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外国語学習の意味、そして母国語について考えましょう

社内公用語の英語化、小学校での英語の義務化など最近「英語」に振り回され気味ですが、何故、どの程度英語を学ぶか考えます。

続の(3/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

2018年09月14日 | 英語学習、教授法 新...

続の(3/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

which you gave me先生:では、さっきの少し複雑な関係詞節(形容詞節とも言う)も上の単純な語順移動でできているということを確認してください。

最初の文字列のモトの形は:The girl likes the flower.

次の文字列のモトの形は: The girl decorated her room with the flowers.

生徒:では規則通りに。

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● 一つめの文の例

 ⓵ 限定される単語を最初にもって来る。 

 the flower [The girl likes the flower.]

 ⓶ the flowerを取る。(=限定の対象となった単語を取る)

 the flower [The girl likes the flower.]

 ⓷ The flowerの位置に関係代名詞(which / that)を入れる。

 the flower the girl likes which.

あれ、whichの位置が変です。

先生:⓸として、whichを繋ぎの部分、つまりflowerの直後に移動(先に言う)。

生徒:the flower which the girl likes

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できた!。日本語にすれば「その少女が好きな花」。規則通りですね。でもwhichは省略できますね。

先生:その件についてはこのブログの末尾に少し触れます。

生徒:では、もっと複雑な関係詞節(形容詞節)。

the flowers (which) the girl decorated her room withのモトとなる形は?。

先生:The girl decorated her room with the flowers.です。

生徒:意味は「その少女はその花で自分の部屋を飾った」ですね。

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● 二つめの文の例

⓵ 限定される単語を最初にもって来る。 

the flower [The girl decorated her room with the flower.]

⓶ the flowerを取る。(=限定の対象となった単語を取る)

 the flower [The girl decorated her room with the flower.]

⓷ The flowerの位置に関係代名詞(which / that)を入れる。

 the flowers the girl decorated her room with which

⓸ whichを繋ぎの部分に前方移動(先に言う)。

the flowers (which) the girl decorated her room with

先生:少しかたい文語体ではこういいます。

the flower with which the girl decorated her room。

with the flowerの形がまとまって感じられるのでまとめて前に出すのでしょう。前置詞は「前に置く」から前置詞なのですね。その場合、直前のflowersとwithは無関係であることに注意。昔の人は<前>置詞があとに残るのを嫌ったのでしょう。ちなみにフランス語では前置詞があとに残ることはありません。

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生徒:あらゆる関係詞節は同じ仕組みだと予想できますね。いろいろ確かめてみます。

先生:たぶん、例外が見つかると思いますが、今までの3つの例を頭に叩き込んでおけば混乱はしません。

生徒:ちょっと不可解な点がまだいくつかあります。最後の花で部屋を飾る文、うまく日本語に訳せません。「その少女が自分の部屋を飾った花」。前後の文脈がはっきりしてればこれでもいいと思いますが、これだけ取り出すとちょっと不細工な日本語という感じがしますが。

ラベンダー■英語の方が便利…
先生:たしかに。ここで、前回の最期やこのブログの最初の方で触れた、関係詞の二つの難しさが関係します。同じ名詞の限定でも、一つは英語の関係詞節の方が日本語の名詞限定(連体形と呼ぶ)より、ず~~~と幅が広いということです。英語ではthe flowers the girl says she fills her room with the flavor ofなんて軽く言いますが、日本語で名詞限定の形で、「~~~な花」と訳そうとしたらとても変な日本語になります。その点、英語の方が便利と、まずは言えると思いませんか。

生徒:ちょっと日本語では名詞限定の形では訳せませんね。でも、元の形がThe girl says she fills her room with the flavor of the flowersだということが分かれば、訳さなくても分かります。(「その少女はその花の香りで自分の部屋を満すと言う。」)「訳さないと分からない」という日本人の英語理解の問題点の一端が具体的に分かったのが今回の教訓でしょうか。

