Rolling 55

「転がる石は苔生さず」いつまでも、いつまでも転がり続け・・・
お池にハマって、さぁ大変!  by belage

ポール・ニューマン氏死去

2011年07月31日 22時42分33秒 | FILM

 

昨日映画俳優のポール・ニューマン氏がガンで死去されました。

 

あの、「明日に向かって撃て」(1969年)の鮮烈なラスト・シーンは学生時代、

騒然とした世の中できわめて強烈な印象をボクに残してくれました。この

映画で使われた「雨にぬれても」のロマンチックなメロディと件のラスト・シーン

のアンマッチングはその後色々な映画で確立した手法として多くの監督が

使うようになりましたが、これ以上のものはスタンリー・キューブリック監督の

「時計じかけのオレンジ」(1973年)くらいでしょうか。奇しくもこの映画で使わ
れたのは「雨に歌えば」。キューブリックが「明日に向かって撃て」を念頭に

製作したかは定かでありませんが。

 

彼の映画演技者としての最高傑作はボクはやはり「ハスラー」とアカデミー

主演男優賞を受賞した「ハスラー2」であろうかと思います。いずれも男を

描いた作品として長く観客の心に残る演技でした。彼の演技はどちらかと
いうとじっくり主人公の内面を表現するタイプ。

そういう意味ではスタートから余り作品に恵まれていたとは言いがたい。

出演した映画の本数もそれほど多くはないのですが、渋さのあるうまい俳優

さんとしていつまでも記憶に残る人でしょうね。

 

改めて彼の経歴を調べてみたら、彼の演技のうまさのもとはあの有名な

ニューヨークのアクターズ・スタジオの出身なんですね。そして同スタジオの

彼の同期が、なんとジェームズ・ディーンとマーロン・ブランド!なんという

スタジオなんでしょう。勿論このスタジオはそのほか綺羅星の如くに名優、

名監督、名脚本家を輩出していますが、同世代にこの二人の名優がいた

とは。「エデンの東」のオーディションでは主人公の兄役で最終審査に残った

ものの、エリア・カザンの反対でパスできなかったというエピソードがあり
ます。もし、カザンがその時ポールを起用していたら、彼の人生はまた違った

ものになっていたかも知れません。でも、ジェームズ・ディーンとポール・

ニューマンが鉢合わせしたらお互いに食ってあの名作はできなかったかも。
カザンは賢明な判断をしたのかも。

 

その後ポールは鳴かず飛ばずで、失意のうちにTVや舞台に出ることに

なるのですが、彼を再び映画界に呼び寄せたのはなんと「エデンの東」の
主役を張ったジェームズ・ディーンの死。

人生って皮肉というか、なんというのか・・・

ジェームズ・ディーンが主役の予定であった「傷だらけの栄光」に出演し、

これで一躍脚光を浴び、現在までの栄光の歴史が刻まれることになるの

です。彼が不遇をかこっていた時代に学んだ演技がその後の彼の人生を
築いたと言っても過言ではないでしょう。

 

翻って考えると、ジェームズ・ディーン、マーロン・ブランド、ポール・ニューマン
と同期の三人。

それぞれ個性が全く違う三人ですが、共通点がひとつあるんじゃないかな。
端的に言えば、ニヒルなリリシズム

 

これって、やはり当時の米ソ冷戦下の緊張感、米国の繁栄の陰に隠れた

人種問題、格差問題等の社会問題がでていたのかなぁ。当時時代の流れ
の中にいて、ボクは単に彼らのクールさだけを追い求めていたのですが、

今になって三人の陰のある演技って、そういう社会を反映していたのかと
思った次第です。

 

これで残念ですがアクターズ・スタジオの三つの同期の巨星が全て墜ち

ました。でも、この三人が残した映画は長く語り継がれるでしょう。

心に沁みるいい映画をありがとう。

 

合掌

 

 

 

2008年9月28日投稿


映画(CSTV): 「ドリス、94歳の選挙戦」

2011年07月31日 17時02分59秒 | FILM

 

映画といいますが、これは実在の愛称「グラニー・D」という94歳のおばあちゃんが

米国の上院議員選に立候補したときのドキュメンタリー。昨年米国のCATV局で

放送され、大変話題になったそうです。

このお年を聞いたとき失礼ながら、びっくりして。最初、これはドキュメンタリーでは

なくて冗談じゃないかと疑った次第(こっちの見方のほうがよっぽど失礼かな)

だって、彼女が無事任期を全うしたら100歳ですよ!

