墨汁日記

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徒然草 第百十八段

2005-11-07 19:27:42 | 徒然草
 鯉の羹食ひたる日は、鬢そそけずとなん。膠にも作るものなれば、粘りたるものにこそ。
 鯉ばかりこそ、御前にても切らるるものなれば、やんごとなき魚なり。鳥には雉、さうなきものなり。雉・松茸などは、御湯殿の上に懸りたるも苦しからず。その外は、心うき事なり。中宮の御方の御湯殿の上の黒み棚に雁の見えつるを、北山入道殿の御覧じて、帰らせ給ひて、やがて、御文にて、「かやうなもの、さながら、その姿にて御棚にゐて候ひし事、見慣はず、さまあしき事なり。はかばかしき人のさふらはぬ故にこそ」など申されたりけり。

<いきなり感想>
 なんで、古文ってやつは、こうも主語や目的格を平気で省略するんだ。北山入道は、黒み棚に雁を見つけた様子を、誰に向けた手紙に書いて送ったんだ? 兼行か? 兼行あての手紙に書いたんか?
 兼行に新聞記事を書かせたら、必ずや、サッパリわからない記事となるはずだ。

<口語訳>
 鯉のあつもの食った日は、鬢そそげないんだと。ニカワにさえも作られるものなれば、粘ったものこれこそ。
 鯉ばかりこそ、御前にても切られるものならば、やんごとない魚だ。鳥には雉、ならび無き物だ。雉・松茸などは、御湯殿の上にかかってても苦しくない。その他は、心憂き事だ。中宮の御方の御湯殿の上の黒み棚に雁が見えたのを、北山入道殿が御覧して、帰られまして、やがて(あるいは、すぐに)、御手紙にて、「かようなもの、さながら、その姿にて御棚に居て御座います事、見慣れず、様悪い事だ。はかばかしき人が控えていないからこそ」など申されたりしました。
 
<意訳>
 鯉料理を食った日は、髪がばらけにくいんだと。ニカワの材料になるぐらいだから粘るんだろう。
 鯉こそは、天皇の御前でもさばかれるありがたい魚だ。鳥なら雉で、他に並ぶ物はない。雉や松茸なら、御湯殿へと続く棚の上に置かれていても見苦しくはない。その他の食材が天皇の目につく所に置いてあるのはふさわしくない。
 中宮の御所にて、御湯殿の黒御棚に雁が置かれていたのを、北山入道様が御覧になられ、やがてお手紙にて、このように申されていたと聞きます。
「雁のような鳥を、そのままの姿にて棚において御座います事は、見慣れなく、体裁が悪い事です。しっかりとした人がお側に控えていないからこそ、、」

原作 兼行法師 


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