窓際日記・福島原発

窓際という仕事の雑感

ダークマター・42-2・輻射-物質拮抗時期(宇宙の放射成分を考える)の2

2020-03-06 12:10:20 | Weblog

「42・輻射-物質拮抗時期」からの宿題をやりましょう。

『つまりここで解いたフリードマン方程式によれば「輻射-物質拮抗時期」の宇宙の大きさが2.55倍になると「宇宙の晴れ上がり」となる、とその様に言っていることになります。
ちなみに宇宙の温度から「輻射-物質拮抗時期」ー>「宇宙の晴れ上がり」への宇宙の拡大率を計算しますと
倍率=8860K/3000K=2.95倍となり
両者の間には相当の、無視できない相違が生じている事が分かります。』

ちなみにこのお話の教科書は「第6講 熱的宇宙」です。
http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/konan-class06/ch6-thermal-cosmos.pdf

その記述によれば最初の3分間は「輻射優勢期」としてよろしい、とあります。(P3)
その次の記述は「輻射-物質拮抗時期」となり、宇宙誕生から7.4万年後であるとされています。(P5)
そうして「宇宙の晴れ上がり」は37.5万年後と算出されています。(P6)
しかしながら、「輻射-物質拮抗時期」を表すフリードマン方程式を解きますと違う結果が出てきたのでした。<--「42・輻射-物質拮抗時期」を参照。
それで以下、その理由をさぐる事となります。

第一章「輻射-物質拮抗時期」を求める。
「輻射-物質拮抗時期」を決める為の議論のポイントは「現時点からどれだけ前にさかのぼると物質のエネルギー密度と放射のエネルギー密度が等しくなるのか」を求める所にあります。
その計算結果が(6.30)に示されていますが、「宇宙の大きさが今の3250分の1であった時である」がその答えになります。
それで、今の宇宙の温度を2.73Kとしますとその3250倍がその時の宇宙の温度、正確には宇宙を満たしている放射の温度、という事になります。
そして次はその時の宇宙の大きさ、それは今の大きさの3250分の1なのですが、その情報から「宇宙誕生から何年後であったのか」を計算することになります。

その計算に使うのはフリードマン方程式なのですが、教科書では「物質成分100%の場合のフリードマン方程式の厳密解」を使って議論しています。
まあその理由としては「厳密解が単純な形で与えられるから」という所でしょうか。
そしてそれが「誤差を生んでいる最初の要因」となります。

やらなくてはいけない計算は誕生から138億年後の宇宙の大きさを1としたときにその大きさが1/3250の時の宇宙年齢を求める、というものになります。
そしてその計算を「まじめに、正確にやる」としたら放射、物質、DEの3成分をもつフリードマン方程式を数値解析で解いていく事が必要になります。
しかしこれは「計算インフラがある方」であれば可能でしょうが、当方には無理ですね。

それでまあここは「物質とDEの2成分のフリードマン方程式の厳密解を使う」ということで、上記教科書提示の「物質100%のフリードマン方程式の厳密解を使った場合」との比較・検討という事になります。

さてそれで、その2成分のフリードマン方程式の厳密解ですが
「物質+Lambda モデル」
https://www.cosmology.jp/intro-to-cosmology/node33.html
(or http://archive.fo/o02Wr )
の(5・26)式を使います。
パラメータは
Ωm 0.308
ΩΛ 0.692
H0 は 67.8となっていますが1に変えます。
そうすると
a(x)=(0.308/(1-0.308))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.308)*x))^(2/3)
が2成分系での厳密解となります。
そして宇宙年齢を138億年とした場合に「物質・DE拮抗時期」が102億年と計算されていますので、この情報を元に上記厳密解の時間軸をスケール化します。

スケール化の手順は、102億年で宇宙が減速膨張から加速膨張に変わった、という事を使います。
つまりその時に上記a(x)の式の微係数が最少値をとる、ということを使います。
まずはa(x)の式をプロットしましょう。
ウルフラムに「 」内
「(0.308/(1-0.308))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.308)*x))^(2/3) 0<x<1  プロット」
を入力します。
実行アドレス
このグラフはx=0がビッグバンスタート地点です。

次に微係数を求める為に式を微分します。
ウルフラムに「 」内
「(0.308/(1-0.308))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.308)*x))^(2/3) の導関数」
を入力します。
実行アドレス
グラフから0.5近辺で微係数が最小値となる事が分かります。
そしてその値は一番下に表示されています。
!=164443103*LN(2+SQRT(3))/410383570=0.527712752
この数値が宇宙年齢102億年に対応することになります。

さてそうなりますと138億年に相当する数値は
0.527712752/102*138=0.713964311
となり
この数値をa(x)=(0.308/(1-0.308))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.308)*x))^(2/3)
に代入すると「式a(x)による現在の宇宙の大きさが計算される事」になり
a(x)=0.770363238205151
を得ます。

