絶版プラモデルやじ馬考古学・ボックスアート美術館(なつかしき50~60年代アメリカプラモの世界)

古き良き時代の絶版プラモを発掘する、インターネット考古学。現在、・ボックスアート美術館にてエレール特別展を開催中!

担当講師のひとりごと:野次馬考古学は米軍住宅グラントハイツから始まった

2006年11月20日 | プラモデル


グラントハイツは野次馬考古学の母じゃ。
わかったか。
喝!

                                                                     
                                                                                 
                                                                     
                                                                           
                                                                            
                                                                                                                                               


プラモデル野次馬考古学


『担当講師のひとりごと:野次馬考古学は米軍住宅グラントハイツから始まった』


東京都練馬区光が丘に、かつて「グラントハイツ」という、広大な米軍家族住宅街がありました。
今では、公園や高層住宅(住民は当然日本人で、米軍家族はもういません)に様変わりし、当時の面影はありません。
そもそもグラントハイツができる前は、日本陸軍の飛行場があり、飛来するB29迎撃のため「飛燕」や「疾風」といった戦闘機が常駐し、帝都防空の一翼を担っていました。
敗戦後は、進駐してきた米軍に接収され、昭和23年(1948年)米陸軍家族住宅「グラントハイツ」として生まれ変わりました。
この「グラント」は、第18代アメリカ大統領グラントにちなんでつけられた名称だそうで、南北戦争の英雄であり、M3中戦車の呼称(グラント)にもなった人物です。
ただ、日本人には「グラントハイツ」ではどうも語呂が悪かったのか、それとも広大な敷地をみてグラウンド風イメージをもったのかわかりませんが、「グランドハイツ」という呼称が一般的で、地元で「グラントハイツ」といっても、それは「グランドハイツ」のことでしょ‥‥といわれてしまいます。
昭和33年(1958年)米空軍の家族住宅になり、昭和48年(1973年)日本へ全面返還されました。

では、私と、というより「野次馬考古学」と「グラントハイツ」の間には、どんな接点があるのかというと‥‥

キーワード①:グラントハイツ

Reocities THE DRAGON'S ROAR

じつは、私が小学校低学年の頃(1960年代後半)、伯母がここに住んでいたのです(彼女もグランドハイツと呼んでいました)。
ダンナは米空軍の軍曹でした。
ときおり、母に連れられて遊びにいったものです。
成増の駅から、バスかタクシーでハイツの正面ゲートまで行くのですが、当然そのまま中には入れません。
ゲートの日本人警備員に頼んで、伯母の家に連絡をとってもらいます(変な話ですが、ガードが固かったのはゲートとその周辺だけで、伯母の家の周囲は柵も金網も一切なく、外部と行き来が自由でした。もちろん、警備員の巡回はありますが、それもひんぱんに回ってくるわけではありませんでした。この事実を知ってからは、伯母の家周辺まで、バスかタクシーで行き、外部から堂々と侵入?することにしました)。

警備員  「○○という者が、面会にきているが」

伯母    「間違いなく、私の親類です」

警備員   「OK」

そんなやりとり(もちろん、すべて英語ですが)があって、ようやく許可がおりました。
ダンナがいれば、クルマで迎えにきてもらいます。この頃、日本でマイカーをもっている人なんて、金持ち位しかいません。
ダンナはアメリカの国家公務員なので、高給取りだったのか(?)は知りませんが、一家に一台、これは当たり前のようでした(カルチャーショック第一弾、ガーン)。
ダンナがいない時は、ハイツ内の通行を許可されたタクシーで、行くことになります。
でも、そのタクシーが乗り合いなので、アメリカ人と一緒です。
ド派手な服装で、かつケバい化粧で、さらにはデカイ装身具でチャラチャラ飾ったアメリカのご婦人と同乗したときは、これまたビックリ。とても、小学生の感覚ではついていけそうにありませんでした(カルチャーショック第二弾)。

カルチャーショックを何十発も喰らいながら、ようやく伯母の家に到着。
広い芝生に、二階建ての木造住宅がありました。軍の官舎には間違いないのですが、家の白い壁が芝生の緑色に映えて、とてもオシャレに見えたものです。