■英語と日本語の限定修飾の位置
先生:もう一つの点にも触れましょう。それは、上で見たように日本語の名詞限定はすべて、連体形によって名詞の前で行われるということです。欧米語でも、a red flowerという語順がありますが、a flower which is redの形の方が表現の幅がずっと広い。そこで、関係詞や他の名詞限定修飾などが、二つ、三つと重なった場合、そしてThe flower which is red is bloomingのように、主語と動詞が離れている場合など、頭がついて行けないということが起こります。前回触れたSOV型からSVO方への変換のストレスと同じです。それを克服するには時間がかかります。ある程度英語の知識が増えた人には、英字新聞の第一面でよく知っている日本の事件の記事を読む習慣をつけるのを勧めたいです。

生徒:はあ~。関係詞という一つの文法項目の問題だとたかをくくっていましたが、英語頭に切り替えるという大問題が控えていたのですね。

先生:関係詞という一つの項目から英語習得理論の可能性を考えるという今回のシリーズの目論見の一端が見えて来たでしょうか。

生徒:えっと、このへんで終わりにしたいのでしょうが、何か忘れていませんか。

■関係詞の省略
先生:あ、関係詞の省略ね。もう物忘れがひどくて。the flower which the girl likesを、the flower the girl likesと言いますね。切れ目が分かりにくて英語の難所の一つ。たぶん他の欧米語にはない現象でしょう。名詞の後に、限定する形容詞節が主語+動詞の形で続くときは、アングロフォンの人は、あ、ここで名詞の限定だな、と気づくので関係詞を省略してしまうのでしょう。もともとないという意見もあります。いずれにせよ、語順だけで決まるのですから、英語学習における語順の重要性をつくづく感じさせる部分です。The flowers the girl says she fills her room with the flavor of are called lavendars.なんて日本人頭にはなかなかついて行けませんナ(「その女の子が自分の部屋を芳香で満たしていると言っている花はラベンダーと呼ばれる。」なんてところでしょうか。日本語になっていますか?。)

生徒:どうも。なんとか通じるようです。では、次回、あらゆる言語の要素の語順は限定か、前へ進むかという話をよろしく。

先生:覚えていますな。次回は短いです。

練習問題:次の語列を英訳せよ:
(1) その少女が好きな鳥

(2) その鳥を好きな少女

(3)その少女がいっしょに遊びたい鳥
ヒント:まず、「その少女はその鳥といっしょに遊びたい」を英訳せよ。

続の(2/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

2018年09月12日 | 英語学習、教授法 新...

続の(2/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

今回、長いです。2/3です。ことがらの性質上、この長さ、お許しいただきたいです。

続の後半、関係詞です。一回目と同様、対話形式で進めます。一回目を忘れた方はここをクリックして復習してください。

先生:関係詞から始まる文の部分は関係詞節(relative clause =形容詞節とも呼ぶ)と呼びます。a flower which is redの、which is redの部分ですね。

この部分の役割はなんでしたっけ。

生徒:名詞の限定ですね。a flower which is redは、a red flowerと同じ意味ですが、a red flowerと違うのは、isをwasやmay beに変えて複雑な表現ができるのが関係詞節なんですね。

ベン図先生:そう、限定=defineがキーワードです。日本語では「修飾」と言いますから何か着せるみたいですネ。伝統的な英語の文法用語ではmodify。「様子を変える」というところでしょうか。

生徒:which is redの役割は、単なるa flowerより指す花に種類が限定されるので「限定」と言った方が実態を反映しているという意味でしょうか。

ベン図 2項先生:which is red and smells goodだと?。

生徒:もっと限定する範囲が狭くなります。つまり、花の数はより少ないでしょうね。

(左の図の「猫が好き」を赤い花、「犬が好き」をいい香りがする、にすれば、「両方好き」と「両方嫌い」をどう変えたらいいでしょう。)

■限定する要素と文を前へ進める要素

先生:では、もう以下の二つの文字列の意味の違いは分かりますね。

- a flower which is red

- The flower is red.

