小林真 ブログ―カロンタンのいない部屋から since 2006

2006年開設の雑記ブログを2022年1月に市議当選でタイトル更新しました。カロンタンは40歳の時に飼い始めたねこです

プレシャス、プレッシャー、プレジャー

2007-01-18 14:04:42 | 食べ物・飲み物(~2013年10月)
今日から長期原稿に入るところで、しかも書きかけの深谷ロックフェスティバルの記事もありますが、追い越しでこの記事をロング原稿のウォーミングアップに。

ことの起こりはよくあるようにJ-WAVE。
火曜の深夜、大学生F君のロシア企業の民主化や毛沢東のテスト勉強に自分の仕事も進めながら、BGMは菊地成孔だった。ロジェ・ヴァディム作2曲など同い年とわかった菊地さんらしいすごい選曲に驚きながら、ドリンクバーでカクテルという話に笑っていると、F君がジョイフルのことを言い出し、それがすぐにリスナーからのメールに登場し吃驚。F君がバイト先のすき屋はじめ、ジョイフル、まるまつなどの定食のことを話し始めた。
まったく食べたことのないこれら定食メニューをネットで確認し、F君が気に入っているという納豆定食、その豚汁つきのやつに興味がわく。納豆はいつも味噌汁とともに食する私は、それはそれでいいとしても胃の調子良好時には脂肪分の少なさに物足りなさがあったのだ。そうだ、豚汁ならそれは解消される。
朝までの勉強の後、早速昨日の朝というか昼というかで豚汁+納豆を実践。ちょうどそろそろだめになりそうなが豚肉あって、個人だけに不二家のようなことにはならないにしても、捨てるのは申し訳ないと思っていたからちょうどいい。ほかには塾からの帰路に買ったもやし、ニンジン、これはちょっと古いキャベツが前に買ったメンバー。豚汁ならこれら味を出す野菜、今思いついた「出し野(だしや)」がいい。ちなみに「入り野」の代表は大根、白菜だろう。
できてみるとなかなか。しかしもうちょっとパンチがほしい。そう思った私は、よし次は圧力鍋だと決意した。

家には、これは実は1985年に死んだ母親の形見の一つである圧力鍋がある。確か私が高校生の頃、何やら玄米を食べるなどと言い出した母親が買い、当時はシュンシュンいうこの鍋を、高校生くらいからみればまったく余計な存在である母親のように奇妙なものにしか思っていなかったのだが、ほとんど誰も使っていなかったのを数年前新聞の記事かなんかで読んで使ってみた。
よくいわれるように、強力に煮えるのがいい。それまで普通の鍋で煮ていたさばは、圧力にしてからは缶詰のように硬い骨まで食べられる。大量におでんをする時、どうしても不足しがちな大根をメインの鍋とは別にこっちで煮て、次々補充するなどが主な活躍の場。カレー用のじゃがいもはなくなってしまって弱ったけど。
この25年は経っているだろう圧力鍋。とってには「圧力正食鍋」と書いてあり、わざわざ正しさを強調している押しつけがましい自信が実に頼もしい。世間には、しゅんしゅんいうのが爆発しそうでコワイなどという臆病な方々が少なくないとのことだが、コワイといって近づかないのは大人の態度とはいえまい。私は高校物理・化学でボイル・シャルルの法則のすばらしさを称えてやまないが、圧力鍋というのは本当に見事な代物だと思う。しゅんーしゅんーうなーるとー舌もはずーむわー、ってなもんだ。

