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「憑かれた鏡/エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談」

2017-12-11 16:14:46 | 音楽・映画・お芝居・本・絵・アニメなど

憑かれた鏡 エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談

河出書房新社
E・ゴーリー,柴田 元幸,小山 太一,宮本 朋子


原題は
The Haunted Looking Glass /
Ghost Stories Chosen by Edward Gorey


「鏡」は「mirror」ではなく「looking glass」、表紙の絵は、窓にも見えるけど、
たぶん大きな鏡に黒いマントの男が映っている絵です。

あとがきより”イラストと編集(作品の選定)の両方を手掛けたのが本書である”。
エドワード・ゴーリーは、1960年にダブルディ社を辞めルッキング・グラス・ライブラリー社に移籍しているそうだけど、
会社名と本のタイトルと関係あるのかな?

ゴーリーが、表紙と、中表紙と、
12の物語の冒頭にそれぞれ12枚の絵を描いています。
とても素晴らしいです。
物語のタイトルも、ゴーリーの(たぶんフリーハンドの)レタリングで絵の中に溶け込んでいます。
「亡霊の影」だけ、タイトルが白抜きになっていて、細かい!!!

12枚の絵のポストカードか何かあればいいのにねー。
人々の目に触れないのはもったいないな。

それから、表紙の絵はホワイトで修正した部分が見えるので原画かな?

以下、ネタバレです。文章の言葉遣いや表現が難しいと思いました。
翻訳のせいもあるかもしれません。

私が解釈したざっくりなあらすじと、青字は感想です。



「空家」A・ブラックウッド/小山太一=訳
幽霊が出ると言う噂のアパートに、叔母に頼まれた男性が夜に二人で入って恐怖を味わう話。

単純な内容だけど、その家で過去に起きた殺人事件を、二人が疑似体験する恐怖の描写がとてもとても怖い。


「八月の炎暑」W・F・ハーヴィ/宮本朋子=訳
画家の日記で始まる。
19XX年、8月20日。
とても暑い日、
自分がイメージで描いた絵<法廷で裁かれている見知らぬ男の絵>を持って、
知り合いの家にでも行こうと外へ出た。
途中でたまたま会った石碑職人は、自分が描いた絵の被告人にそっくりだった。
展覧会に出すと言う石碑を見ると、
職人が頭に浮かんだという
名前と、
生まれた日、
亡くなった日「8月20日」が
刻まれていて、
名前と生まれた日は、その画家と同じだった。
その日、石碑職人の家に夕食に呼ばれ、行くと大雨で帰れなくなり、泊まることをすすめられる。
食事の後、職人は仕事道具の彫刻刀の刃を研いでいる。
画家の、人生の終わりの日は今日、なのか?
午後11時、刻々とその日の終わりが近づく。
日記はここまで。ストーリーもここまで。

本人たちはインスピレーションで絵を描いたり石を掘ったりしてるだけなのに、
現実に存在しているという恐怖。
日付が変わる前に画家は石碑職人に殺されて、
石碑は画家の墓石になるのか・・・?



「信号手」C・ディケンズ/柴田元幸=訳
ある旅人と、谷底を走る線路の信号手の話。
旅人は「おーい!そこの人!」と谷底の信号手に向かって叫んだ。
降りていくと、信号手に「前にあなたを見たことがある」と言われた。
お互いに興味を持ち、仕事場である線路わきの小屋で何度か話す。
信号手の行動が気になる。
旅人には聞こえない電話のベルが聞こえ、トンネルの入り口に旅人には見えない人影を見る。
その人影は、”目を腕で覆い、何かを叫んでいる”と言う。
信号手は以前、大きな汽車の事故を見たという話もする。
数日後、旅人がまた会いに行くと、谷底の線路わきに人だかり。
信号手が汽車と接触して亡くなったという。
汽車の機関士は、信号手とぶつかるのがこわくて目を腕で覆い必死で叫んだという。
「おーい!そこの人!」

時空が歪んでる系かな。
信号手と機関士と旅人と、3人が混ざってる?
よくわからないけど怖い



「豪州からの客」L・P・ハートリー/小山太一=訳
雨の中、二階建てバスの、屋根のない二階に乗っている黒マントを着た怪しい客。
ほとんどしゃべらず、腕が不自然に曲がっている。
キャリック・ストリートに向かっている。
その日の夕方、オーストラリアからイギリスに戻ったヴィクター・ランボールドは、
キャリック・ストリートにある行きつけのホテルに泊まった。
夜おそく、壁だか天井の向こうから子どもたちの集団遊びの音楽や声が聞こえてくる。
わらべ歌のようなもの?
なんとなく聴いていると、
「ヴィクター・ランボールドと取っかえよう」
「誰にヴィクターを連れて行かせる」
「ジミー・ハグバードに連れて来てもらおう」・・・
歌詞に自分の名前が!?
ランボールドは酔って眠り夢を見る。
木に登って無理やり”人の腕のように曲がった”木の枝を折る夢。
さっきの黒マントの客が夜中にホテルを訪れる。
ロビーにあったオーストラリアの新聞記事に「ジェイムス・ハグバード」の死亡記事。
ヴィクター・ランボールドの部屋で銃声がして、
血痕と肉片の付いた氷の爪を残し、マントの客とランボールドは姿を消した・・・

