雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

血の味/沢木 耕太郎

2008-07-31 | 小説
≪「中学三年の冬、私は人を殺した」。二十年後の「私」は、忌まわしい事件の動機を振り返る―熱中した走幅跳びもやめてしまい、退屈な受験勉強の日々。不機嫌な教師、いきり立つ同級生、何も喋らずに本ばかり読んでいる父。周囲の空虚さに耐えきれない私は、いつもポケットにナイフを忍ばせていた…。「殺意」の裏に漂う少年期特有の苛立ちと哀しみを描き、波紋を呼んだ初の長編小説。≫

 
 沢木氏の本は『檀』と『無名』を読み、これで三冊目なのですが、どれも非常に読みやすい。基本的に沢木耕太郎といえばノンフィクション作家で有名ですけれども、今作『血の味』は沢木氏初の長編小説ということでして。
 たしかに『檀』はあの<火宅の人>檀一雄の妻、ヨソ子さんに毎週一度づつ、一年間という綿密なインタビューを重ねて書き上げられた檀一雄の伝記だし、『無名』は沢木氏の実父が病床に伏せ、亡くなるまでを描いたノンフィクションで。
 どの作品もその都度、非常に感銘を受けさせられたが、今回は全くのフィクションということで、「どんなカンジだろ?」などと思いもしましたが、そんなことは言うに及ばず、で、ところどころ、これはノンフィクションではないのか?などと感じてしまう、そんなところが見え隠れして、いつも通りすんなりと惹き込まれていきました。

 もちろん、誰かをモデルにしているわけでもなく、まして沢木氏自身が人を殺したことがあるわけでもないのだけれど、主人公の十五歳、中学三年生の『私』という存在がその当時の沢木氏自身に思えたり、また自分自身の十五歳の頃に想いが重なったりして、痛々しい哀切を覚えずにはいられませんでした。

 何故『私』は殺人を犯したのか?それは本当に、わからない、わからないことだらけだと思う。それは十五歳の少年の素直な感情に他ならないし、この世の中、わかることなんて、本当はなんにも無いんじゃないか、って今でも思うくらいだし、せめてこういう本を読んで、何かを想ってみたり、何かを感じとってみたり、それらについて悩み、考えたりしたりをしてもらいたいです。近頃の、人を人とも思わず罪を犯している輩や、その予備軍になりうる短絡的思考の持ち主たちに。
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となりのノトロ

2008-07-30 | 雑記
「ノトロの森」の石川県、ジブリに無断で商標使用(朝日新聞) - goo ニュース

 最悪だな、全国からガンガン叩かれてやがる(笑

『ノトロの森』=『能登路の森』なんだろうけど、如何せん現在全国で「ポーニョポーニョポニョ」旋風が吹き荒れている中、もはや国民的英雄、いや、世界的英雄と言っても過言ではない『ジブリ』からその名をパクるとは・・・石川県民としては、笑うよりしょうがありまへん。。。

 そんでダブルパンチ的にコレ↓だもんなー!

            

 モ、モ○ゾー・・・キッ○ロ。。。

 これね、一般公募だったんだけど、大阪の人が書いたやつなの。いや、当たり前だけど、この大阪の人は全然悪くない。悪いのは選考した石川のバカ。なんでだ?なんでコレ選んだわけ?そりゃあ見てくれはカワイイさ、でもさ、どーう見ても、誰が見ても、『愛・地球博』だろ?もしかして、知らなかったのかな?それはそれでとても失礼!

 ちなみに次点の優秀作は↓この二点。




 うん、コイツらのどっちかにしておけば『ノトロの森』ってネーミングの問題だけで、ここまで叩かれなかったと思うよ。


 能登沖の地震や、浅野川の氾濫などで、住民の人たちが必死で復興を目指している最中、バカな役人共がとんでもないバカなことをしやがって、我が県ながら、ホント、最悪だわ。。。
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赤い文化住宅の初子

2008-07-29 | 映画
<兄と文化住宅に暮らす中学生の初子は、同級生の三島君と同じ高校へ行く約束をするが、進学さえ危うい状態。薄幸の少女の恋と日常を描いた純愛物語>

 ここ最近、女性監督の活躍が目覚ましい。『萌の朱雀』の河瀬直美監督や『ゆれる』の西川美和監督、『ハリヨの夏』の中村真夕監督。
 そして、ここのところ頭角を現しつつあるのが、この『赤い文化住宅の初子』のタナダユキ監督、である。

 タナダユキに関してはココをポチッと。


 ところで映画の内容に関してだが、まぁ、あれだ、とにかく主演の東亜優ちゃんのカワユイことカワユイこと。。。

      

