雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

さらば、М本くん。

2010-11-06 | 雑記
 転職して早3ヵ月、業務にもだいぶ慣れてきて、いろいろとキツイこともあるけれど、この仕事にやり甲斐を感じられたりもしてきて充実した毎日を送っている今日この頃。突然の同期入社の人間の退職を知らされた。
 同期といってもそのМ本くんは26才、自分とは十も歳が離れている。そして同期だけれど初出社日が微妙に違う。(詳細はココを)
 しかしなにくれとなくお互いに声をかけあったり、ちょっと先輩の愚痴を言ってみたりもしていたものだ。
 そんな日々の中で、自分は一ヶ月半ほどで研修から卒業し、ワンマンで業務を任されるようになった。このころはまだ、М本くんも周りからは「まあ、М本くんも四日遅れで秀さんのあとに続かなきゃなー」などと笑いながら言われていたのだが、これがどっこい、四日遅れどころか一ヵ月半遅れ、いやさ、もう、なんか、どうにも、ダメな感じに陥っていった。
 このМ本くん、人間的には本当に好い奴なのだ。いやしかしそれは、間接的に接する場合にのみであって、毎日十時間以上トラックに同乗している先輩や、雇っている人間からすると、ことごとくイラだたしいようだ。
 確かに、仕事は遅い。
 あるとき、М本くんのほうが私より早く出発しなければいけない便なのに、私が荷物の積み込みを終えてМ本くんの荷台を見ると、まだ半分くらいしか積み込んでいなかったり、どう頑張っても一般道では60キロしか出せない車なのに自分より早く到着するはずのМ本くんの車に追いついたりだとか……。
 あと、彼は注意などされたときの返事は一応、良いのだけれども(「は~い、かしこまりましたぁ~」など)返事だけでその後も失敗を繰り返すそうだ。
 とにかく、キャラクター的には十二分すぎるほど愉快な人間なのだが、こと仕事においてはてんで役に立たなかったらしく、本人もいい加減、自覚を掴んだらしく、「今月で辞職します」と申し出たらしい。そしたら所長に「あ、もう今日で終わっていいよ」といわれて呆然として頷いたらしい。
 そのいきさつを知らなかった私は、今日も積み込みの最中にМ本くんを見かけたので、いつものように、「おお、お疲れさまー!」と声をかけたのだが、М本くんはなんだか泣きそうな顔をして「お、お疲れさまでぇ~す」と返してきた。
 哀れっぽい表情はいつものことであったが今日の顔は格別だったので「?」と思っていたら、業務終了後М本くん辞職の話を聞いて納得した。
 あの、捨てられた子犬のような目したМ本くんの顔が、私の見るМ本くんの最後の表情であることが、なんだかとても遣る瀬無い。
コメント (2)
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