 

彼女は1910年生まれ。夫に先立たれ自立を模索していた彼女は政治活動に興味

を持ち、89歳のときに「企業献金による選挙の悪影響」を訴えるために全米を歩いて

キャンペーンすることをはじめます。14ヶ月をかけて5000キロを踏破し、この姿は
全米の話題になりました。

その後も彼女の政治に対する関心と活動は衰えを知らなかったようです。

 

そして三年前に彼女の運命を大きく変える出来事がありました。彼女の地元で上院

議員選があり、現役の共和党議員に対抗し出馬宣言した民主党議員が資金難を

理由に辞退、その代役として素人の94歳の彼女が企業からの寄付を拒絶して立候補
を決意するのです。

日本でもそうですが、資金なしで選挙活動をするなんて自殺行為。かの米国でも

状況は同じようです。彼女は自分のような一般市民が企業献金というタガにはめ

られず自由に行動する議員になるために、後進にその道を示すためにという理由で

あえて茨の道を選択するのです。

 

映画は彼女通称グラニーD(「D」はばあちゃんという意味)が立候補を決意して、

民主党公認にも拘らず同じ党の有力議員のサポートが得られないばかりか、対立

候補を褒め称えられるという仕打ちにまであいます。それでも先の大陸横断の

キャンペーン同様に徒歩で選挙活動を行い徐々に支持者を広げていく様を淡々と
描いていきます。

 

ともかくびっくりするのが彼女が94歳という年を感じさせないクレバーな頭を持って

行動していること。、あの広大なアメリカを歩いて選挙キャンペーンをやるなんて、
気違い沙汰です。

とても信じられない体力とそれにもまして旺盛な気力です。時として選挙参謀の

アドバイスについていけず、子供のように駄々をこねる彼女。そして我に返って素直

に謝る姿等々が等身大で映し出されていきます。

 

ボクが一番感動したのが、彼女の娘が認知症で親の名前も分からない状態でいる
こと。

「わたしだれ?」と聞く声に全く反応しない娘。それを黙って抱きしめるグラニーD。

なんとも強烈なシーンでありました。94歳の母が認知症の娘を抱きしめる図。高齢化

日本では何れ日常になるんだろうか。凄いショック!

 

グラニーDの歩行キャンペーンにずっと付き添っているのが彼女の息子。彼の

言葉がこれまたふるっていた。「定年退職して穏やかな生活が出来ると思ったら、

全くの計算違いだった」とおおらかに笑う息子の顔。イラク戦争以降、9・11以降米国

が再認識した家族の絆が見事に描かれています。

 

選挙はグラニーDの善戦ではありますが、約600万円弱の彼女の借金を残して選挙

に大敗し、早々に決着がつきます。インタビューを受ける彼女の痛々しい顔が印象的

でありました。選挙参謀が言う言葉が又良かった。グラニーDが圧倒的な効果を持つ

TVキャンペーンに金を使うために土地・建物を担保にしたらという提案に、「君はもう

十分金銭的な犠牲を払っている。君は二期目はない。その人間に金は集まらない。

返す当てのない借金はすべきでない」と答えます。これが戦略上不利と分かっていな

がら、あえて拒否した選挙参謀の英知に脱帽です。仮に借金を増やし、当選しても

結局は返済のために企業献金を当てにする構造が出来ることを恐れたんですね。

日本の政治家に聞かせてやりたい。

 

最初この映画を見始めたときはずいぶんとふざけた候補がいるものだと思いましたが、

彼女の発言の数々が実に素直で真摯。年寄り特有のやんちゃもあるけど、愛嬌のある

アメリカの典型ばあちゃんの圧倒的魅力にぐいぐいひきつけられあっという間に見終

わってしまいました。

 

彼女の素敵な言葉がこちらにあります。外国の方って本当にメッセージがうまい。

 

We live in a land where each person's voice matters. We can all do something.

Sometimes, we have to make sacrifices to be heard. But it is still our free land

and, my, how we all do love it.

