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墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

平成マシンガンズを読んで 223

2007-01-02 15:49:30 | 

 じゃーん。
 ジャンジャカジャンジャンジャヤーン!
 冷やし中華ぁ!

「いただきまーす!」

 ツルッ。
 マジ死ぬかもしれない。
 ほどおいしい!
 キュウリの緑、トマトの赤、卵焼きの黄色、ハムのピンク。
 麺の灰色かかった薄いイエローに、汁の濃いソース色。
 あぁ、見目も麗しいぃ!
 でも、マスタードの黄色は余分だね。死神とトレードだ!

「マスタードと卵焼き交換ね!」

 私は箸を引っくり返してマスタードを死神に押し付け、変わりに卵焼きを根こそぎゴッソリと奪った。

「おい、やめろよ。カラシは嫌いだ」

「大人なんだから我慢しなさい!」

「我慢する根拠が分からないよ。だいたい冷やし中華にカラシがスタンダードでついているのが意味不明だ!」

「それが大人の試練なんじゃん?」

 冷やし中華をほおばりながらそう言う。

「ところで?」

 死神が話を切り出した。

「この冷やし中華は本物か?」


平成マシンガンズを読んで 222

2007-01-02 15:22:18 | 

 玄関のドアを開けると、白いTシャツの上に青い着物みたいなのを着て赤っぽい帯でしめた若いお兄さんがサランラップをかけたセイロみたいのを重ねたお盆を手にして立っていた。

「ツわっ、おーもり庵でツ!」

 うわっ冷やし中華が来たっ!
 思わず興奮して大声で死神を呼んだ。

「しにがみー。おそば屋さん来たよ! お金、おかねー!」

 部屋の奥から死神がすごくイヤそうな顔をして出てきた。何がイヤなんだろうか? 死神はジーンズのケツポケットからお財布を出して、おソバやのお兄さんに尋ねた。

「いくらだ?」

「冷やしツーか2つに盛りそばで1880円でツ」

「2000円でつりはあるか?」

「ございませんでツ」

「ちっ、じゃぁ120円は駄賃にやる。出かけているかもしれないが食器はこの玄関の脇に置いとくから好きな時に取りに来い」

「毎度っツ。ワラ」

 今なんか、ワラって言ったけど、ワラってなんだ?
 お兄さんは出前器のついた重そうな黒い自転車にまたがると立ちこぎで去って行った。なんか変な言葉づかいの人だったなぁと感心して見送る。
 お兄さんが去ると死神がすごいイヤそうな無表情で私に言った。

「人前で大きな声で『死神』とか呼ぶなよ。俺の正体がばれるだろ!」

「でも、今の出前のお兄さん。全体的に我かんせずってかんじだったよ」

「まぁね」


平成マシンガンズを読んで 220

2006-12-31 21:49:22 | 

「例えばだ。『本当の愛』を誓いあった男女がいたとしよう!」

「いたんだ?」

「いたんだよ。でも諸々の事情で会う事は叶わなかった」

「大変だね」

「大変だよ。でも会いたい! 会わなきゃ死んじゃうってくらいに2人は互いを求めあっていたんだ!」

「へぇ」

「やっと、諸々の事情を打ち破り2人はまた会う約束が出来た」

「良かったね」

「待ち合わせ場所は上野動物園!」

「変な待ち合わせ場所だね」

「それしか都合がつかなかったんだよ!
 求めあう2人がやっと出会える場所にイチャモンをつける気か!?」

「ごめんっ。事情を知らないもんだから」

「待ち合わせは、上野動物園のサル舎の前!」

「また、なんでサル?」

「愛する2人がやっと会える場所を冒涜する気か!」

「ごめん。私が悪かったぁ」

「こうして、『本当の愛』を誓い合った2人はやっと出会えた。
 場所は上野動物園サル舎の前。
 正確にはそのサル舎のサルはアイアイであった!
 これぞ『本当のアイアイ』!」

