雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

整形前夜/穂村 弘

2010-10-15 | 小説
 詩歌人、穂村弘の自意識てんこ盛りエッセイ。ともすればやるせなくもなりそうだけれど、なんだか可笑しい。たぶんその可笑しさは、この人の自意識過剰っぷりに共感できてしまうからだろう。
「自分をコントロールできない」「世の中とチューニングが合わせられない」「常識からズレる」
 たぶん、そういうのって多くの人がうなずける、ふつうのことなのだろう。でもそのふつうにはなりたくない、っていうか認めたくない、自分は特別なんじゃないのか? そういう思春期的な思い込みというのが、さすがに歳を重ねていけば薄れてはくるのだけれど(それは経験であったり、諦念であったり)土台がもうそういう人っていうのは、やっぱり、いくら歳を経ても名残っているものだ。
 それでも自意識の高い人間というのは、周りもよく観察しているし、そこにきて自分自身の姿や内情をことごとく突き詰めるのだから、世間とのちょっとしたズレでもやっきになって探し当て「自分は特別」を無意識に保持しようとするのだろう。そういう人は、はっきりいってなんの問題もない。
 なんせ、性質の悪いのは、まったくもって世間とのズレなど気にせずに、世の中の基準を自分に置いている者だろう。

 身勝手な人よりも、自意識過剰な人のほうが断然好い。と、断言してしまう自分も身勝手であることに変わりはないので、世の中とはままならなくてやるせない、生き難い処であるなぁ……と目を瞑り、日々を誤魔化す。
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それはちょっとした爆弾の如く

2010-10-10 | 雑記
 今日、ある用事があって前の会社に出向くことになったのだけれど、思いの外早く着いてしまったので、近くにある図書館で時間を潰すことにした。
「時間を潰す」と言っても、別段そこで本を手にとって読んだりするわけではない。それほどの時間が余っているわけではないし。
 では何を?
 これは、図書館ばかりではなく、書店でもよく自分が行う時間潰しなのだけれども、あ行の作家から、ずらーっならんでいる本の背表紙を、ずらーっと眺めていくのである。
 これがまた、その図書館、その書店によってあるものとないものがあるので、それらを吟味しながら「なんでコレがあってアレがないんだよ」とか「おー、コレが置いてあるとは渋いね」などと心で独りごちて愉しむわけである。

 今日立ち寄った図書館も一度入ったことがあるきりで、それほどそこの特性に精通していないので、よい時間潰しになると思った。
 そうして館内に入り日本の文芸の棚をぱぁーと眺めていく。
 あ行を越え、い、う、え、お、といく。そうして、か行に着いたとき、ふと、大きな単行本サイズにまみれてある、小さな文庫本が目に留まった。
 それは、梶井基次郎の「檸檬」であった。
 現代文芸書の派手な背表紙にまみれてあったソレは、あたかもその作品世界にあった一個の檸檬の如く、違和のカタチをその場に置かれているようで、私に小さな愉快をもたらしてくれた。
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美味しい時間

2010-10-10 | 雑記
 以前は、毎週日曜日には妻と休日を過ごしていたのだが、お互いに仕事が変わったこのごろは、二人とも休日が不定なのでなかなか重なることがない。だいたい月イチくらいである。それに関して妻がどう思い、考えているのかは知らないが、自分としてはそれくらいがちょうどいいと思っている。
 一応、毎朝(というか毎昼)には顔を合わせるので、なにか報告や連絡、相談(いわゆるホウレンソウ)があればその際に伝えればよいことなので、特に生活自体において支障はきたさない。
 
 さて、そんなふうであるので、稀にめぐってきた一緒の休日になると結婚して9年経った夫婦の倦怠感なども薄れていて、新鮮とまではいかないけれど、非常にナチュラルというか、やわらかい感じで過ごすことができる。そしてそれは、まるでデート感覚とでもいった具合の休日にもなる。

