【ワシントン】米下院共和党指導部は、連邦政府の債務上限引き上げと保守的な政策課題の抱き合わせを見送るもようだ。同党内にはこれを強く要求するグループもあり、指導部の方針は党内の亀裂をあらためて示すものだ。
まだ正式には決定されていなかったものの、下院は早ければ23日にも共和党保守派の約170人で構成する「リパブリカン・スタディー・コミッティー(RSC)」が提出した法案を採決するはずだった。しかし複数の共和党議員やそのスタッフは22日、同法案は下院採決に持ち込めるまでの党内支持が得られていないようだと語った。
下院共和党指導部が債務上限について次にどんな手を考えているかは不透明だ。スタッフによると、指導部は22日も議論を続けた。ただ、期限は迫りつつある。財務省は11月3日までに議会が上限引き上げを承認しなければ、政府の各支出ができなくなるとしている。共和党議員は上限引き上げの見返りにオバマ大統領から何らかの政策上の譲歩を引き出したいと考えているが、大統領は債務上限を駆け引きには使わないと述べている。
債務上限の引き上げ法案に賛成の共和党議員数は少ないため、共和党指導部は他の政策と抱き合わせることなしに上限を引き上げようとすれば、民主党議員に頼らざるを得なくなりそうな状況だ。ただ、「"純粋(clean)"債務上限引き上げ」と呼ばれるそうした法案を共和党指導部はまだ本会議へ提出する準備ができていない。
指導部は当初、RSCが提出した法案を採用しようとしていた。同法案は債務上限を現行の18兆1000億ドル(約2170兆円)から19兆6000億ドルへ引き上げる一方で、今春の予算編成の際に同党が提案した社会保障関連プログラム関連の大幅支出削減を盛り込もうとするものだ。法案はまた、予算均衡合意の採決を義務付け、2017年7月1日まですべての新たな連邦規制を凍結させるとしている。
しかし共和党議員らは21日朝に非公開の会議で議論した結果、RSC案を受け入れないことにした。
デーブ・ブラット議員(共和、バージニア州)は22日、同法案が下院で成立したとしても、上院で債務上限以外はすべて削除されてしまうと懸念していると語った。同氏は、上院から法案が「何も得られずに帰ってくることになる。何か(政策面で)実質的なものが付帯されなければならない」と述べた。
22日朝に財務省は、27日に予定していた2年物国債の入札を延期すると発表した。債務上限をめぐる議会対立解消の見通しが立たないため、同国債入札の決済ができなくなる可能性があるためだ。
債務上限の引き上げ分は、政府の新たな財政プログラムへの支出に充てられることは禁じられており、既に議会が承認した各種施策費用の支払いだけに充てられる。
この問題をめぐる対立の解消は、ベイナー議長が今月末に辞任する前に対処しようとしている優先課題の一つだ。
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