雨のあがった石畳の歩道に、落葉が散っていた。
乾いている葉もあった。樹上では下枝についていて、雨に濡れなかったらしい。
画像は28日、印西市高花で写す。
けさはけさの落葉はじまる石畳 ひろし
せっかく朝早く掃除したのに、元の木阿弥、とは逆の句意なのであろう。
刈田のなかで、橋脚を据える工事がおこなわれていた。印西市から本埜村へ、陸橋を架けるらしかった。
画像は25日、本埜村滝で写した。
弧となつて大橋架かる蕪村の忌 直 人
蕪村の忌日は陰暦12月24日。引用句は「橋なくて日暮んとする春の水 蕪村」を踏まえていると思う。
崖上の家が九十九折の階段を設けて、崖を生活に役立てていた。崖下には温室もあった。
生活の崖は整然としてはいなかったが、雑然ともしていなかった。
画像は25日、本埜村物木で撮す。
秋風にしずかな崖の垂れゐたり 照 敏
生活の崖は渾然一体となって、しずかだった。
kawasakiさんの花圃の中心は、コスモスから葉牡丹に移っていた。
葉牡丹に多くの品種があることは、一年前に拝見して知っていた。そのことは昨年12月15日付で「葉牡丹の園」と題して載せた。
画像は25日、本埜村滝で撮す。
葉牡丹の色かさなりて開きそむ かな女
画像の中心部の白いつぶつぶは、凍った露。
公道と私道の境は、大きな生垣がくりぬかれて、トンネルになっていた。
トンネル以外にふさわしい名称がありそうなので、調べてみると、辞書には緑門という熟語が載っていたが、運動会で臨時に設けるアーチのことだった。
画像は22日、印西市大森で撮す。
トンネルをいでゝ遽かに秋の暮 万太郎
国境のながいトンネルだろうか。
まだ正月がこないのに、ふたりの男が空き地に車を駐め、ひとつの凧をあげていた。凧は北風をはらんで、威勢よくあがった。
画像は23日、印西市西の原で撮す。
老人が凧に命を入れてをり 傳
ふたりの凧あげは遊びではなく、共同で仕事を遂行している感じだった。おそらく売出しに先だってテストし、試作品にいのちを入れていたのであろう。
薪がうずたかく野積みになっていた。
なるべく隙間がないようにと詰めて積んであり、少しくらいの地震では崩れないように、棒で支えてあったが、雨の対策はなかった。
画像は22日、印西市別所で撮す。
薪に割る何の生木ぞ秋深く 羽 公
「薪割り」は「障子貼り」と同じように、冬支度の一環として季語かと思って歳時記をめくってみたが、載ってなかった。
快晴、無風。媼がひとり縁側に腰かけていた。
身なりから推して、日向ぼこではなく、仕事中の一服といった感じだった。
画像は21日、印旛村岩戸で撮す。
玉の如き小春日和を授かりし たかし
山本健吉は「たかしの比喩は『物の見えたるひかり』(芭蕉)をずばり捉えた時出てくるものだ」と評している。
並木の紅葉が公園の池に映って、二倍になっていた。
画像は18日、印西市原で撮す。掲載までのタイムラグは、インターネットの故障が原因。
拵へたやうな紅葉やはつ氷 一 茶
ガラス張りの建物が池に映って、初氷のイメージを描けないこともなかった。
少女に似て
朝の公園には人影がなく、椋鳥が紅葉と戯れていた。
気紛れな少女らに似て椋鳥の群 ゆう子
椋鳥の行動は、首尾が一貫していなかった。
濃い緑色の小鳥が枝から枝へいそがしく飛び移っていた。目のまわりが白かった。
目白だと推定し、写真を撮りつづけたが、帰宅して再生してみると、目の白さは写っていなかった。
画像は16日、印旛村岩戸で撮す。
見えかくれ居て花こぼす目白かな 風 生
目白は保護色の木にやどる習性があるのだろうか。
農家の門から母屋へカメラをむけていると、家のなかから女主人が現れたので、あらためて頼んだ。
「藁の屋根がめずらしいものですから、撮らせてほしいのですが」
「どうぞ。茅葺きですが」
縁側に干した布団と、貼りかえたばかりらしい障子が日に映えて眩しかった。
画像は16日、印旛村岩戸で撮す。
山門の茅葺厚し石蕗の花 五 郎
茅がどのくらいの厚みなのか、母屋の軒下まで近寄ってみた。手が込んでいることくらいはわかった。
保育園児の列に女子中学生が付きそっていたので、たずねた。
「なにをしていますか」
「実習です」
画像は15日、印西市西の原で撮す。
茄子の紺緊り野良着の中学生 實
男子生徒の実習は、秋茄子の収穫ではないとは、かぎらない。
あちこちで山茶花を見かけるようになった。
花のすがただけでは、椿と見分ける知識がないが、歳時記には、山茶花は花がばらばらに散ると解説している。
画像は13日、本埜村物木で撮す。
山茶花やいつしか会釈交はす仲 節 子
会釈とは、軽く頭をさげあうことかと思っていたが、漢字がむつかしいので、あらためて広辞苑を引くと「和会通訳の意」と載っていた。
3人の男の子がジャングルジムにのぼって、所在なさそうにしていたが、そのうちひとりが、
「見ろよ、あれ」
と、顔をかがやかせて指さした。
指さす方を見たふたりも、顔をかがやかせた。
画像は12日、印西市西の原で撮す。
話途中なれども客に虹を指す 誓 子
虹を眺めたあとは、話題は虹に移っただろうか。