雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

謹呈

2009-05-31 | 雑記
 昨日、自作の小説が掲載される発売前の小誌が送られてきた。なんかこういうのが、いい。わりといい値段のする雑誌なので、たとえ自作が載っているからといっても、いちいち購入するのは躊躇われる。それが「謹呈」などされると、すごく、いい。

 早速、封を開けていたら妻が寄ってきて、「ええっ! こんなまともな本に載ってるの? てっきり藁半紙みたいな雑誌かと思ってた」

 失敬な。見ろ、値段を。1600円もするんだぞ。

「へぇ~……」と表紙を見た妻は「なに、表紙に名前出てないじゃん」

 出るわけねーだろ。

 まずは目次に目を通す。あったあった。二人で「おお~ぅ…」

 なんかもう、自分は目次だけで満足したので妻に渡した。妻はパラパラと捲っていって「あったあった」
 目次だけで満足、などと言いつつも、やはり気になる。どれどれ? すでに何十回と読んでるし、ゲラも見せてもらっていたけれど、やっぱりこう、雑誌になっている自分の文章、というのはまた格別なものであった。

 またパラパラとやっていくと、文末に略歴と写真が載っている。それを見た妻は「なんで睨んでんの?」

 いや、睨んでるっていうか……笑うわけにもいかないし、なんか、こういう感じのほうが作家っぽいかな? なんて……。

 その後、本文は読まないだろうと思ってたのに妻は「読む」と言い出した。普段、小説はおろかちょっとした文章も読まないヤツなのに。
 まぁ、読むのは構わないんだけど、こう、目の前で読まれるのはなんとも居心地が悪かった。ちゃんと読んで欲しかったので途中で茶々は入れなかったのだが、妻は時折、突っ込んでいた。小説のことなんかなにも解からないくせに!

 とりあえず読み終わったので感想を訊いてみたら、「なんか、不良が書いた小説って感じ」

 なんだ、そりゃ? ある意味そのまんまぢゃねーか。

「でも、スゴイよね。こういうのに載ったんだから」

 一応フォローのつもりか、そんなことを言う。まったく、小説のことなんかちっとも解からないくせに!

「それに、1600円もする本、タダで貰えてよかったよね」

 あぁ、まぁ、それはそうなんだけどさ。一応、わずかながらも原稿料が貰えるはずなんだけど、いまだその連絡が一切ないんだよね……。まぁ、気長に待つか。




 と、いうことで6月1日発売の北國文華に『ポニーテールはゆれて』という小説が掲載されています。たぶん北陸三県の書店なら大体は置かれていると思うので、お暇があれば御覧になってください。
 
 エロ小説ではないですから。
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逃亡くそたわけ/絲山 秋子

2009-05-27 | 小説
 すごいタイトルだな(笑)

 なるほど「逃亡」ってだけあって、思いがけずの九州あっちこっちめぐりの珍道中小説でおもしろかった。

 特に追われている感は読んでいるほうにはないんだけど、躁状態の主人公がとにかく焦燥感にかられていて、なんだかこちらもドキドキしてしまった。

 九州を、あてどもなく車で走る旅。逃亡ではなかったら、とても気持ち良いだろうなぁ。

 イタリアのパスタより、博多のラーメンかな、やっぱオレには。
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ももこの世界あっちこっちめぐり/さくら ももこ

2009-05-27 | 小説
 さくらももこの旅行エッセイ。

 旅モノは、すこぶる好物なので、尚且つさくらももこなので、期待して読んだのだが、どうやら自分は『海外』にはあまり興味が湧かないらしい……。そういえば、切実に「海外旅行したい」とかあんまし思わない。そりゃ、行けばきっと、国内では決して体験できない、あんなことやこんなこと、そしてさぞかし度肝を抜かれる風景にお目にかかれるのだろう、と思うのだが、それだけの(海外行けるだけの)銭があるなら、まずは国内のあんなとこやこんなとこへ行きたいなぁ、と思ってしまう。

 それでも、このエッセイを読んでて、「あぁ、死ぬ前に一度は行ってみたいなぁ」と思ったのがイタリア。でもそんなに切実な思いではなく、誰かに「どこか一ヶ所だけ外国に連れてってやる」って言われたら、くらいで、自分の銭で行こうとは思わない。
 それに、イタリアに惹かれた理由が「本場のスパゲティを喰いたい」くらいなので、なんか、すぐにどうでもいいか…って思える。

