墨汁日記

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徒然草 第二百段

2006-01-21 19:21:44 | 徒然草
 呉竹は葉細く、河竹は葉広し。御溝に近きは河竹、仁寿殿の方に寄りて植ゑられたるは呉竹なり。

<口語訳>
 呉竹は葉細く、河竹は葉広い。御溝に近いは河竹、仁寿殿の方に寄って植えられてるのは呉竹である。

<意訳>
 呉竹は葉が細く、河竹は葉が広い。
 御溝に近いのは河竹。
 仁寿殿よりに植えられているのは呉竹である。

<感想>
 呉竹は、中国産の竹。
 河竹は、普通の日本産の竹の事だと言われるが、現在では両方とも詳しい品種は不明とのこと。
 かっての京都御所の中には、庭の溝沿いに河竹が、仁寿殿に沿って呉竹が植えられていたらしいが、現在では正しい考証は不能。

 この段も、兼好の覚え書きのようなそっけない段だ。兼好が何をねらって書いたのかも分からない。しかし、感動したから、記憶に残ったからこそ、兼好はこんな事をわざわざ書き残したのだろう。
 一見、同じように見える竹でも、種類が違う。そんな、あたりまえだけど深く考えるとなんかすごいんだよという事に兼好は感動したのではないだろうか。
 もともとは産地の全く違う竹が当然のような顔をして一緒に生えている。そんな些細な、でも、普通ならあり得ないはずの事に、兼好は感動したのではないだろうか。

原作 兼好法師


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2 コメント

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不動に思えることでさえ、時の流れの中で移ろい、... (Unknown)
2006-12-26 19:32:04
不動に思えることでさえ、時の流れの中で移ろい、けっして定まることはない。壮麗な御所の建築でも時とともにその有様が変化していく。御所に植えられた竹は敷地の中に刻まれた定点という役割をもっている。建物が地上から姿を消すことがあっても竹の根は残るだろうと考えられたからだ。竹の根が残っているならば、その位置関係から御所の姿を復元することができる。兼行がこの短文によって定点について語っている。
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 ありがとうございます。 (protozoa)
2006-12-26 20:04:18
 ありがとうございます。
 兼行が『定点』という視点で『竹の根』を考えたかどうかは分かりませんが、言いたい事は分かります。
 中国産の新しく日本に移植された竹と古来からある日本の竹が、同じ敷地で棲み分けている事実に感動し、それに『歴史』のようなものを感じて兼行は感動したのでしょうね。
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