「え?」

「え?じゃねーよ。息抜きのただのシャレだ!」

「年内はもう頼まれてもダジャレは言わないとかブログに書いてなかった?」

「それは作者の protozoa だろ。俺にゃ関係ない!」

「つまんない」

「フーッ。なんで、俺のギャグはこうも理解されないのか?」


平成マシンガンズを読んで 219

2006-12-31 21:16:12 | 

「話がずれてきたけど、『本当の愛』は間違ってるという話だったな」

「で、結局まちがってんの?」

「間違っている事を証明したくてこうやって話してきたんだ。なんとか頑張って間違いを証明しよう。
 まず『本当』を語るなら『偽物』がないといけない。偽物もないのに本物だけがあるなんて明らかにおかしいだろ?」

「それはね」

「『偽物』が存在する事を『本物』が存在する事の第1の前提とする。すると、本物も偽物も存在しないモノに『本物』はないとなる。
 そうなると、この世に1つしかないモノには本物も偽物もない。
 1つしかないんだから偽物と本物に区別する事は不可能だ。これによって、この世に1つしかない地球や自分に『本当』は無いとなる。
 『本当の地球』や『本当の自分』という言い方は誤りである」

「『本当の自分』は言葉の誤用から生まれた勘違いかもしれないって事だね」

「次に、人の感覚や気持ちに偽物はあるか?
 これは本人以外は誰にも証明出来ない。
 偽を証明しようにも、どうやっても証明できないなら、偽なんかないのと同じだ。
 確かに本人なら嘘はつける。
 だが他人の痛さや楽しさは、本人の自己申告であり認めるしかない。
 他人の感覚や気持ちなどの嘘をある程度は見抜く事ができる。だが、完璧ウソだとは証明できない。もし、他人の嘘が証明できると考える人間がいるなら、その人間は人格に障害でも負っているんじゃないかな?
 この事から、他人の痛さに対して『本当の痛さ』などと言うのは無意味だとなる」

「まぁね、へ理屈だけど」

「この考証から、偽を証明できないモノの『本当』を語るのも無意味であるという第2の前提を導く。
 その前提を下敷きに考える。すると、『本当のブス』ならなんとなく意味が通じるのに、『偽物のブス』って何の事なのかが全く分からない。
 ブスの偽物だから少なくてもブスそのものであるはずはない。てかブスじゃないからブス呼ばわりできなくて『偽のブス』なんだよな。それってどんな状態なんだ?
 そんなワケ分かんないもんについて考えても時間の無駄だ。無意味である。
 よって、偽が証明できない『本当のブス』も間違った表現だと考えられる。さらに俺は『ブス』じたいも単なる気のせいだろうと思っているが」

「うーん」

「『本当』について熟慮してきた。
 そして、最後の難関である『本当の愛』を陥落させようと思う。
 だけど、これが難しいんだ」

「むずいの?」

「だって、愛って人それぞれじゃん。 
 なら人の数だけ愛はある。
 すると愛は無数にあるってことで1つではない。
 そして、『愛してる』なら気持ちなんだけど、『愛』は概念だ。
 感覚や気持ちなら他人の事は証明できないからと逃げられるけど、概念だとそうもいかない。
 次に『本当の愛』の反対である『偽の愛』という言葉を言ってみる」

「にせのあい、か。
 まぁ、『偽の愛』は十分にありそう。『偽のブス』なんかより普通にありそうだよ!」

「ありそうだろ? ありそうだから困ってんだよ」

「なんだよ死神らしくないじゃん。得意のへ理屈でチャチャチャッと『本当の愛』ぐらい否定しちまいなよ!」

「それがけっこう難攻不落なのだ。まさに『本当の愛』は鉄壁の要塞だ。
 かんじスゲー嘘くさいのに、なかなか嘘を見破れない」

「だめじゃん。頑張れよ!」

「うん、やってみる」