 そんな人間が海外旅行記なんか読むなよ、とか思うが、海外でも国内でも、やはり日常から切り離される『旅』というものに、たまらない魅力をかき立てられるのだ。
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告白/湊 かなえ

2009-05-24 | 小説
 全国の書店員さんたちが、今もっとも売りたい、いちばんオススメの本を選考する、本屋大賞。その2009年度第一位の本。

 で、なにかと話題になっていたのをようやく読んだ。

 感想は「あぁ、まぁ、おもしろかった」。

 第一章の青木さやかばりの独白からして、かなり引き込まれたし、その後に続く、他の登場人物たちからの視点も、途中で読む手を止められない具合にサクサク読み進められたし、読みやすさ、読ませるセンスは抜群なんだなぁ、って。

 でも、なんだか、「それだけの本」って感じしかしない。小説なんて面白けりゃいいんだろうけど、やっぱりそれだけじゃあ物足りないんだなぁ、って。
 べつに、役に立つとか知識を得るとかはどうでもいいんだけど、せっかく時間を割いて読んだのに、なんの感慨も湧いてこないっていうのは、書くほうも読むほうも非常に残念なことだと思う。
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海の仙人/絲山 秋子

2009-05-20 | 小説
 たぶん酒を呑みながら読んでたせいもあるんだろうけど、後半思わず泣いてしまった。

 これは映画化しないのかなぁ? してるのかな?

 してたら、きっと自分好みのロードムービーになるだろうなぁ。

 金沢も出てくるから、やっぱ親近感が湧くのかな?
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さくら日和/さくら ももこ

2009-05-20 | 小説
 さくらももこのエッセイを読むのは久しぶり。たぶん十七、八年ぶりか?

 相変わらずの語り口はやっぱり笑えた。

 そしてなにより、「父ヒロシ」がオモシロすぎ!
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ポトスライムの舟(十二月の窓辺)/津村 記久子

2009-05-17 | 小説
 表題の『ポトスライムの舟』は以前、文芸誌で読んで、アレだったので、とりあえずカップリングの『十二月の窓辺』が読みたくて借りてきた。

 あれだ、タイアップ(芥川賞)付きのA面よりも、むしろカップリングのほうが個人的には断然、好きだな。そんな感じ。

 まぁ、十人十色。
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袋小路の男/絲山 秋子

2009-05-17 | 小説
 出版順に読んでいこうと考えてたのに、なんの手違いか『海の仙人』を飛ばしてしまった。ま、いいや。

 これ、読むとわかるんだけど、凄い上手いタイトル。まさに『袋小路の男』なんだなぁ。
 内容は、簡単に言ってしまえば一筋縄ではいかない、長きに及ぶ純愛ストーリーなんだけど、そう単純なものでもない。いや、単純なんだけど(どっちだ)なんか、「壮絶な」とか「息苦しくなる」とか「もう、あなたしか見えないの!」みたいなコテコテではなくって、だからといってドライな感じでもなくって(だからどっちだよ)上手くは言えないけれど、まさに袋小路なんだな。

 表題の『袋小路~』だけでもひとつの感慨を覚えるが、その次の『小田切孝の言い分』を読むと、またそこでも頷ける。頼りない男と女の人間性が胸の奥を揺らす。
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純情エレジー/豊島 ミホ

2009-05-17 | 小説
 豊島ミホ、デビュー作以来の官能小説。いや、もう少し正しく言えば『青春(性春?)田舎官能小説』といった具合か。

 登場人物は大概、十七歳だったり、童貞だったり、一途だったり。鄙びた田舎を舞台に寄る辺ない秘め事が繰り広げられている。

 いつもの豊島ミホお得意の連作短編的な要素はなりを潜めているが、ひとつだけ対になっている物語があり、それの男側編では、現在の作者自身の心境が投影されているのであろう記述が垣間見られた。

 誤解のないように付け加えておくが、『官能小説』といっても、そこに重点が置かれているワケではないので、この本であれこれどうにかしようと思っても、ちょっとキツイ……あ、でも、半勃ちくらいになったところもあったけれど、まぁ、ご愛嬌。
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パラドックス13/東野 圭吾

