“さるかに合戦”  臼蔵 と 蜂助・栗坊 の呟き

震災や原発の情報が少なくなりつつあることを感じながら被災地東北から自分達が思っていることを発信していきます。

宮城水産特区認定に反対

2013年04月24日 06時06分44秒 | 蜂助の呟き

こんにちは、蜂助です。

今日は全国的に雨やぐずついた天気になりそうです。

復興庁が4月23日、沿岸漁業権を民間企業に開放するため宮城県が申請していた水産業復興特区の推進計画を認定しました。私も臼蔵さんも水産業復興特区について反対の記述をしてきましたので、再度触れることはしません。

私が気に入っている学者の一人で、東京海洋大学の濱田武士さんという人のことを紹介しているブログがありましたので紹介します。

http://raizo.daa.jp/archives/2013/0412_1920.php

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いきつけの幸福書房は、小さいながらもみすず書房の本が充実しています。みすずの本Webサイトで新刊をチェックしていたら、3月の新刊にこの本がありました。これはただの震災本とは違うなという予感の元、せっかくなら幸福書房で買うべく事前予約。さすが幸福書房、みすずの新刊は一通り入るはず…とのことで発売早々に入手しました。ただちょっと読むのに時間がかかった…。

この濱田先生は、東京海洋大学の水産経済学の先生で、もちろん震災前から三陸沿岸〜福島沿岸まで、東北の漁場をフィールドとして調査されてきた方です。

大学の先生の著書だけあって、専門用語(ただし漁業関連)や数値データなども多く、さらさら読めるタイプの本ではありません。夜、寝る前に読むとすぐ眠たくなってしまうぐらいだったのですが、難しいのだけれど不思議と面白いのです。知らないことがたくさん書かれていたからでしょうか。

まず前書きの前に「漁法の説明」あり。まき網って巻網ではなく旋網って書くのですね。漁法の違いがわからないと本書も理解できない…と。

戦後の三陸を中心とした東北の漁業の歴史をおさらいしていくところから始まりますが、もうそもそもここがわかっておりませんでした。漁業は常にその時のトレンドのような流れがあり、常に変化していたのです。まあ単純にいえば、養殖も含めて、いわばよりもうかる方向に、漁法や対象魚種がその時々で変化しています。そういえばそうか…とは思いましたがこれは意外でした。

そして震災被害と復興のお話。ここでは、県別に取り組みが紹介されていましたが、特に岩手県と宮城県の取り組みの違いにがく然としました。隣の芝生は青いといいましょうか、宮城県人としては岩手がうらやましい。岩手は漁業に対する取り組みが、現場主義でしっかりしている印象です。県の政策によっても格差は大きくなるということです。これは、宮城県の三陸地方が、市町村合併や漁協の大合併により。対応力が相対的に低いことも原因になっているそうです。ううむ。しかし展望のいまだみえない福島県よりはまだ良いのかなぁ。

そして食料基地構想と水産復興特区の話。個人的には、特区申請された桃浦は私の地元石巻のが舞台となっており、ちょっと気になるニュースの1つ。桃浦も小さな浜なので、漁協もやらせてあげなよ…と単純に考えていましたが、県のやりかたも拙速すぎたようですね。やはりある程度事前に調整しておけばここまでもめなかったのでは。ちなみに濱田先生は、これは企業参入という「自由化」を推し進めるかのような単純な問題ではなく、漁業の様々な問題がからんでいるので、慎重に進めるべきであるという主張。

漁協の話しもたっぷり出てきます。なんと宮城県には漁協が5つしかないということにびっくり。いつのまに…と思ったら2007年に31の組合が大合併したのだそうです。それじゃあ浜ごとにどうこうなんて言っていられないのもわかります。漁場調整や地域での共同活動、漁業資源を守るための活動などの大切な役割も担っている漁協ですが、「特区」に対抗するためには「協同組合」の本来の姿を取り戻す必要がありそうです。

漁業の本としてはめずらしく、メディア災害についても取り上げています。先の「特区」にからんだ漁業権開放論については、一方的にマスコミにやられている漁協の擁護も。漁業権を開放するということは、その後は県が責任を持つべきであるのに、そのあたりがなんとなくグレーなんですよね。

という具合に、漁業の盛んな地方に育った(いや、よくよく考えれば家業も漁業関係だった…)者としても、知らないことばかりで不勉強を大いに反省。そして大いに学ばせていただきました。いわば大学で先生のゼミをみっちり受けたような読後感でありました。

そもそも三陸沿岸の町は、漁業があるからこそ人が住み着いた地がほとんど。著者の言う通り、集落の再生と水産加工業も含めた漁業の再生は表裏一体です。本書は、漁業という自然を相手にした生業を「経済・文化・環境」を再統合することで、漁業における「人格」が復興し、地域も再生するという言葉で締めくくられています。関連産業も含めて漁業の再生は最も大きなポイントです。元通りに復興するというよりは、これを機に新しいスタイルでリスタートできるといいですね。漁業はこれまでもそうやって変化して来たのですから。

※こちらは先日の日曜日に掲載された朝日新聞の書評から。
書評:漁業と震災 [著]濱田武士 - 萱野稔人(津田塾大学准教授・哲学) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

私が書くと、どうしても読書感想文なんだよなぁ。少し恥ずかしいですが、たぶん私の今年のベスト10に入る本だと思いますので、ご紹介させていただきました。

書評:漁業と震災・・・のコピー

■「上から目線」の改革論を批判

 もしかしたら漁業ほど、東日本大震災後のさまざまな復興論にふりまわされた産業はないかもしれない。たしかに日本の漁業は、大震災によって壊滅的な被害を受けるまえから衰退していた。何よりも担い手の高齢化がとまらない。なかなか漁業だけでは食えず、後継者が育たないからだ。漁業組合も停滞し、いまや補助金なしではなりたたない。水産資源の減少も深刻だ。こうした現状から、漁業は高齢化社会の象徴であり、大震災を契機に再生すべき典型的な産業とされたのである。
 そうした復興論のなかには、たとえば漁獲高をより厳しく制限することで漁業の構造転換を図ろうという提案もある。漁獲高を厳しく制限すれば、漁業者は市場で高値のつく大きな魚を選別して獲(と)るようになり、また乱獲も防げるため水産資源も保全されるからだ。私もかつて本紙で同様の提言をしたことがある。
 しかし筆者はこうした復興論を、現場を無視した「上から目線」の改革論にすぎないと批判する。筆者は言う。日本の漁業はこれまでも漁業者間の利害衝突を繰り返しながら漁獲制限のルールを作り上げてきたし、そうした内発性を無視して外から漁獲枠を強制しても実効性をもちえない。大型魚の乱獲も始まるだろう。そもそも水産資源の減少の原因は必ずしも漁獲の行き過ぎにあるとはいえない。
 筆者の批判は決して漁業の問題だけにとどまらない射程をもつ。事実、今の日本には現状分析をなおざりにし、複雑に絡み合った原因を単純化し、一挙に事態を改善してくれる魔法の解決策をもとめる改革論があふれているからだ。そうした改革論は事態を悪化させることはあれ改善することはない。問題をその複雑さのまま認識する力、そしてその複雑さを解きほぐしながら粘り強く解決策を模索していく思考力。漁業の問題をつうじて本書はそれを私たちに要求している。
    ◇
 みすず書房・3150円/はまだ・たけし 69年生まれ。東京海洋大准教授(漁業経済学)。『伝統的和船の経済』

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