 なんかね、薄幸の少女ってのがピッタリでね、んでね、オジサンね、そういう娘、まさにツボなのよ、ストライクゾーンど真ん中!てへっ☆

 んで、気に入ったんですぐさま調べてみたら、あら、まぁ、以前観た『海と夕日と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』っていう、つまんねぇ映画に出ていた、と。あぁ、あの最初に死神に連れてかれた娘ねぇ・・・印象薄っ。

 いや、それにしても、女優は成長していくもんです。あの蒼井優だって『害虫』のときには気にもとめられなかったのに。。。

 色々画像探してみたんですけど、亜優タン、どうも写真で見るより映画とかで見るほうが断然カワイイです。薄幸の少女好きのロリコンは是非、観るべき映画だと思います。はい。

 ちなみに、この映画のスピンオフ作品で『16【jyu-roku】』



 って映画があるんですけど、この予告見るだけでも、かなり萌え。

 早速借りに行ったけど、置いてなかった・・・(泣

 まぁどっかにあるだろう。



 そんなワケで、とにかく、東亜優ちゃんというもっすごいカワイイ娘を発見できた素晴らしい映画だった!と、いうことだ。

 そうさ!オレはロリコンさ!そういうことさー!
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ミュージック・ブレス・ユー!!/津村 記久子

2008-07-29 | 小説
<オケタニアザミは「音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事」な高校3年生。髪は赤く染め、目にはメガネ、歯にはカラフルな矯正器。数学が苦手で追試や補習の連続、進路は何一つ決まらない「ぐだぐだ」の日常を支えるのは、パンクロックだった!超低空飛行とにかくイケてない、でも振り返ってみればいとおしい日々・・・青春小説の新スタンダード、ここに誕生!>

 とか、帯に書いてあります。

 まぁ、だから、内容は、周りのみんなは進路や将来のことを考え始めて、それなりの行動を起こしているのに、自分は何をしていいのかワカラナイ?っていうか、考えねば、やらねば、と思うのだけど、やっぱりぐだぐだと大好きな音楽を聴いたりしてしまって、なかなか前に進めない。そんな思春期特有の葛藤を数多くの登場人物とのエピソードによって浮き彫りにしていく。そんなカンジのよくある青春小説なのだが、オモシロいのは、アザミの性格。そして友人のチユキの性格。
 ちょっと思ったのは、かなり大胆な性格のチユキを主人公にしてもよかったろうなぁ、と。でも、そしたら、たぶん、ありきたりな青春小説になってたなぁ、とも。
 だから、まったく主人公らしからぬアザミが抜擢された、というか、作者の津村さん自体がアザミに近いからだろうけど。

 あまり暑苦しい話ではないのだけれど、ぐだぐたしながらも何かを掴もう、何かを見よう、としているアザミにはやっぱり「グッ」と心を揺さぶられるモノがあります。


 17歳から18歳にかけてなんて、ホント、なにがなにやら微妙なお年頃で、解かってるような解かってないような、得体の知れない焦燥感に追い立てられてるかと思えば、友達らとすんげぇ笑っていたり、とにかく、よく悩み、よく遊び、よく笑ってた頃だったよなぁ、と感慨深くなっておりましたとさ。
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バランス

2008-07-27 | 雑記
 午前中、スーパーで158円のバナナをおばちゃん店員のレジの打ち間違えにより198円で買わされた。

 すぐに気付けばよかったのだが、気付いたのは精算後。私が品物をポイポイ袋に入れている最中、妻が「たしかバナナは158円だったはず」と不審気味に言うので、「どれ?」とバナナコーナーへ確かめにいって、「あ、ホントだ」。

 それでは訂正してもらおうか、と思うも、これがなかなかレジが混みあっていて忙しそう。サービスカウンターを見遣るも、そこには誰もおらず、しばしの逡巡の後、「まぁ、いいんじゃね?」と、泣く泣く40円を諦めた。



 そして午後、私たちは時折足を運ぶこぢんまりとした喫茶店へコーヒーを飲みにいった。
 
 その店は本当にこぢんまりとしていて、カウンター席が五つ、六つと、申し訳程度のテーブル席が「ポツン」とひとつ置いてあって、コーヒーはこだわりの有機栽培豆を使用した様々な種類をどれでも一杯250円で提供してくれるのだが、その他のメニューはジュースが二種類、という、シンプルでとても静かなお店なのである。

 いつものように私たちはそれぞれ、好みの豆を選び、注文して、コーヒーが出てくるのを待っていた。その際、もはやメニューを見るまでもないのだが、何気に手持無沙汰感から目の端に留まったメニューを見ていると、いままでのメニューの下に新たなメニューが。