アメリカのチャレンジ精神が見事に表現された秀作です。米国の大統領選はいよいよ

佳境に。あの、共和党パウエルさんが昨日民主党オバマ氏を支持しました。裏読み

すると黒人反発票が逆に伸びるという見方がありますが、果たして結末やいかに。

また日本の総選挙も日程が詰まってくるでしょう。

 

選良として身近な選挙をどう考えればいいか、大変に示唆に富む映画です。CATV枠

でしか見ることが出来ないのが残念ですが、機会があれば是非ご覧になられてはいかが

でしょうか。番組は今月いっぱい見られるようです。

 

 

■この映画の評価:★★★★☆

 (★五つが最高評価)


■2007年米国制作

 

 

2008年10月21日投稿

 


映画(試写会): 60歳のラブレター

2011年07月31日 11時31分29秒 | FILM

作品は「60歳のラブレター」というある企業さん主催で全国から集められた伴侶

に対する86000を超えるハガキを基に製作され、第二の人生を迎える(た)家族

の揺れる人生のひとこまを描く。

 

三組の夫婦には(中村雅俊+原田三枝子)(イッセー尾形+綾戸智恵)(井上順+

戸田恵子)という組み合わせ。それぞれ年齢相応な芸達者を配しています。

 

映画の冒頭は東京のまるでアメリカの高速道路思わせる景色の中を、場違いな

軽トラックが走るところから始まり、そこから三組の波乱に富む数日間がオムニバス

方式で描き出されて行きます。この軽トラが映画のエンディングの重要な伏線に

なるので詳細はネタばれになるので記せませんが、ご覧になる時は頭にとどめて

いて下さいね。

 

上記の三組、男は団塊の世代と思しき年齢。奥様と独身者に絡む女性もそれに

近い年代。時折挟まれるエピソードはまさにボク等の歴史そのもので、まるで自分の

歴史のひとこまをみるような感じ。

 

主要テーマは功なり名を遂げた男の熟年離婚、ワーキング・ウーマンのはしりで

恋愛もできなかった女性の恋と男やもめの一人娘との葛藤、仲の良い夫婦に訪れる

病魔の影と代表的な現代が切り取られていきます。このテンポはなかなか軽快で、

さしたるひねりのある会話ではないのですが、それぞれの役者さんの上手な演技で

ボクなんかはかなり大声で笑ってしまった。

 

 

中村雅俊もいい役者になりましたね。ひょうひょうとした中にも頑固な芯がある男を

上手に演じていました。原田三枝子さんも今回は役柄なのか、かなり抑えた演技で

相変わらずうまい。注目したのは井上順の娘を演じた少女。この子の演技がとても

自然で、好感がもてました。特に彼女が戸田恵子と父親を巡って言い争う場面が

秀逸。彼女の演技で戸田さんが完全に食われたと思った瞬間、戸田さん、負けなか

ったですね。最後の短いセリフで逆転。流石です、参りました。この30秒ほどのカット

を見るだけでも映画を見て得した気分になれます。

 

プロット自体はボクはいろいろ注文があります。結構ありふれたというか、あり得ない

ストーリー展開が多いのですけど。一番の弱点は、定年退職した男が、いままで自分

が出来なかったことをやりたいというので、わざわざ浮気を知っていた耐え忍んだ妻と

離婚して、浮気相手のベンチャー企業の共同経営者(?)になるかねぇ。ボクだったら

そのまま離婚せず浮気を続けるけど(笑)

 

 

 

それと三組それぞれハッピーエンドというのがへそ曲がりのボクには気に食わん(爆)

人の不幸は三度の飯より大好きなもので。

 

まぁ、これを批判すると全てが壊れてしまうのでこれくらいにしますけど。こういう熟年

以降のおとぎ話的なストーリーもいいかなって許せます。

 

ペーソスと笑満載のいい映画です。肩ひじ張らずに熟年の夫婦愛はどうあるべきか、

これを考えるきっかけになる映画です。これから定年を迎えるご夫婦、既に迎えて

にっちもさっちもいかなくなってるご夫婦、そして二人になる夢もちぼーもなくした

あなた、皆さん必見の映画ですよ(笑)

 

最後にあのジャズ歌手の綾戸智恵さん、日頃の得意の関西弁をかなり抑えて

芸達者なところを見せてくれて、イッセイ尾形は昭和天皇を演じた「太陽」の名演技

がまだボクの頭に残っていて、時折昭和天皇になるのが惜しい。あなたの弾き語り

のたどたどしいビートルズのミッシェルが延々と続くのにはには降参(爆)

ボクが代わってあげたくなった(爆)

 

