、行きたい」
 娘はショップも素通りし、東洋館を目指して歩き出した。ここは基本的に写真を撮ることができる。
「あった、あった」
 まずは、牝ライオンの姿をした「セクメト女神」が目に入る。



 これは、戦を司り、病を癒す女神である。気品があり神々しい。
 少し離れたところに、またレリーフがあった。



「いいね~、東洋館は」
 私も娘も、一気に満足度が上昇する。
 東京国立博物館のよい点は、展示品が山ほどあるところだ。特別展が不完全燃焼でも、他の作品で十分穴埋めできる。東洋館以外に本館もあり、すべてを見るには丸1日程度必要だろう。平成館の2階以外は、撮影禁止品でなければ写真も可だし、カフェやレストランも充実している。一度、開館から閉館まで滞在するのもいいかもしれない。
「さあて、ランチだ~!」
 美術鑑賞と同じくらい、楽しみにしていたお食事タイムがやってきた。
 上野精養軒「天皇の料理番」コラボメニューはこちらから。


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休校の裏側

2015年07月16日 21時23分46秒 | エッセイ
 台風は遥か彼方だが、朝から威勢よく雨が降っていた。ジャンジャンドバドバ、ズーズーザーザーと、お祭りのような賑やかさだ。

 これはもしや……。

 案の定、大雨洪水警報が発令されていた。私の勤務する高校では、午前6時の段階でエリア内に何らかの警報が出ていると、まず午前中の授業がなくなる。10時になっても解除されなければ、その日は休校である。昨日は23時半過ぎまで教材を作り、睡眠不足だというのに、何たる仕打ちであろう。
 教員は、雨が降ろうが槍が降ろうが出勤だ。交通機関に影響が出る前に、いそいそと家を出た。
「笹木せんせーい、今日は学校ありますかぁ!?」
 校門の手前で、女の子たちが話しかけてきた。彼女たちは警報を確認せず、登校してしまったようだ。
「警報が出ているから、今のところなし。でも、校内で待機していてね」
「はあーい」
 こういう日に、間違えて登校するのは、たいていが気のいい子どもである。「授業がないなら来なきゃよかった」などとふて腐れることもなく、おしゃべりしたりスマホをいじったりして10時になるのを待っていた。
 食べ盛りのせいか、男子は早々にお弁当を開いている。
「あれ、朝ご飯、食べてこなかったの?」
「食べてきた。でも、もうお腹がすいちゃって」
 女子はお菓子を広げ、笑いながら手を伸ばす。まるで、校内ピクニックだ。大人になってから、「そういえば、こんなこともあったな」と思い出すのではないだろうか。
 そして迎えた10時。警報は解除されていなかった。
「みなさん、今日は休校になりました。今ならちょうど雨がやんでいるから、気をつけて帰りましょう」
「はあーい」
 突然の休校で、困ったこともある。学校に出入りしているパン屋さんだ。良心的な価格で、美味しい手作りパンを売りに来てくれるのに、今日ばかりは客が足りない。売れ残っては気の毒だからと、ひと言つけ加える。
「そうそう、パン屋さんが来ているよ。今日は生徒が少ないから、選び放題。好きなの買えるからね」
「えっ、マジ? 行こう行こう。先生、さようなら」
 早弁した男子たちが、今度はパンを求めて走る。一体、どれだけ食べるのだろうか。負けじと女子も購買に向かい、パンの争奪戦が始まった。その日に限っては、値引きまでしてくれたそうで、お得感がいっそう高まったようだ。
 職員室では、教員にも協力を求められる。
「先生方も、よろしければパンを買っていただけますか。よろしくお願いします」
 パン販売担当の先生に頭を下げられては、買わないわけにいかない。お弁当はあるから、パンは明日の朝食にすればよい。
「コロッケパンとメロンパンください」



 これで220円なら安い。
 お弁当のあとに、甘いものが欲しくなり、メロンパンを平らげた。クッキー部分はしっとり、中はふわふわで、焼き立ての味が楽しめた。
「パンが完売しました! 先生方、どうもありがとうございました」
「よかったね~!」
 誰もが「今日はいいことをした」という気分に浸り、ホッとする。
 休校の裏側では、こんなことが起きていたりする。


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しらたき愛

2015年07月12日 21時20分34秒 | エッセイ
 気になる本があると、すぐ買ってしまう性分である。
 先日購入したのは『しらたきレシピ』という、しらたきを使った料理の本であった。



