風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

2. 奥只見湖遊覧・奥只見ダム

2011-05-28 | 中部(甲信越)

奥只見シルバーラインの長いトンネルを抜けると、すぐ目の前にダムが見えました。
長い間、暗闇の中にいたので、すっかりモグラ状態。
日光にびっくりする目をパチパチさせてから、ダムと発電所に気づいて驚きます。
大きいです。



だだっ広い駐車場がありましたが、停まっている車は10台ほどでした。
スキーの季節にはにぎわうのでしょう。
その前に、お土産屋さんがありました。
それだけです。あとは湖を囲む山々だけ。冬にはスキー場もありますが、人家らしいものはありません。



木の看板には「秘境 奥只見」と書かれており、(自分で秘境って言っちゃってる!)と思いましたが、周りをぐるりと見回しても、やっぱり秘境でしかありませんでした。
看板に偽りなし。
ダムのこちらがわには、水は見えません。向こう側に行けば湖になっているのでしょう。



スロープカーに乗っていくことにしました。
乗車料金100円。ワクワクします。



速度はとてもスロー。距離もそれほどないので、歩いて行った方がずっと早く着けそうですが、やっぱり乗ってみないとね。
線路の周りには、もう6月近いというのに、まだ雪が解けないまま、積もっていました。


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ダムに到着し、そのまま湖の遊覧船に乗りました。
1時間ごと、40分の遊覧です。
乗客で席があらかた埋まっており、(こんなに観光客がいるんだ)とちょっと驚きました。
冬季中は休業し、5/20に運行開始になったばかりだからかもしれません。
私達は、後ろの甲板に立っていきました。



奥只見湖(銀山湖)は、奥只見ダムによって造られた人造湖で、日本第三位の広さ。
山々の新緑がとても目に鮮やか。奥に見える山並みにはまだ残雪も見え、日本アルプスのようです。
湖を渡ってくる風が、心地よく頬を撫でて行きました。

紅葉の季節はとても美しい、と、いろいろな人が行っていたことを思い出します。
新緑の季節も、すばらしい自然のパノラマが広がっていました。



人造湖のためか、山がそのまま湖に沈んだような地形がとても不思議。
どの山にも、人家は見られません。完全なる自然の中です。大自然に圧倒されます。
「北欧のような新緑」と言われているとのことで、確かに、雄大な自然を目の当たりにして、ノルウェイのフィヨルドや、桂林の川下りを思い出しました。
湖を大満喫。
停泊所に船が着くと、添乗員さんが「こちらです」と声をかけていたので、観光ツアー客が来ていたことを知りました。

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それから奥只見ダムの上を歩きます。



ダム堤を指差して「あそこを歩きたい」とアビィが大興奮。橋好きの私も大興奮。
アビニョンのサン・ベネゼ橋のようです。
ここは長さが157mあり、重力式コンクリートダムでは日本一の高さ。
水がない下流側を見降ろすと、ダム直下放水路の高さに吸いこまれそうで、足がすくみました。



手を伸ばしてみると、風の強さがはっきり変わっていて、自然の力を感じました。
豊かな水流が見られます。山の根雪が解けているものでしょう。
水不足なんてならないくらい、潤っていました。



それからお土産屋に寄りました。
「名物 またぎせんべい」という文字がとっても気になります。



(毛皮の服を着た狩人が、おせんべいを焼いているのかしら?)とワクワクしましたが、そんな屋台もマタギの姿もなく、おせんべいは袋に入って売られていました。
ここの人気商品だそうです。(アビィ撮影)

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湖とダムを満喫し、奥只見を離れることになりました。
「近くにある田小倉ダムにも行きたいー、でもここからのルートがないから無理ー」と残念そうなマロン。
帰りもまた、同じシルバーラインを通らなくてはなりません。ここしか道がないのですから。
酷道好きのマロンが、「途中の交差点から曲がって、枝折峠を越えるルートを通りたい」と言ったので、私達は「いいよー」と軽く言って、そちらを行くことにしました。
でも、地図で見ると、ものすごくカクカクの道のよう。「さすが枝折という名前だけあるね…」と言いながら、あっさりOKを出して良かったのかと、アビィと少し後悔しました(笑)。


(アビィ撮影)



先ほどの交差点で左折します。トンネル内で曲がるなんて、なんだかもう、地下駐車場内で出口を探しているような気になります。
前を走る車につられて、うっかり別荘地に入ってしまったりしながら、入口に辿り着いたら、なんと通行止めになっていました。



「ここは、今もまだ冬季なんですね」と残念そうなマロン。
もう東京は、梅雨明けもしたのにね。
冬は豪雪地帯なのに、道路が閉鎖されるため、スキー場は春と秋しか営業しないというのは、すごい話でなかなか実感できません。もったいないけど、しかたないのね・・・。
道路横にはやっぱりまだ雪が解けずに残っていました。



そんなわけで、枝折峠越えはあきらめ、またシルバーラインに戻って、元来た道を戻ります。
やっぱり延々、果てしのない地底を走っている感覚。黄泉の国とはこういうところでしょうか。
とてもスリリングで、ほんとうにずっと息を詰め、身体をこわばらせて緊張していたため、無事に外に抜けた時には、みんなでほっとしました。


1. 奥只見シルバーライン

2011-05-28 | 中部(甲信越)

