墨汁日記

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平成マシンガンズを読んで 3

2006-08-27 08:33:13 | 

 洋子はマックへ入りがてらに、チラリと横目で「アルバイト募集」のポスターを見た。注文の品がそろうと2人は窓際の席に向かう。そこを陣取り居座る場所と決めた。

「キム、今こづかいいくら?」

 洋子はトレーをテーブルに置くなり、待ちきれないかのように話し出した。その質問に私は少し困ったが、座りながらとりあえず正直に答えた。

「うーん、1日千円」

「へえぇー。いいなぁすごいじゃん、するとアレだね月に3万だね。私なんか月に1万だよ」

 1万円じゃ欲しい物なんて何も買えないよぉと洋子はぶーたれる。
 あのなんとかのバッグがあれば手持ちの服と相性バッチリだし、アレがあればコレがどーなって、コレを極めるにはアレが必要だと、気がつけば洋子の話題は再び物欲の話。
 ファッション系物欲話は私には少しつまらない。出てくる単語が良く分からないからだ。
 うなづきながらも、心がだんだんと洋子との会話から離れ自分の世界にこもり始めているのを感じた。クラスの子達と話している時とおんなじだ。顔は笑顔のままうなづきつつも、心はその場にはない。いつから私はこんなんになっちゃったんだろう。

「お金欲しいよぉ。アルバイトしたいなぁ。どっかに中学生でも雇ってくれるところないかなぁ」

 アルバイトという言葉で、心は現実に戻った。前に中学生の男子が新聞配達のアルバイトをしてるのをテレビで見た事を思い出して、私は言った。

「アルバイトって新聞配達とか?」

「えぇー、新聞配達はイヤだぁ。チャリで新聞配るんでしょ、かっこ悪いよ。クラスの子に見られたら笑われちゃう」

 ま、私だって新聞配達はイヤだし、実際に新聞屋さんが中学生の女の子を雇ってくれるかどうかも疑問。たぶん、現実には中学生の女子なんて誰も雇ってくれないはずだ。

 私たちは無力だ。
 本当になんの力もない。ただ、世の中への望みやあきらめなどをマックで吐き出すだけ。1円だって稼げないし、学校と家以外に行くところも居る場所もない。
 多少は大人扱いされても、中学生の女子なんてまだまだ子供。
 金もなく、力もなく、親の言いなりに生きるしかない。


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