 このところの自分は仕事の関係で一日二食の生活を送り続けていて、それがもう二ヵ月半で体重が6~7キロ減ってきているので、休日になるとどうもその失った体重を取り戻そうとするのか、それとも慢性化した疲れを癒したいのか、以前よりも貪欲に食べるようになった。

 以下は、先日久しぶりに妻との休日を過ごしたときに食べたものである。

 朝、というか昼前に起きて身支度を整え、まずは少し車を走らせたところにある有名なパン屋へ向かう。そこは本当に繁盛していて、日曜日などはいつも混雑していてゆっくり選べられたものではない。が、これが平日休みの特権というやつか、平日昼前ということもあって数名の客しかいない。しかもお昼にめがけていろいろな種類の焼きたてパンが次々出てくる。
 さて貪欲な私が選んだのは、「クレッセント(たしかそんな名前の三日月形のパン)」「コーンパン(小)」「ウィンナーデニッシュ」「五種類のチーズパン(チーズ好きにはたまらないって書いてあった)」「ごぼうと鶏ささみのバケット」である。以前の私ならせいぜい二つくらいで事足りていたのだけれど、もうとにかく腹が減ってるのでそれだけ買って店を出た。そのままタリーズへ行きホットコーヒーを買い、さすがにタリーズでそのパンを食うのは憚れるので近くにあった公園へ行き食べた。妻はなんだか三つくらい選んでたけれどもさっき朝食を食ったばかりだとかでコーヒーだけ飲んでいた。


 晴れ空の下 むさぼる各種のパンの美味   (秀)


 食い終わった後、いつも水を汲みに行っている山の途中にあるそば処でいつも気になっていた「そばソフトクリーム」というのを食べたい、と妻に言ってみる。いつものケチンボの妻であったなら却下しているところであろうが、やはりやわらかな休日のおかげだろう、気前好く買ってくれた。
 これがまた、想像していたよりも美味しくて、かなりクセになる味であった。

 そうして山から下りて、町に戻って馴染みの喫茶店へ行きグァテマラコーヒーを注文する。そこの奥さんに「久しぶりにお二人で来られましたね」と微笑まれる。

 コーヒーを飲んだあと、その商店街沿いにある魚や惣菜がめちゃめちゃ美味いスーパーへ晩飯を買いに行った。そこで買ったのが「あじの刺身」「その店自家製いくら漬け(酒粕入り)」「大根なます」「ニラおやき」「れんこん、たけのこ、ぜんまいの煮物」。

 そうして家に帰ってから、まだこれだけじゃ足らんだろう、と貪欲さをむき出しにした私は「タイイエローカレー」というタイのカレーの缶詰をベースにリンゴジュースなどで味を調え、そこにオクラ、ジャガイモ、エリンギ、ニンニクなどを入れたカレースープを作った。
 食卓にはそのスープとスーパーで買ってきた食材、尚且つそば処で買ってきたその村産の大豆を100%使用した半固とうふを並べた。並べてみるとすごい量であったが、どれもこれも本当に美味しくて、貪欲に完食された。
 
 食べ終わったあと、妻が言った。

「やっぱり二人で食べると美味しいね」

 
 今月は三回ほどお互いの休日が合う。そのときもまた、美味しい時間を過ごそう。

 
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UFO(未確認飛行物体)

2010-10-09 | 雑記
 えっと……UFO、見ました。
 
「あれはぁ、二、三日前だったかなぁ。(これより、よくある米国人インタビューの吹き替え調で読んでください)
 オイラぁ、仕事を終えてとっとと帰ろうと思ったんだけれどさ、その日はトラックの洗車日でねぇ。いやぁ、うちの会社、曜日でそのトラックの洗車を決められていてさぁ、どんなに遅くなろうと本社へ行って洗車をしてこなくちゃならねぇんだ。まったくよー、オイラたちにしてみりゃコイツは戦いの車だよ。『戦車』を『洗車』してどうすんだっ! ……なんてな……。

