奄美、宮古に部隊を新編
今年3月、「機動師団」に改編される8師団に配備された16式機動戦闘車。即応機動する陸上防衛力を象徴する装備だ
陸上自衛隊は「統合機動防衛力」の実現に向けた新体制の構築をさらに加速させるため、平成30年度予算案に前年度当初予算比3.4%(604億円)増となる1兆8310億円を計上した。
その目玉は、南西諸島の奄美大島、宮古島、石垣島といった離島への陸自部隊配備に向けた関連経費(計553億円)だ。
陸自は島嶼部の抑止態勢を強化するため鹿児島、沖縄両県の離島に部隊配置を進めており、27年度にはその先駆けとして日本最西端の沖縄・与那国島に沿岸監視部隊を新編した。これに続き30年度は、鹿児島・奄美大島と沖縄・宮古島にそれぞれ警備隊の新編を計画している。
奄美大島には北部に「奄美駐屯地(仮称・約350人)」を、南部に「瀬戸内分屯地(同・約210人)」を設置。ともに8師団(北熊本)隷下となり、普通科主体の「奄美警備隊(仮称)」が島内の2カ所に分かれて配置される。このうち、奄美駐屯地には中距離地対空誘導弾(中SAM)部隊、瀬戸内分屯地には侵攻してくる敵艦隊を迎撃する地対艦誘導弾(SSM)部隊をそれぞれ配備予定だ。
一方、宮古島には「宮古駐屯地(仮称・約380人)」が置かれ、15旅団(那覇)の隷下部隊として「宮古警備隊(仮称)」を設置。同駐屯地にも中SAM部隊とSSM部隊が31年度以降、配備される計画だ。
宮古島と与那国島のほぼ中間に位置する石垣島には「南西警備隊(仮称)」が置かれる。現在、島中部の市有地を中心に用地の取得などが行われている。
これら南西諸島の島嶼部に本土から部隊を迅速に機動展開させるため、空自C2輸送機で空輸できる16式機動戦闘車などを装備した「機動師団・旅団」の新改編も引き続き進められる。
30年度は、北方の11旅団(真駒内)と東北方の6師団(神町)が「機動師団・旅団」に改編され、その主力連隊の10普連(滝川)と22普連(多賀城)はそれぞれ普・特・機の機能を併せ持った「即応機動連隊」となる。
飛行場のない島にも着陸できる垂直離着陸輸送機V22オスプレイは、30年度中に5機が陸自に導入される予定で、その拠点となる駐屯地を佐賀県の九州佐賀国際空港近くに整備する計画となっており、現在、土地の取得に向けた調整などが進められている。
陸自は今年3月、全国の5個方面隊を束ねる統一司令部「陸上総隊」を創設する。さらに島嶼防衛で水陸両用作戦を担う「水陸機動団」なども発足させるなど、創隊以来の大改革となる新体制を始動させる。山崎陸幕長が目標に掲げる「事態に即応して任務を完遂し得る陸上自衛隊の創造」に向けて、各部隊は統合機動防衛力強化のための施策を一つひとつ積み上げ、任務を着実に実行していく。