まずは前ページの記述から引用します。->『さてそれで、その2成分のフリードマン方程式の厳密解ですが
「物質+Lambda モデル」
https://www.cosmology.jp/intro-to-cosmology/node33.html
(or http://archive.fo/o02Wr )
の(5・26)式を使います。』
その式にパラメータを代入して微分して最小値を出した、そしてその最小値を付けたところから宇宙が減速膨張ー>加速膨張に転じた、そこまでの記述は良いのですが、教科書の記述内容を誤解してそのタイミングをビッグバンから102億年後とした所が間違いでした。
教科書に書かれている内容はあくまで『平坦な質量-Λ宇宙モデルが正しければ、宇宙は生まれてから102億年 の間は質量優勢、その後36億年の間は Λ優勢であったことになる。』というものであって、「102億年を境にそこから宇宙が加速膨張に転じた」とは書かれていませんでした。そうして、その様に解釈をしてしまったために「時間軸のスケール化」で間違いを犯してしまいました。
もともと教科書の目的は『今、質量と宇宙定数 の密度がそれぞれ等しくなる質量-Λ同値時刻時刻t_mΛを求める』というものであって、「いつから宇宙が減速膨張から加速膨張に転じたのか」を求めてはいませんでした。
そうしてまた時間軸をスケール化するのに「加速膨張が始まった時期」を使う必要もない事も明らかになりました。
さてそれで、「2成分のフリードマン方程式の厳密解」のグラフをスケール化しないとそれを使って「輻射-物質拮抗時期と宇宙の晴れ上がり時期」を決める事が出来ませんので、以下その手順を示します。
それで、その際に厳密解に代入するパラメータですが、プランク衛星が最後に公表した2018年版の「プランク ベストフィット データ」を使う事とします。(参照時はグーグルを使って和訳して見て下さい。)
2018年プランク最終データリリース(レガシーデータ)
デカップリング時のRedshift z_d 1090.30±0.41
宇宙の年齢(Gy)t_o 13.830±0.037
物質密度 Ω_m 0.321±0.013
ダークエネルギー密度 Ω_Λ 0.679±0.013
ハッブル定数(km s -1 Mpc -1) H_o 66.88±0.92
H0 は 66.88となっていますが1に変えます。
そうすると
a(x)=(0.321/(1-0.321))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.321)*x))^(2/3)
が2成分系での厳密解となります。
そして宇宙年齢を138.3億年とした場合にa(138.3億年)=1になりますので、この情報を元に上記厳密解の時間軸をスケール化します。ちなみにビッグバンはスタートは x=0の所になります。
ウルフラムでa(x)=1の時のxの値を求めます。
「1=(0.321/(1-0.321))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.321)*x))^(2/3) の根」を入れると
x=0.945936 を得ます。これが時間軸で138.3億年相当の値になります。
次にデカップリング時のRedshift z_d=1090.3 より「宇宙の晴れ上がり時期での宇宙の大きさが現在に対して1/1091.3倍であった」という事が分かります。
それで次にはa(x)=1/1091.3 としてxの値を求めます。
「1/1091.3=(0.321/(1-0.321))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.321)*x))^(2/3) の根」を入れると
x=0.0000326392 を得ます。
これを宇宙年齢に換算すると
晴れ上がり時期=0.0000326392/0.945936 x138.3億年=47.72万年となります。
さて次に輻射-物質拮抗時期を同様にして求めましょう。参照する教科書は「第6講 熱的宇宙」です。
http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/konan-class06/ch6-thermal-cosmos.pdf
5ページより(1+zeq)= 3250ですから、a(x)=1/3250としてxの値を求めます。
「1/3250=(0.321/(1-0.321))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.321)*x))^(2/3) の根」を入れると
x=6.35084X10^-6 を得ます。
これを宇宙年齢に換算すると
晴れ上がり時期=6.35084X10^-6/0.945936 x138.3億年=9.29万年となります。
以上をまとめますと使うフリードマン方程式の種類によって
従来方法(物質100%)VS 物質32%+DE68%
輻射-物質拮抗時期 7.4万年 9.3万年(26%アップ)
宇宙の晴れ上がり時期 37.5万年 47.7万年(27%アップ)
という結果になります。(注1)
そうして当方の主張は「物質100%の式で宇宙初期を推定するよりは物質32%+DE68%の式を使う方が妥当であろう」と言うものになります。
さてそれから、CMBの解析によるハッブル定数の推定には宇宙の晴れ上がり時期を37.5万年程度とするのではなく47.7万年という値を使うのが妥当であろうとも主張致します。
それで宇宙の晴れ上がり時期の変更による、ハッブル定数の推定に関しての影響についてはページを改めて「ダークマター・43ー1」、「ダークマター・43ー2」にて検討する事と致します。
注1:ここで示した「従来方法(物質100%)での輻射-物質拮抗時期および宇宙の晴れ上がり時期の値」は 「第6講 熱的宇宙」 からの引用となります。
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