新市場を創生した懐かしの全天候型コンパクトカメラ
印刷図書館クラブ
印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-23
印刷コンサルタント 尾崎 章
1979年に富士写真フィルム(当時)が発売したコンパクトカメラ「HD-1フジカ」は、世界初の全天候型EEカメラで「汚れたら水で洗ってください!」のキャッチコピーが注目を集めた。
HD-1フジカのシリーズ展開
富士写真フィルムが1979年6月に発売した「HD-1フジカ」(33.800円)は、ブログラムEE機能を搭載したコンパクトカメラでカメラボディにポリカーボネート樹脂を採用して強度を高め、レンズ前面には4mm厚の保護ガラスを装着、特殊ゴムパッキンにより耐水性強化を図った世界初の全天候型カメラである。更に手袋をしたままで操作できる様に操作ダイヤルを大型化する等のハンドリング面の配慮により機能性を高めていた。
フジフィルム HD-Rフジカのカタログ
カタログ表紙に「カメラを水洗いする」シーンの写真を採用した「HD-1フジカ」は、ヘビーデューティ需要を的確に捉えて短期間でヒット製品になり、富士写真フィルムは半年後の1979年12月にストロボ搭載の「HD-Sフジカ」、水深2mの水中撮影対応モデル「フジタフガイHD-M」(44.800円)、1984年11月にはHD-Mの普及型「フジHD-R」(36.800円)を発売してバリエーション強化を図っている。
更に35mmカメラによるパノラマ写真ブーム対応して1990年に最終モデルとなるパノラマ仕様モデル「HD-Pパノラマ」(34.800円)の追加発売を行っている。
当時、カメラの大敵とされていた「雨・水」「砂塵・埃」「高熱」「振動」等への配慮・保護問題を一掃した「HD-1フジカ」の功績は業界内でも高く評価されている。
フジフィルム HD-R
フジフィルム HD-R のレンズ鏡胴部
水中撮影を可能としたミノルタ「ウェザーマチック」シリーズカメラ
ミノルタカメラ(当時)は、110フィルムを使用するポケットカメラがブームとなった1980年に全天候型110フィルムカメラ「ウェザーマチックA」(28.800円)を発売、デザイン性に優れた鮮やかなイエローボディの「ウェザーマチックA」はマリンスポーツ必携カメラとして人気を博した経緯がある。
ミノルタ ウェザーマチックA
「ウェザーマチックA」の防水機能は、JIS日本工業規格・8級の防水性を有し水深5m迄の撮影を可能とした事よりマリンスポーツ需要を創生、イエローボディの可愛らしさは若い女性から支持も受け110フィルムカメラのヒット製品となっている。
「ウェザーマチックA」のヒットに気をよくしたミノルタカメラは、1987年に得意とするオートフォーカス・2焦点レンズ搭載の35mmフィルムカメラ「ウェザーマチック デュアル35」(39.800円)を発売、更にAPSフィルムの発売に合わせて1997年に「ベクティス・ウェザーマチック」を発売している。
ミノルタ ウェザーマチックデュアル35
ミノルタ ベクティス・ウェザーマチック
35~50mmのズームレンズを搭載したストロボ内蔵、オートフォーカス仕様の「ベクティス・ウェザーマチック」は、防水機能を更に高め水深10m迄の撮影を可能として水中写真マニアのサブカメラとしての支持を得る事にも成功している。
110フィルム、35mmフィルム、APSフィルムに対応した「ミノルタ ウェザーマチックシリーズ」は一貫したイエローボディのカメラデザインも高く評価され、APSフィルム仕様の「ベクティス・ウェザーマチック」は1998年のグッドデザイン賞を受賞、更に110フィルム仕様の「ウェザーマチックA」は、工業デザインの傑作製品例としてニューヨーク近代美術館に常設展示された輝かしい経緯を有する等、国内外で高い評価を受けたスタイル自慢のカメラでも有った。
業務用カメラとしての地位を確立したコニカ・現場監督
富士写真フィルム、ミノルタカメラ(当時)が全天候型カメラによるアウトドアスポーツ市場でのビジネス展開を図ったのに対して、コニカ(当時)は業務用カメラとしての市場創生を図っている。
建築・土木工事等の工事現場で工事記録用として撮影されるフィルム量が多いことに注目したコニカは、1988年に工事用カメラ「現場監督」(36.800円)の発売を行っている。
「現場監督」は、40mmの準広角レンズを搭載した単焦点コンパクトカメラで防水・防塵・耐衝撃性を備え、軍手をしたままで取り扱いが出来るハンドリング性にも優れていた。
工事写真を撮影する現場監督向けのカメラとして「現場監督」のネーミングも絶妙で短期間に産業用カメラとしての地位を確立している。
コニカ現場監督
「現場監督」は個人需要とは異なり会社経費で工事事務所単位に大量購入される事より収益性が高く、コニカのカメラ事業収益に大きく貢献したことが報じられている。
一部のマニアがアウトドア用として購入した経緯があるが、主要需要が建築関連企業に集中したユニークな全天候型コンパクトカメラであった。
北米・ナイアガラ瀑布観光船・霧の乙女号
筆者は、ミノルタ「ウェザーマチック」で小笠原及び沖縄のサンゴ撮影に挑戦した経緯があるが水深10m迄の水泳対応力が伴わず断念、当該カメラの防水機能を活用事例としては、残念ながら北米・ナイアガラ瀑布の観光船「霧の乙女号」での船上撮影程度であった。
