現代人にまで生き延びてきたネアンデルタール人の遺伝子が、いくつかの疾患のリスクを高めている可能性が
ある。2つの研究チームが29日に発表した研究で明らかになった。
研究者らによると、約5万年前にネアンデルタール人との混血を通じて受け継がれたDNAは、初めてアフリカの
外に広まっていった初期人類が、氷河期や、太陽光の弱まりに順応する一助になった。皮膚の色や毛髪に影響を
与えたようだ。これに対し、現在みられる他の古い遺伝子は、東アジアと欧州の現人類を対象とした遺伝的調査
によれば、糖尿病や紅斑性狼瘡(ろうそう)といった疾患のリスクを高める可能性がある。
化石から採取したDNAを使ったこれまでの調査では、アフリカ系でない人がネアンデルタール人の祖先から受
け継いだゲノムの割合が1~3%であることが示唆されていた。
だが、ワシントン大学(米シアトル)の研究者らがサイエンス誌で新たに発表した研究によると、ネアンデル
タール人のゲノム全体のうち、実に20%は、少しずつ分散して現人類に残っている。
遺伝学者のジョシュア・エイキー氏率いる研究者らは、東アジア人286人と欧州人379人から集めた遺伝的サン
プルをコンピューター分析し、ネアンデルタール人のゲノム由来の可能性がある現代人のDNAについて、統計的
変動を特定した。
エイキー氏は「重要な点は、私の持つネアンデルタール人のDNAシーケンスの1%は、あなたの1%とは違うか
もしれないということだ」と述べた。
こうした違いが重要なのかもしれない。
29日には、先の研究とは異なるが関連するもう1つの研究がネイチャー誌に発表された。ハーバード大学医学
大学院のスリラム・サンカララマン氏率いる研究者らが、1004人から集めたDNAシーケンスを検査し、ネアンデ
ルタール人のDNAが疾患へのかかりやすさを形成している痕跡を発見した研究だ。
発見したのは、2型糖尿病、肝硬変、紅斑性狼瘡、クローン病に関連しているネアンデルタール人のDNA。炎症
に関連するインターロイキン 18のレベルに関連した種も発見した。
サンカララマン氏は「シーケンスを発見すればするほど、この種の関連が多く見つかる」と述べた。
2つの研究グループが使った研究テクニックは異なるが、どちらの研究でも東アジア人のほうがネアンデルタ
ール人のDNAがやや多かった。研究者らは、東アジアのもともとの人口が欧州人に比べてずっと少なかったため
、受け継がれてきた遺伝的な影響が大きくなった、あるいは、東アジア人の祖先とネアンデルタール人の混血が
1度だけではなかったとみている。
両研究チームとも、ネアンデルタール人のシーケンスがケラチンを生むゲノムに集中していることを突き止め
た。ケラチンは皮膚、頭髪、爪の主成分を構成するタンパク質だ。両チームは、このことが毛髪や皮膚の生態に
どう影響しうるかはわからないものの、生存を助ける力がありそうだと考えている。
サンカララマン氏は「実際それは(遺伝子が生き延びる)役にたった」と述べた。
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