老人ホームの庭隅を曼珠沙華が縁取っていた。画像は29日、鹿児島市谷山中央で写す。
つきぬけて天上の紺曼珠沙華 誓 子
いつかは、引用句を引用したいと考えていた。
桜島で下船すると近くに無料の足湯があり、旅姿の若い女があがったところだった。画像は27日に撮影。
青葉木菟母の足湯のながきかな 啄 葉
足を浸けてみると人肌と等温で、しばらくして足を抜いたが、すぐにまた浸けた。
時雨
そのうちに小雨が降りだした。
時雨忌に時雨ありたるめでたさよ 素 十
芭蕉を神のように崇めている俳人は多い。
連絡船に乗って、15分で桜島に渡った。画像は27日、鹿児島港で写す。
白靴や連絡船のタラップを 冬 二
運賃は150円だが、特別割引で50円だけ払った。
くろぐろ
頭上にくろぐろと雨雲か火山灰が覆いかぶさるようだった。通りかかった乗務員に聞くと、迷わずに雨雲と応じた。
なつぎぬや粒の灰降る桜島 古 畦
乗務員によると、火山灰ならば痛くてデッキに立っていられないそうだ。
小学校の昼休み。なんという装置なのか、女生徒がぶらさがって手で渡っていた。画像は26日、鹿児島市谷山中央で写す。
とんで来て夏蝶のやう女の子 恭 子
歳時記によると、蝶だけでは春の季語。夏蝶は揚羽蝶、挵蝶、斑蝶、蛇目蝶など。
黄色い曼珠沙華に黒揚羽がとまっていた。翅についている花粉が金粉を粧っているようにもみえた。画像は24日、鹿児島市平川町で写す。
金粉をこぼして火蛾やすさまじき たかし
大岡信「折々のうた」から抜粋すると「火に慕い寄り、焼かれつつ舞いつづける蛾。『金粉』をこぼして乱舞する蛾の『すさまじき』姿に、命の不可解な力と美がある。画家速水御舟の名作『炎舞』や、ゲーテ晩年の詩『浄福的な憧れ』が、死して無限の生命を得ようとする火蛾を一方は描き、他方は歌っていたのも思い合わされる」
私道のような細道を降りると、眼前に錦江湾がひらけ、大隅半島が霞んでみえた。画像は24日、鹿児島市平河町で写す。 半島のだく一湾の鰤場かな 一 水 蕎麦処
大隅半島ではハマチの養殖が盛んだと聞いたことがある。
街道沿いに蕎麦処の大きな看板が立ち、すこし離れたところに水車のある茅葺か藁葺の二棟の家があった。
新蕎麦や昔ながらの立場茶屋 昭 爾
駕籠舁が休憩した茶屋だろうか。
桜島
レストランの庭の椰子並木越しに桜島がみえた。
一湾の眺めを肴年忘れ 鬼 房
海の幸中心の忘年会。
ショッピングセンターの手芸品売場で、少女が熱心に端切れをあさっていた。画像は23日、鹿児島市東開町で写す。
着るよりも縫ふ楽しさや冬支度 節 子
昨今は生地を買って自分で縫うよりも、既製品を買ったほうが安上がりな場合が多いそうだ。
秋彼岸の今朝、エントランスホールに高価そうな生花が飾ってあった。聞くと、胡蝶蘭らしい。
画像は鹿児島市谷山中央で写す。
導かれ来し一卓の胡蝶蘭 夜 半
料理はヒラメのムニエルにコニャックだろうか。個人的には人参入りのさつま揚げに芋焼酎の方が食指が動くが。
裏通りの空地の隅に、阿像か吽像かわからない狛犬が鎮座していた。
口もとを眺めているうちに、一像だけなのは、別の場所に片方が存在しているのではなく、一像もって阿吽を兼ねているのではないかと考えた。画像は19日、鹿児島市谷山中央で写す。
白露に阿吽の旭さしにけり 茅 舎
加藤楸邨は、引用句は「ひろびろと露曼陀羅の芭蕉かな」「金剛の露ひとつぶや石の上」とともに作者は白露浄土を表していると称讃。
台風が逸れ雨が小降りになったので外出すると、民家の庭木が紅葉していた。画像は20日、鹿児島市谷山中央で写す。
近づけば暗黒であり大紅葉 ムツオ
きれいな紅葉も近づけば傷んでいる場合が多いので、目を細めて眺めるといいと教えてもらったことがある。
民家の緋合歓が雨粒をためていた。画像は19日、鹿児島市谷山中央で写す。
象潟や雨に西施がねぶの花 芭 蕉
象潟は文化元年の大地震で破壊される以前は「松島は笑ふが如く、象潟は怨むがごとし」(奥の細道)と、陸奥では松島と並び称されていたという。
川面を反射した日差しが橋のうらを明るくしていた。この現象には熟語があったはずと数日考えたが、頭に浮かばなかった。
画像は13日、鹿児島市和田で写す。
銀杏落葉城の裏道明るうす 三年史
落城に備えたみちだろうか。
赤色についで白色、黄色の彼岸花が咲いた。画像は16日、鹿児島市谷山中央で写す。
なかなか死ねない彼岸花さく 山頭火
最期は脳梗塞により、ころりと念願を果たしたといわれている。作者の辞世の句は「もりもり盛りあがる雲へあゆむ」
縷紅草が雨上がりのベランダに咲いていた。風船のような実がついたと思ったが、調べてみると別種の植物で、風船蔓というらしい。
画像は今朝、鹿児島市谷山中央で写す。
蔓に蔓からみてへくそ葛咲く 十 字
歳時記にはへくそ蔓は漢字で載っているが、作者は漢字で表したくなかったのだと思う。