徒:上は、「赤い花」。下は、「その花は赤い。」

先生:上は限定、下は判断を表わすちゃんとした文。「前に進んでいる文

」と言えます。上は、あとに--- is bloomingなどとつけないとちゃんとした文になりません、つまり前へ進めません。(The flower which is red is blooming)。

生徒:このぐらいならすぐ意味も分かるし、訳せます。けれども、いわゆる関係詞の省略とか、分かりにくいのもたくさんあります。

赤い花 男の子先生:もっともです。a flower which is red の方がa red flowerより表現の幅が広いと言いましたが、もっと複雑な限定も関係詞で行うことができます。たとえば、「その女の子が好きな花」は英語で表わせますか。

生徒:the flower which (=that) the girl likes。またはthe flower the girl likes。この程度ならなんとかなりますが。二番目の文のように関係詞が省略されるとどこが切れ目か分からなくなります。それに、the flower  the girl decoated her room withなどなんて訳したらいいのか...。

■前方移動ということ

先生:急に複雑になりましたね。分かりにくい理由は二つあるのですが、まず一つめから解決します。じつは、どんな関係詞の節(relative clause=形容詞節)もとても単純な<たった一つの規則>から成り立っているのです。「限定される単語の前方移動」(前方移動とは、先に言うということですな)です。

以下の二つの語列は片方がモトでもう一つはちょっと形を変えたものと言えます。

- a flower which is red

- The flower is red.

生徒:?

先生:では、次の二つの文、片方が肯定文で、片方が疑問文ですが。どちらがモトでもう一つがそれを変えて作ったと言ったとしたら変ですか。

- What flower is red?

- This flower is red.

生徒:前半は、見れば分かるじゃん、と言いたくなる内容の疑問文ですが、それはさておき、下の肯定文が先で、それを変化させて疑問文を作ったに決まっているでしょう。

■関係詞節(形容詞節)の作り方

先生:あ、これラジオのクイズ番組のつもり。それはさておき、

 - a flower which is red

 - The flower is red.

関係詞節(形容詞節とも言う)も、下の「ちゃんとした文」を変えて作ったと考えたらいいではないですか。規則は単純で単一。リンゴが落ちるのも飛行機が落ちるのもニュートンの万有引力の法則で説明できるのと同じように単一的、しかももっと簡単。

⓵ 限定される単語を最初にもって来る(先に言う)。 

the flower [The flower is red.]

⓶ The flowerを取る。(=限定の対象となった単語を取る)

the flower [The flower is red.]

⓷ The flowerの位置に関係代名詞(which / that)を入れる。

the flower which is red.

赤い花 帽子次回、あらゆる言語の要素のつながりは、限定か、前へ進むか、というごくごく一般的な話に触れますが(これは大学受験の英文和訳において問われる重要な点)、まあ、たとえば、日本でも⓵のような「前へ進む」文があって、それを変えて、⓶の限定修飾の文字列が生まれるのも同じです。


⓵ 花が赤い。

⓶ 赤い花。

 では、さっきの少し複雑な関係詞節(形容詞節とも言う)も上の単純な語順移動でできているということを確認してください。

最初の文字列のモトの形は:The girl likes the flower.

次の文字列のモトの形は: The girl decorated her room with the flowers.

To be continued





 

 



 

 

 

 



続の(1/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

2018年09月08日 | 英語学習、教授法 新...

続の(1/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

このシリーズは一つ一つの記事が比較的長いです。2回目は、長いので3回に分けます。1は2,300字ぐらい。関係詞についての対話的なエッセイは次回に。

英文法二回目です。このシリーズでは、関係詞という文法の一項目をどう学習するか、教えるかという課題を扱いながら、英文法の学習理論(狭い意味での言語学ではなく)はまだないのではないか、という問題を提起するという目論んでいます。

■一回目のおさらい

一回目では、学校教育の場での、物理と地理を例に出して、英語と他の教科との違いに注目しました。「英語の知識」と言えるものが、他の教科と性質が違うという点が一番言いたかった点です。それを間違えると、個人の学習の水準でも、国家レベルのカリキュラムでも変な方向にずれてしまいます。文科省かどこかの機関が「あまり、品詞の区別などに時間を費やさないように」という指導だか、通達だかを出しているそうです。それに対しては、「もちろん、もっともだね」と言う人が多く、すんなりと受け入れられていると思います。しかし、なぜそうなのか、というところまでは言いません。「なぜそうなのか」、その理由は前回述べたこと、つまり、学習対象となる「知識」の取り違えだと思います。とても、とても小さなことですが、ここで理論化へ一歩踏み出したと思いませんか。とても小さいことですが、「なぜ」の連鎖が「理論」と呼べるものにつながるのです。