夜遅くに聞こえてくる子供たちの歌声が怖い。
ホテルのウェイターもすごく怪しい発言をする。
夢に出てきた、無理やり折ろうとした木の枝がマントの客の正体なのか?
それとも本当にランボールドはオーストラリアで殺人を犯したのか?
よくわからなーい、でもこわーい



「十三本目の木」R・H・モールデン/宮本朋子=訳
とある古い豪邸。
ある判事が住んでいた家で、呪われているという噂がある。
その家に生まれた「男子」は、大人になるまで生きられず、家を相続できない。
直系ではない親戚の一人が相続した。子どもは娘が二人だから呪いにはかからないことになる。
その家に招待された主人公は夜、裏庭に、円形の水盤とその周りに12本の木を見た。
12本の木の陰に何かの気配を感じた。壁をよじ登る人影に見えるツタ。
朝、それらの形跡はなかった。
無実の息子を、その判事の判決によって処刑されたという
言い伝えのある魔女の話と関係があるのか?
恨まれた判事の息子は、魔女に殺された?
男系が続かないよう呪いもかけられた?
結局、その家はナショナルトラストに引き渡され、
古い図面にあった裏庭の水盤と木は、元の持ち主の猛反対で復元されていない。

13本目の木は魔女の幽霊なのか?
わかりにくかった。怖いって感じもあまりなかった。
なぜ、判事が殺されたのではなく代々息子だったのか。
夜に現れる人のような形のツタが唯一怖いといえば怖い



「死体泥棒」R・L・スティーブンスン/柴田元幸=訳
談話室で会った「私」と葬儀屋、店のあるじ、そしてフェティーズという金持ちの男。
そこへ、たまたまマクファーレンという医者が登場する。
フェティーズとマクファーレンには共有するおぞましい過去があるらしく、
偶然ばったり出会い、過去を思い出してしまった二人は血相を変えて別々に店を出ていく。
あまりの二人の様子に、店に残った3人は、おぞましい過去を探ろうとする。
そして「私」の想像の物語が続く。
医学生の解剖の授業で使う死体を、どこからか手に入れてくる医者のマクファーレンと弟子?のフェティーズ。
1人目の女(たまたまフェティーズが寝た女だった)と2人目の男グレー(前日酒場で会っていた)は授業で解剖済み。
3人目は、ある農夫の女房。
土砂降りの中、馬車で2人はいつものように、農夫の女房が埋葬された墓地に死体を掘り返しに行く。
帰り道、その死体の様子がおかしい。女だったはずが大きくなった気がする。
恐ろしいので顔を見ると、すでに解剖したはずのグレーだった。

全体のテーマ自体が怖いけど、終盤の農夫の女房を墓地に掘り起こす墓場と、
帰り道の描写がものすごく怖い。けど、イマイチ意味が分からない?
そもそも「私」の想像であって事実は不明。



「大理石の躯(からだ)」E・ネズビット/宮本朋子=訳
あの日、私たちは「妄想にとり憑かれていた」
新婚夫婦が越してきた古い戸建ての家。
近くには教会がある。
諸聖徒日の前の晩、10月31日に動き出すという言い伝えのある、大理石でできた二体の騎士の像が横たわっている。
教会には何度も夫婦で散歩に出かけたことがある。
ある晩、夫だけがふらっとその教会へ。
入ると二体の像がない。そういえば10月31日だ。
パニックになり引き返す途中、バッタリ会った知り合いの医者が、
本当に像が動くわけがないと言い張り、二人で教会に戻ると確かに像はあったが、
前に見たときにはあったはずの指が一本欠けていた。誰かのいたずらか?
家に戻ると、部屋が荒らされ恐怖の表情のまま妻が死んでいた。
握りしめていた手にあったのは一本の理石の指だった。