5月は気候のいい旅行シーズン。ダムに詳しいマロンさん、アビィさんと3人で、奥只見湖へと出かけました。
長丁場の運転になるため、早めに寝ておかないとね、と言いつつも、みんな深夜過ぎまで夜更かししていた前の日の夜。
土曜日の早起きは社会人にはつらいですが、それでも今回の旅は未知数が高くて、ワクワクしています。
5時半に起きて池袋集合。あいにくの雨ですが、ゴキゲンな気分で、練馬ICから関越自動車道に入りました。

車は快調に進みます。途中の赤城高原SAからは、私が運転を交代しました。
ハンドルを握るのはこの前の京都からの帰り以来。高速運転はまだ2度目です。ひえ~。
久しぶりの運転だったため、まるでカンを取り戻せず、二人を冷や冷やさせながら、小出ICで高速を降り、魚沼の道の駅「ゆのたに」で休憩。
ふー、私の危険なハンドルさばきのせいで、二人に危ない思いをさせてしまったわ。
よろよろしながら車を降りました。

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朝はしっかりと雨が降っていたのに、新潟に入ると雨は上がり、まぶしいくらいの晴天になっています。
「トンネルを抜けると、そこは快晴だった」
遠くまで来たっていうことですね。
すっかり油断して、日焼け止めを持ってきていなかったので、アビィに借りました。

ここは天下の米どころ。
魚沼産コシヒカリの米粉が売られていました。米粉入りのカレールゥも。
初めてみるものです。食べてみたーい。おいしそうなので、さっそく購入しました。


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それから、奥只見シルバーラインに入りました。
新潟県の東の端にある奥只見ダムにつながる、長いトンネルの名前です。
ダムを建設するために作られた道なので、道路としてのクオリティは低め、つまり酷道なんだそうな。
酷道好きのマロンがすごく楽しみにしており、熱く語ってくれていた道ですが、特にマニアではない私は「ふーん」「へえ」と反応しているだけでした。
でも、「トンネルの中に交差点がある」と聞いて、えっ!?と思いました。
それ、どんなトンネルなんでしょう?
トンネルの中に海底駅がある津軽海峡トンネルくらいしか連想できません。



ここ、響きはなんだかきれいですが、ものすごい道なんです。
全長22kmのうち、トンネルはなんと18kmあるという、ほとんどがトンネルの道です。
そしてトンネルが全部で19個もあるんだそうな。ありすぎです。
更に驚きなのが、自転車や歩行者は通ることができないということ。

かつては有料道路だったということで、その名残の、廃墟と化した料金所を通り抜けて進みました。
トンネルの入口に「1号」「2号」と書かれてあり、初めのうちは数を数えていましたが、そのうちどんどんトンネルの間隔が狭くなり、自分が置かれている光景のあまりの非日常ぶりに、悠長に数を数えているどころではなくなってきました。

そのうち、出口が見えない暗く長いトンネルに、いよいよ突入します。
光が差し込まないと、地下に入ったような気になるものですね。
無機質に点滅する赤いランプだけが、トンネル内を照らしています。
山からしみてくる地下水で、トンネル内の壁は濡れ、路面もウェットになっています。
それがライトにあたって黒光りして、迫力満点。
これは、人や自転車が通ると、滑って事故を起こしてしまうことでしょう。

昔のトンネルのせいか、幅員が狭く、歩道スペースがありません。
バスやトラックとすれ違うのが恐ろしいくなる空間です。
そして本当に道路の質が悪く、ボコボコしており、光の反射が複雑な色をなしています。
さらにカーブも多く、ライトの指示に沿って、右に左に、ハンドルを切っていかなくてはなりません。

それを、延々と続くライトを頼りに、ひたすら進んでいくしかないのです。
つまり、常に集中力を途切れさせられない、ハードな行程です。
シルバーなんてきれいな響き、とんでもない!観光道路なんて嘘でしょう!と、半分も行かないうちから叫びたくなりました。



とてもこの先に明るい何かが待っているとは思えないような、暗く続く濡れた道。
坂道になっているようで、運転も大変そうです。
トンネル内はひんやりとして、外界との格差を実感します。
時折トンネルが切れると、辺りの自然を見て呼吸を整え、またトンネル内に入ると、なにかおそろしい物体が襲いかかってきやしないか、息を殺して暗闇の向こうに目を凝らしていました。

なんという普通じゃない道でしょう。
『マトリックス』のアジトに続くような、暗い、曲がりくねった、じめじめした、不安感をあおる道が延々と続いていきます。
黒びかりする、デコボコしたトンネルを見ていると、まるで水音と車の音しかしない、果てしのない鍾乳洞の中を走っているような気にもなります。
一人だったら泣きだしていたかもしれません。

途中、世にも珍しい、T字路交差点がありました。
事前に教えてもらっていましたが、やっぱり(うそでしょ~!?)と目を見開きます。
信号もあり、「えー!?」と驚いていたら、すっかりカメラのことを忘れていました。

永遠とも思えるような長い長いトンネルを最後に抜けると、目の前にはようやく緑の山々が広がり、眼下には広大な駐車場がありました。
「バンザーイ!」と声を上げる元気は誰もなく、「ああ…」と安堵のため息ばかりがこぼれる私達。
ようやくシルバーラインを抜けて、奥只見湖に着いたのです。