女の子が女の子を負って、田道を歩いていた。姉妹と推定した。
画像は29日、印西市宗甫で写す。
花蘇枋姉に背負はれ育ちたる 耕三郎
蘇枋の花は紫とばかり思っていたが、最近、白い品種を見た。そのようなイメージの姉だったろうか。
女の子が女の子を負って、田道を歩いていた。姉妹と推定した。
画像は29日、印西市宗甫で写す。
花蘇枋姉に背負はれ育ちたる 耕三郎
蘇枋の花は紫とばかり思っていたが、最近、白い品種を見た。そのようなイメージの姉だったろうか。
媼が筍を掘っていた。掘るのに力は要らないようだった。
画像は28日、印西市大森で写す。
筍と老婆その影むらさきに 多佳子
女性の年長者への尊称は、日本語にあるだろうか。媼よりイメージのよい言葉を探したが、見つからなかった。
今年も咲き出したと思いながら、旧家の蔵をバックに棕櫚へカメラをむけていると、あるじが現れた。書斎人といった印象だった。
撮影の許しを求めると、
「チョウジュウロウではないですよ」
「え?」
「同じ棕櫚でも、チョウジュウロウの花は豊かですが」
「この棕櫚はどんな名前ですか」
「普通の棕櫚です。せっかく写すのなら、チョウジュウロウを撮ったらどうですか。裏にありますから」
「蔵と一緒に撮りたくて」
「なるほど。しかし、蔵ではないですよ」
「なんですか」
「物置。普通の物置になってしまいました」
画像は26日、印旛村造谷で撮影。
棕櫚咲けば棕櫚咲く頃と思ふかな 夜 半
蔵も物置も持っておらず、棕櫚の花に特別の感慨があるわけではないが、同感。
桜が咲いていたが、田植えの準備が始まり、遠くで鯉幟が泳いでいた。
ジャンパーを脱いで、自転車の籠に容れた。
画像は26日、印西市草深で写す。
鯉幟岳麓の田植始まれり 水 巴
田植え、鯉幟ともに歳時記では夏の部に載っている。
木にとまっていた鳥の大群がつぎつぎと飛びたって、空中で乱舞した。生態が椋鳥に似ていた。
画像は24日、印西市草深で写す。
椋鳥の群去りし一樹の痩せにけり 弘 子
木は欅のようだったが、芽吹いているのかいないのか、遠目には裸木だった。
生垣の内から、
「ケン、ケン」
と、雉が二度鳴いた。
窺うと、ビニールハウスの残骸だろうか、鉄パイプや竹竿が雑然と立っている先の雉と対面した。
画像は24日、印西市草深で撮影。
放棄の畑雉子の交尾を絢爛に 万 兆
どうして「雉子は」ではなく「雉子の」なのかと考えて、一句の主役は畑であり、雉子は脇役ではないかと解釈した。
頬白が澄んだ声で囀っていた。
イッピツケイジョウツカマツリソウロウと鳴いているかどうかは、早過ぎて聞きとれなかった。
画像は23日、印西市草深で写す。
頬白にやさしき心取戻し 晴 江
心をこめて墨痕淋漓と、一筆啓上仕候と書きはじめただろうか。
いつもは泰然としたヒマラヤシーダが、青嵐に大きく揺れていた。
梢の鴉は泰然とかまえ、下界を睥睨していた。
画像は22日、印西市草深で撮影。
鴉らを洗い尽さん青あらし 馨 子
歳時記の解説では、青嵐は雨を伴っていないようだ。
椋鳥が巣材を咥えて電線にとまっていた。どこに営もうかと、思いめぐらしているようだった。
画像は20日、印西市高花で撮影。
椋鳥の巣組に貸して庇裏 は つ
椋鳥は住人も観察してから、庇裏を借りたと思う。公園の芝生に群れている椋鳥は、横目でこちらをよく視ている。
野草の生えた土手で、十二單が妍を競っていた。
帰宅して調べると、同属のセイヨウキランソウのようであり、日本古来の方は色が淡い。
画像は20日、印西市結縁寺で撮影。
昏れてゆく十二單のひとへづつ 燕 雨
テーマは遅日と思う。
荒地に草蘇鉄が自生していた。
丸い芽は酢味噌和え、天麩羅の具として添えると、ほろ苦い味がする。角川俳句大歳時記には、別名のコゴミとも季語として載っていない。
画像は18日、印西市草深で写す。
美しき緑走れり夏料理 立 子
草蘇鉄は食材として、味覚より視覚がすぐれていると思う。
芽ぐむ枝上で、鵙が静かな声で鳴いていた。応答はなかった。
画像は18日、印西市草深で撮影。
夕鵙に答ふる鵙もなかりけり 元
秋に縄張りを主張してばかりいたので、春になって、まわりに仲間がいなくなってしまったのだろうか。
追記
タラの漢字「楤」が表現できた。メールで「そう」と入力し、変換表から選べばよいと教えていただいた。
民家の庭のタラが道に乗りだして、勢いよく芽吹いていた。
画像は17日、印西市草深で写す。
たらの芽の仏に似たる瀬のひかり 源 義
こちらの芽は清流へ乗りだしているのだろうか。
引用句のたらの漢字を外字で入力すると?に変換されてしまう。
二羽の小鳥が枝に離ればなれにとまっていた。
左の鳥が囀り、右の鳥は聞いているのかいないのか、背中をむけており、そのうちに飛び去った。左の鳥があとを追った。
画像は15日、印西市草深で撮影。
春禽の歌垣に耳かたむくる 美 知
作者は鳥の名を知っていても、わざとぼかしたのだろうか。
路傍の枯草に蝶が羽をひらいたまま、とまっていた。
飛ぶところを捉えようと、カメラを構えつづけたが、いつまでも飛び発たなかった。
画像は15日、印西市西の原で撮影。
初蝶の空よりも未だ地を慕ふ 登四郎
言われてみると、蝶はいつも何かを慕っているようにみえる。