変な話ですけど、原田三枝子さん、戸田恵子さん、それぞれメークも殆どなしで年

相応の顔を見せてくれた勇気に感謝。整形で年齢不相応なお顔を見せてくれる

美人女優さんが多い中、美しく年輪を重ねる姿を見せてくれてありがとう。拍手です。

 

 

 

 

■この映画の評価: ★★★☆☆

(★五つが最高評価)

 

 

2009年5月16日 全国ロードショー開始

日本制作映画

 

 


東京探訪記: ラフォーレ原宿

2011年07月31日 09時10分07秒 | 東京探訪記

夏休みで賑わう原宿でも今一番ホットな場所
暑い日差しの中
ちょっと涼しくなるようにソフトを使って画像を変えて(笑)

 

 

お隣のH&Mも相変わらずの人出でありました

若者の波をかき分け
原宿駅竹下口まで辿りつくともう汗びっしょり

 

Photo by iPhone "MoreMono"

 

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Phoenix 東北&関東
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映画:This is it

2011年07月29日 06時57分23秒 | FILM

 

 

 

やはり観にいきましたよ

これは観ざるを得ません

 

ジャクソン5時代のマイケルには

殆ど関心はなかったのですが

「Thriller」「Bad」の80年代後半はハマりました

 

ちょうど中東駐在時代

ビデオでこの二つを観て

愚息どもとダンスを真似してましたよ(爆)

勢い余って彼の映画を観にパリまで二回も行っちまった

(ていうか観光旅行のついでに映画館に)

 

 

 

 

映画は最後の公演となったであろう

ロンドン公演のリハーサル風景を

つなぎ合わせたもの

 

公演までの修正を行うために

ビデオ・チェックしたものでしょうか

リハーサルとは思えぬ完成度の高さ

 

つなぎ合わせの技術の高さもさることながら

とてもリハとは思えぬマイケル始めとする

バックダンサー達ダンスやバンド演奏の完成度の高さ

エンターテイヌメントってこういうことを

言うんだと改めて実感

 

今流の表現を借りれば

鳥肌立った

  

 

やはりマイケルのステージ姿は素晴らしい!

 

これを観て本番のロンドン公園は観られぬにせよ

その姿をDVDでも観たかったと思った観客は殆どでありましょう

この映画の彼のダンスの動きを見ると健康体そのもの

薬物で死ぬような動きにはとても見えません

 

本当のエンターテイナーであったんだ

全く惜しい人を世界はなくしました

 

リハの打ち上げで

スタッフをねぎらう彼の言葉がエンディング

その言葉は

「世界への愛」と「環境保護」

彼らしい言葉ではありませんか

 

リハ中に見せる彼のスタッフへの注文の付け方も

極めてジェントルマン

とても斯界の帝王といった物腰ではありません

またダンスの振り付けも自分でやるのね

専門スタッフがいるのかと思ったら

彼のアイデアなんだ!

 

むしろ本公演では見られぬ彼の本質が見える!!

 

晩年種々詰まらぬ芸能ネタを提供する不幸な時代がありましたが

彼の遺したメロディーは不滅です

 

 

 

 

 

ムーンウォークは観たかったんですが

今回このシーンは入っておりません

 

それとボクが最高傑作と思っている

「We are the world」が入っていないのが

とっても残念

 

でも

この映画でまた音楽史での彼の業績を

再認識できるでしょう

 

何れDVDが発売されるでしょう

これは我が家の永久保存版です

 

 

■この映画の評価:★★★★★

(★五つが最高評価)

■2009年度 米制作映画

 

この映画のエンドロールは絶対最後まで観て下さい。おまけ映像が

結構ありますので。びっくりしたのは映画館の観客が館内照明が点く

まで誰も立つ人がおりませんでした。こんなの初めて。びっくり!

 

 

 

2009年11月4日投稿

 


映画:パンドラの匣

2011年07月29日 06時40分10秒 | FILM

 

 

 

今年は太宰治生誕100年に当たるようで

今「パンドラの匣」と「ヴィヨンの妻」の二作品が

上映中

 

後者はカナダの映画祭ですでに監督賞でしたか

受賞して

 

美術館でディズニーのメアリー・ブレア展を堪能した後

げいじゅつのはしごを(笑)

「パンドラの匣」を鑑賞してまいりました

 

この映画のウリはなんといっても

主演の川上未映子

 

ミュージシャンであり作家であり

「乳と卵(ちちとらん)」

でなんと2008年度芥川賞を射止めた才女

彼女が主役をつとめます

 