理論 実践■理論嫌い

でも、まだ、「理論」など必要なの、という意見も多いでしょう。現場での経験が第一でしょう、と...。しかし、言葉の習得の時間は限られています。私のフランス語学習がそうであったように、一人で無手勝流でやると時間を無駄にすることも多いです。一方、学校、国家のレベルではばらばらで意見がまとまらないと、よい試験問題を作ったり、今、2018年に争点になっているような改革を先に進めることができません。「理論」というとマルクス主義ののような絶対的な「理論」を思い浮かべてアレルギーを感じる人も多いと思いますが、...いや、なにも、単一の「理論」でなくてもいいのですヨ。「これよりあれの方がいいな、なぜならば~」ということを積み重ねる努力を続ける、これが忘れられていませんか、ということがここでの主張です。

■日本語から英語に移る

SVO SOV関係詞の話に移る前に、やっぱり理論が必要かな、と思っていただくためにもう一つ挙げたいと思います。それは、英語学習というものはゼロからの学習ではなく、<日本語から英語に移る>ということを意味する点です。この点においても、物理や地理と違うということに気が付いた方は聡明です。物理の学習の前提はある程度の数学ですが、英語学習の前提が日本語である、ということほど大きくはありません。一例ですが、こういうことがあります。英語を代表とする欧米語はよく言われるようにSVO型の言語。日本語はSOV型と言われます(日本語に主語があるか、という議論には踏み込みません)。故に、英語を話す場合、日本語の思考をひっくり返さなければなりません。そのために大脳にかける負荷は相当なものでしょう。CTスキャンなどで誰かが調べれば明らかになるのではないかと思います。とりわけ耳で聞き、話す場合、とても大変です。日本の場合は特殊事情があって、明治前からの漢文訓読、書き下し文の伝統があり、その後も訳出中心の受験英語に至るまで読むことが中心だったので、読んだり、訳す場合は自分の速さに合わせてゆっくり進めばよかったのです。だからこの問題に気がつきにくかったのかもしれません。しかし、話す場合はそうはいけません。理論化にあたってはこうした言語構造の違い、歴史的事情に十分注意しなければなりません。

■英語教育における日本語文法の必要

時枝文法ここで、一つ忘れてはならないのは、英語習得の場においては日本語の構造の知識が前提になるという点です。それはそうでしょう。<日本語から英語に移る>わけですから。どこを出発点として移るかを知っていなければ到着地点にどうやって、どれくらい時間をかけて到着したらいいのか分かりません。ところが、英文法書、英語学習書などで日本語の仕組みについて分析しているものはまずありません。ところどころで思い出したように触れるだけです。なぜそうなのか。一つには英語の先生は若いころがむしゃらに英語浸りの生活をしたので、日英文法の比較から学習法を考えるという発想はなかったのかもしれません(英語の先生で国文法を一定レベルまで勉強した方がいたら教えてください)。たしかに、習う側は日本語の構造の分析についてあまり考える必要がないのかもしれませんが、英文法書には、日本語の文法を分かった上で書くという親切があってもいいのではないでしょうか。英語の文法用語を日本語の仕組みに照らし合わせて説明するだけでずいぶん英語アレルギーを減らせるのではないかと思います。(例を挙げると長くなるので書けないのが残念。)

どうでしょう。「理論」の必要ということをぼんやりとでも感じていただけたでしょうか。今回、このシリーズの二つの目的の一つの方に長くつきあっていただいたので、もう一つの方、対話による「関係詞」という一項目の学習法、指導法を考えるパートは次のブログで行いたいと思います。関係詞が何を前提していて、何の理解の前提となるかを示せれば、小さな一文法項目の検討から理論の必要をなっとくしてもらえるのではないかと考えます。学習法、指導法は、二つ挙げます。どちらがよいか、あるいは関係詞などを独立して学ぶ必要があるか、も含めみなさんに考えてもらいたいと思います。

To be continued

■■

練習問題の答え:以下の日本語の語列を英語にせよ。

(1) 青い花: a blue flower / a flower which (=that) is blue

(2) 庭に咲いている花: a flower which is blooming in my garden

(3) 昨年植えられた花: a flower which (=that) was planted last year


関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

2018年09月04日 | 英語学習、教授法 新...