『ブラジルチョコレート 40円』

 おおっ!見てみろ、ブラジルチョコレートだとさ。と妻に目配せすると、妻も「おおっ!」と興味を示したので、試しに一個買って帰ることにした。

 程なくコーヒーを飲み終え、レジに行き、いつももの静かな店主に「あの、ブラジルチョコレートひとつください」というと、何故だか店主は慌てて「あ、は、はい・・・」と店の奥の冷蔵庫から直径3cmほどのわりと大粒なチョコをひとつ持ってきた。その際、私は「これ、中に何が入ってるんですか?」と訊ねると、店主は何故だかうろたえつつ「えーっと、カシューナッツとか、」・・・・・と、そこで言葉を濁らせると、おもむろに店の奥へ行き、もうひとつチョコを持ってきて、「あの、どうぞ、もうひとつ食べてみてください」と差し出した。

 いやいや、あの、もう、一個買ってますから、そんなに説明しづらい中身なのですか?

「あっ、いや、じゃあ、これも買いますよ」と妻は言うが、店主は「いえ、これは試食で・・・あの、いつも来ていただいているんで・・・・」そういったことを、何故かしどろもどろの態でおっしゃる。それがあまりにも必死なので、「それじゃあ、いただきます。ありがとうございます」と、笑顔で受け取った。

 店を出た私たちは「あの人、かなりシャイだよな。接客にはむいてないけど、ものすごく好感を持てるな」「ホント、ホント」などと言いあってた。

 すると妻が「そういえば、バナナの40円、ここで戻ってきたね」と言った。

 あぁ、ホントだ。


 そうかぁ、なんだかいつも、「自分たちは得をしている」と感じることなどあまりないけれど、「損をしている」ということも、そんなにはないんだろうなぁ、と思えた。
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君は天然色

2008-07-26 | 雑記
 いつも行くスターバックスで、長身黒髪のアジアンビューティーな感じの美人女性客を見かけた。

 一人でラージな飲み物を持って席に着いていた彼女は、おもむろにあぶらとり紙を額にあて、皮脂をとっていた。

 ふむ、美人は何をしていても様になるなぁ、と感心した。

 しばらくすると、彼女は立ち上がり、ケーキやサンドウィッチなどが陳列されているフードケースの前に行き、じっくりと眺めはじめた。終いには屈み込んで下方の商品もじっくり眺め回していた。
 やや、怪しさを感じるものの美人なので、許せる。

 そしてその行動を終えると、レジのおねぇさんに「カプチーノ」のみ、頼んだ。ショートサイズ。いや、それはいいんだが、あれだけ眺め回してたフードは?どうやら、いらないらしい。

 やがて出てきたカプチーノ。彼女はそれを受け取るとミルクや砂糖のある台に颯爽とむかい、シナモンを手に取りカプチーノに振りかける。と、勢いあまったのか、どうやらシナモンをいささか台の上にこぼしてしまったらしい。
 すぐさまペーパータオルを引き出す彼女。しかし焦っているのか、ペーパータオルが三枚ほどいっぺんに出てきちゃった。一瞬、彼女の表情が「うおぅ」って感じになったが、それでも美人。
 ってか、その一連の動作を観察してたオレ、思わずコーヒーを噴出しそうになる。
 彼女は彼女で、台を拭きつつ、出しすぎたペーパータオルを戻そうと入れ物に突っ込もうとするが、なかなかうまくいかず、それは潔く諦め「ポン」とその場に置いて立ち去った。

 その去り際もまた、美人ならではの鮮やかさで、感心させられた。


 それにしてもこの人、きっとフツウにしてたら、ちょっととっつき難そうな感じの美人なんだろうけど、どこか天然色が滲み出ていて、ひじょうに好感のもてる美人だなぁ、と思った。

 まぁ、いずれにしろ美人だし、オレ様の視姦ターゲットになっちまうのは避けられないんだな。
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うなぎ

2008-07-24 | 雑記
 本日は『土用の丑』ということで、うなぎを食して暑い夏を乗りきろーう!おーう!
 ということだそうで、産地偽装やらなんやらと昨今は騒がれておりますが、とにかく、うなぎが食いてーぞ!
 そんな気持ちがこびりついておりましたところ、我が家の食卓にうなぎがお目見えしました。

