この花の花期ももう東京では終わってしまっていると思いますが、我が家の庭の片隅に
じっとうつむいていらっしゃるのをお邪魔して。
低い位置でほんとにヒッソリと隠れて咲いているので、写すほうも一苦労。いくら自宅とは
言え、腹ばいになって服を汚すと奥様に叱られるし(笑)
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この花の別名は「君影草」。なんともロマンチックな名前ですが、まさにこの風情にぴったり。
この花を見て思い出すのは会社の取引先の去るお方。先様はボクよりずっと大先輩であり、
若輩者で小生意気なボクとはよくプロジェクトの方針を巡って大喧嘩をしたものですが、
不思議と可愛がられて、よく銀座の行きつけのお店に連れて行かれたものでした。
そこのお店のママさんが大変な美人さんで、ボクなんぞはヨッパの上に更に酔いを深める
有様でありましたが・・・ある時、その大先輩が大阪に転勤。今では殆ど見られぬ光景ですが、
東京駅の新幹線のプラットホームの早朝は結構転勤者の見送りなんて日常茶飯事で、
あちらこちらで左遷であっても右遷であっても(後者の用法はありませんので。為念)バンザイ、
バンザイの掛け声がひっきりなしに聞こえたものであります。
ボクも重要な取引先の方ということで、見送りに。その大先輩の会社の方たちは当然
線路際でご当人と挨拶を交わしているわけですが、ボクは早々に挨拶して邪魔にならぬ
ようずっと後ろに下がります。すると、ちょっと回りを見渡せば!
なんとプラットホームの柱の影から着物姿の楚々とした美人さんが大先輩のほうをじっと
凝視めているじゃありませんか。ホント、至らぬボクのこと。それを見てわざわざ彼女のそば
に行き、「あれ、なんで遠慮してるのですか。挨拶されたら?」なんてお節介なことを。
そうしたら彼女曰く「いいんです。私はここで十分なんです」って言って、最後までその
姿で見送っておりました。
まぁ、なんと古風なと思われる方も多いかと思いますが、当時の銀座の老舗のお店のママ
ってこういう人が多かったですねぇ。昼は昼、夜は夜ときっちりけじめをつけていたと思い
ます。
逆に言えば、そういうマナーに耐えられる大先輩のような風格のある男性も多かったという
裏返しかも知れません。その後東京に戻られて、そちらの会社さんで大活躍をされましたが、
十数年前にお亡くなりになって。そうそう、その前に病院に入院したこともその会社の方から
でなく、真っ先に彼女から教えて貰ったものでした。
はは、スズランを見てとんだ思い出話でした。
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ボクの出来悪の鈴蘭ではなく、楚々とした美人のそれはクマゲラさんちでご覧になれます。
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Phoenix 東北&関東
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