 しらたきは美味しくてローカロリー、しかも便秘に効くから、詰まりやすい私にちょうどいい。中を開いてみると、パスタや麺の代わりに、しらたきを使うレシピがたくさんあった。
 表紙にはナポリタンが写っているが、私が好きなのはカルボナーラ。昨日、さっそく作ってみた。
 しらたきは1人前200gと書いてある。あくぬき済みのしらたきは割高でも、使い勝手がよくて便利だ。



 まずはオリーブオイルでにんにくのみじん切りを炒め、ベーコン、しらたきを加えてさらに炒める。
 いったん火を止め、生クリーム、卵黄、粉チーズ、塩を混ぜたら再び過熱し、黒こしょうを振ってできあがり。



「美味し~い」
 もちろん、パスタで作る方が美味だと思うけれど、しらたきも結構イケるのだ。しかし、200gのしらたきは、少々重かった。もうちょっと、減らした方がいいかもしれない。
 翌朝は、予想通り快便。お腹がスッキリしたので、気分がいい。
 今日は日曜日だが、朝から職場に出かけ仕事をした。昼過ぎに解放され、ランチを何にしようかと考える。真っ先に浮かんだのが、ケンタッキーのチキンフィレサンド。でも、「醤油ラーメンの代わりにしらたきを使ったら、どんな味がするのかな」と実験したくなり、ケンタッキーは来週にした。
 またまたスーパーへ。お手軽な醤油スープと、チャーシュー、そして150gのしらたきをゲットした。



 このしらたきは、あくぬきをしていないので、5分ほど茹でなければならないけれど、値段が安い。ケンタッキーではないが、惣菜のチキンも買って、フルーツやトマトを添えればそこそこのランチになる。



 しらたきは偉い。カルボナーラだけでなく、醤油スープにもバッチリ合うではないか。誰とでも仲良くなれる、社交性バッチリの女の子のようだ。広く浅く、鍋物はもちろん、和洋中に渡って存在感を示す食材は、そうそう多くはない。ハマりそうな予感がした。
 食後はプリンと昼寝。
 7月8月は持ち帰り仕事もなく、本当にのんびりできる。
 この自由な時間を使って、もっともっと、しらたきと親交を深めなくっちゃ!


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ハエハエ カカカ

2015年07月09日 21時07分33秒 | エッセイ
 20年ほど前、スイスに行ったときのこと。
 森の中にあるレストランで夕食をとったら、お料理が運ばれてくるやいなや、ハエが十数匹たかってきた。皿の10cmほど上を、円を描くようにブンブンと飛び回っている。
「シッシッ」
 私も夫も、左手でハエを追い払い、右手でフォークを動かすという芸当を強いられた。他のテーブルにも、バカンスを楽しむ外国人の姿があったが、私たちと同様に顔をしかめながら、ハエの襲撃を防いでいる。
 こんな食べ方では美味しいはずがない。ひたすら「早く食べ終わらなければ」と焦るだけで、写真も残っておらず、何を食べたかすら記憶にない。
 そのときは、苦労のかいあって、ハエが料理にとまることもなく「セーフ」だと思っていた。
 しかし、今週号の『日経ビジネス』の「害虫の逆襲に備えよ」を読み、自分の甘さを思い知らされた。ハエは5~6分に1回の頻度で排泄をするという。ハエがとまらなくても、フンが料理に落ちることで、O157などの病原菌に感染するリスクがあるそうだ。知らないだけで、お皿の上にはハエが「ボトボト」と落し物をしていたのだろう。
 忌々しい……。
 姉は子どものとき、よく両手の掌を合わせて、ハエの真似をしていた。楽しそうだったので、私もやってみたが、今は絶対やる気にならない。
 蚊も大、大、大、大、大っ嫌い。手や足に、黒い黒子のような虫がへばりついていたら、とても平常心ではいられない。背筋が急速冷凍され、心臓が打ち鳴らされて鳥肌が立つ。しかも、コイツを叩きつぶしても、一週間ほどはかゆみに悩まされるのだ。
 蚊のヤロウ、いや、血を吸うのはメスと決まっているから、オバハンかもしれないが、こちらも『日経ビジネス』にはとんでもないことが書かれている。何と、蚊に刺されたことでマラリアなどに感染し死亡する数は、世界で年間72万5000人に上るそうだ。殺人や戦争などによる死亡例が、年間47万5000人というから、驚異的な数であろう。こんなにも、多くの人の命を奪っているとは思わなかった。
 昨年はデング熱が流行し、怖い思いをした。今後も引き続き、警戒しなくてはならない。
 もしや、蚊を見てギョッとするのは、遺伝子に刻まれた警戒警報なのかもしれない。


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30年ぶり マッドマックス4

2015年07月05日 20時09分35秒 | エッセイ
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観てきました。



