アカネさんシリーズ001 恋のタイムマシーン ![]() 154甘党ハードボイルド! 中根は白岩が本当に敏腕の刑事だったなんて、思えなかった。 恰好はつけているけれど、あれじゃテレビ番組の刑事だわ。 本当の刑事があんなに恰好つけていたら、ギャグでしかないわと、屋敷の人たちの間でもちきりになっていた。 「早く、見つけてくださいよ。白岩刑事さん」 「刑事はもうやめた」 「見つけないってことですか?」 「そうじゃない。敵はこの元警視庁敏腕刑事、白岩が登場したことに恐れおののいているのだ。へたな刺激をすれば、人質の生命が危険というものだ。フフフ…」 「そうでもないんじゃないですか」 「何をいう!」 「このことは、社長に伝えますよ。せめて、公園の公衆電話から、だれが無言電話するか、調べてみてはどうなのよ。ただの“いたずら電話”とすまさないでくださいよ」 「ただの“いたずら電話”? “いたずら電話”は場合によって、傷害罪にだってなるんだ。気軽に考えてはいけない」 「なによ。わたしは“いたずら電話”なんかしないわよ。それよりも、もしかしたら、無言電話をかけているのは茜お嬢様かもしれないのよ。見合いをしたその夜に行方不明になったのよ。相手のことがいやで、家出なされたのかもしれないわ」 「それも、そうだ。では、行ってくる。もし、犯人からの電話があったら、引き延ばしてください。携帯電話で、わたしにすぐに知らせること! 相手の電話番号もメモしておくことだ。わかったな」 「ええ」 三十分ほどして白岩刑事はもどってきた。 「電話ボックスに、茜お嬢様の指紋がたくさんあった。つまり、これは誘拐ではない可能性が強くなった」 「それだけじゃ、決まらないでしょう?」 「そのとおりだ。だから、可能性だといったはずだ」 白岩刑事は、甘納豆を食べはじめた。現実にハード・ボイルドに生きるのは疲れる。 健康食品はかかせないと味わって、食べていた。
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