宇宙・サイバーなど強化・ F35Aを増強、F15は改修
「宇宙・サイバー・電磁波といった新領域の能力獲得や、太平洋側を含む防空能力の向上などが航空自衛隊に期待されている」。丸茂空幕長は1月18日の記者会見で、昨年末に策定された新「防衛大綱」「中期防」の初年度を迎えるに当たり、こう語った。
空自の19年度予算案(1兆1012億円)は新大綱に掲げられた「多次元統合防衛力の構築」を色濃く反映し、新領域の宇宙関連では、防衛省が運用する通信衛星などに脅威となる宇宙ごみ(スペースデブリ)や接近してくる外国の不審な衛星などを監視する「宇宙状況監視(SSA)システム」に260億円を計上、監視用レーダーと運用システムの整備に着手する。
また、通信妨害をはじめ、キラー衛星、対衛星攻撃ミサイル、高出力レーザーの照射などに対処するため、宇宙空間でのC4ISR(指揮・統制・通信・コンピューター・情報・監視・偵察)機能強化に向け、調査研究などに20億円を計上、「電磁波監視態勢」や「人工衛星の脆弱性とその対策」に関する調査研究を開始する。
サイバー分野では、「航空作戦システムのサイバーセキュリティー対策の強化」に4.4億円を投入し、作戦システムへのサイバー攻撃に対処可能なセキュリティー監視装置を整備。
電磁波の領域では、F15戦闘機の電子戦能力を向上させるため、機体を改修し、能力向上型の電子戦装置を搭載する。空自の防空を担う自動警戒管制システム(JADGE)も電子戦情報の共有・処理能力を向上させるため、29億円を投入。また、太平洋側の監視体制を強化するため、小笠原諸島・硫黄島の空自基地のレーダーをJADGEに連接させる。
航空機の能力強化では、高い電子戦能力を持つF35Aステルス戦闘機を6機取得(681億円)。F15は2機を改修(108億円)し、スタンド・オフ・ミサイル(JASSMなど)を搭載できるようにする。
太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域の警戒監視能力の強化では、E2D早期警戒機を9機一括調達(1940億円)するほか、常続的監視態勢の強化のため、滞空型無人機「グローバルホーク」1機の機体組み立て経費71億円を計上した。
継戦能力の向上では、F35Aに(将来的にはF15にも)搭載可能な中距離空対空ミサイル「AIM120」などを取得。基地の抗堪性強化では、宮崎県の新田原基地などに航空機を分散して配置できる「分散パッド」の整備に着手(2千万)するほか、滑走路の迅速な復旧を可能にする施設器材の取得に9億円を計上した。
航空部隊の改編では、今年3月に青森県の三沢基地に「F35A飛行隊」が正式発足することから、F2部隊の3飛行隊を三沢から茨城県の百里基地へ移駐させる。警戒航空隊(司令部・浜松)は30人増員して約860人体制の「警戒航空団(仮称)」に格上げし、司令は空将補とする。