これがまた不思議な雰囲気で

もともと大阪の京橋生まれ

まったりとした関西弁で演技をするのですが

彼女が登場した冒頭から

映画は画面に奇妙な「ねじれ」を生じます

 

演技力があるというのか

もしかしたら「素」でやっているのか

よくわかんない(爆)

存在感があるよでないよで

なんとも不思議なお方です

 

彼女を選んだ監督の慧眼に脱帽

 

 

映画は太宰の同名小説のストーリーに沿って展開

小説は作家太宰のもとに送られた手紙を作家が紹介する

というカタチをとっているため

一人称で語られますが

これを映画でどう処理するかが監督の腕

 

主人公は結核のため戦に出られず

大阪の民間治療施設で終戦を迎えたという設定

 

戦いに出られぬまま終わったという

劣等感とこれからその頸木(くびき)から逃れられる

という開放感

一方で当時はイコール「死」という結核の恐怖

なんやら訳の分からぬ民間療養所での

患者同士の奇妙な連帯

 

太宰が見せる陰陽と悲喜劇の落差がテーマでありますが

 

この映画は寧ろ

オーディションで初主演を得た染谷将太の

ういういしい若さに賭け

まさに世に邪悪が飛び散ったあと

パンドラの匣に残った小さな希望を描き

全編を通じ軽いタッチで

太宰のあのシニカルな笑いを意識した

味付けになっています

 

それにしても

怪演とも言える川上さんの演技

これが一番太宰的(苦笑)

また次の作品でどんな演技をするのかを

観てみたいものです

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

■この映画の評価:★★★★☆

(★五つが最高評価)


■2009年日本制作映画

 

 

2009年10月19日投稿

 

 

 

 

 


映画:アバター

2011年07月28日 12時06分30秒 | FILM

 

 

観に行きました。なんやらトニー谷さんのメガネみたいのかけて観ましたよ(笑)

あの「タイタニック」のジェイムズ・キャメロン監督の久々の監督作品。前作を凌いで
興行成績で既にトップになりましたね。観に行ったその日にそんな報道が。あはは、
ボク等夫婦もささやかながら協力した訳であります。

映画は「スター・ウオーズ」「ジュラシック・パーク」「駅馬車」「マトリックス」をシェーカー
にぶち込んで、良く撹拌してイチゴ大福をトッピングしたカクテルと言ったら巨匠に叱
られる?
イチゴ大福とは日本的精神構造+甘酸っぱい恋愛+3Dのコラボ。これで餡と皮と
とちおとめじゃ(笑)

 

 

ストーリーはある惑星の貴重な鉱物資源を簒奪するため地球人のあの手この手を
描き、その重要な戦略に組み込まれた戦争で脚の自由をなくした兵士の物語。
この兵士はなんとアメリカ海兵隊(Marineと言ってたかな)。
なんじゃ、イラク戦争のオマージュかしらん(すんません)
ふと深読みすると、西部開拓史にも見えるし、いちご大福と言ったものはアメリカ・
インディアンの精神世界なのかも知れません。

なにせ、キャメロン監督の次回作は広島・長崎の二重被爆者がテーマ
と聞いているので、もしかしたらアメリカ建国の原罪をうまく隠して表現しているの
かも。表面的な見方をすれば今の我々が犯している環境破壊に対する警鐘となる
のですけど。

身体の自由をなくした主人公が別世界で身体の自由を得る展開と、美しい画面で
観る異次元の惑星の自然の姿がとても印象的。

もうひとつのテーマはお得意の「愛」が語られています。これは論理的にこの映画

を見ちゃうとちょっと辛いところがあるのですが、それはスペース・オペラ的発想で
軽く流して、ヒロインとヒーローの悲恋物語として映画を楽しみましょう。

ボクのひん曲がった性格での見立てでは先の「タイタニック」も、跳ね返りの金持ち
嬢さんの気紛れの恋で(当時)可愛かったデカプリオをたぶらかし、挙句何で殺され
るんだとなってしまうので(笑)

 

 

ところで「アバター」ってなんでしょう。日本語訳にすると「化身」となるの。
ちょっと違和感がありますね。由来はインド仏教かヒンドゥー教か知りま
せんが、神の化身Avataar(又はAvatar)から来ているようです。映画を
観た後では「分身」とするのがいいのかな。因みにボクのもっている
Longmanの英英辞典にはでていなかった・・・

