老木の剝げ落ちそうな樹皮を、蔦が支えていた。
蔦の種類はわからなかったが、葉が青かった。画像は25日、印西市草深で写す。
子が育つ青蔦ひたと葉を重ね 三 鬼
放っておいても子は育つという句意だろうか。作者には戸籍上の妻にも、事実上の妻にも子がいたそうだ。
冬至過ぎの手賀沼の落暉を眺めた。
沼上の干網の影が実物のようだった。杭に百合鷗がとまっていた。画像は27日撮影。
沼統べて冬至の落暉赤かりし とし夫
歳時記では、冬至の別名が一陽来復である実感を味わった。
快晴無風、久しぶりに印旛村を訪ねた。画像は27日に写す。
冬桜
神社の境内に桜がひっそりと咲いていた。枝上には小さな蕾が生まれ、落花の終わった蘂も残っていた。
冬桜ことば足らざる思ひあり 敬 子
句作を推敲中なのであろうか。
掛大根
冬の畑に大根が懸けてあった。
妻と我沢庵五十ばかりかな 五 空
ほかにあまり惣菜はいらないのだろう。
花三椏
海鼠壁の上に三椏が莟んでいた。
三椏の花に光陰流れ出す 澄 雄
新年の嘱目吟と思う。
薪割り
薪を割っている男に声をかけた。
「写真撮らせてください」
「いいよ、撮りな」
男の返事に息の乱れはなかった。
薪割りの終りは激す紅梅に あまり
一刀両断。
落葉掃き
媼が落葉を掻いていた。撮影の許しを得ようと大声をあげたが、聞こえないようだった。
落葉掃く音の風にも似たるかな 怜 子
静かな里。
焚火
冬桜とは別の神社の境内で、掃き集めた落葉を焚いていた。
尻あぶる人山を見る焚火かな 喜 舟
境内の人たちに撮影の許しを請うと、つぎつぎと尻をあぶりだした。
枯野
媼が手押し車を押して、枯野道をゆっくりと歩いていた。
枯野行く人や小さう見ゆるまで 千代女
媼は近くで見ても小さかった。
市の貸農園に葉牡丹が列をなしていた。
KAWASAKIさんの葉牡丹園の縮図のようだったので、帰宅して調べると、KAWASAKIさんの指導によるものだった。画像は26日、印西市草深で写す。
葉牡丹の渦の吉相朝はじまる 南 畦
渦は旭を浴びているのであろう。
施設「いんば学舎草深」で屈強な男たちが餅を搗いていた。許しを請うて撮りながら、訊ねた。
「正月用には、早過ぎませんか」
「商売用です。売るんですよ」
画像は25日、印西市草深で写す。
杵にまづ湯気のからまり餅を搗く 東 人
搗く前にこねているのであろう。
家人がベランダに渋柿を干して19日目、黒ずんできたので食べてみた。ねっとりとして、甘味がいつまでも口内に残った。
改修ネットに覆われて日照時間が少なかったため、酒の肴になるのではないかと期待していたのだが。画像は23日、印西市西の原で写す。
干し柿の暖簾が黒く甘くなる 誓 子
暖簾の黒ずんだ塊から、順ぐりに食べているのであろう。
雨催いの冬至の日、大欅は丸裸だった。
画像は22日、印西市草深で写す。
けふ冬至餘生こたびはいかならむ 秋櫻子
「昨年の冬至から今日まで生き延びてきたが、こんどの冬至までにはどうなるだろうか」と解釈した。
歳時記によると、冬至と一陽来復は同じ日であり、大欅は見えないだけで、すでに芽を持っているはずだが。
ようやく改修ネットが除かれたので、日光浴をしながら写真の整理をしていると、犬が思い出し笑いをしているような画像が出てきた。
撮ったのは昨年4月26日、場所不詳。
座敷犬人の顔して昼寝せり 瑞 芽
人が一緒に昼寝していて、人犬相似ているのだろうか。
椿か山茶花らしい木のなかから、か細くて単調な小鳥の声が聞こえた。
カメラを構えていると、赤い花びらがひとつ落ちて目白が現れ、めまぐるしく枝移りした。画像は15日、印西市草深で写す。
見えかくれ居て花こぼす目白かな 風 生
一句は観察した結果を、そのまま五七五にまとめたのではないはず。
時雨のなか、並木のメタセコイアの葉が枯れ尽くしていた。画像は6日、印西市原で写す。
一度くらゐは歩きたかろう冬木たち 繁 子
老いて歩けなくなりたくなかったら、毎日ぶらぶらではなく、せっせと歩くようにと、医者から注意された。
媼が栗林で枝を竿で叩いていた。枝には実がついていなかった。挨拶し、撮影の事後承諾を得てから聞いた。
「何をしてましたか」
「へっへっへ」
媼は開けた口を手で覆って笑った。
画像は10日、印西市別所で撮影。
春風にいつまで栗の落葉哉 蝶 夢
媼は枯葉を払い落していたのだろうか。
追記
先日、わからなかった「お地蔵さん童謡」について、メールで教えていただいた。
♪ 村の はずれの お地蔵さんは、
いつも ニコニコ 見てござる
仲良し小よしのジャンケンポン ホイ
石蹴り 縄跳び かくれんぼ
元気に遊べと 見てござる
ソレ 見てござる~