天使のエナジー

「すべてなるものの源」への、愛の告白

花と俳句でワクワク!

2009-04-23 23:15:18 | ブックレビュー
ブックレビュー:
『ラジオ深夜便 誕生日の花と
きょうの一句』
(月刊『ラジオ深夜便』編集部編、NHKサービスセンター)


非常勤教師としての私の仕事は、新学期の2週目に入りましたが、
この時期だと、まだまだ「地に足が着いた」状態とはいきません。

担当授業の教室の位置は間違えそうになるし、学生さんの名前と
顔はもちろん、まだ覚えられず……。

それに、授業で取り上げる話題も、クラス全体の雰囲気を見て変
えたりするので、それをあれこれ考えて、頭を悩ませたり……。

でも、そうやって考えて、ふっといいアイデアが浮かんだときは、
とてもうれしくなります。

今期はある女子短大の授業で、小さなことですが、一つ新しいこ
とをやってみることにしました。

それは、毎回、授業の始めに、ある二つの花と、そのそれぞれに
ちなんだ俳句を紹介するということ。

なぜ花と俳句なのか、もうお分かりですよね。そう、もちろん、写
真の本(『ラジオ深夜便 誕生日の花ときょうの一句』)と関係が
あるんです。

この本は、NHKラジオ(第一・FM)の番組、「ラジオ深夜便」の放
送内容をまとめたもので、番組独自に1年366日(2月29日生まれ
の方、ご安心を)のそれぞれの花・俳句を一つずつ選んで掲載
してあります。(図鑑のように美しい花の写真つき。)

この本は、ときどきこの番組を聴いている母が買って来たのを見
せてもらって、「わあ、これいいなー」と言っていたら、母が私に
も一冊、プレゼントしてくれたのでした。

ほんとにこれ、いいですね。見ているだけで楽しくなります。花の
写真もきれいだし、それにちなんだ俳句も味わい深いものです。
(花はもちろんその日あたりに見頃になるものが選んであり、俳
句はその花を直接詠んだものか、あるいはちょうどその時季にふ
さわしいものになっているんです。)

さて、そこでさっきの女子短大の話ですが、この授業では比較文
化に関する内容を扱うことになっていて、メインのテキストは別に
決まっています。

でも、そのテキスト、教師としては教育的価値があると思って選
んだのに、学生さんたちはいま一つ興味を感じてくれていないよ
うでした。(昨年度までのアンケートの結果です。)

もちろん、学生さんの興味を第一に教材選びをするわけにはいか
ないので、今期はテキストは変えず、授業の進め方などを工夫し
ようと考えていたのですが……。

そんなとき、さっきの花と俳句の本のことが頭に浮かんだのです。

そうだ、授業の始めに数分とって、花と俳句を一緒に鑑賞しよう!
そうして、ワクワク感を高めて授業に入れば、感性が研ぎ澄まさ
れて、テキストの捉え方も違ってくるはず。

そんなわけで、今週の授業からそれを始めたのですが、紹介す
る花と俳句二つずつはどうやって決めるかというと、

① 学生さんのうちの一人の誕生日
② 授業の当日

この二つということにしました。

なんといっても、自分の誕生日の花(あくまで番組独自で決めた
ものですが)と聞くと、たいていの女の子なら、「何なのか知りた
い」と思うでしょうし、今この時季にどんな花が咲いているかとい
う話題も心ひかれる感じがしそうです。

実際、第一回でお誕生日を聞かれた学生さんは、にっこりとして、
目をキラキラさせていました。

彼女の誕生日は2月25日で、その日の花は
カンヒザクラ(バラ科、花言葉:あでやか)
俳句はこんな句でした。

  鶯や障子あくれば東山 (夏目漱石)

解説:ウグイスの鳴き声に導かれて障子を開けると、京都如意ヶ岳
   から稲荷山に至る山々が見えた。京に訪れた春の息吹を鳥の
   鳴き声で知る。

もう一つ、授業の当日(4月20日)の花は
山吹(バラ科、花言葉:気品、待ちかねる)
俳句は

  山吹の一重の花の重なりぬ (高野素十)

解説:ヤマブキの花が重なり合って咲いている春の風景。「山吹の
   実のひとつだになきぞかなしき」に詠われるのは、実のならな
   い八重山吹。

解説に出ている歌は、平安時代の『後拾遺和歌集』にある兼明(か
ねあきら)親王の作ですが、これはご存知の通り、室町後期の武将、
太田道灌のいわゆる「山吹伝説」を生んだといわれる歌ですね。

遠出をして雨に降られ、農家で蓑を借りようとした道灌に、その家
の娘がそっと山吹の花を差し出すことで、蓑(「山吹の実の」の部分
にかけている)がないことを伝えようとしましたが、道灌はその意味
がわからなかったといいます。このことを恥じた道灌は、以後、歌道
に精進するようになったといわれています。

10世紀の兼明親王から15世紀の道灌、さらに20世紀の高野素十へ
と、千年の時を越えて、「山吹」という花をテーマとする情感のリレー
が繰り広げられたのです。

しかも、このリレーは当然、この三人のみが関わっていたのではなく、
道灌に山吹の花を差し出したあの農家の娘のような、名も知れない
多くの人々をも包み込んだ、壮大な「精神的空気」(ウィリアム・W・
アトキンソン、4月8日付当ブログ参照)を形成した、と言ってもいいの
ではないでしょうか。

俳句の紹介の後に、この「山吹」のリレーの話もつけ加えてみました。

学生さんたちの反応はといえば……先回の授業のときよりも心なし
か表情が生き生きしてきたようです。この調子、この調子!

花と俳句でワクワクして、目指せ好奇心全開!

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