ポニョ:さあ七月になりましたよ。クリシュナの物語も子供の頃から結婚して大人になり始めた頃のストーリーを始めますね。でもクリシュナの子供の頃のエピソードで忘れてはならないのは、クリシュナと兄弟のパララーマが学んだ先生の話や。この先生は神の化身に教えるというとても幸運な役割を持っておられたな。
ヨシオ:もちろんクリシュナやパララーマは全てを知っているから、知らんふりをして学んでいるんやけれど、それでも神の化身と一緒に過ごせるってよっぽど良いカルマを持っていたんやろ。では早速クリシュナとパララーマの教師の話を始めましょう。
神の兄弟パララーマとクリシュナは天頂に向かう太陽そのままに育ち、光輝は年と共に増しました。両親であるナンダとヤショーダとは、最もの事ながらマーヤの雲に覆われていたので、二人の将来について心を砕き、身分と環境に相応しい文学と科学、技術などを身につけさせたいと願いました。一家のグル、ガルガを招いて必要な儀式を行う為の吉兆の日と時を定めウッパナヤーナすなわち「弟子が師につく儀式」と称されるブラフマンの英知を得る為の秘儀参入の式を賑々しく祝ったのです。当日無数の施しがなされ多くの高価な品々が経典に定められた通りに分かち与えられました。ゴクラの村人達はもてなしに預かり幸せいっぱいでした。
更に両親は大勢の学者達を招きガルガとも相談して子供達に教育を授けるのに最も有能であり好ましい人物を選定したのです。一家のグル、ガルガはしばらく考えた後、ガンガのほとりの聖なる町カシに住むアヴィアンティ出身のサディーパ二という偉大な学者の元に子供達を弟子入りさせるのが最も良いと宣言しました。サディーパニは聖者である、と彼は言いました。両親は愛しい息子達を遠い国へ手放すことは忍びえませんでしたが、彼らとて真理を知っており、教師に就かない学問は盲目の知識である事を知っていました。それで彼らはガルガの言うことに従い、パララーマとクリシュナと連れてカシへ旅立ちました。聖地へ着くと両親はサディーパニに息子達を託し、重い心でゴクラに旅帰りました。
その日以来、パララーマとクリシュナとはサンディーパニの元で師に対する畏敬の念を持って学問に励みました。教師について学ぶ児童の数は何千、何万、何百万といます。しかし、教師に満足と喜びを与える振る舞い、学習態度を取る者は滅多に無く、百人に一人もありません。教師を満足させ、教えられた事を充分研究し、感覚の悦楽を避けて学問追求のみに専念し学問こそが本文であり義務であると常に意識している事ーそれが弟子の取るべき態度でありパララーマとクリシュナの態度はまさにその通りでした。二人は如何なる場合にも教師の講話の妨げをせず、如何なる時にも批判がましい言葉を口にしませんでした。二人は天と地を統べる最高の権威を持っていましたが、教師に対して尊敬と従順の念を持って仕えました。
二人は熱心に学業に打ち込み学問の妨げになるものを退けました。二人の就業態度と熱意を見たサンディーパニは、心に沸く歓喜の念を覚えました。そしてもっともっと深く教えたいとの願いを止め得なかったのです。サンディーパニは二人に、四つのヴェーダ、ヴェーダンダ、倫理科学、文法、法律学、経済の奥儀を授け知る限りの全てを教えました。世間には五年や一年、いや一ヶ月のうちに一つの学問をマスター出来る天才がいます。しかしパララーマとクリシュナがサンディーパニと共に過ごした期間はわずか六十四日間だったのです。そのような短期間に彼らは六十四項目の文学と科学とをマスターしたのです。それは彼らが学習という劇を上演したやり方でした。それは二人にとって、戯れに過ぎなかったのです。
二人の謙遜さと忠実さを喜び、豊かに捧げられる二人の敬意と好意を享受し、二人と楽しい会話を交わしつつ、サンディーパニは心の底から沸き起こる嘆きを隠そうとしても抑えきれずに涙を流しました。パララーマとクリシュナとはそれを見ましたが、長い間その理由を聞かずに黙っていました。遂にある日クリシュナは両手を合わせて師の前に立ち、尋ねました。
「師よ。お悲しみの訳をお聞かせ下さい。私たち兄弟は全力をあげて悲しみを和らげたいと思います。師の御心に歓喜を取り戻す事、それ以上に尊い重要な使命はありません。私たちを幼い少年だと思わず、何でもおっしゃって下さい。」
クリシュナがこのように言った時、サンディーパニは安堵の気持ちを覚えました。彼は気を取り直し、二人を側に引き寄せ、自分の両脇に座らせて、言いました。
「愛しい者達よ。あなた方を弟子に持ったのは、実に幸運であった。あなたの言葉を聞いた時、私は望みが叶う喜びを感じた。私は直感的に、あなた方が波の子供ではない事を感じている。あなた方なら、この仕事をやってのけるであろう。時にはそう思い、また時には疑いが頭を持ち上げる。」
こう言ったサンディーパニは言葉を切って涙を流しました。パララーマは師の蓮華の御足にひれ伏して言いました。
「師よ。なぜあなたは私たちを信用して下さらないんですか。私たちはあなたの息子です。あなたが至福でいる為には、私たちは生命をも惜しいとは思いません。」
二人の熱意と硬い覚悟に、教師は悲しみの理由を告げないでいる事を恥ずかしく思いました。
「子ども達よ!私は結婚してかなりの期間が経ってからやっと息子が生まれた。自分の命よりも大切に愛しんで育てた。ところがある日、プラバーサシェクトラの御前に行き聖なる海に浸っていた時に溺れてしまったのだ。私はあなた方二人に会い、謙遜な態度と真面目な修業ぶりを見て大きな慰めと歓びとを感じ、自分が失ったものをほとんど忘れる事が出来た。あなた方は学ぶべき事を極めて短期間に覚えてしまった。もう今となっては、あなた方をここに留めておく事はできない。別れた後は、誰を見守り愛すれば良いのか。」
教師は悲しみにわっと泣き出した。