 でよう、こう、コイツの荷台をゴシゴシ擦ってたわけよ。そんときさ、夜空を見上げたんだよ。そしたらさ、満天の星がすっごく綺麗に見えていてさ、『ああ、こりゃ明日もいいお天気だわー』って、そう思った瞬間、その星空を駆け抜けていったのさ……ああ、オレンジ色の光をビカビカさせながらだ……はじめは流れ星かと思ったよ、でもさ、流れ星みたいにすぐには消えなくってさ、西の方角にビカビカって、飛行機とも流れ星とも全然違うスピードで駆け抜けていったんだ……いやー、だってさ、深夜の2時だぁ。飛行機とかではないよ。翌朝ヨメさんに話したら鼻で笑われたけれどもさぁ。未確認飛行物体なんだなだから、やっぱUFOだよねぇ?」


 後日、何気に友人の一人にそれとなく「UFOを見た」旨のメールをしてみたのだが、まるっきりスルーされた。いやなに、その友人、チンコの具合についてはしっかり返してきたのだか。

 さて、まあとにかく、あれはUFO以外の何者でもなかった。




 http://www.youtube.com/watch?v=tlaj_0mPO8o&p=8125C98ED3EAC6BD&playnext=1&index=3
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幽霊トラック

2010-10-09 | 雑記
 先日仕事で、深夜1時過ぎくらいだったであろうか……一車線がかなり長く続く国道に入るときだった。自分の前に、一台の不審なトラックが走っていた。
「不審な」というのは、そのトラック、左側のテールランプは全く点いていない、かといって右側のテールランプはというと、ずっとブレーキランプが点いたまま、&方向指示も点ったままで、いったいにワケがわからない。しかも自分の六十㌔制限のかかったカストラックよりもノロい、五十㌔くらいの速度でふらふらふらふら走っている。
「なんだよ、いったい?」
 と、よくよくナンバープレートを見ると『なにわ』ナンバーである。
 ああこれは、もしかしたらトラック関係の「当り屋」なのでは? と思った。いや、なに。決して『なにわ』ナンバーだからといってそう判断したわけではない。だがしかし、大方の当り屋は『なにわ』ナンバーである事実も否めなかろうて。いやそれよりも、何せカーヴで側面が「ちらっ」と見える瞬間があるのだけれど、その際、荷台の側面が「ぶわっー」って煽られてはみ出したりしているからね。

「ボロボロやんけっ!」

 って、可笑しいような恐ろしいような……いったいにこのトラックはなんなんですか? と案じる。
 しかし特に、危なさはない。しいて言えば止まる際にテールランプが点かないことくらいだが、だいたい先の信号を見ていればその予想はつく。車間は常に6m近くあけている(社内規定)。コレと言って問題はない。
 ではそうなると、いったいに、この不審なトラックはなんであろうか? となる。
 そこで私が導き出した答えとは! とはっ!

「幽霊トラックだっ!」

 あれは『幽霊トラック』だ! あの「ゲゲゲの鬼太郎」の話にあった「幽霊電車」だったか「幽霊列車」みたいな、そんな具合の、黄泉の国へ導かれるトラックなんだ!

「これは、ついていってしまってはタイヘンだぞ」

 そう気構えを整えたところ、幽霊トラックが側道にその車体を寄せた。そこに見たものは!




 たんなる事故トラック車両をけん引していただけの車であった。
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運転のこれあれ

2010-10-04 | 雑記
 自分は現在、配送の仕事に従事ている。これがまあ、なかなかに厳しいもので、いやなに……なにが厳しいかと言えば、その運転するトラックが厳しい。
 一般道では60キロ以上は出せないし、細っこい道では40キロ制限がかかる。そいつをオーバーすると、すぐさま注意をうける。誰から? ふん、車からである。

「速度オーバーです」

 女性の声であるが、こんなふうにたちまちツッコまれる。

 いやまあ、速度オーバーくらいなら、少し減速すればそれで事足りるのである。が、これが急加速や急ブレーキなんかだと、もう言い訳がきかない。

「急加速です」

「急ブレーキです」

 実はこれでもう、減点対象なのである。
 
 これは実際、車を運転している人ならわかると思うが、一般道で60キロしか出せなくて、それ以上出したら「速度オーバーです」とツッコまれることを踏まえると、信号の変わり目などには、どうしてよいのか判断に迷うのである。
 
