佐伯祐三という画家がいる。
芸大を出て画家になった。
実家は浄土真宗の寺である。
住職は兄が継いだ。
次男の彼は絵描きになった。
結婚し、パリに渡り、ヴラマンクに師事した。
当初、ヴラマンクは佐伯の絵を見て、あまりにもアカデミズムに過ぎると激怒したそうだ。
日本に戻った。
懊悩が彼の心を占めた。
家族を連れ、再びパリに渡った。
パリの街角や、郊外の風景を描き続けた。
絵具を叩きつけるようなマチエールである。
オーヴェール・シュル・オワーズにも行った。
オーヴェールの町役場は彼の代表作である。
オーヴェールはゴッホ終焉の地だ。
彼もゴッホのように精神を病み、結核に冒され、食を断って死んだ。
一人娘の奈智子も彼と同じ病に侵され客死した。
異端のフォーヴィズムとはいえ、サロン・ドートンヌの大御所を務めた師、ヴラマンクとは余りにも異なった軌跡を歩んだ。
天才は奇矯である。
平凡が一番良い。
凡庸すぎるが調子はずれのオカブはどうしたらよいのか?
敷松葉ひるの小雨に濡れにけり 素閑
石仏松葉敷きたる寺の端 素閑
敷松葉はらりと開ける引き戸かな 素閑
敷松葉おとなふ人も少なかり 素閑
敷松葉六十間を歩きけり 素閑