昨日、今巷で話題の上野は国立博物館へ。海を渡ったボストン美術館の所蔵品、
「日本美術の至宝展」に行ってきました。
東京も数日前にソメイヨシノの開花が報じられ、この日も穏やかな春の陽気。絶好
の行楽日和。上野公園には大勢の人が桜を求めて集まっておりました。
この展覧会の内容はこちらのHPをご覧いただきたいのですけど、まさに日本の
宝ともいうべき作品が多数展示されています。ここ数年、京都や奈良に行って、
仏像、仏画等々の古美術に触れる機会が歳と共に増えてきていますが、世界
に誇れるこれだけの名作を一挙に見られることはなんて幸せなことなんでしょう。
これも明治の時代に来日した日本美術の守護神たるアーネスト・フェノロサを
始め岡倉天心等の日本の俊才の献身的な努力によるものでありましょう。
時を超え、ボストン美術館という世界でも有数な芸術を愛する美術館にこれ等
日本の至宝が収められ、管理修復されて再び海を渡り日本に里帰り出来たこと、
そしてそれを眼前に観られたことは、ほんとに嬉しいです。
よく、こうした美術品が海外に流出したことを嘆く向きもありますけど、あの太平洋
戦争でもしかしたら空襲で焼失したかも知れません。それを思うと、こうして
温度・湿度管理の行き届いた場所で保管されていることに寧ろ感謝であります。
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ボクが特に感銘した作品について、自分のメモとして。
■伊藤若冲「鸚鵡図」:彼の初期の作品ですけど、圧倒的なデッサン力。やはり
凄い!ひたすら感嘆。
■尾形光琳「松島図屏風」:逆巻く波頭。ボクの知っているあの穏やかな松島では
ありません。もしかして昨年の大津波も斯くありなんと観ていて胸がざわついて。
■快慶「弥勒菩薩立像」:優美なたおやかな曲線を持つ穏やかな菩薩様。特に
手と指のカタチがなんとも言えません。不謹慎ではありますが、官能美のような
ものを感じてしまった。
■「吉備大臣入唐絵巻」:平安時代の作品ですが、コメディー・タッチの人物表現が
実に巧み。もしかして、日本の漫画の原点のひとつじゃないのかしら。吉備真備
が大海を渡り帰国のシーンがありますが、この大海(日本海)の表現に波間に
浮かぶクジラかシャチの尾びれが描かれて、それで大海を表現しています。
ボクはクジラだと思ったのですけど。この作品でクジラ類が日本の文化であった
と世界にアピール出来るんじゃないだろうか。
■平治物語絵巻:こりゃ劇画の原点ですよ。鎌倉時代の作品ですが、物凄い数の
人物が描かれています。紅蓮の炎とか、逃げ惑う人たちの姿とか、あの頃の
絵画技法でここまで動きを表現できるとは。
■曾我蕭白「雲龍図」:参りました。この弩級の迫力。諧謔的なセンス。日本人の
枠をはみ出してます。展覧会場の最後にで~んと置かれていますが、椅子に
座って暫し呆然と眺めておりました。
■江戸中期の着物の数々:まるでポップアートを見るような躍動感あるデザイン力。
現在でも十分通用します。どれだか忘れたけど、大きな蝶柄なんてあって。まるで
森英恵さんのデザインかと思うような、超現代的絵柄。それと色。金銀は別として
基本的には草木染なんでしょうから、現代の化学染料ではまず出ない深い味の
ある色合いに感動。数百年を経ても色褪せず残っていること自体が奇跡のように。
現代でこの色合いを出すのは不可能かもね。
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いやぁ、この至宝展、機会があれば是非ご覧になってください。日本人に生まれて
ホント良かったと思えますよ(きっぱり)ここ数年の美術展の最高傑作かも。
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Phoenix 東北&関東
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貴兄は古美術にもお詳しんですね!
今日の当地は予報通り大雨です。
belageさんの鋭い感性のメモ、ありがとうございました。
また、忘れないうちに(笑)行ってきます。
一時帰国の楽しみのひとつは、こういった展覧会へ行くことです。
タイミングよくいい展覧会が開催されていると、とても嬉しいです。
こちらの展覧会、6月10日までとのこと、良かった!
弥勒菩薩に早速期待しています。
京都、奈良に行った時は結構色々なところで
時間をかけて見て回ってますけど。
やはり日本人には古美術は癒されます。
今まで遠近法は西洋画が専売特許だと思って
ましたが、今回のこの美術展を観て考えを
改めました。
日本人はもっと誇っていいですねぇ、この
天才たちを。
素晴らしさに感銘を受けました。是非
行って下さい。