2009-05-17 | 小説
 希代のベストセラー作家、東野圭吾が描く徹底的なエンターテーメント小説。

 思わず、この世界観は漂流教室(by 楳図かずお)みたいだな……とか呟いてしまったけれども、それに至る理屈は通ってるんだか通ってないんだか、とにかく煙にまくような感じで、まさにパラドックス。

 あんまり深く考えず、サクサクと読み進められる。考えることはといえば、きっとこれも映画化になるんだろうなぁ……という俗なことばかり。

 ラストは、これでいいんか? でも、これ以外はないか、って感じで読後の清涼感はイマイチながらも、後味の悪さもとくに持たなかった。

 だからこその、徹底したエンターテーメントなんだよなぁ、と納得した。
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追憶のかけら/貫井 徳郎

2009-05-17 | 小説
 貫井作品には毎度、驚かされる。そりゃミステリなんだから驚かされて当たり前なのだが、そのアイデアといい、筆量(ページ数)といい、とにかくハンパない。

 今作品も手に取るとかなりの厚みで、尚且つページを捲れば二段組。嬉しいやら気が遠くなるやらで、かなり手こずるかな? と思いきや、そこはやはり貫井徳郎。グイグイと読み手を惹き込ませる筆力を遺憾なく発揮している。
 そして前半の中途で、作中主人公が入手する、戦後のマイナー作家の自殺前の手記。それが旧仮名遣いで書き綴られている。いわば作中作なのだが、その手記もまた、貫井の筆力を存分に知らしめている。
 その手記をめぐって謎が繰り広げられるのだが、それもまた二転、三転して、まったく飽きることなく読み進められる。

 良い意味で手こずらされる。それこそが真のミステリなんだ、と改めて思い知らされた。
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吠えるがいいさ!

2009-05-15 | 雑記
 犬によく吠えられる。特に小型犬に。チワワやポメラニアン、近所のこいつらには会う度、無条件で吠えられる。きっと奴らもオレに吠えるのが日課になっているのだろう……。

 しかし昨日は初対面のヨークシャテリアだった。

 仕事帰りに、缶コーヒーでも買おうと店の前に車を乗り入れると、自販機横のポールに繋がれた一匹のヨークシャテリア。
 
 見た瞬間、嫌な予感がした。むこうはオレのこと、すでにガン見状態だし。

 まぁいいや。コーヒーコーヒー。

 ドアを開けて降りた瞬間、それはもう、モーレツなイキオイで吠えたさ。前脚浮かせて吠えてるよ……。

 いったいオレが何をした? 言っておくがオレはお前ら犬どものことが好きだ! いやさ、大好きだ! なのになんだ、この仕打ちは!

 今までなら、悔しくて、切なくて、こんな想いを心の中で叫んでいたが、もう、慣れた。もう、思う存分吠えろ。それでお前らの気が済むなら、オレは進んで人身御供、いやさ、犬身御供になろうではないか……そんな境地に達していた。

 が、そのあまりにも尋常ではない吠え方に、心配して店内から中学生くらいの私服の女の子が出てきた。

 その子は、何食わぬ顔でコーヒーを買うオレを「キッ!」と一瞥し、吠え狂う愛犬を宥めにかかった。

 お、おい、ちょっと……オ、オレは何もしてないから! そのバカがひとりで(一匹で)勝手に狂っちまったんだよう!

 などと、心の中で言い訳してみても、もちろん誤解は解けない。しかし、今、この子に話しかけるのは得策ではない。いくら安く見積もっても、ヘンなおっさんが犬を出汁に女の子にちょっかいかけているの図にしか見えないだろう。

 なので、釈然としない想いを抱えながらも、車に乗り込んで早々と立ち去るよりほかなかった。

 だが、去り際に、チラリと女の子のしゃがんだ後姿を見ると、股上の浅いジーンズから彼女の尻の割れ目が微かに覗いていたので、オレの溜飲はたちまち下がった。下半身の血圧はちょっと上がったけれども。

 気持ちが落ち着いたのか逆に昂揚してしまったのか、なんだかよく判らなくなったオレは、とにかく、非常にゆっくりと丁寧に、安全確認と半ケツ確認をしながら、この状況を惜しみつつ、退散した。
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見解の相違