アバターを初めて知ったのは昔富士通の「ハビタ」というコミュニケーション・
サイト。これが日本では最初のこの言葉の出現じゃないかしら。ボクの
分身はその時女の子でありましたが(爆)いや、久しぶりにあの当時の
「パソ通」(この言葉も死語かな)をこの映画を見ながら思い出しました。

さて、映画ですが、3Dはやはり奥行きがあって素晴らしいです。最初に
見たのはTDLで,なんとマイケル・ジャクソンの映画じゃなかったか。火の
玉がボクめがけて飛んできて、思わずよけた(爆)この映画でも、石か
なんかが飛んでくる場面があって、思わず両手を上げて顔を塞いで
しまったじゃないかっ(笑)恥ずかしい(爆)

でも、近視で乱視で老眼のメガネかけてるボクがその上にメガネを
かけるのは鬱陶しいです。3Dテレビが既に発売されているというけど、
毎回メガネを二重にかけるんじゃ要らないなぁ。

ところで、この映画、3D作品でなかったらこんなに興行収益あげられた
のかな。
環境問題という提起の仕方が世界の人々の琴線に触れたのかな。ボク
の見立てではどちらかというと「きもい」部類に属するアバターや異星人が、
意外やストーリーの進展に従って親近感を増し、仮想現実であるにも
拘らず極めて身近に感情移入でき、その不思議さにハマることが出来る
驚きがこの人気ではないのかしら。この辺の仕掛けは流石キャメロン

監督です。

あの「エイリアン」の凛々しい航空士役を演じたシガニー・ウイィーバー
が変わらぬ尖った演技を見せてくれます。容姿が変わらぬのにびっくり
です。それとヒロイン。異星人役でメークされた表情しか見られないの
ですが、特徴ある声の演技がとっても素敵でした。

 

■この映画の評価:★★★★☆(★五つが最高評価)
■2009年 アメリカ制作映画

え~と、本当は★三つ半にしたかったけど、監督の次回作期待と初の
フル3D映画ということで1/2おまけ(笑)それにしても時期作品
「HIROSHIMA(仮題?)」を早く観たい。これオバマさんに次いで
ノーベル平和賞もあり得る題材でしょう。

 

ところでマイケル・ジャクソンの映画のDVDが昨日我が家に届きました
(るんるん)
この幻の最後のロンドン公演にはスリラーのフィルムを3Dで撮って
いたんですってね。
いやぁ、これからは映画も歌も3Dの世界なんですね。

 

 

2010年1月18日投稿

 

 

 


映画(試写会) 「17歳の肖像」

2011年07月28日 11時48分26秒 | FILM

 

 

 

青春映画の最高傑作というとボクはスティーブン・キング原作のあの「スタンド・
バイ・ミー」を真っ先に上げますが、この映画はそれに次ぐ作品と言っても過言
ではないかも。特に「スタンド・バイ・ミー」が男の子たちの成長過程、字句通り
自立を謳ったのに対し、この映画は一人の少女の自立を謳います。

1961年という時代設定。ロンドン郊外の高校生の少女が主人公。進学目標は
あのオクスフォード大学で、クラスメートからも学校の先生たちからも一目置かれる
優秀な美少女。そして17歳の誕生日を前に、少女から精神的にも肉体的にも
女性に変身する前の揺れ動く微妙な乙女心を、主演のキャリー・マリガンが
ナチュラルな演技で魅了します。

雨の降る日にふと知り合った中年のサラリーマン風情の謎の男(ピーター・サース
ガード)、どう見てもコメディアン的な風貌ですが、彼の醸し出す家庭や学校にない
不思議な魅力に惹かれる彼女。余りに刺激的な大人の世界。そう、青春時代って
大人の持つあのどこか退廃的な匂いというか雰囲気に何故か惹かれるものがあり
ました。ここら辺りの描き方は大変うまい監督さんです。

そして、彼女は初めての経験をこの中年男とするのですが・・・その前段で彼女が
「今日はダメ、17歳になるまで数日待って、だってそう決めていたから」というセリフ
がなんとも可愛い。その言葉に従う男もゼントルマンでありましたが。この後はテンポ
よく話が展開。えっ、そりゃないだろうというどんでん返しの連続。2時間弱の長さですが、
全然長いと思わなかった。構成力の勝利でしょうね。