キーワード②:PX

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ダンナ  「PXに買い物に行くけれど、一緒に来るか?」

私     「PXって?」

伯母    「売店のことだよ」


売店と聞いて、小規模な店舗を想像しましたが、実際行ってみてビックリ。
駐車場完備の、スーパーマーケットでした。
当時の日本には、こんな店舗などありません。買物といえば、近所の商店街にある個人商店に行くか、ときどき百貨店に行くくらいなものでした。
ですから、クルマで乗り付けて品物をドサッと買って行く、という発想には正直驚きました。

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私の関心といえば、当然のことながらプラモデルです。
PXに着くやいなや、オモチャ売り場に直行しました。プラモデルはありました。
でも、それはまったく未知なるプラモデル群だったのです。

航空機、戦車、艦船、いろいろありました。でも、米軍ものばかりで、おなじみの零戦や戦艦大和は一切なし(当然か‥)。箱がシュリンクパックされた状態なので、中身は一切不明。箱を振ってみて、キットの大きさやパーツの数を推定します。周囲の買い物客は、私の様子を見てアジア系の変なガキだと思ったでしょうね。
おそらく、売り場にあったのはレベル、モノグラム、リンドバーグ、オーロラといったメーカーのキットだったのでしょうが、私は、これら見知らぬメーカーに興味をもちました。また、ボックスアートも日本のものとは、えらく雰囲気が違うもので、その異質さにこれまた興味をもったのでした。

キーワード③:フォレスト・シャーマン

このとき、いちばん興味をもったのは駆逐艦のキットで、ボックスアートの大胆で奇抜な構図がとても気に入りました。
荒れ狂う大波などものともせず、全力疾走する駆逐艦の勇姿を描いたもので、大波のため艦首部分が、むき出しの状態になっています。
当時、こんな構図のボックスアートなど見たことがなかったので、強烈な印象を受けたのです。
どこのメーカーの、なんというキットなのか一切不明だったのですが、後年レベルのフォレスト・シャーマンのボックスアートっぽいことが、なんとなくわかりました(確定的なことは、いえませんが)。
フォレスト・シャーマンは、グンゼレベル時代に日本でもリリースされましたが、このときは別なボックスアートが使われました。上空にはP3オライオンが飛び、海上は爆雷攻撃のため大きな水柱が立ち上っています。対潜水艦作戦のため海上を全力疾走する姿がカッコよく描かれており、日本ではフォレスト・シャーマンというと、こちらの絵の方が知られています。


グラントハイツのPXにあったキットと思われるボックスアート




グラントハイツのPXで売られていたのと、同一のボックスアートと思われますが、チョッと断定はできません。





中身は、こんな感じ。1956年リリース。
古いキットながら、なかなかよく出来ています。
フォレストシャーマンは、戦後アメリカが初めて建造した駆逐艦で、当時の最新鋭艦です。レベルも、話題の最新鋭艦を早速モデル化したようですね。
なお、フォレストシャーマン級駆逐艦のターナージョイは、1964年8月4日北ベトナムのトンキン湾で、北ベトナムの警備艇と交戦し、アメリカの直接軍事介入のきっかけをつくったことでも知られています。

パーツを一体化するなど、極力パーツ数を減らして、組み立てやすさを追求しています。
古いキットながら、親切設計ですね。Good!






おや、組立図はいつもの西洋画風水墨画のものではないですね。
イラストレーターが違うのでしょうか。









もしかしたら‥‥


あるいは、2番艦のジョン・ポール・ジョーンズだったのかもしれません。
なにぶん、小学校低学年のときの記憶なので‥‥
このキットは、フォレストシャーマンと中身は同じです。
他に、デイケーチヤーというキットもありましたが、これも同じものでしょう。

とにかく‥

どれでもいいから、ひとつくらい買ってくれないかな、などとムシのよいことを考えていましたが、結局ダメでした。

「帰るゾ」、ダンナにうながされて、未練タラタラ売り場を去っていく私でした。

続く                                                         


                

「タバコを吸っているわけではありません。

機関銃を撃っています。ちゃんと働いています。

エッ!、そんなふうには見えないですって?

嗚呼!ボクは、いつもこれなんだ。」








次回のチラリズム                                         
                     
                                                                         
                     
                                                    

                                                                
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                   プラモデル野次馬考古学