雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

信州紀行~松本、その二

2008-10-17 | 旅行
 荷物をホテルに置いて、私たちは早々に晩飯を食べにいくことにした。ホテル近辺はわりと飲食店が多いらしく、観光がてら辺りをウロウロしつつ何を食うか決めようぜ!
 そんな勢いでホテルを後にするも、とっぷり日の暮れた蔵の並ぶレトロ中町は思いのほか冷え込んでいて、自然と足早になる。腹も減ってくる。観光どころでは、ない。

 まず通り沿いにあったのが小料理屋。なんだか高そうだ。やめ。
 お次は小粋なイタリアン。いや、ここでイタリアンって・・・昼間のうるさい小娘を思い出してしまう。やめ。
 オムライスの店。美味そうだが、ここまできてオムライスは・・・やめ。
 ぐるりと路地をまわるとカレー屋が。店の前はとてもいい匂いが漂うも、やはりここまできてカレーは・・・やめ。
 そのまま裏手通りを歩くと、でた、そば屋。うむ、やはり信州といえばそば、そばといえば・・・昼間食べました。やめ。
 その後も、焼き鳥屋、割烹、韓国料理(焼肉だ)など色々発見するのだが、どれも、あれだ、なんだか、なぁ、とスルーしまくり、結果、もうなんでもいい!とにかく寒いし、なんかあったかいもの、を望む。

 鍋焼きうどんでも食いたいなぁ・・・ふと、そんな提案が飛び出るが、さすが信州とでもいうべきか?そもそも、ここ信州には「うどん」という概念が無いのか?(いえ、ちゃんとあります。少ないけれど)圧倒的にそば一筋です。

 で、ホテル近辺を「ああでもない」「こうでもない」とぐるり一周した結果、始めに見つけたそば屋で温かいそばを食おう、ということに。やはり、信州旅行はそば三昧だろ!と無茶な理屈をつけつつ暖簾をくぐる。

 細長い店内には、やはり観光客と思しき家族連れ一組と中年夫婦が一組。ふつうに入りやすい趣きで、ちらほらと有名人のサインなども飾られている。
 
 いつもなら私は、温かいそばなら決まって鴨南そばを頼むのだが、壁に貼られた毛筆メニューに『当店のお薦め 桜そば 桜うどん』とあるのが気にかかった。
 そこで注文を受けにきたおばさんに「桜そばって、なんですか?」と訊ねると「温かいおそばに馬の肉を煮込んだものが入ってるんです」ということ。ふーむ、馬肉かぁ・・・。
 自分は未だ、馬刺しだとかなんだとか、馬肉は未経験であったので(でもたぶん、コンビーフとかで喰ってるだろう)せっかくの旅行だ、いっちょう食ってみるか、「じゃあ、桜そばひとつ」と、先程の「うどん云々」など意に介さず、注文。
 妻は温かいそばといえば決まって「きのこそば」とか「山菜そば」など、とかくヘルシー嗜好である。今回も結局「山菜そば」である。だって、昼間「きのこそば」を食べたから。うん、そうだね。

 私たちのそばが出てくる間にひとつ席の離れた家族連れの元に注文の品が運ばれてくる。チラリとそれに目を遣ると、なんだかハンパねぇ大きさのかき揚げが見えた。

「ハーイ、かき揚げそば、お待ちどうさまー」おばさんの軽快な声を聞くや、ぼそりと妻に「くそぅ、オレもかき揚げにすればよかった」と愚痴る。妻もそのかき揚げの大きさに面食らうも、あくまでヘルシー嗜好、「自分は山菜で充分」といったすまし顔をしてやがる。

 そんなこんなだが、程なくして「桜そば」と「山菜そば」が運ばれてきた。いただきまーす。

「どう?馬肉?」妻が訊ねる。

「ん?まぁ、馬肉?」要領を得ない私。

「美味しいの?」再度訊ねる妻。

「うむ。可もなく不可もなく・・・しいて言わせてもらえば、鴨南そばにしとけばよかった・・・いや、かき揚げそばも捨てがたい」ちょっぴり不満をもたげる私。

 結局、これといって特に斬新な味でもなく、かといって不味いわけでもなく、なんだかおざなりな感じの晩飯であった。妻の山菜そばも、そんな感じであった。

 物足りなさを感じて店を後にした私たちは、先程ぐるりと探索した先で見つけたコンビニに寄り、ビールと軽いつまみを買ってホテルに戻った。
 
 ホテルには時間で男女入れ替え制の『ラドン温泉』があり、ちょうど『男時間』だったのでいってみる。ちなみに普段はビジネス客が多く利用するホテル。『ラドン温泉』などと謳っていても高が知れているだろう、といってみるとまさに期待を裏切らない浴場であった。もちろん、誰もいやしない。私ひとり、ポツネンとぬるい湯に浸かる。とっととあがって酒呑んで寝よ。
 いそいそと身体を洗って、部屋へ戻る。

「どうだった?」部屋の浴室でシャワーを浴びた妻が訊ねる。

「うん、『ラドン温泉』?なめんな、こら、ってカンジ」

 そんな愚痴を交えつつも、ビールを呑み、つまみを喰い、信濃で買ったワンカップを呑みつつ、今日の旅のおさらいと、明日の予定などをたてていると、次第に眠気が襲ってきた。

 明日も早いし、さて、寝るか。そう言って疲れをまとった夫婦二人はPM10:00には就寝の体におちいっていたのであった。


 ・・・つづく・・・
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする