窓際日記・福島原発

窓際という仕事の雑感

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・17・BH(ブラックホール)は光を出すのか?

2019-04-03 13:52:36 | Weblog
「BHが黒体輻射している」というのはホーキングさんの結論でありました。
そうであれば「いまさら何を言っているんだ、お前は」と言われそうであります。

しかしながら、ホーキングさんは放出される粒子が「光子である」とは一言も言っていません。
「なにやらエネルギーをもった粒子であろう」そう主張されているにすぎない様です。
そうしてその粒子の持つエネルギーを数多く観測すれば、そのスペクトルが黒体放射スペクトルと一致する、そう主張しているにすぎません。

そうして今までの議論が何ゆえに「放射される粒子はニュートリノである」と想定して話を進めてきたのか、より一般的に真空の揺らぎで対生成される粒子といえば光子ではないのか、そう言われそうであります。
まあそうなんでありますが、ニュートリノはフェルミオン、光子はボゾンであり、前者は閉じた弦で表され、後者は開いた弦で表されます。
そしてニュートリノのサイズは閉じた弦のサイズ、それはプランク長あたりであろうとされていますが、そのような「大きさ」を想定する事が可能であります。

他方で光子というのは「波長というサイズ」を持つ事は、これもまた周知のことでありましょう。
それゆえに顕微鏡の分解能はその顕微鏡が使用している波の波長程度が限界となります。

さて、BHもホライズンの直径というサイズを持っています。
このサイズがプランク長未満になると、フェルミオンはBHの中に飛び込めない、「そこで一応の準安定に到達する」と言うのが当方の主張でした。

同様に光子に対してもその波長サイズがBHに入れるかどうか、それを決める要因になっていると想定するのは妥当な事であります。
現にベッケンシュタインさんはBHの直径サイズの波長をもった光子がBHに入る事でBHのホライズン表面積がLp^2程増加する、そしてそれがBHが情報を蓄積する際の最小単位である、と主張されたのでした。
そうしてBHの直径よりも大きな波長をもった光子がBHの中に入る状況、というものは、確率的にはゼロと言う事ではないでしょうが、相当に起こりにくい現象であろうという事は想定できます。

さてそうであれば、ここではベッケンシュタインさんに同意し、「BHに入れる光の波長はBHホライズンの直径が上限である」と想定し、話を進める事とします。

質量MのBHのホライズン半径RsはRs=2*G*M/C^2 .でした。
直径が波長λになりますからλ=4*G*M/C^2 です。
その時の光の周波数νはν=C/λ=C/(4*G*M/C^2)=C^3/(4*G*M)です。.

そしてその時のBHのホーキング温度TはT=h*C^3/(8*pi*Kb*G*M)。
プランク則よりその温度の時の最も多く放出される光子の振動数νpは (生h)*νp = 2.82*Kb*Tから
νp=(2.82*Kb*T)/(生h)
生h=h*2*Piを代入して
νp=(2.82*Kb*T)/(h*2*Pi)
上式にT=h*C^3/(8*pi*Kb*G*M)を代入して整理すると
νp=(2.82*C^3)/(16*Pi^2*G*M)

次にνがνpの何倍になっているか調べます。
レシオRはR=ν/νp=(C^3/(4*G*M))/((2.82*C^3)/(16*Pi^2*G*M))
R=(4*Pi^2)/2.82=13.99942≒14

そういうわけで、BHが受け入れ可能な光子の振動数はBHのホーキング温度Tで計算される黒体放射スペクトルのピーク周波数νpの14倍以上からである、と言う事が分かるのでした。
これはつまり「BHは光に対してはローカットフィルターになっている」と言う事であります。
そうして、BHが光を吸収してはじめてBHは反対方向への光の放射が可能になるのですから、放射される光のスペクトルは黒体放射スペクトルとはまるで違うものになる、と言う事が分かります。


さてここでプランクの放射則を簡略化した式(hとKbを1とし、温度を100とした式)x^3/(e^(x/100)-1)を使います。(注1)
ここでxは振動数を表しています。
そしてここでもWolframを使います。<--リンク
プロットを選びます。
「x^3/(e^(x/100)-1) ,0<x<1500」<--こんな風に書いて入力(コピペ)するとスペクトルグラフが出てきます。
このグラフのピークは「x^3/(e^(x/100)-1) の極大値」と書けば出てきます。
グラフにカーソルを合わせて282がピークである事を確かめましょう。

Wolframの「例」に戻って積分ーー>定積分を選びます。
「0から1500の範囲でx^3/(e^(x/100)-1) を積分」しますと6.49267*10^8が答えです。
「0から無限の範囲でx^3/(e^(x/100)-1) を積分」で6.49394*10^8。

さて問題の14倍ではX=282*14=3948
「3948から無限の範囲でx^3/(e^(x/100)-1) を積分」では0.0000474879。

実は光の振動数は上限がありそうですが、まあ一応それはここでは無視しています。

そうして問題は「3948から無限の範囲」の光子が発生する確率ですね。
それは母数が6.49394*10^8ですから、それで割ってやればよろしい。
Ans=0.0000474879/(6.49394*10^8)
Ans=7.31*10^-14=0.0000000000000731

さて、光はBHから出てきそうですが、それは従来予想された頻度よりも随分と低い状況の様です。
ただしピーク周波数の14倍以上のエネルギーを持っていますから、それを考慮しますとエネルギーの放射効率⊿Erは⊿Er=(7.31*10^-14)*14~20程度かと思われます。
最大予測値の20で見積もって
⊿Er=(7.31*10^-14)*20=1.46*10^-12=0.00000000000146程度かと。
それはつまりBHの寿命は放出される粒子が光子のみであるとすると、放出粒子をフェルミオンと想定して計算した場合の1/0.00000000000146倍に伸びる、と言う事であります。


さて従来のBHの寿命式はこうでした。
t=(8.41E-17)*M^3(Sec)
この式ですとM=250000Kg(250トン)に到達してから寿命まではt=1.314secです。(注2)

これが前回まで提案してきた「多層の仮想粒子発生モデル」ですとほぼ10倍のt=13.14secに伸びます。

さらにBHが放出する粒子は光子のみである、とすると寿命は上記の6.85*10^11倍に伸びて29.1万年程となります。

そう言う訳で、BHは確かに光子は放出しそうですが、なかなかそれは難しい事である、と言う事が分かるのでありました。
(イトウ 2019年4月3日)

注1
ここでは温度を100にしていますが、この温度を1000にするとピークのXが2820となりその14倍の値が39480となり、無限大までの積分の値が変わってきますがそれと同じようにゼロから無限大までの積分の値も変化し、その結果、必要なレシオの値、確率の値は一定に保たれます。
そうしてそれが「プランク則のグラフの形は温度には寄らない」と言う意味になります。

注2
BHが光子のみを放出と言う事で計算すると、最後の1秒で12Kgの質量が光子(γ線)に変わります。
それは1.08E+18(J)程度でありTNT換算で258メガトン、水爆4個程度に相当する爆発が起こりそうです。

ちなみに最後の瞬間から2年前の1日間ではTNT換算で644トンのエネルギーがγ線に変換されます。
それは2.7*10^12(J)/日=31200KW。
一般世帯7800軒相当のエネルギーになります。

そうであれば、BHの蒸発の観測、というのはこの辺りの状況が限界かと思われます。
その時のBH質量は4780Kg(車3台分程度),ホライズン半径は7.099*10^-24(m)。
陽子半径が8.75*10^-16(m)ですから、まあBHというものはいずれにせよ大変なしろものではあります。


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