関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

grammar 1このシリーズのコラムは少々長いです。今回、3,300字ぐらいです。

これから英語学習のだんどりや、教え方のカリキュラムの作成について少しづつ理論を創っていきたいですが、まずは、教室で扱った一つの具体的な文法項目からスタートしましょう。

今回のエッセイには二重の目的があります。一つは英文法学習の理論はまだないのではないかという指摘。もう一つは関係詞という一つの文法項目の学習法、指導法についてのヒントです。関係詞という具体的な項目をとおして、理論の必要性の指摘という大きな目的への一里塚にするつもりです。ですから、関係詞について、今回網羅的ではないです。

関係代名詞という用語は知っていても、その役割は分からないという人がけっこう多いようです。学校の穴埋め問題で出るから、ルールを覚えるというだけなのでしょう。中等教育にはこうしたことが、英語にかぎらずあります。オームの法則の計算法は知っているのにそれが何を意味するか分からないとか。意味も分からず生徒に教え込むということが行われているのですね。なぜそうなるのか、ここから、別の課題につながりますが、今回はそちらへ行かず。関係詞について、考える土台を述べておきましょう。

1:文法項目の分類の非合理性

中等教育と、大きく出てしまいましたが、せまく、英文法という分野に限っても、項目分類の意味が十分生徒に伝わっていないのではないでしょうか。最初に、名詞、次に、形容詞、動詞などと並べてあるのは、昔のラテン語学習者のための文法書の順序を踏襲しているからではいかと思われます。ところが、生徒は、各項目の関係など全く考えずに、穴埋め問題の点数を上げることしか考えません。地理なら、アメリカ、日本、中国の各項目が無関係ですが、それと同じくらいにしか考えないのが生徒です。ちなみに、物理の場合、逆に、力学の項目と電磁気学は緊密に因果関係で結ばれています。一つでも輪が欠けていたらそこで大きな課題が生まれます。このように、教科によって「項目間の関係の意味」は違うのですが、そのことは意識されません。しかし、それに無関心だということはその教科の本質の理解を妨げます。

2:英文法の各項目の意味

では、英文法の各項目はどう関連付けられるか。言語学は物理学ほど法則性の高いものではないですが、やはり、どれが先の項目で、どれがその結果出てくる項目か、というぐらいの違いはあります。それを間違えるととても分かりにくくなります。その点、地理とは違いますね。しかも、もう一つ、言語学的なシステム以外に、英語学習の場合、学習の心理的順序というものがあります。これは物理と少し違う点です。どれを先に学習したら効果的か、またはどれを時間をかけて学習すべきか、どれくらい項目間の時間の差をつけるか、こんな基本的なことでも、あまり議論が進んでいないように思います。たとえば、比較構文などは論理は明快で説明も楽。しかし、時制のニュアンスは数年ではとても習得できるものではない、などです。ところで、ここでは、私はまだこの二つの「項目間の関係」について具体例はまったく挙げていませんが、これまでの記述でなるほど、と思われる方はどれほどいるか...。今回、概括的に述べたいので先へ行きましょう。

3: 英文法は知識か?