2009-05-11 | 雑記
 地元の文芸誌に応募した小説が、どうやら掲載されることになった。それはとても喜ばしいことなのだが、少し腑に落ちない点もある。
 それというのも、この文芸誌に小説を応募したのはこれで二回目なのだが、編集者の話を聞いたところ、二作目ではなく、前作を掲載したいということなのだ。
 
 わたしとしては、前作はもう、前号に載らなかったのだから、その時点でその作品に対してはキッパリと棄ててしまっているものとなっていたのだ。

 ともかく駄作だったのだ! しからば次作は、こいつを越すものを書いて送りつけて奴らの鼻をあかしてやる!

 そんな意気込みで書いたものだから、小説掲載の電話が来たときは「おっし! やった!」と己のレベルが少しでも上がったような実感を抱いたのだが、蓋を開けてみれば「前作を掲載したいんです」と……。

 電話口でわたしはただただ、「はぁ、えぇ、よろしくお願いします……」と、なんだか肩透かしを食らった感であった。

 そりゃあ、前作だって自信作だったから応募したんだろ? なら、いいぢゃん。とも、実は安易に思えない。
 前作を応募しようと思い立ったのは、締め切りの何日か前。だもんで、かなりおざなりな推敲しかできず、とにかく締め切りまでに出しとけ! 的なイキオイでやっちまったもんで、掲載されなかったのも頷けるし、納得もできた。

 それに比べて二作目は、締め切りまでかなりの間があったものだから、余裕の仕上がり、そして多くの推敲を重ね、自分でも納得のいくものになった。

 しかしながら、現実は、おざなり感漂う前作のほうを選出……。

 いや確かにどちらも、わたしが苦労して生み出したものには変わりがないのだが、想い入れとしては、断然、二作目のほうが強く、人様に読んでいただくなら是非とも二作目を切望するのだ。

 まったくもって、こういうのは昔っから、自分の思いと他人の思いは、ことごとくズレているんだよなぁ。

 
 それでも、やっぱ嬉しいことは嬉しいんだけど。
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GWまとめ

2009-05-06 | 雑記
 今年のGWは例年になく活動した。それも今日で最終日……なので、せつなさを堪え、楽しかった思い出を綴って、ひと時の慰めとしよう。


【4月29日】
 友人のKちゃん、T、私の野郎三人衆で朝から電車に乗って能登のほうへ向かう、名付けて「チンコぶらり旅」に出かけた。九時に自宅近くの駅から普通列車に揺られること一時間四十分。七尾駅に到着。ここでJR路線は終了して、そこからは『のと鉄道』というローカル線に乗って終点「穴水駅」へ。約四十分を経て、到着した「穴水駅」を出て、辺りを見渡せば、それはそれは、とても素敵な(鄙びた)光景が。
 ともあれ、昼飯を食う場所を見つけるにも難儀しつつ、静かな町並みをそぞろ歩く。と、いうか、呆然と進む。
 結局、そこでは飯食って、ちょっとビールをひっかけて、七尾駅に戻ることにした。ホント、なんにもないんだってば。
 
 ……いかん、このままいくといつものペースでだらだら書いてしまうので詳細は省くが、その後七尾駅前で美味いコーヒーを飲み、帰路につく。地元に戻ったのは午後五時半ころ。がっつり六時間近く電車に揺られてた。断っておくが、私たち三人は『鉄』ではない。
 気だるさに呑まれつつも、酒を呑みたい私たちは、そこからTの奥さんを交えて近くの居酒屋で酒盛り。そこで早くも今日の旅の思い出話(愚痴?)に華を咲かせ、酔っ払い特有のハイテンションでカラオケになだれ込む。
 一応、次の日は仕事なので、日付が変わる前にお開きに。

【4月30日】
 寄る年波にはかなわない、といったところか。いままでならかなり呑んだとしても日付変更の前に寝れば、次の日もさほど苦にならなかったのだが……やはり前日の旅の疲れと痛飲による倦怠感によって、死にそうになりながら仕事に従じた。いっそ死んだほうが楽だ、と久しぶりに思うほど。

