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ナショナルカメラから始まったパナソニックのカメラビジネス 

2016-03-23 15:22:47 | 印刷人のフイルム・フイルムカメラ史探訪
ナショナルカメラから始まったパナソニックのカメラビジネス 

印刷図書館クラブ
印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-18
印刷コンサルタント 尾崎 章


我国を代表する電機大手の松下電器産業は、2006年に1926年より使用していた歴史的ブランドである「ナショナル」を廃止、コーポレートブランドとして「パナソニック」への統一と同時に社名の「パナソニック」変更を行っている。
松下電器産業当時は、国内家電ブランド「ナショナル」、家電海外ブランド「パナソニック」、オーディオ製品「テクニクス」の3ブランド運用を長期間実施していたがブランド統一によるビジネス拡大等を目的にブランド統一を図っている。
「ナショナル」ブランド全盛の1978年に松下電器が「ナショナル」ブランドのフィルムカメラを発売してカメラ業界参入を開始、今日の「パナソニック・デジタルカメラ」の基礎を築いた事を知る人は少ない。


AMラジオ付ポケットカメラが最初のナショナルカメラ


1978年に松下電器はAMラジオ付きポケットカメラ「ナショナル・ラジカメCR1」を発売、カメラ業界への参入を開始した。


ナショナル・ラジカメCR1とフジ110ポケットフィルム


「ナショナル・ラジカメCR1」は、コダックが1972年に発売した110カートリッジフィルム(ポケット インスタマチック フィルム)を使用するポケットカメラで、110フィルムは17×13mmの画面サイズにも関わらずキャビネ判程度迄の拡大プリントが可能であった事より市場が拡大、コダックに続いて富士フィルム、アグファ、コニカ、キャノン、ミノルタ、旭光学 等々が様々なタイプの110フィルムカメラを製品化して市場ニーズに応えている。
なかでもAMラジオを搭載して突然に市場参入を開始した松下電器「ナショナル・ラジカメCR1」は、カメラ業界はもとより消費者を驚かせた。
松下電器は山形にレンズ生産工場を有しており、得意とするストロボ生産技術とラジオ生産技術を組み合わせて小型・高性能AMラジオとストロボを内蔵した110フィルムカメラの製品化を行っている。
松下電器は、1980年に改良型「ナショナル・ラジカメCR2」とフィルム自動巻き上げ機能を搭載した「ナショナル・ラジカメCR3」を発売してラインナップ強化を行っている。
カメラへのラジオ搭載は、1959年に興和㈱・電気光学事業部からカメラ付16mmフィルムカメラ「ラメラ」が発売されているが、松下電器「ラジカメ」の約20年前に発売された製品の為にラジオ自体のコンパクト化が難しく、更にサイズが制限される状況下では16mmカートリッジフィルム「ミノルタ16フィルム」を使用する16mmカメラの搭載が限界であった。


ナショナル・ラジカメCR1とフジカポケットカメラ 

「ナショナル・ラジカメCRシリーズ」では、本格的なスピーカーを搭載した事より一般的な110フィルムカメラよりもボディサイズが大きくなったが、ラジオ付という事で市場は受け入れた模様である。
松下電器では、ポケットカメラの主要需要層である若い女性、高校生・大学生をターゲットに設定、1970年にラジオ生産工場として建設された福島工場で月産1万台ベース(販売当初)の生産が行われたと報じられている。


ナショナル・ラジカメのラジオ部  


35mmコンパクトカメラ「ナショナル チャンス」

松下電器は「ラジカメ」に続いて1983年に35mmコンパクトカメラ「ナショナル チャンスC700-AF」を発売して35mmレンズシャッターカメラ市場への参入を開始した。


ナショナル・チャンスC700AF


本体価格44.390円と普及型MF一眼レフに近い価格の当該カメラは、撮影枚数、フィルム感度、電池消耗度をコンパクトカメラとして初の液晶表示を行う等、「電器メーカーらしい」特徴を有し、更にはLSIセンサーによって内臓ストロボが自動的にポップアップされる機能も設けられ、このストロボのアップダウンに超小型モーターによる電動駆動を採用してカメラ他社を驚かせた経緯がある。
レンズは、山形工場(天童市)製のオリジナルブランド「ナショナルレンズ」を搭載、35mmF2.8のテッサーテイブレンズ(3群4枚構成)は「なかなか」の描写性能を有していた。


ナショナル チャンスの液晶表示部 

松下電器は、1985年にデート機能を搭載した「ナショナル チャンス・クオーツデートCD-700AFS」(50.000円)と普及型「ナショナル チャンス・ジュニアC-500AF」(29.700円)を発売してラインナップ拡大を図っている。
松下電器・山形工場は、ガラスモールドの非球面レンズをプレス生産する世界トップレベルのレンズ生産技術を有しており、球面収差・歪曲収差等のレンズ収差を複数レンズで補正する光学設計を不要とする非球面レンズを一貫生産する事が出来る。
現在では、光学各社への非球面レンズ供給ビジネスも活発化しており、このレンズ技術と液晶、LSI,超小型モーター技術を組み合わせたカメラが「ナショナル チャンス」であった。


ミラーレス一眼レフ市場をパナソニックが創生


2008年10月にパナソニックは、世界初ミラーレス一眼レフ「パナソニック・ルミックスDMC-G」を発売して注目を集めた。オリンパスと共にデジタル一眼レフのフォーサーズ規格をミラーレス一眼レフ向けに改良・変更を行いレンズ・フランジの短いレンズによりコンパクト性に優れたミラーレス一眼レフの製品化を実現している。コンパクト性とコストパフォーマンスに優れたマイクロフォーサーズ・ミラーレス一眼レフは、女性需要を中心に短期間に市場創生が行われた事は周知の通りである。


パナソニック・ルミックスGF1 2009年度グッドデザイン金賞受賞

パナソニックとオリンパスよるマイクロフォーサーズ・ミラーレス一眼レフ発売を契機に各社よりミラーレス一眼レフの新製品が次々と市場投入される状況に至った今日、ミラーレス一眼レフの立役者・パナソニックのカメラ事業の原点が数機種の「ナショナルカメラ」にある事はカメラ史からも忘れ去られている状況にある。
ピーク年に年間650万台のデジタルカメラを生産・販売したパナソニックのカメラ事業はスマートフォンカメラ機能の影響によるコンパクトタイプ・デジタルカメラの市場失速の影響を受けて2016年3月決算期で年間180万台への減少を余儀なくされているが、高付加価値のミラーレス一眼レフへのシフトにより「シェアを追わず、採算重視の徹底化」が図られている状況にある。

 
CP+カメラ展のパナソニックブース 
 
 
(終)
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