それで今日は圧力豚汁をつくるべく、そのまま寝てしまって起きた朝、毛布の中からF君の金日成とドゴールというレポートに示唆を与え、やつがキャンパスに旅立った後、帰りに豚肉を補充した。このところあり方についてよく考えているラード、つまり脂身は、特に豚汁には多い方が好ましい。ほかのメンバーは昨日と同じ。友人M君が前面商品に推す出し野性の高いブラックマッペもやし、深谷北部ならではの濃厚な味のニンジン、そしてほうれん草ライクな柔らかさを持ちこれも出し野力満点のキャベツだ。
適当に鰹節を入れ、具を次々に投入。途中ふたが開けられない圧力鍋だけに、迷った末に味噌は先に入れた。私は同じ水で熱するにも「煮る」と「炊く」は違うと思っていて、味噌汁は「炊く」食品と思うので火を止める直前まで味噌は入れないが、この場合なら先が正解だろう。
しゅんしゅんしゅんしゅん分銅踊ること10分。分銅なんて、仮面ライダーに出てたカマキリ男のくさり鎌みたいでかっこいいじゃないか。ちょうどM君からメールが来たので、圧力豚汁製作中、もやしどうなるか楽しみと返すと、シャキシャキは期待できないが汁に影響するはずとプロらしいアドバイス。
そしてタイムアップ。分銅を少しずらしてシューっと圧力を下げる。この、機関車映画の名作『北国の帝王』の誠実機関士を思い出す勢いのある吹き上げも好ましい。たかが豚汁のためにここまで音を立てて大騒ぎするというのは、何かワイルドというか大人気なくていいではないか。
いつもは主役の納豆に、すまん、今日はあっちが主役だと侘びながら味を調え、大型お椀に入れた豚汁車掌を口はつけず、圧力鍋の購入の労のあった母親の位牌がある仏壇へ。長男のこの有様を喜んでいるかどうかは知らない。
そして、ご飯、納豆と、春のような陽だまりの食卓へ。P(圧力)の上昇によってT(絶対温度)が上昇させられたラードは、肉体の動きから自由になった液体となって午前の柔らかな陽差しにきらきらと輝く。M君の思った通り、もやしはじめ出し野の面々はその思いの丈を存分に発揮したかのようにくたっとして、それでもブラックマッペ大佐にはわずかの歯ごたえが残る。キャベツ中尉はその繊維をほぼ散乱させたまま。驚くべきはニンジン少将で、くたっとしたがらもかたちは失わず百年の時を過ごしたかのように甘く切なく柔らかい。ずるっ、しゃこしゃこ、ずーっと、時間が止まる中、からだの中で舌と喉だけが生きていたような5分あまりだった。

満足しきった後、少しあまったので冷蔵庫で硬くなっていた古いご飯にかけて、ねこどもにおすそ分け。にゃーにゃー集まるやつらに、どうだうまいだろう、金はかかってないけど圧力はかかってんだから心して食えよというが、出されたのが何であってもやつらは必死だ。それからさらに、これにバターでコクを加えるアイディアを思いつき、飲んだことはないがチベットのバター紅茶だの、札幌ラーメンはこうやって発達したんだろうだのと思い巡らす。

今日の、というか朝の業を成し遂げた満足感とともに流しに戻り、大活躍の圧力正食鍋殿の銀色ボディを洗って差し上げようとスポンジを持った時、かけっ放しだったJ-WAVEでは、DJタローが「今日のウィルカムブログは「圧力鍋で作るレシピ500です!」。何たる奇跡か。こうした瞬間こそ日本のハイデガー研究の第一人者木田元氏がいう「運命」なのだと思った、precious pressure pleasure 「貴重な圧力の歓び」。


「圧力鍋で目指せ500レシピ」(http://wakabamark.com/aturyoku/
「M+ タログ」(http://www.j-wave.co.jp/original/musicplus/http://www.j-wave.co.jp/original/musicplus/
(Phは豚汁はすでに食べてしまったのでしかたなく圧力正食鍋の姿を、台所で撮るのも芸がないので庭においてねこといっしょにと設置したら、上方のカミーラ、オディールは中に入っていないからかすぐにスルーで、次に現れたヒダリがくんくん。BGMはその後、DJタローさんの番組でかかった perfect の入ったフェア・グランド・アトラクションから、pressure のあるビリー・ジョエルのベストがともにすぐ見つかったので。さあ、これから原稿ノン・ストップで書くぞ。新企画今回のテーマ:ジョン・コルトレーン「シーツ・オブ・サウンド」の手法で食べ物を書く)

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1 コメント

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na (na)
2007-01-18 14:32:00
新宿ルミネスト7Fに夜景がかなりイケてるカフェ&ラウンジがありますよ~!
AIR BLAN SERVICEっていうんだけど、そこのプロモーションビデオが
www.ganzis.jp に掲載されているからみてみて(^^)
ちなみにその動画コメント欄に動画専用クーポンがついていますよ。
全品 ~offになっているので必見!!
あとwww.hotpepper.jp/A_20100/strJ000064038.html にも掲載されているのでそちらもどうぞ!
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