墨汁日記

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平成マシンガンズを読んで 4

2006-08-27 12:47:50 | 

 私たちが居座って話し続けているマックに男が入ってきた。

 あれ。

 なぜか、その男が気になってしまった。なんていうか、その男と前にどっかで会ったような気がしてならない。でも、私には大人の男の知り合いなんていない。気のせいなんだ、きっと男が誰かに似ているからそう思うだけなんだと考える。

 遠目に男を観察する。頭には棉製のメッシュの入っていない黒の野球帽をかぶり、黒いTシャツに普通の形のジーンズで白いスニーカー。背中に紺色のリュック・サックを背負い、メガネをかけている。
 誰に似ているんだろうか。まったく分からない。でも気になる。

 カウンターで注文をしてレジを済ませた男は、私たちの席の方につかつかと近づいて来た。
 男は二つとなりにあるテーブルの椅子を引き、背負って来たリュックをそこに座らせた。そして、ポケットへ手を突っ込むとテーブルの上にポケットの中身をぶちまける。タバコとライターに携帯灰皿と携帯電話。
 次に、男はリュックを開け1冊の本を取り出した。見慣れたかんじのする本。見たことのある表紙。とっさに私にはその本が何か分かった。

「マック・チキンをご注文のお客様!」

 店員に呼ばれて、男は無造作に手にした本をテーブルの上に投げ出しカウンターへ向かった。
 投げ出されたその本は、あの『平成マシンガンズ』だった。
 私は心底おどろいて、自分の目を疑った。
 あんな男が『平成マシンガンズ』を読むのか。
 いったいどういう目的があって何のため読むんだ。
 なにも、男が『平成マシンガンズ』を読んじゃいけないって法律があるわけでも、いや、むしろないだろうけど。でも、その男はあまりに『平成マシンガンズ』の繊細なまでのナイーブさとは不釣り合いなかんじなのだ。ナイーブって言うよりオリーブ油ちゅーか、中華料理店の「ラーメン」と清少納言の『枕草子』ぐらいに属している世界がまるで違うようにすら見える。とにかく、その男が『平成マシンガンズ』を読む理由はマジでひとつもわからない。

「なに、さっきからガン見してんの?」

 洋子に注意され我に返った。

「いや、あの本ね、今流行ってるらしいよ」

 ふーんてな顔で洋子は私を見る。あんなんを私のタイプだと洋子に勘違いされたらイヤだし、『平成マシンガンズ』を洋子に薦めるつもりもない。もう、あっちを向かないようにしよう。


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