おっと、大切なことを忘れました。関係詞の話に移る前に、英文法が地理や物理と違う3つ目の、最大の違いについてここで触れておかないとあとで困ります。それは、英文法の「知識」は、地理や物理の知識とは性格が違うということです。地理なら、「ワシントン州は米国の西岸にある」、物理なら「V=RI(電圧=電流×抵抗)」など知識と言えますが、「三人称単数の主語のあとの普通動詞には語尾にSがつく」は同列の「知識」と言えるでしょうか。英語における知識は、話すとき、書くとき、すばやく過たず"He speaks English."と言えることでしょう。また、"He speak English."と言ったら即座に間違いだと分かることです。その能力が「英語の知識」と言えるものです。「三人称単数の主語のあとの普通動詞には語尾にSがつく」という「文法規則」を暗唱できても英語ができるわけではありません。このように、3点、他の教科と違うということを忘れて混同するととてもおかしな学習になってしまいます。あ、脱線しました(意味のある脱線だと思っていますが...。)関係詞へと問題を絞ります。

関係代名詞14:関係詞

関係代名詞は、relative pronoun。関係副詞はrelative adverb。これらを総称して関係詞と呼びます。

まず、習う側は、「関係詞だかなんだか知らないが、英会話には使わないわ」などと思い込む場合があるようですね。「なんだか難し気(げ)だし…」、いったんそう思ったら学習しなくなります…。

そのため、関係詞はなぜ学習の必要があるのか、どういう役割をするか、そして、何を前提しているのか(物理の各項目のように)、など、習う側になっとくさせるのが必ず必要だと思います。けれども、学校の英語の先生は十分にそれを伝えているでしょうか。私は、高校1年の段階で教えるのがカリキュラムの構成上好ましいと思うのですが、これまた別の記事で論じることにします。

一つの教え方のモデルを提示しましょう。

日本語から入るのです。いくつか先のエッセイでまったく違うアプローチも試みますから、学習法としての優劣を考えてみてください。

先生:「赤い花」、これを英語にしてみてください。

関係詞2生徒: a red flower

先生:もう一つの表わし方があるのですが知っていますか。

それは、a flower which (=that) is red です。

生徒:この二つは同じ意味なのですか。

先生:はいそうです。

生徒:同じことを表すのに二つの表現がある、というはおかしくないですか。同義語ということを習ったとき、いかなる同義語も違いがあるものだと習いました。

先生:a red flowerより、a flower which is redの方が表現の応用が利くのです。たとえば、a flower which was red、a flower which may be redなど、動詞の形を変えることができ、より詳しい表現を行いことができるではないですか。一方、a red flowerは、速く言えるというメリットもあります。そのため、一方は詳しい説明をするため、もう一方は速く言うためのという使い分けがあるので二つ表現があると考えることできます。

生徒:名詞を詳しく説明するために使うのが関係代名詞というわけですか。

先生:はい、そうです。relativeの元となった動詞のrelateには「関係させる」という意味と並んで、「説明」と言ってもいい「もの語る」という意味もあります。詳しくない方の説明なら名詞の前に、redを付けるだけでよいですが。ところで、説明という漢字でもよいですが、「限定」と言いたいところです。「赤い花」は、さまざまある花のなかで「赤い」のを選び出すわけです。言い換えると、関係代名詞を使って<限定>するのです。たんにredだけでも限定できます。すると花の範囲が「狭くなる」でしょう。狭くなるというのが肝心な点です。またこれについてはすぐに論じることになります。

生徒:限定って英語ではどういいますか。

先生:define。定義するという日本語にも訳せますね。

生徒:なるほど。

生徒:まだ質問があります。なぜ一個の形容詞なら名詞の前なのに、関係代名詞を使って名詞のあとにくっつけるのでしょう。日本語なら、「赤い花」でも、「庭に咲いている花」でも、「庭に僕が昨年植えた花」でもみんな、名詞の前に来ますよね。

先生:その質問への答えはあるとも言えるしないとも言えます。しかし大きな問題につながるので次回にしましょう。

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練習問題:以下の日本語の語列を英語にせよ。

(1) 青い花

(2) 庭に咲いている花  (咲く:bloom)

(3) 昨年植えられた花       (植える:plant)

To be continued

 

 


リスニング力を上げるためには文法力が必要。VOAの優れた英文法コラムから。

2018年03月25日 | 英語学習、教授法 新...