 それが、まぁ、なんと、コンビニの「うな重おにぎり」ときたもんだ!しかもロス落ち(賞味期限切れ)のヤツ。。。

注)カミさんはコンビニで働いています。

 もう、ね。産地偽装だとか中国産だとかなんだとか、それ以前の問題です。

 そんで、うなぎなんだかあなごなんだかうつぼなんだかうみへびなんだか、よくわからん細長い身が二、三切れ入ってたさ。とりあえずごはんはすこぶるうな重のたれがまとわりついてて、旨かったけど・・・。


 夏バテ必至だわ、こりゃ。
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カソウスキの行方/津村 記久子

2008-07-23 | 小説
 またオモシロい人(作家さん)を見つけた。

 2005年、第21回太宰治賞受賞者、津村記久子さん、である。

 ある雑誌で最新刊『ミュージック・ブレス・ユー!!』が紹介されてて、なんだか興味をそそられて、著者紹介読んでみたら「第21回太宰治賞受賞者」って書いてあって、あぁ、そういやこんな人いたなぁ、へ~もう三冊も出してんだぁ・・・と、早速図書館に行ってみたら、残念ながら太宰治賞の『君は永遠にそいつらより若い』(『マンイーター』改題)はなかったんだけど、その次に出た『カソウスキの行方』と『ミュージック・ブレス・ユー!!』は見事陳列されており、意気揚々と借りてきた次第。

 で、とりあえず『カソウスキの行方』(第138回芥川賞候補作だったらしい)を読んでみると、これがなんとまあ、オモシロくってねぇ。
 その、屈託のない文章というか、抜群の間というか、とにかく人を確実に惹きつけるその文章力、短編(中篇)文学でありながらも構成力の緻密さ、そしてなにより、主人公女性のぐだぐだ感がとても愛しくなる、というか、何故だか共感までしてしまえる、魅力溢れる人物描写、それらが読む手を止められなくさせる。

 本当に、これはかなりスゴい、というか、オモシロい作家さんがまた出てきたなぁ、と一人でうきうきニヤニヤしています。

 さて、そういうワケで、これから『ミュージック・ブレス・ユー!!』を読みはじめます。

 では、また☆
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ハリヨの夏

2008-07-23 | 映画
 1990年、夏。舞台は暑さ漲る京都。

 多感過ぎる十七歳、瑞穂(於保佐代子)の痛々しいまでの生命のふくらみを中村真夕監督・脚本で映し出した邦画史上に残りうる名作・・・だと思う。

 このクソ暑い時期に、あまりにもタイミングが合いすぎたのか、かなりハマった。
 率直な感想として、やはり女性監督だからか、かなり女性の側に立った画きかたというか、女性だからこそのストーリー性というか、まぁ、まさに女性監督が創りました、という映画。もちろん、それが悪いのではなくて、むしろその、女性側からしか画けない、十七歳の少女の多感過ぎる心の揺れ、不安、悩み、戸惑い、決意、そして母性愛、そういったものがひしひしと感じられ、男性的にはただただ、身勝手な己自身に閉口させられてしまう。

 主だった男性として、同級生の翔(高良健吾)、瑞穂の父(柄本明)、チャーリー(キャメロン・スティール)が瑞穂のまわりにいるのだが、あまりにもバツが悪い。

 それに比べ、瑞穂の母(風吹ジュン)の凄いこと。その圧倒的な母性に、涙しました。


 とにかくこの作品は、単なる十七歳少女の青春群像映画などではなく、ましてや恋愛映画などでもなく、確かにそこにある『生命』を映し出している映画だ、と、私は感じました。


 キャストも映画初出演ながらもその圧倒的な存在感を示す『於保佐代子』『高良健吾』、これ以上ないほどの溶け込み具合を魅せる『柄本明』危うさを持ちながらも母としての強さを演じきる『風吹ジュン』と、とにかく魅力と個性溢れるキャスティング。

 夏の京都もまた、いい雰囲気を醸し出しておりました。

 うん、名作です。(言いきっとく)
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愛について

2008-07-20 | 雑記
 歯ブラシのことばかり言っていても仕様がないので、ここらでひとつ、真面目に、愛について、など、考えてみる。

 もし君が、「私のことホントに好きなの?」と訊いてきたら、僕は手放しで「好きだ」とは、言えない。
 
 そりゃもちろん、好き、といえば好きだが、嫌い、といえば、嫌いなのだ。いやむしろ、嫌い、のほうが勝っていると言える。

 君の良いところと悪いところを挙げつらってみれば、格段に悪いところばかりが目につくし、その悪いところが逆に君の良いところでもあるんだよ、と慰めに言ってみたとて、所詮は、悪いところなのであって、それはもはや、僕にとってはどうしようもないことなのだから。そして逆に、君の良いところが、とても悪いところと感じてしまうのだし・・・。

