個人にも資産運用をしやすくする少額投資非課税制度(NISA)が始まって1週間。NISAの実際の買い付けでは、武田薬品工業がトップになるなど高配当の銘柄に人気が集まった。株価の上げ下げで短期的に利益を狙うよりも、長期保有を考えた銘柄選びが顕著だ。投資信託に毎月定額を積み立てる手法も目立ち、長期志向の資金が市場に入り始めている。
NISAは年100万円の投資額を上限に、株式や投資信託の譲渡益や配当が非課税になる仕組み。NISA口座を開設した顧客の10日までの取引状況について、野村、大和など大手証券5社とSBI、楽天などネット証券5社の計10社に聞き取り調査した。すぐ取引した個人には株式投資の経験者も多く、約定件数では、各社とも全体の6~9割を株式が占める。
実際に買われた銘柄は、回答が得られた証券8社のうち7社で武田が1位だった。上位には、みずほフィナンシャルグループやソフトバンク、トヨタ自動車など時価総額が大きい銘柄が並んだ。NISAの非課税枠は一度買うと、売っても枠が戻るわけではない。長期的に配当を見込め、値動きが安定した銘柄に人気が集まっている。
株主優待を狙った注文も入っている。航空運賃の割引優待があるANAホールディングス、買い物代金の割引を受けられるイオンが人気だ。「一度に15~16銘柄を優待目的で買った投資家もいる」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
株式だけでなく、投信をNISAで買う動きも広がる。中でも不動産投資信託(REIT)に分散投資するファンドの人気が高い。野村証券では日本株投信も売れ筋だ。
SBI証券では「投信積み立てで投資を始めたいという初心者も多い」(高村正人社長)。今月は投信積み立ての申込件数が、昨年12月の10倍のペースだという。
ネット証券各社では、NISA口座での平均購入額はおおむね40万~50万円。「すぐ100万円の枠を使い切る個人と、試しに少額で取引する個人に二極化している」(カブドットコム証券)
もっとも、口座は開いてもまだ取引を始めていない投資家が多い。取引した比率は、多い証券会社でも2割程度。本格的な資金流入はこれからとの見方が少なくない。