 なら、「ちゃんんと横の歩道の信号の点滅を見ろよ」とか、「判断を極めろよ」とか、そりゃそーだけれども、もろもろの縛りの中でどうにもならないこともでてくるし、且つ、その縛りにとらわれすぎて危険な場面も生まれてくるだろ。

 自分は、少し前から独りであちこち回る、いわゆるワンマンになったのだが、途端、その急加速だの急ブレーキだので減点が多くなった。いやなにも、独り立ちして気を抜いたというわけではない。たぶん、きっと、ひとりになって、ちょっと焦っていた部分があったのかも知れない。だから所長に、「焦らなくてもいいから、安全運転でね」と言われてからは、減点はない。が、しかし、そこにくるまでに、いささか減点が重なってしまったようで、数日後、本社の常務、センター長、所長、そしてオレ、の四者面談が実施されることとなった。それはどうも異例のことらしく、みんな(配送員)の間では「かつてない大型新人ですな」と囁かれている。
 喜んでいいのか悪いのか、ともあれ仲間内のウケは得られたようなので好しとしておくが、数日後の四者面談の気の重さは軽減されやしない。
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ちょっとした心遣い

2010-10-04 | 雑記
 自分はマンションに住んでいる。ポストは、マンション入り口の横に各部屋のものが設置されている。とりあえず、自分の住居は五階である。
 今朝(といっても、昼頃か)空き缶空き瓶を捨てに、下に降りていった。その際、ポストを見る。なにも入っていない。部屋へ戻る。しばらくすると、インターホンが鳴った。出ると郵便配達夫。(いささか、デヴい)
「書留でーす」
「ああ、はい」
 自分はインターホンを操作し、エントランス口を開ける。デヴ……もとい、配達夫が部屋の前にやってくる。
「ここに、フルネームで……」
 なんだよ? フルネームで? いや、フルネームでサインしろってことなんだろ? わかるけどさ、最後までハッキリ言えや。オマエはイカサマ臭いコンビニの店員かなんかか? (この辺でたぶん、自分、キレ気味)
 で、デヴ、なんにも言わずにオレ様のサインした紙を奪ってさっさと行っちまいやがる。

 あのね、オレはね、まがりなりにも、っていうか、今じゃいっぱしの配送員だからさ、あれなんだけど、それ以前でもね、宅急便の人とかさ、荷物の受け渡しがあったら向こうは「ありがとうございましたー」って、そんでこっちも「ごくろうさまでーす」って、気持ちの好い受け渡しが築けるだよ。だからね、普通さ、一般常識としてさ、

 なんか言うてけや、デヴ!

 って思うよね。誰のおかげで飯食うて、しかもそこまでぶくぶく太れたんじゃ、ごらっ! そこまではないにしろ、なんか一言言うて退散しろや、ブタ。

 いや、しかし、このブタにもこのブタなりのナニかがあるのかもしれない……そう、僕だって今やいっぱしの配送員だから、いろいろの事情ってヤツもわかる。わかろうと思う……でも、だ。

 そのブタ郵便配達ぶー、の去った五分後くらいに、さて仕事に行こうと降りてポストを何気に見たら、三通ほどの郵便が自分宅のポストに「がっさー」入ってるのが見えたんですけど……。


 これ、言うよね、誰でも。


「いやいやいや。ふつうもってくるだろ? 書留と一緒に!」

 そういう、ちょっとした心遣いができないからデヴなんだろーよ、って思われてもしょーがねーだろ。




 いや、まあ、普通郵便とは別に、書留を持っているのかも知れないけれどもさ、素人的にはよくわからんよ。でもさ、ちょっと確認すればわかることだから。その確認作業とかが、心遣いにつながるんだと思うよ、オレは。
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