 だが、悪いところばかりだから、君のことが嫌いだ。というのは、違う。
 その君の、嫌いな部分もひっくるめて好きなんだ、なんてことは、まず、ないし、そんな面倒臭い逆説を持ってくるまでもなく、とっかえひっかえできるAV女優のほうが『好き』だし、もはや三ヶ月に一度、するかしないかの君では、やはり比べるまでもないのだけど、私のやることなすこと全てに文句をつけやがる君が、猛暑続きの日々の合間に、しれっと、ビールの1本も買ってきてくれたり、タオルが臭いと言えば、悪臭を除去してくれたり、歯ブラシが硬いと愚痴れば、すぐに新しい歯ブラシを買ってきてくれたり、とても嬉しそうに、研ぎたての包丁でトマトを切っていたり、私のオヤジギャグに手厳しい批判をくらわせてくれたり、こっそりオナニーを見逃してくれていたり・・・・そんな日々の暮らしの中で時折垣間見える君の『良さ』を蔑ろにすることは、やはり愚かだ。もちろんそれが、典型的な飴と鞭、だとしても。

 しかし、愚かな私は、それらを蔑ろにして、またすぐに、君の悪いところを暴き出し、嫌いな部分に唾を吐く。


 君と出逢ってから、もう十年以上の時が経った。
 いつの頃からだろうか?こんなにも君を嫌悪するようになったのは?そしてその嫌悪感を我慢するのではなく、ましてや諦めるのでもなく、もちろん許しているわけではなく、ただ、自然に、普通に、「これが、僕の妻なんだよな」って思えるようになったのは?


 だから、君。僕に訊くときは、こう訊いておくれ。

「私のこと、愛してる?」

 と。

 そうしたら、僕は胸を張って応えるから。

「当たり前じゃん」

 って。
 
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わずかな改革

2008-07-20 | 雑記
 198円の歯ブラシを買ってもらった。
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格差生活

2008-07-19 | 雑記
 妻の歯ブラシは398円だ。
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39円のレベル

2008-07-18 | 雑記
 超特価!39円の歯ブラシを使ってみた。

 磨き心地は・・・・見事、ビジネスホテルなどに常備されているソレ、であった。

『ふつう』を買ったはずなのに、やたら硬い。これでは『かため』ってのは一体どんな具合なのか・・・?

 歯茎から流血は免れんだろうな。

 

 やっぱ79円のにすればよかったかな・・・(どっこいどっこい)
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基準

2008-07-17 | 雑記
私「おい、私の汗拭きタオルだがな、なんだかとても臭いんだよ」

妻「あら、それはあなたの汗なのだし、しょうがないですわ」

私「いや、汗臭さとは違うのだ。そう、例えて言うなら小学校の時に机の横にかけたまま忘れていた雑巾のような・・・」

妻「あぁ、そういえば、この前そのタオルで床を拭きましたわ。忘れてました」

私「こら、これは私の汗拭きタオルであるぞ!」

妻「まぁ、それはすいませんねぇ。それにしても、あなたが『臭い』と思うなんて、よっぽど臭いんでございましょうねぇ、オホホホホ・・・」

私「なんだ!その『臭い』の基準は!」

妻「あら、あなた。怒りどころがズレてますわよ」



 結局そのタオル、廃棄しようと思ったらハイター(漬け置き洗剤)で匂いを取り除かれ、また使わされている。
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ビター・ブラッド/雫井 脩介

2008-07-17 | 小説
 意外にありそうでなかった?たぶん・・・どっかにある、かな?

 父子刑事のお話。

 だが、やたら親子の関係を強調したり、やたら熱い血縁物語とかはなく、むしろ一癖も二癖もあるオヤジからなるべく距離をとろうとする息子。その距離のとりかたも、よくある熱血っぽく昔の因果にとらわれているワケではなく、いや、あることはあるのだが、それよりも現実問題として、たしかにこんなオヤジとはなるべく離れて歩きたいな・・・と、思わせる、かなり恥ずかしいオヤジなのである。それがとても笑える。

 ストーリー展開的には、とくにどうのこうのということはないけれど、このオヤジのなんとも言えんキャラと、それを冷ややかに見つめる息子というディティールがすこぶる面白い。

 なんとなく、『クローズド・ノート』『犯人に告ぐ』などの映画化で味をしめた作者が「次は連ドラ」とか狙って(東野圭吾か)そうな気がするのは、穿った私の見かたであろうか?

 テレ朝の水曜とか木曜とかの夜の刑事ドラマにぴったり、そんなカンジの作品でした。
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