それで求めるべきは「現在の宇宙の3250分の1の時の宇宙年齢」でした。
その時の宇宙の大きさは
0.770363238205151/3250=0.000237035
となり、従って
0.000237035=(0.308/(1-0.308))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.308)*x))^(2/3)
の根を求めればその時刻が得られる事になります。

上記式をウルフラムに入れます。
「0.000237035=(0.308/(1-0.308))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.308)*x))^(2/3)の根」
実行アドレス
その結果は
4.38381E-06
となります。

138億年が0.713964311でしたから4.38381E-06は
138/0.713964311*4.38381E-06=0.000847333億年
つまり8.5万年という数値となります。
物質100%の前提からは7.4万年という数値がでてきますので、まあ1.1万年程度の誤差がここで発生している事がわかります。

同様の手順を「宇宙の晴れ上がり時期」について繰り返すことでその時刻が43万年である事が分かります。
まとめますと
フリードマン方程式  物質100%の解 物質30%DE70%の解
「輻射-物質拮抗時期」  7.4万年   8.5万年(14.9%アップ)
「宇宙の晴れ上がり時期」37.5万年  43.0万年(14.7%アップ)
こうして、使うフリードマン方程式の厳密解の種類によって考えている時刻、それはその時の宇宙年齢になるのですが、それが異なる事が分かるのです。
そうしてもちろん、当方の推しは「物質30%DE70%の解を使う」という事になります。

第二章
さてそれで、これで宿題が解決したのか、といいますと、そうはいきません。
もう一度問題のグラフを確認しておきましょう。

実行アドレス

第一章で求めた宇宙年齢はこのグラフのt=0の位置を7.4万年と読むのではなく8.5万年と読むのだ、と主張しているだけであって、そのグラフ上での「宇宙の晴れ上がり時期」の位置は
t1=0.55*43/8.5=2.78
t=t1-0.55=2.23
となり、前回もとめた数値t=2.27とほとんど同じになってしまうからであります。
そうなりますと宇宙の拡大率も2.55倍とほぼ変化のない結果となります。

それではこの問題の本質は何か、といいますと、現在の宇宙の状況から宇宙の初期の状況を推測しなくてはならない、という所にある困難さにあります。

「輻射-物質拮抗時期」や「宇宙の晴れ上がり時期」の宇宙の挙動を示すフリードマン方程式は前回提示したように放射と物質成分からなる2成分系で表すのが正解なのですが、現時点での宇宙の挙動を示すフリードマン方程式は物質とDEからなる2成分系のものになります。
そうであれば正解を求めるためにはこの2つの方程式の解をうまく接続して答えをだすか、あるいは始めから放射、物質、DEという3成分系のフリードマン方程式を数値解析する、という方法をとる事になります。
そうして、いずれの方法も現状の当方の手には負えません。

ちなみに「輻射-物質拮抗時期」を8.5万年としそこから宇宙の拡大率が2.95倍になる時期を上記グラフから読み取りますと、t=3.2となり宇宙年齢に換算すれば
t=3.2/0.55*8.5=49.5万年<ーー「宇宙の晴れ上がり時期」
となります。

逆にその点を第一章での計算値である「宇宙の晴れ上がり時期」43.0万年とすれば
t=43/(3.2+0.55)*0.55=6.3万年<--「輻射-物質拮抗時期」
という事になります。

結論
「物質30%、DE70%の解」を基本とし「放射と物質成分からなる2成分系のフリードマン方程式の解」を使って考察すると以下の様な結果となる。
             最小値    最大値    中央値
「輻射-物質拮抗時期」  6.3万年  8.5万年  7.4万年
「宇宙の晴れ上がり時期」43.0万年 49.5万年 46.3万年

中央値でみるならば「輻射-物質拮抗時期」は現行値の7.4万年と同じとなり、
「宇宙の晴れ上がり時期」は現行値の37.5万年の1.23倍となります。

さて、以上の結果が現行宇宙論に対して「些末な事」であるのか「無視できない事」であるのか、その事については当方の判断できる範囲を超えております。

追伸
CMBをつかって宇宙の年齢を推定する際にCMBパターンが放射された時点を宇宙誕生から37.5万年として計算をしています。
しかしながら上記主張によれば37.5万年と言う数値は「小さく見積もりすぎている数値」と言えそうであり、CMBの放射時点は少なくとも40万年近傍の数値がより妥当であると言えそうです。
そうしてもちろん「宇宙年齢が違う」という事は「CMBから計算されるハッブル定数の値も違ってくる」という事になりそうです。

追記(2021/3/6):上記記事でスケーリングのやり方に参照した教科書の記述内容の理解の仕方に誤解が見つかりましたので、その部分からやり直しが必要となりました。

その為の修正作業は42-3・輻射-物質拮抗時期と宇宙の晴れ上がり時期 で行う事と致します。

追伸 その2(2021/4/13):以上の結論で述べた疑問点、およびハッブル定数への影響についての最終回答は ・43-4・ハッブル定数の食い違いについて(4) で示される事になります。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

http://archive.fo/H9yHk
http://archive.fo/1aMKY

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