「例えば、どっかに俺の話を『うんうん』と素直に聞いてくれて、復讐にも喜んで参加してくれ、美人で可愛く頭も良い、出来ればソッチが本物であってくれたらなとさえ思えるような素晴らしい『木村みのり』の名を語る『偽物の木村みのり』がいたとする」
「つまんない当てつけはやめなよ!」
「あんたは、そいつを『偽物の自分』だと認めるかね?」
「そんな自分とぜんぜん違うやつなんか自分じゃない。私の名前を語っているだけの『他人』で、『自分』なんかじゃぜんぜんない!」
「当然だ。
自分の名前を語る人間がいても、そいつは自分の名前を語る全く赤の『他人』だ。『自分』なんかじゃない。ただの『偽の木村みのり』で、『偽の自分』ではない。
では、『偽の自分』は存在するだろうか?」
「私の名前を語って悪事をはたらく者がいても、そいつは『自分』ではない。あくまで私の名前を語る『他人』だと思う」
「そもそも、自分以外の自分なんか存在しない。
いま生きて感じている『自分』以外に『自分』なんてあるはずない。
『自分』とは、自分を他人と違う自分だと感じる『人格』であるはずだ。そうでないなら、例えば、もし『自分』が双子の片割れだとしたら、自分に瓜二つの一卵性双生児の片割れはどちらも『自分』となるかもしれない。だが、そんなことはない」
「自分はひとつしかないからね」
「ひとつしかないものに本物も偽物もない。それしかないんだから」
「うん」
「何かを『偽』としないかぎり、『本当の自分』なんてあり得ない。
では、何を偽とする?
自分なんかひとつしかないのに。
今の自分が『偽』だとでも言うのか?
今の自分こそたったひとつしかない『本当の自分』のはずだ。
今の、その、みっともない見苦しい『自分』以外に、『自分』なんてどこにもない。今の自分が、いくらかっこ悪く思えても、それこそ、それだけが『自分』なのだ。
悔しかったら、まず自分以外に自分が存在する事を証明しろ!
できなきゃ『本当の自分』なんていくら探しても無意味だ!
いまソコにいる自分以外にドコを探したって自分なんて居るはずもない、居たら幻だ!
本当の自分なんかドコにもいない」
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