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徒然草 第三十九段

2005-09-04 18:28:47 | 徒然草
 或人、法然上人に、「念仏の時、睡にをかされて、行を怠り侍る事、いかがして、この障りを止め侍らん」と申しければ、「目の覚めたらんほど、念仏し給へ」と答へられたりける、いと尊かりけり。
 また、「往生は、一定と思へば一定、不定と思えば不定なり」と言はれけり。これも尊し。
 また、「疑ひながらも、念仏すれば、往生す」とも言はれけり。これもまた尊し。

<口語訳>
或人、法然上人(浄土宗の開祖)に、「念仏の時、睡(ねぶり・眠気)におかされて、行(修行)を怠っててしまう事、いかがして、この障り(修行への障害)を止められますか」と申したならば、「目の覚めている間、念仏し給え」と答えられたそうで、とても尊いことだ。
また、「往生は、一定(決定)と思えば一定(決定)、不定と思えば不定だ」と言われた。これも尊い。
また、「疑いながらも、念仏すれば、往生する」とも言われた。これもまた尊い。

<意訳>
 ある人が、法然上人に、「念仏の時に、ねむくなってしまい、修行に身が入りません。どうすればよろしいでしょうか」と尋ねたところ、「目が覚めている間だけ、念仏を唱えなさい」と答えられたという。とても尊い言葉である。
 また、「往生は、出来ると思えば出来る。無理だと思えば無理だ」と言われている。これも尊い。
 また、「疑いながらも、念仏を唱えていれば往生できる」とも言われている。これもまた尊い。

<感想>
 仏教が普通にわかる人なら、この三十九段の文章は普通にわかる文章なのだが、仏教がわからないと理解しにくい。仕方がないので、「念仏」を「勉強」。「往生」を「合格」。と置き換えて意訳し直してみよう。

<超現代語訳>
 ある生徒が、法然先生に、「勉強すると眠くなって、勉強に身が入りません。どうすれば良いですか?」と質問したところ、「目が覚めている間だけ、勉強しなさい」と答えられたそうだ。
 また、法然先生は「合格は出来ると思えば出来ます。無理だと思えば無理です」と言われたそうだ。
 また、「疑いながらも、勉強すれば合格できます」とも言われている。

<また感想>
 中世を生きた人達にとり、死んだ後の極楽往生は志望校合格以上の悲願なのである。みんな、誰もが本気で受験生並に往生を願っていたのだ。「一生に一度は本気だぜ」なのだ。
 その「往生」の方法を「念仏」という簡易な方法にしたのが、法然上人という偉いお坊さんなのだ。そして法然上人の基本スタイルは「リラックス」だったのである。
 カリカリと往生めざして、修行にはげむのでなく、「気楽」に行こうよと言っている。
 そんなラフ(気楽)なスタイル(かんじ)が「尊い」と兼好は言っている。














原作 兼好法師

現代語訳 protozoa

参考図書
「徒然草」吉澤貞人  中道館
「絵本徒然草」橋本治  河出書房新書
「新訂 徒然草」西尾 実・安良岡康作校注 岩波文庫
「徒然草 全訳注」三木紀人 講談社学術文庫


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