龍の声

龍の声は、天の声

第2話「大村海軍特別攻撃隊隊員」

2024-06-26 07:52:23 | 日本

海軍の特攻基地は、現在の長崎空港である。明日の命も知れぬ若鷲たちが、毎週休みに大村からやってくる。叔父が諫早の中心地で「駒我家(こまがや)」という料理屋を開いていて、芸者さん等が居て賑わっていたのだった。私の家は諫早駅に近いということもあり、駒我家で遊んで酔いつぶれて夜中に我が家になだれ込む・・といったコースであった。多いときには、15~20人ものカッコいい海軍将校がきた。松本中尉をリーダー格とする、将校服に短剣がよく似合う若鷲将校達ばかりであった。

松本中尉は、福岡県の出身、寡黙で男らしく、俳優の高倉健を彷彿させるような将校で、他の将校の兄貴分の存在であった。私を一番可愛がってくれた。
山本中尉は、雪国新潟県の出身、長身でハンサム将校。色白で芸者に大変モテたようであった。そしていつ出撃命令が下るか、わからない状況の中で、彼の母親は、せめて1分1秒でも、息子の側にいたい、お世話をしたいという母の心情から、交通事情の悪い、ましてや戦時中のさなか、遠路新潟から何日間かかけて乗り継いで来られ、半年くらい我が家に滞在されて、毎週、息子の世話をされていた。その時、お土産としていただいた「おせんべい」の美味しかったことが今でも忘れられない。
西考寺中尉は、台湾出身、実家はお寺で、米軍機の空襲でご両親を亡くされ、親の仇とばかり特攻隊を志願された。日本女性で、女学生だった許婚のKさんとは、我が家がデートの場所でもあった。時代が時代だっただけに、外出も一才できず、今思うと可哀想なカップルであった。

戦況は、進軍の報より撤退気味の感じで、B29爆撃機やグラマン爆撃の波状攻撃は一段と激しさを増し、いつ「神風」が吹くんだろう?祈る毎日であった。





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