以上
印刷図書館クラブ
印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-23
印刷コンサルタント 尾崎 章
1979年に富士写真フィルム(当時)が発売したコンパクトカメラ「HD-1フジカ」は、世界初の全天候型EEカメラで「汚れたら水で洗ってください!」のキャッチコピーが注目を集めた。
HD-1フジカのシリーズ展開
富士写真フィルムが1979年6月に発売した「HD-1フジカ」(33.800円)は、ブログラムEE機能を搭載したコンパクトカメラでカメラボディにポリカーボネート樹脂を採用して強度を高め、レンズ前面には4mm厚の保護ガラスを装着、特殊ゴムパッキンにより耐水性強化を図った世界初の全天候型カメラである。更に手袋をしたままで操作できる様に操作ダイヤルを大型化する等のハンドリング面の配慮により機能性を高めていた。
フジフィルム HD-Rフジカのカタログ
カタログ表紙に「カメラを水洗いする」シーンの写真を採用した「HD-1フジカ」は、ヘビーデューティ需要を的確に捉えて短期間でヒット製品になり、富士写真フィルムは半年後の1979年12月にストロボ搭載の「HD-Sフジカ」、水深2mの水中撮影対応モデル「フジタフガイHD-M」(44.800円)、1984年11月にはHD-Mの普及型「フジHD-R」(36.800円)を発売してバリエーション強化を図っている。
更に35mmカメラによるパノラマ写真ブーム対応して1990年に最終モデルとなるパノラマ仕様モデル「HD-Pパノラマ」(34.800円)の追加発売を行っている。
当時、カメラの大敵とされていた「雨・水」「砂塵・埃」「高熱」「振動」等への配慮・保護問題を一掃した「HD-1フジカ」の功績は業界内でも高く評価されている。
フジフィルム HD-R
フジフィルム HD-R のレンズ鏡胴部
水中撮影を可能としたミノルタ「ウェザーマチック」シリーズカメラ
ミノルタカメラ(当時)は、110フィルムを使用するポケットカメラがブームとなった1980年に全天候型110フィルムカメラ「ウェザーマチックA」(28.800円)を発売、デザイン性に優れた鮮やかなイエローボディの「ウェザーマチックA」はマリンスポーツ必携カメラとして人気を博した経緯がある。
ミノルタ ウェザーマチックA
「ウェザーマチックA」の防水機能は、JIS日本工業規格・8級の防水性を有し水深5m迄の撮影を可能とした事よりマリンスポーツ需要を創生、イエローボディの可愛らしさは若い女性から支持も受け110フィルムカメラのヒット製品となっている。
「ウェザーマチックA」のヒットに気をよくしたミノルタカメラは、1987年に得意とするオートフォーカス・2焦点レンズ搭載の35mmフィルムカメラ「ウェザーマチック デュアル35」(39.800円)を発売、更にAPSフィルムの発売に合わせて1997年に「ベクティス・ウェザーマチック」を発売している。
ミノルタ ウェザーマチックデュアル35
ミノルタ ベクティス・ウェザーマチック
35~50mmのズームレンズを搭載したストロボ内蔵、オートフォーカス仕様の「ベクティス・ウェザーマチック」は、防水機能を更に高め水深10m迄の撮影を可能として水中写真マニアのサブカメラとしての支持を得る事にも成功している。
110フィルム、35mmフィルム、APSフィルムに対応した「ミノルタ ウェザーマチックシリーズ」は一貫したイエローボディのカメラデザインも高く評価され、APSフィルム仕様の「ベクティス・ウェザーマチック」は1998年のグッドデザイン賞を受賞、更に110フィルム仕様の「ウェザーマチックA」は、工業デザインの傑作製品例としてニューヨーク近代美術館に常設展示された輝かしい経緯を有する等、国内外で高い評価を受けたスタイル自慢のカメラでも有った。
業務用カメラとしての地位を確立したコニカ・現場監督
富士写真フィルム、ミノルタカメラ(当時)が全天候型カメラによるアウトドアスポーツ市場でのビジネス展開を図ったのに対して、コニカ(当時)は業務用カメラとしての市場創生を図っている。
建築・土木工事等の工事現場で工事記録用として撮影されるフィルム量が多いことに注目したコニカは、1988年に工事用カメラ「現場監督」(36.800円)の発売を行っている。
「現場監督」は、40mmの準広角レンズを搭載した単焦点コンパクトカメラで防水・防塵・耐衝撃性を備え、軍手をしたままで取り扱いが出来るハンドリング性にも優れていた。
工事写真を撮影する現場監督向けのカメラとして「現場監督」のネーミングも絶妙で短期間に産業用カメラとしての地位を確立している。
コニカ現場監督
「現場監督」は個人需要とは異なり会社経費で工事事務所単位に大量購入される事より収益性が高く、コニカのカメラ事業収益に大きく貢献したことが報じられている。
一部のマニアがアウトドア用として購入した経緯があるが、主要需要が建築関連企業に集中したユニークな全天候型コンパクトカメラであった。
北米・ナイアガラ瀑布観光船・霧の乙女号
筆者は、ミノルタ「ウェザーマチック」で小笠原及び沖縄のサンゴ撮影に挑戦した経緯があるが水深10m迄の水泳対応力が伴わず断念、当該カメラの防水機能を活用事例としては、残念ながら北米・ナイアガラ瀑布の観光船「霧の乙女号」での船上撮影程度であった。
以上