武家聚落を訪ねた。 画像は3日、南九州市知覧で写す。
薩摩おごじょ
順路に沿って最初に入った武家屋敷で、薩摩おごじょが茶をふるまってくれた。喉が渇いていたので、もう一服所望しようとすると、おごじょが言いにくそうに、
「入園料をお支払いしましたか」
「払いましたよ。ちゃんと500円」
「そのとき、パンフレットをいただきましたか」
「いただきました」
「パンフレットを手に持たれるか、見えるようにポケットに挿されると、お支払いのお方と判ります」
鞄やポケットのなかを探しているうちに、パンフレットが出てきたので胸ポケットに挿すと、おごじょがため息をもらした。
知覧茶の一番茶出て武家屋敷 鈴 子
おごじょが担わされている役目は、茶のサービスだけではなさそうだった。
掃除婦
掃除婦が働いていたので、どこから通っているのか住まいを訊ねると、黙って石垣を指さした。
掃ぞめの箒や土になれ初む 虚 子
丁寧に掃いたのであろう。
花芭蕉
石垣の上に珍しそうなピンクの花が咲いていたので、住まいを訊いた掃除婦にまた声をかけた。
「あの花はなんですか」
「葉は芭蕉です」
答えが素っ気なかった。愚問を連発したのだろうか。
島庁や訴人もなくて花芭蕉 草 城
そのような島を訪ねてみたい。遠くないところにありそうだ。
築山
丹誠を凝らした築山を眺めているうちに、なぜ武家聚落の見学料が「入園料」なのか意味がわかった。家には人が住んでいるため、なかを観せるわけにいかないので、庭園をセールスポイントにしているらしかった。
さきほどの掃除婦は、薩摩武士の末裔なので寡黙なのかもしれないと考えた。
石南花を天井に描き庭に植ゑ 夜 半
どこかの名刹だろうか。
畳屋
武家聚落とは大通りを挟んで反対側に、大きな畳屋があった。畳屋とは猫の額ほどの土間が仕事場と思いこんでいたので、仕事中のあるじに訊いた。
「武家屋敷がお得意さんですか」
「ですよ。とくに親父の代までは、でしたよ」
「写真を撮らせてください」
「頼まれることが多かですよ。大学の写真クラブもわざわざですよ。武家屋敷ではなしに、ですよ」
路地ぬくし逆にも握る畳針 豊 水
縫い終わると、柄で畳の縁を均したりする。