【5月1日】
 前日の死を目前にした気分とはうって変わり、「今日を終えれば明日から五連休!」浮き立つ気持ちで仕事をこなす。翌日は朝から『筍掘り』なのでオナニーもそこそこにして早めに就寝。

【5月2日】
 Tの奥さん、Mちゃんの実家では毎年この時期になると家族総出で筍掘りに精を出す。そして掘ってきた筍をお裾分けしてくれるのだが、もらってばかりではイケナイ! お手伝いしようではないか! と、29日の酒の席、酔った勢いで私とKちゃんは申し出た。
 もちろん、初体験である。かなりしんどい作業ということは以前から聞かされていたが、退くに退けない。それに、何事も経験である。

 ……結果としては、手伝いにいったのか邪魔しにいったのか(たぶん後者)という具合であったが、それにもかかわらず、Mちゃんのご家族は優しい方々ばかりで、ヘタレな私どもにも大変良くしてくださった。
 市場に出れば結構な値がつくであろう立派な筍もいただいて、なんだか申し訳なさが溢れた。
 素人考えで手伝おうと思った自分を戒めつつも、なかなかできない体験をしたものだ、と感慨に耽った。

【5月3日】
 妻の機嫌が悪い。どうやら自分は連休なんぞ無く、仕事仕事の毎日なのに、バカ旦那は遊びまわっていやがる! そういった僻み根性からであろう。筍堀りから帰ってきた私に無言の圧力をかけやがる。まったく、面倒臭いヤツだ。
 しょうがないので「そんじゃあ明日、(日曜日のみ妻は休み)どこかへ行くか?」と持ちかけると途端に浮かれだしやがる。まったく、単純なヤツだ。
 如何せん急なことなので色々思案するものの適当な場所が見つからない。近県といえば富山、福井、岐阜、などであるが、どうも我儘な妻はお気に召さない様子。それならいっそ、信州で蕎麦喰ってくるか? これがドンピシャだったらしい。妻は意気揚々と「何時に出る? 何時に出る?」と問いかけてくる。子供か。
 私は六時ころでいいんじゃね? と思ったのだが、それでは遅い、五時にしよう、というので従うほかない。
 そんなワケで朝五時に車で、信州方面へ向かった。国道をひた走り。そう、私の車には、未だETCは搭載されてはいない。だがそれで、よかったみたい。高速はやはり予想通りの渋滞らしいが、下道を走る私たちは一度も渋滞に遭わなかった。おかげでスイスイ走れて、結果、昼前には安曇野に着いて、そこで蕎麦屋に入って私は鴨のつけ蕎麦、妻は山菜そばを喰ってご満悦であった。
 本当に、蕎麦を喰ったら「さぁ帰ろう」というようなものであったが、ドライブ日和で快適な一日であった。

【5月4日】
 さて、いい加減ここまでくると疲れも出てきそうなものだが、この日は兄と兄の友人たちと河川敷でのバーベキュー。昼前に兄と私とSさんで買出しにいき、一時から開始。程なく兄の仕事仲間Aさん、Sさんの仕事仲間Nくんらが集い、バーベキュー。肉を喰い、酒を呑み、歌唄い、実のない話で盛り上がった。途中からSさんの息子(中学一年)、その友達三人などもやってきて、オッサンたち五人に新鮮な笑顔をもたらしてくれた。
 夕刻、お開きにしたのだが、そこはそれ。どうしようもない大人たちは、いざ夜の呑み会にスタートである。素面でここまで付き合ってくれてたAさんも流石にそれは辞退してお帰りになられたが、兄、私、Sさん、Nくんは、呑み処を探してフラフラと彷徨い歩く。しかし連休中日とあって何処もいっぱいだ。一時間近くうろついて、ようやく腰を落ち着けた先は焼肉屋。おい、バーベキューでいいほど肉喰って、その後も肉かよ……。しょうがない、というか、どうしようもない。
 そこでつらつらとシロや豚バラなんぞを焼きながらビールを流し込む。ようするに、呑めりゃあなんでもいい、ってとこだな。
 そこを出て、もう一軒行こうとする兄とSさんにNくんは暇を告げ自転車に颯爽と乗って……というかフラフラと乗って、帰っていった。あぶねーなー。
 私も引っ張られそうになったのだが、駅に向かうバスの時間が最終だったので(それでもまだ8時半とか)やんわり暇を告げた。その後の二人については、大方予想がつくが、まぁ、私が言うことでもあるまい。
 さて、私はといえばそこからバス、電車を乗り継いで地元に帰ってきたのだが、時間を見ればまだ九時半。ここで帰ると女房がまだ起きてやがるなぁ……と考え、フラフラとKちゃん営む寿司屋へ。そこで冷酒の一杯でも呑んでKちゃんとお喋りしてれば、やがて時は流れこっそりと帰宅できるであろうと。
 それにしても、これが呑兵衛の性(さが)なのか。冷酒一本で帰るつもりが、なんだか新たな勢いがついて、尚且つお喋りにも華が咲いて、「ビール、一本もらおうかな」これ呑んだら帰ろう、そう心に決めていつものズルズルグダグダな迷宮に入るんだ。