冒頭に書いたようにこの映画の時代はあの華の60年代。バックに流れる英国
ポップスの歌がなんとも気持ちがいい。このスティール写真にあるカメラは日本製。
そしてこの男が乗る乗用車は、多分ベントレーか(クラシックカーには疎いので間
違っていたらごめんなさい)。こういう時代背景や小道具の数々でボクのような
年代の者も若い頃を思い出し、かなりノスタルジックな感傷に浸れました。この他
にも当時流行った絵画やら古美術が顔を出し、そんな数々をチェックするのも
もうひとつの楽しみ方が出来る映画。

主演の二人の演技もさることながら、脇がまた素敵。特に両親がどちらかというと
ステレオタイプな親という役柄ですが、演技がうまいせいか、とても笑わせてくれて。
笑いの中にあの英国特有ののシニカルさとペーソスがたっぷり。脚本も単なる青春
映画に終わらぜず、英国風のアイロニーと毒もたっぷり含んで、それがとっても良い
隠し味になり、見終わった後爽やかなレモンの味となりました。

そうそう、主演のキャリー・マリガンを見て、「アメリ」のオドレイ・トトゥを思い出し
ました。あの映画で彼女は大化けすると思いましたが、その後の活躍はご存知の
通り。キャリーもきっと次の作品でもっと魅力を増して登場すると思います。これ
から要チェックの女優さんですね。特に17歳を過ぎてからの変身ぶりが見事。
これだけ表情が華やぐ女優さんって貴重です。監督も撮っていて楽しかったで
しょう。

この映画を見てちょっと驚いたことが。ひとつはそれほど裕福でも無く、家系もよい
と思えぬ家庭の少女がオクスフォードを受験出来たということ。1961年でそこまで
開放されていたんだ。でも、そこを出たとしても女性の職場は学校の先生か公務員
しかなかったということ。女性解放って最近の事なんだとつくづく思いました。

「スタンド・バイ・ミー」がよく「人生で二度観る映画」と言われています。この映画も
同様にティーンの皆さんから元少女の皆さんまで(笑)、はたまたボクのようなオジサン
も含めて何回も鑑賞に耐え得る作品で二度、三度観られる映画だと思います。

まだ今年も始まったそれほど経っていませんが、今年度の映画で三本指には確実に
入るでしょう。久々に秀逸な英国映画に出会え、とってもハッピーな気持ちになりました。
あの往年の英国映画復活を願っているボクには朗報の一本でした。


■この映画の評価:★★★★★
(★五つが最高評価)

封切りは4月17日から


(尚、この映画は日英150周年記念事業の一環として試写されたものです)
(オフィシャルサイトはこちら

2010年4月1日投稿


映画:それでも恋するバルセロナ

2011年07月28日 11時15分32秒 | FILM

 

左から主演男優:ハビエル・バルデム 、ペネロペ・クルス、スカーレット・ヨハンソン

 

この映画助演のペネロペ・クルス、ご存じスペインを代表するというか
世界の美女と言っていいんでしょうね、彼女が今年アカデミー助演女優賞
を獲得した記念すべき映画。封切り前からボクの愛するバルセロナが主役
ということで絶対に見に行こうと決めていた映画です。

 

主演はバルセロナ、まさにその通りで殆どがバルセロナの町中のロケ

で。あのガウディ様の建築群が出演する美女たちを美しく、そして妖艶

に引き立たせます。もう最高のカットが続きます。

 

映画のストーリーはバルセロナに休暇で来たアメリカ女性二人(ヨハンソン

とレベッカ・ホール)がパーティで出会った画家(ハビエル・バルデム)に

恋をする経過がテンポよく描かれています。バルセロナと言えばボクの

旅行記でご紹介したようにガウディとダリが思い浮かびますが、監督の

ウッディ・アレンはまさにバルセロナの都市の魅力を画家で表現しています。

間には現代を代表するフラメンコ・ギターの演奏があったりして、至れり

尽くせり。洒落た会話がとても素敵で、冒頭からウッディ・アレン特有の

イロニカルな笑いに包まれて、バルセロナという町が持つ魔力にどんどん

引き込まれていきます。

 

 

バルでのシーン ボクが食べたようなものがテーブルの上に
やはりタパスとワインですね

 

 