 

リスニング力を上げるためには文法力が必要。VOAの優れた英文法コラムから。

「××すれば英語が面白いほど聴き取れる」という広告がウソであるということはだれでも気づいていることですが、人々の「藁をもすがる」という気持ちにつけいるので、けっこうこの種の広告はまだ効果があるようです。

Everyday Grammar常識で考えてみれば、単語を知らなければ聴き取れるはずがありません。同じ内容なら読んで分からないものがどうして、耳で分かるのでしょう。聴きとるというのは複合的な作業なので、ある一つの障害を除いたら聴き取れるようになるということはありえません。

とはいえ、文章英語とは違ったとくゆうの問題が音声言語にあることは否定できません。ここで取り上げるVOAの優れた英文法番組、Everyday Grammar TVで述べていることは以下のとおり。日常のnative speakersが話すときは、教室での英語の先生の発音と違い、下に挙げた4つの操作を自然に行なうため、学習者にとってリスニングが困難になるのは避けられない。

squeese,
shorten,
combine,
and drop sounds all the time

常に、音を圧縮し、短縮化し、合体させ、省略する、です。

では、英語学習者はどうしたらよいか。
男性プレゼンターのKavehは、次のように言います。

KavehI think it’s important to listen for key grammar words like “be”, “have”, “do”, “to”, and “will”. These words are often shortened.!
「be, have, do, to、それにwillというような文法上カギとなる単語を注意して聴くことが大切です。これらの単語は短縮されることが多いのです。」

それに続けて、女性プレゼンターのLuciaは、例を挙げます。

LuciaThat’s true. My friend always says,
“D’ya wanna go?” instead of
“Do you want to go?”

その他代表的な例がいくつか挙げられた後、Kavehは次のように言います。
They key is to train your ears to listen for shortened grammar words.
「カギは、短縮化された文法的な単語を注意して聴くよう耳を訓練することです。」

2分間のこの番組では、これ以上のことは言っていませんが、「耳を訓練する」といういかにも身体トレーニングのような言い方の裏には、文法力を身につけるという、とても知的作業の必要性が隠されています。
ある表現のあとには「これがくるはずだ」という、この「はず」をたんなる推論にとどめずに、直感的に身につける作業が必要なのです。

最近英語スクールのレッスンで扱った、刑事コロンボ一回目の一場面を上げてみましょう。(クリップを挿入するテクニックがないのが残念。Sorry)
犯人の精神科医が被害者を装って、「妻が事故にあったのですか」と尋ねます。成り行きからそういうセリフがくることは予想できる場面です。
とても早口で話しますので、この台詞の単独の聴き取りは英語学習者には難しいかもしれません。しかし、意味から、ここで言われる可能性のある台詞は、以下の4つ。
この4つのセンテンスが頭のなかにすでに用意されて、頭に浮かぶ寸前まで来ているかどうか、これが実力というものです。これがステップ1。

コロンボ1 妻が事故にでも① “Did she have an accident?”
② “Has she had an accident?”
③ “Was she in an accident?”
④ “Has she been in an accident?”

答えは④(音声が欲しい!残念)ですが、過去に起きた殺人であっても、今も事件は続いているのですから、過去形ではなく、現在完了形が使われるという、意味的、文法的予想が頭にすでにできていることがつぎの条件。これがステップ2。そこにbeenの音がかろうじて聞こえるというステップ3が積み重なります。以上の3つの条件をクリアして、⓶ではなく、④だということが分かるわけです。

一瞬のリスニングをスローモーションの映画のように分解して説明すると、上記の3ステップの段階を踏んで初めて「聴き取れる」ということが成り立つことが分かります。学習の最初の過程では、こうした分析的な理解を完全にすべきでしょう。そのあとで、この知識が感覚になるまで「耳を訓練する」のが、学習の手順ではないでしょうか。

Everyday Grammar: Understanding Fast Talkers 速い英語を理解する (2分)

https://learningenglish.voanews.com/a/3137098.html

February 28, 2016

この番組のシリーズはもう3年目に入り、100以上のアイテムがあります。おしむらくは、文法的整理がされてなくてばらばらだということ、いったん冒頭のページに戻ると、前に見たところへ戻るのが大変という欠点があります。
そこで、今までの連載を文法項目的に整理してみました。のちほどブログで紹介しましょう。