ターボの薩摩ぶらり日記

歳時記を念頭において

峠の秋 上

2008年09月08日 | 俳句雑考

峠でバスを降りると、風が心地よく、あたりの景色は秋だった。鞄からカメラをとり出すと、そばで草刈機を操っていた中年の男から声をかけられた。
「カメラとは、よか趣味ですね」
「いやいや、へたの横好きですよ」
「何を撮りにここでバスを降りましたか」
相手は標準語に切り替えた。
「なんでもいいから撮りにきました。市からもらったパスが」
首から提げているカードを示し、
「ここが利用できる限界なので、降りました」
「いい考えですね。案内しましょうか」
男は草刈機を置いて歩き出した。
画像は7日、鹿児島市と日置市の境で写す。

  分水嶺


案内人が説明した。
「あの山が分水嶺です、右側の源流が東シナ海へ、一方、左側の源流が錦江湾へいきます」
野には赤のままが咲き乱れていた。

     秋晴を分水嶺の尾根で截る     克 巳

穏やかな山でも、分水嶺と知ると空を截っているように思えた。

 桜紅葉

野の桜の木の紅葉が始まっていた。

   早咲を得手の桜の紅葉かな  丈 草

冬桜だろうか。

  

集会所に鉦が下がっていた。錆色だったが、錆びてはいなかった。

   やすらゐの鉦よりも疾く花散るよ     正 治

案内人によると、いまでは鉦は年に一度、花見の集いの合図ときだけ鳴らすそうだ。

 ペダル踏む

競輪選手があえぎながら坂を登ってきた。

   ペダル踏む穂芒を過ぎ紫苑過ぎ     和 子

 競輪選手は峠に登りつくと、ペダルの回転を速めた。

  秋蒔

老夫婦が畑仕事をしていた。訊くと、蕎麦の種を蒔いているのだった。

   秋蒔の土をこまかくしてやまず   伊智朗

歳時記によると、秋蒔とは冬菜の種を蒔くことらしいが、蕎麦は年内に収穫できるのだろうか。