 前作である「マッドマックス サンダードーム」が1985年公開ですから、実に30年ぶりとなります。



 フリルやレース、お城にお花など、美しいものをこよなく愛するワタクシにとって、暴力や狂気の渦巻く世界は非常にストレスです。でも、愛してやまないメル・ギブソン演じるマックスが、トム・ハーディという俳優でどのように再現されるのか、この目で確認したかったのです。
 しつこく降っていた雨もやみ、お天気にも「さあ行っておいで」と送り出していただいた気がしました。
 期待に反し、上映開始後1分で、ワタクシは劇場に来たことを後悔します。トム・ハーディと、シャーリーズ・セロンは目の保養になりますが、あとのキャストは何なのでしょう。男性は、一人残らず醜いメイクを施されています。



 マックス以外は全部カス、という表現が相応しいかもしれません。髪はなくスキンヘッド、頭から顔まで不気味な白塗りなのに目の周りは黒、口元には縦ジワをつけて、ガイコツそのものです。とても正視できず、スクリーンから目をそらしたくなるほどのキモさでした。おそらく、中には数多くの女性を泣かせたイケメンもいるはずですが、このメイクからはまったくわかりません。ジョージ・ミラー監督は、男優たちに恨みでもあるのでしょうか。
 ストーリーは実に単純です。組織を裏切ったシャーリーズ・セロンがガイコツどもに追われ、マックスの協力を得て逃げる。上映時間は120分ですが、それ以外はありません。見せ場はカーチェイスのみとはいえ、追われる者のスリルが味わえて、ドキドキハラハラし続けます。大変心臓に悪いです。
 今回は美女たちも数人登場するので、彼女たちを見れば和みます。肌もあらわな薄着ですが、この無力さや可憐さ、子を生むことのできる生殖力があればこそ、ガイコツ男どもが手出しできないという状況が痛快です。この薄物が彼女たちの戦闘服なのです。
 走って走って走り続け、映画は終わります。120分のほとんどがカーチェイスに費やされており、内容に無理があることを差し引いても、スピード感とスリルは圧巻でした。その証拠にエンディングロールが流れても、すぐに立ち上がれない観客が多かったようで、劇場内が照明がついてから出口に向かっていました。
 新マックスの評価としては、合格点をつけたいです。他の登場人物がブサイクなせいか、マックスがやけにカッコよく見え、すべてを頼りにしたくなります。そういえば、過去のマッドマックスシリーズにも、イケメンは登場しませんでした。そして、マッドマックス1作目から、私はメル・ギブソンのファンになったのです。今にして思えば、ミラー監督の術中にはまったような気がします。
 劇場から出て、空を見上げました。また雨が降っているのではと予想していたのですが、冷たいものは落ちてきませんでした。
「お帰り。今なら濡れずに戻れるよ」と頭上からささやかれ、ワタクシは気をよくして家に着いたのです。
 次は、トム・ハーディの映画が観たいと思っています。


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まだかまだか

2015年07月02日 20時13分29秒 | エッセイ
 歯列矯正のため、娘が月イチで歯科大に行く。一人で行かれる年齢とはいえ、支払いが高額になったり、保護者の同意が必要な治療があったりで、私か夫が付き添うことにしている。
「今日行ったら、会計システムが変わってたよ」
 これまで、会計窓口で名前を呼ばれる昔ながらの方式だったが、個人情報の問題なのだろう。受付で番号札を渡され、掲示板に自分の番号が表示されたら、支払いをする方式に変わったと夫から聞いた。
 娘は、なぜか不満そうな顔をしており、夫がトイレに立った途端、「今日あった出来事」を話してくれた。
「お父さんに、番号何番? って聞いたら、819番だって言うんだよ」
 掲示板を見ると、まだ600番台だったため、これは相当時間がかかるとウンザリした。10分経ち、20分が経過しても、番号はなかなか進まない。「まだかまだか」とイライラして待った。
 夫は居眠りをしていたが、周りを見ていた娘は、あとから来た患者たちが、会計をすませて帰ったことに気づいた。これはおかしい。
「ねえお父さん、番号札見せてよ」
「んが?」
 娘に起こされ、夫はカバンから小さな札を取り出した。
「ちょっと、逆さまじゃない!」
 夫が「819」だと思い込んでいた番号は、「618」の間違いだったそうな……。



 夫がトイレから戻ってきた。
「新しいシステムになったら、待ち時間が長くなったな」
「…………」
「…………」
 私も娘も、二の句が継げなかった。
 この方式は、年寄りに向いていないかも……。


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