左から主演男優:ハビエル・バルデム 、ペネロペ・クルス、スカーレット・ヨハンソン
この映画助演のペネロペ・クルス、ご存じスペインを代表するというか
世界の美女と言っていいんでしょうね、彼女が今年アカデミー助演女優賞
を獲得した記念すべき映画。封切り前からボクの愛するバルセロナが主役
ということで絶対に見に行こうと決めていた映画です。
主演はバルセロナ、まさにその通りで殆どがバルセロナの町中のロケ
で。あのガウディ様の建築群が出演する美女たちを美しく、そして妖艶
に引き立たせます。もう最高のカットが続きます。
映画のストーリーはバルセロナに休暇で来たアメリカ女性二人(ヨハンソン
とレベッカ・ホール)がパーティで出会った画家(ハビエル・バルデム)に
恋をする経過がテンポよく描かれています。バルセロナと言えばボクの
旅行記でご紹介したようにガウディとダリが思い浮かびますが、監督の
ウッディ・アレンはまさにバルセロナの都市の魅力を画家で表現しています。
間には現代を代表するフラメンコ・ギターの演奏があったりして、至れり
尽くせり。洒落た会話がとても素敵で、冒頭からウッディ・アレン特有の
イロニカルな笑いに包まれて、バルセロナという町が持つ魔力にどんどん
引き込まれていきます。

バルでのシーン ボクが食べたようなものがテーブルの上に
やはりタパスとワインですね
主演のヨハンソンがとっても魅力的。この女優さんは「真珠の耳飾りの少女」
という名作を見てからすっかり惚れこんで、殆どの作品を見ていますが、最近
「ブラック・ダリア」あたりからちょっと演技力を発揮できない作品が多くて心配
していましたが、この作品では彼女の魅力全開。奔放な恋に生きるも、底に
流れる微妙な陰影をうまく表現して、最近では出色の出来じゃないかしら。
兎も角、彼女の様々に変化する顔の表情を見ているだけで楽しくなる
ヨハンソンの友人を演じるレベッカ・ホールですが、彼女の役は恋愛保守派
で婚約者がおり、ドラマの中で結婚もするけど、知らずにいつしか画家の
魅力に惹かれ恋に落ちるも、映画のクライマックスでとんだ結果をウッディが
用意してくれていて、夫の許に帰るのですが・・・
ほんとこのシーンは流石ウッディと感心しきり。見事なオチです。思わず笑って
しまった。そしてその笑いの中にペーソスを感じさせる素晴らしい演出。脱帽
です。
レベッカの抑えた演技はとても好感がもて、ヨハンソンとの好対照の性格を
うまく表現して、この映画の陰影が見事に出ています。キャスティングの妙と
言えますね。
さて、肝心のペネロペ・クルス。彼女の登場が随分遅いの(笑)
え~、出演時間の割合でいったら、すごい得した女優さんです(笑)
彼女が登場して、映画のテンポががらりと変わります。それはまるで
フラメンコの舞台をみているような。フラメンコの構成は最初にギター、
そして男性ソロの歌があり、主演の女性フラメンコ・ダンサーの歌に
よる紹介で女性ダンサーのソロ演舞となるわけですが、まさにそれ。
恋愛は三角関係から四角関係へ。ペネロペは画家の妻で彼を愛するが
故にうまく夫婦関係が続けられず、精神を病んでいるという設定。映画の
言語は殆どが英語。主演のハビエル・パルデムがきれいな英語を喋る
のですが、ペネロペの英語が凄まじい(爆)スペイン語訛りそのもの。
彼女の他の作品ではもっと綺麗な訛りのない英語を喋っていたはずですが
(笑)
この訛りが映画にある種の緊張感をもたらしているのは事実。ここらへんも
ウッディ・マジックかも知れません。そして美人女優がまさに体当たりの演技
で、アカデミー審査員もお人形さん的な美しさを脱ぎ棄て、女性の業的なもの
を表現した彼女の演技に賞を与えたんでしょうね。あのスペイン語訛りの英語
にかなりのエキゾチズムを感じちゃったんじゃないだろうか(爆)
彼女、存在感のある女優さんになりました。

ガウディのカーサ・ミラ 後ろにはサグラダ・ファミリアの威容が
最後に主演男優のハビエル・バルデム。押しの強い個性的な画家の役を演じ
切っていますが、渋いいい男です。一見冴えない顔だと思ったんですが、映画
が進むにつれぐいぐい引っ張られて。こういう役者さんにはもっともっと活躍して
欲しいです。ノワール系のアクション映画なぞやらせたら面白いだろうなぁ。また
彼の作品を観たいと思わせる俳優さんです。大人の渋い魅力がたっぷり。
因みにうちの奥様はスペイン人はいい男が多いという評価ですが、味のある
顔の人が多いですね。ふふ、恐るべしスペイン男(笑)
さて、ウッディは今年75歳とか。天才は幾つになってもこういう色恋の話を
うまく作りますね。彼の作品って当たり外れがない。そして基本にあるのが
笑とペーソスとアイロニー。この作品もその彼の原則が随所にちりばめられて。
感服しました。
ボクはこの日本語題「それでも恋するバルセロナ」はかなりうまい題をつけたと
思います。原題は「VICKY CRISTINA BARCELONA 」となんとも素っ気ない
題で、これよりずっといい。
まぁ、これだけの芸達者をそろえて、それぞれが見事に個性を発揮して。余り
芸達者をそろえ過ぎると映画が壊れることがままありますが、この完成度は
素晴らしい。ガウディ作品のカットをはじめ、バルセロナの魅力たっぷりの映画
で、恐らくご覧になられた皆さんもバルセロナの魔力の虜になるんじゃないかな。
■この映画の評価: ★★★★★
(★五つが最高評価)
(2008年 スペイン・アメリカ制作映画)