 その後、私の貸切り状態だった店にも酔客が入ってきて店はにわかに色めきたった。さて、それじゃあ私はそろそろ行きましょうかねぇ……と腰を上げようとしたら、隣に座ったスナックのママ(42)が、私のコップにビールを注ぎ始めた。
「アンタも呑んで呑んで」
 はぁ、いただきます……。
 そこから帰るタイミングを逃し、どんどんビールを注がれ、いつしか私はママの喋り相手に……。
 それでもまぁ、楽しく呑んでたんだけど、何がキッカケかは分からないが、だんだんとママの言葉が過ぎる具合になってきた。流石の私もそれにはちょっと「ムカッ」ときたので、せいぜいやんわりと言い返していたのだが、どうやらそれも気に喰わない様子でエスカレートしてくる。
 これはいかん! このままではオレ、切れる。流石にここで切れるとKちゃんに迷惑がかかるので「ちょっと小便」と言って席を立ち、戻ってくるとKちゃんが「車で送ってくよ」と私を促してくれた。
 帰りの車の中で私は「なんじゃ、あのオバハン! シャレんならんぞ!」と腹立ち紛れにKちゃんに喰ってかかった。Kちゃん、すまん……そして、ごちそうさまでした。

【5月5日】
 結局、家に帰ってきたのが午前1時近く。前日の昼からだから、約十時間ほど呑んでたので、もちろんこの日も「いっそ殺してくれ」的な想いに駆られてた。布団の上で本を読んではウトウトし、ちょっと起きては気持ち悪くなり、寝て。意識が戻るとまた本を読んでウトウト……そんな繰り返しで、ようやく身体を持ち直したのが夕方くらい。とりあえずカミさんが帰ってきたとには何気ない顔を繕っていた。
「いやぁ、そんなに呑んでないんや」などと、しゃあしゃあと嘘もつけた。

【5月6日】
 そして今、簡潔にGWの有様をまとめておこうと思ったのに、気がつけばなんだかいつもの調子でだらだらと書いてしまっている自分がいる。
 機会があれば、またそれぞれの出来事を詳細に記したいな、と思う。
 
 とにもかくにも、なかなか充実した連休であったのだ。


 
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泣かない女はいない/長嶋 有

2009-05-06 | 小説
 内容はともかく、(いや、ともかくって…)この本に収録されているのは表題作の「泣かない女はいない」と「センスなし」と「二人のデート」の短編三作なんだけど、「二人のデート」が読めない。

 それは何故か? その訳は「二人のデート」が収録されている場所にある。

 それは何処か? 裏表紙、らしい…。

 そう、すなわち、図書館で借りた本では読めない! と、いうことなのだ。図書館の本というのは補強のためとか汚れ防止だと思うんだけど、「これでもか!」ってくらい表紙をビニールテープで貼り付けてくれている。なので、裏表紙を拝むことなど、不可能……。ようするに、読みたきゃ買え。

 作者の談では、それを見越して、買ってくれた人だけの、いわばボーナストラック的なもの、って言ってました。ようするに、買え。と。

 作者の知り合いの図書館司書の人が「(裏表紙を)どうやって読んでもらおうかしら?」と悩んでたらしいんですが、作者はすかさず「あぁ、いいんですよ。読めなくて」と言ったらしい。

 そんな、粋な意地悪をしてくれる長嶋有が、とても好きだ。

 読めないのはとても残念だけど……(買えよ)
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