龍の声

龍の声は、天の声

「志士   江戸漢詩選②」

2021-09-01 10:13:10 | 日本

◎佐久間象山

王道 偏党無く 
平平として有極に帰す
・世の正しい在り方は偏りを持たぬことで、そうすれば容易に理想に達するものだ。


一見は百聞を超(こ)えん 
知者は機に投ずるを貴(たっと)ぶ
・一見は百聞に勝るというものであろう。知者は機を逃すことなく行動するもの


鶏鳴已まず 晦冥(かいめい)の夜 
鶴韻(かくいん)応(まさ)に通ずべし おう欝(うつ)の陰
語を寄す 吾が門 同志の士 
栄辱を将(もつ)て初心に負(そむ)くこと莫(な)かれ
・深い闇に閉ざされたような国家の現状の中で、無知な人々は鶏が鳴きたてるように愚かな論を説きつづけている。いま、その闇の底にある私のまごころは、ちょうど深い茂みの陰で鳴く鶴の声がはるか遠くにまできこえわたるよううに、やがては分かってもらえることとおもう。
吾が門下の同志諸君に言おう、一時の栄誉や屈辱に目をくらまされて、初心を忘れてはならぬ、と。


志は労苦に因りて堅く 
行いは勇決を以てか果なり
・人の志は、苦労を続けてこそ堅固なものになる。行動は、勇気をもって決断しなければ、思い切ったことはできない。


盛年 再びは至らず 
華容 日々に益々衰(おとろ)う。
・女の盛りは過ぎては帰らず、若き日の色香も日々に衰えるばかり。


通塞(つうそく)は原(も)と天に在り 
懐抱 なんぞ惜しむ所ならん 
前途未だ知る可(べ)からず 
此の中(うち)に遠かくを養わん
・成功するか失敗に終わるかは、もともと天の定めるところである。いま胸の思いがとげられぬからといって残念がることもない。先のことは知りようがないが、せいぜいここで雄飛するための翼を養っておくことにしよう。 


貞樹 らい服して神州に育す
命を受けて特立し 終(つい)に流れず
・貞潔なる桜の樹は日本に馴染んで生育し、天命に応じてしっかりと立ち、けっして流俗に染まらない。


世人の心きょう 豆よりも小さく
あくさく 寧(なん)ぞ知らん 英雄の胸
自ら奮えば 能く遠大の計を成し
自ら屈すれば 廓清の功を樹(た)て難し
・世間の人の心は豆よりも小さい。あくせくと目先を追うばかりで、英雄の胸の内など理解できるはずがないのだ。およそ、自ら奮い立ってこそ遠大な謀りごとは成し遂げられる。自ら卑屈にかがまっているようでは、天下を治めととのえることは無理だ。


林堅(りんがく) 奇勝多く
只恨む 日の残(く)れ易きを
・もろも谷もどこもいい景色だが、惜しいかな、もう日が暮れそうだ。











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