主演のヨハンソンがとっても魅力的。この女優さんは「真珠の耳飾りの少女」

という名作を見てからすっかり惚れこんで、殆どの作品を見ていますが、最近

「ブラック・ダリア」あたりからちょっと演技力を発揮できない作品が多くて心配

していましたが、この作品では彼女の魅力全開。奔放な恋に生きるも、底に

流れる微妙な陰影をうまく表現して、最近では出色の出来じゃないかしら。

兎も角、彼女の様々に変化する顔の表情を見ているだけで楽しくなる

 

ヨハンソンの友人を演じるレベッカ・ホールですが、彼女の役は恋愛保守派

で婚約者がおり、ドラマの中で結婚もするけど、知らずにいつしか画家の

魅力に惹かれ恋に落ちるも、映画のクライマックスでとんだ結果をウッディが

用意してくれていて、夫の許に帰るのですが・・・

 

ほんとこのシーンは流石ウッディと感心しきり。見事なオチです。思わず笑って

しまった。そしてその笑いの中にペーソスを感じさせる素晴らしい演出。脱帽

です。

 

レベッカの抑えた演技はとても好感がもて、ヨハンソンとの好対照の性格を

うまく表現して、この映画の陰影が見事に出ています。キャスティングの妙と
言えますね。

 

 

さて、肝心のペネロペ・クルス。彼女の登場が随分遅いの(笑)

え~、出演時間の割合でいったら、すごい得した女優さんです(笑)

 

彼女が登場して、映画のテンポががらりと変わります。それはまるで

フラメンコの舞台をみているような。フラメンコの構成は最初にギター、

そして男性ソロの歌があり、主演の女性フラメンコ・ダンサーの歌に

よる紹介で女性ダンサーのソロ演舞となるわけですが、まさにそれ。

 

恋愛は三角関係から四角関係へ。ペネロペは画家の妻で彼を愛するが

故にうまく夫婦関係が続けられず、精神を病んでいるという設定。映画の

言語は殆どが英語。主演のハビエル・パルデムがきれいな英語を喋る

のですが、ペネロペの英語が凄まじい(爆)スペイン語訛りそのもの。

彼女の他の作品ではもっと綺麗な訛りのない英語を喋っていたはずですが

(笑)

 

 

この訛りが映画にある種の緊張感をもたらしているのは事実。ここらへんも

ウッディ・マジックかも知れません。そして美人女優がまさに体当たりの演技

で、アカデミー審査員もお人形さん的な美しさを脱ぎ棄て、女性の業的なもの

を表現した彼女の演技に賞を与えたんでしょうね。あのスペイン語訛りの英語

にかなりのエキゾチズムを感じちゃったんじゃないだろうか(爆)

彼女、存在感のある女優さんになりました。

 

 

 

 

ガウディのカーサ・ミラ 後ろにはサグラダ・ファミリアの威容が

 

最後に主演男優のハビエル・バルデム。押しの強い個性的な画家の役を演じ

切っていますが、渋いいい男です。一見冴えない顔だと思ったんですが、映画

が進むにつれぐいぐい引っ張られて。こういう役者さんにはもっともっと活躍して

欲しいです。ノワール系のアクション映画なぞやらせたら面白いだろうなぁ。また

彼の作品を観たいと思わせる俳優さんです。大人の渋い魅力がたっぷり。

因みにうちの奥様はスペイン人はいい男が多いという評価ですが、味のある

顔の人が多いですね。ふふ、恐るべしスペイン男(笑)

 

さて、ウッディは今年75歳とか。天才は幾つになってもこういう色恋の話を

うまく作りますね。彼の作品って当たり外れがない。そして基本にあるのが

笑とペーソスとアイロニー。この作品もその彼の原則が随所にちりばめられて。

感服しました。

 

ボクはこの日本語題「それでも恋するバルセロナ」はかなりうまい題をつけたと

思います。原題は「VICKY CRISTINA BARCELONA 」となんとも素っ気ない

題で、これよりずっといい。

 

まぁ、これだけの芸達者をそろえて、それぞれが見事に個性を発揮して。余り

芸達者をそろえ過ぎると映画が壊れることがままありますが、この完成度は

素晴らしい。ガウディ作品のカットをはじめ、バルセロナの魅力たっぷりの映画

で、恐らくご覧になられた皆さんもバルセロナの魔力の虜になるんじゃないかな。

 

 

■この映画の評価: ★★★★★

(★五つが最高評価)

 

 

(2008年 スペイン・アメリカ制作映画)