結局真実なのか、妄想なのか?内容は単純、でもやっぱり怖い!真実なら妻がとてもかわいそう。夫もか。



「判事の家」B・ストーカー/小山太一=訳
大学生が試験勉強に集中するために空き家を探していた。
好条件の古い空き家が見つかりさっそく住み込んだ。
そこは昔、とても厳しい判決を下したと言い伝えられている、ある判事の家だった。
「何かが出る」といううわさもあったが気にしなかった。
部屋の壁には、その判事の肖像画が飾られていた。
夜、勉強をしていると、たくさんのねずみが壁や天井に出たが、すぐに慣れた。
が、ねずみたちの運動会がピタッと止む瞬間があった。
目を光らせた巨大なねずみが一匹現れた時だった。
そのことを精神科医に話したが信じてはもらえず、気にしないようにして勉強をつづけた。
ある夜、その巨大なねずみは、肖像画から抜けだした判事に姿を変え、
判事は学生を殺そうとし、学生は勇敢に戦ったが、最後は絞首刑にされてしまった。

なぜ大学生が古い豪邸を借りられるのかとか、
何もしていない学生が裁判にかけられたわけでもないのに、なぜ、しかも判事自身に殺されなければならないのかとか、
疑問はたくさんあるけど、終盤の描写はやっぱりとても怖い。



「亡霊の影」T・フッド/小山太一=訳
レティの夫ジョージ(軍人)の肖像画が壁にかかっている。
ジョージが、医者である友人グリーグを家に招く。
グリーグはレティに惚れてしまい、
夫の前でも口説くような最低な奴で、レティは当然彼を嫌い、無視し続ける。
ジョージはグリーグたちと長い航海に出かける。
ある朝、ジョージの死が新聞で報じられる。
航海から戻り、やせ細ったグリーグが家を訪れ、凝りもせずレティに結婚を申し込むが、
様子がおかしい。
壁にかかっているジョージの肖像画が髑髏に変わったり、
グリーグに影が二つあったり。
その後、グリーグは河に飛び込み死んでしまう。
後でわかったのは、航海中にジョージはグリーグに殺され、
亡霊の影となってとり憑いたらしい。

肖像画の変貌の様子や変わった蝶の描写が怖いけど、
グリーグがものすごく嫌な奴すぎてそっちのインパクトの方が強い(笑)



「猿の手」W・W・ジェイコブス/柴田元幸=訳
3つの願いをかなえてくれるという「猿の手のミイラ」を知り合いから手に入れ、
実際に願いを唱えたら何が起きたか?
1人息子が、家の借金200ポンドが欲しいと願った。
翌日、息子の会社の人が訪ねて来て「仕事中、息子さんが機械に体を挟まれて亡くなった」と。
会社から支払われた補償金が200ポンド・・・
気が変になりかけていた母親は、夜中に夫の強い静止を無視して「息子を生き返らせて」と「猿の手」に願った。
玄関でノックの音。
父親は、息子が機械に挟まれた無残な姿で帰ってくると想像し、
母親が2階から降りドアを開ける寸前に、最後の願いを叫んだ。
ドアを開けた母親の落胆の叫び

内容はよくある系の話だけど、他と同じく描写が怖い。
もし息子が心臓発作で亡くなったのならハッピーエンドだったんだろうか、なんて。



「夢の女」W・コリンズ/柴田元幸=訳
安い宿屋の馬丁。
なぜか昼間寝ているが仕事ぶりには問題ないので、事情を知る宿屋の主人も大目に見ている。
なぜ昼間に寝ているか。
数年前、たまたま自分の誕生日に泊まった宿で恐ろしい夢を見た。
美しい女に夜中の2時にナイフで刺されそうになり逃げる夢。
が、その後、ある女と結婚するが、その女が「夢の女」とそっくりで、
ある晩、夢が正夢になり、二度と同じ目に遭いたくないので、
夜は眠らず昼間に寝ているのだった。
特に誕生日の夜は仲間と一緒に居てもらうほど。
その女が何者なのか全く思い当たらず、
今も恐怖の日々を送っている。

怖いっちゃ、怖い。けど、この中では怖さの順位は下の方かな


「古代文字の秘法」M・R・ジェイムズ/宮本朋子=訳
カーズウェル。自分が書いた本や論文を、酷評した二人の人間(ハリントン、ダニング)を探し出し、呪い殺そうとする。
ハリントンは殺された。次は自分だとダニング氏はおびえ、逃れようと仲間と綿密に計画し、逃げ延びた話。

ストーリーは単純だけど、奇怪なことが起こる。
一番不思議なことは、路面電車の窓ガラスの内部に仕掛けられたチラシ。
あれって、すごく変わった怪奇現象だけど、特にその後触れられることはないのが心残り。
あと、最後の5行の意味がわからなかった・・・



よくわからない部分が結構あって、読み終わった後にモヤモヤが残って余計に怖い。