「あんたは毎日が楽しいかい?」
死神は聞いた。
「別に、普通だと思う」
と私は答える。
「普通って、どのレベルで?」
「ん、普通の普通。中ぐらいくらい」
いつのまにか、私は死神が用意し直してくれた風呂イスに座り直している。二口だけ食べてそのままにしてあるおにぎりをなんとなく指でもてあそぶ。
「今までで、一番辛かった時は?」
「やっぱ、階段から突き落とされた時かなぁ」
私は死神にまんまとのせられている。
死神が言う言葉の全ては納得できないけれど、私をとらえて放さない。
誘導されていると確信しつつも、誘導から逃れる方法が解らない。
「じゃあ、一番楽しかった時は?」
「え、やっぱ、直美おばさんと行った旅行かな」
「どの旅行?」
「どのって特定はできないけど」
「本当に楽しかったのかい?」
「楽しかったよ」
「本当に?」
「まぁ、大変な事とかもあったけど、まぁまぁ楽しかったよ」
「それと比べて今日はどうだった?」
「普通だった」
「一番辛かった時と比べて今日はどうだ?」
「普通」
「普通って、普通に楽しくないってこと?」
「そうかも」
自分でそう言って、アレって思う。いつの間にか普通に楽しいが普通に楽しくないにすり替わっている。
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